和歌山電鐵サタデー・ナイト





■和歌山再訪

 この10月、筆者の所属する学会が和歌山で年次大会を開催することになった。せっかく和歌山に行くならば、たま駅長に面会に行かなければなるまい、と考えたのは当然である(笑)。その旨をTAKA様と KAZ様に伝えたところ、両名からも賛同を得られ、三名揃って貴志を訪問することになった。

 猫好きの酔狂な物見遊山、と見られてもしかたない行動ではある。しかしながら、我々(少なくとも筆者)においては、和歌山電鐵とその施策をより深く知りたい、という思いがあることも確かなのである。

たま駅長
如何にも眠たそうなたま駅長


 たま駅長に再び面会し、久々に尊顔を拝することができ、ありがたい機会ではあった。また、何度も繰り返し訪れることで、和歌山電鐵への理解はさらに深まった。その最たる機会は、和歌山駅付近で懇親した後、TAKA様 KAZ様両名から、

「どうせならば、土曜夜の和歌山電鐵利用状況を実見してはどうですか?」

 と勧められたところから始まった。TAKA様は仕事の都合で帰京、 KAZ様も遠路はるばる帰宅するのに対し、翌日曜も学会参加する筆者だけは和歌山泊だ。このまま投宿して惰眠を貪るだけに終わってしまうならば、眠気を抑え実乗するに如かず、という発想が働いた。勿論、酔った勢いというものもある(笑)。以下、報告しよう。





■和歌山駅土曜夜20時30分

 当然ながら、こんな時刻に観光客などいない。筆者を除く、利用者ほぼ全員が沿線住民であろう。ただし沿線住民といっても、通勤・通学など日常的行動の人数は少なく、行楽・買物帰りなど非日常的行動の人数がむしろ多いはずである。利用状況は以下の表に示すとおりであった(筆者は人数から除いている)。

駅名発時刻乗車人数降車人数
和歌山20:4055+子3
田中口20:413
日前宮20:4426
神前20:465
竈山20:485
交通センター前20:501
岡崎前20:527
吉礼20:548
伊太祈曽20:594
山東21:01
大池遊園21:052+子3
西山口21:065
甘露寺前21:084
貴志21:1013


 「利用者が多い!」というのが率直な感想である。乗車人数合計は60名(+子 3名)。最大断面は田中口−日前宮間の58名(+子 3名)である。

 需要構造としては、和歌山市街からの帰宅客を日前宮までの三駅で受け、吉礼までに約半分、伊太祈曽までに約六割が降車する、短距離移動が主、という形になる。その一方、貴志まで乗り通す利用者が約二割ほど存在するほか、足の長い利用者も相応の比率で存在する。

車内
和歌山出発直後の車内(貴志より先頭車)


 各駅ともほぼ満遍なく利用されている状況もよくわかる。交通センター前と山東の降車人数が少ない点は、統計資料からも乗降客数の少なさがわかるので、事前の予想どおりである。この両駅に比べると、田中口の乗車人数のほうがむしろ多く、これは時間帯が幸いしたといえるだろう。
貴志
夜の貴志駅






■貴志駅土曜夜21時16分

 折返し和歌山行列車が空気輸送になるのは、やむをえないところだ。和歌山の深夜需要は大都市のそれとは懸絶している。それでも貴志から 1名、伊太祈曽から 2名、吉礼から 1名、岡崎前から 1名の乗車があり、田中口で 1名、残る 4名が和歌山で降車した。

 この列車は、伊太祈曽で和歌山発21時10分発の列車と交換し、車中には20名弱の利用者が見られた。また、日前宮では和歌山発21時40分発の列車と交換し、車中には40名前後の利用者の姿があった。この数字から類推すれば、両列車とも筆者乗車列車からやや少ない程度(40〜50名前後か)の利用者数があったものと想定される。

車内
折返し和歌山到着直前の車内(和歌山より先頭車)


 三連休初日の土曜夜としては少なくない利用状況であり、需要の底堅さがうかがえる。即ち、和歌山電鐵は沿線の需要に恵まれている。和歌山電鐵は沿線住民に幅広く認知され、かつ「自分たちでこの鉄道を支えなければ」という強い意識を以て支持されている、とも聞く。これに加え、会社側が続々とイベントを仕掛け、需要を喚起し、全国からの観光客まで誘致している。

 しかしながら、和歌山県は全体として経済活動レベルが下り坂をたどっていることも、一方の事実として存在している。とりわけ、和歌山中心市街の衰退ぶりは甚だしく、目を覆わんばかりのものがある。和歌山電鐵の需要の太宗は、あくまでも和歌山中心市街発着なのであって、その動向次第では屋台骨が傾きかねない。現状では需要に恵まれているとしても、安定または持続可能とは断定できない。この点についてはいずれ再論したい。





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