線形静解析
線形静解析は、力学的釣り合い状態にある構造物について、変形が微小という前提のもと、変形による内力の変化が無視できると仮定して、力の釣り合いを変形前の状態で数式化し、変位やひずみ、応力などを計算する。また、材料的に弾性の範囲内(弾性とは荷重をなくすと変形も完全に元にもどる状態)にあるとする。したがって、変形が大きな問題、変形によって構造にかかる力の向き・大きさが変化する問題は線形解析では解いてはいけない問題である。線形静解析は基本であるが故に、この解析により応力集中する状態、力の流れ、変形モード、荷重や拘束条件の違いによる変化など検討範囲も広くなる。
線形座屈解析
座屈解析は通常非線形解析の領域になるが、線形座屈解析を行う場合、これは固有値問題として、線形のモード解析で座屈荷重を求めることができる。ただし線形理論の制限を受けるために、座屈前の変形が小さいことや材料応答が線形であることなどの条件にあてはまっている必要がある。また、座屈時および座屈後の実変位は線形座屈解析では求められない。変位の大きさはモードシェイプのための相対値になる。出力される応力は正規化された固有ベクトルから計算されるため、実応力ではない。しかし、歪エネルギなどを見て、どの部分の構造変更、材料変更が有効かを判断する材料として使用することができる。出力された座屈荷重ファクタと設定した荷重値との積が座屈荷重となる。
固有値解析
構造物の共振は、異常振動や疲労破壊の原因となる。共振しないように設計するためには、まず固有値解析により構造物の固有振動数と固有振動モードを求める。そして固有振動数を外力振動数から10~20%以上離して設計する必要がある。構造物の固有振動数は、構造を剛にすれば高くなり、柔にすれば低くなる。また、振動部分の質量を大きくすると振動数は低くなり、小さくすると高くなる。モードシェイプからは振動形状が分かり、腹(最大変位点)になっているところを拘束できれば固有振動数を上げることができる。
モードシェイプを表現するには変位結果を用いるが、この値は計算結果をある基準のもとに正規化した値で、実変位を求めているわけではないため、値自体は評価の対象とならない。正規化の方法は2種類あり、1つは、モデルのそのモード内での節点の最大変位成分がSI単位系で1となるように正規化し、その他の節点の成分を相対的に求める。並進自由度において最大となった場合は1メートルとして、回転自由度において最大となった場合は1ラジアンとして正規化を行う。もう1つは、モーダル質量が1となるように正規化する。
解析オプションの質量の扱いには、集中質量法(Lumped Mass)と分布質量法(Consistent Mass)の二種類がある。集中質量法は要素の節点に位置する集中質量で要素質量を表している。低い次数のモードを精度よく抽出できるが、高い次数のモードの抽出が悪くなる。計算時間が短く、一般に低次の固有振動数が重要になるので通常使用される。分布質量法は剛性マトリクスと一貫した考え方で要素の形状関数を用いて質量マトリクスが計算される。計算時間は長くなるが、固有振動数は厳密解と等しくなるか大きくなる。どの程度の計算精度が要求されるかは問題に依るが、固有振動数の精度は、主として要素分割数の方が影響する。
フリーフリー解析の場合、固有値=0の剛体モードが求まる。(FEMソフト上の問題でちょうどゼロにはならない。)3次元モデルでは6自由度(並進3、回転3)の拘束されていない自由度の数だけ発生する。これは数学的に求まるもので、物理的に意味はないので、出力しないようにするか無視する。
振動解析
振動解析は、振動や衝撃など動的荷重を受ける構造で、どのような振動が起こるのか、どのような影響があるかなどを明らかにするのが目的である。応答計算から、応答変位、応答速度、応答加速度及び応答応力が求められる。特に注目する共振時の値は、減衰が逆比例で効くので、入力する減衰値が重要となる。
振動の主な種類
◇自由振動:振動系に始めに運動を与え、それ以後外力を加えることなく自由に振動させた場合の振動。
◇強制振動:振動系が外力から強制的な力や加速度などを受けることによって発生する振動。
◇過渡振動:振動系に外力を与えると、振動系には自由振動と強制振動が同時に発生する。ほとんどの場合両者の振動数は異なるため、この両者が混同した振動で定常状態に至るまでの振動。
振動解析の主な種類
◇周波数応答解析:周期的外力に対する構造物の周波数領域における定常応答を計算する。荷重は力または強制運動(変位、速度、加速度)の関数によって定義される。
◇過渡応答解析:過渡的な外力に対する構造物の時間領域における動的応答を計算する。荷重は力または強制運動(変位、速度、加速度)の関数によって定義される。
◇応答スペクトル解析:衝撃スペクトル解析とも呼ばれ、入力スペクトルに対する過渡加振のピーク応答を予測するための近似法。時間のかかる過渡解析の代わりに応答スペクトル解析を使用すると、長い時刻歴における構造のピーク応答の近似値を迅速に求められる。
解析手法
◇モード重ね合わせ法:固有値解析から出てくる固有振動数、固有モードを利用して多自由度の振動を一旦、1自由度の振動に分解した後、適当なスケールファクタを掛け、それらを重ね合わせる方法。解の精度はモードの数に依存する。固有値解析で有効質量を計算し、全体の質量の少なくとも80%が考慮されるべきである。
・モード変位法では、応答変位は少数モードによって精度の良い結果が得られるが、応答応力の精度は悪くなる
ことがある。
・モード加速度法は、モード変位法よりも精度の良い応答応力の結果を求めることができる手法だが、低次モー
ドを省略した固有値解析結果を使う場合、精度が著しく悪くなる。
◇直接法:微分方程式を直接解いていく直接積分法。解析に十分な数のモードが含まれるかどうか確認する必要がないのが利点である。どのモードが結果に影響を与えるかがわからない場合や、高次のモードまで考慮しなければならないような場合に用いられることが多い。
強度評価
強度評価は評価対象の材質によって最適な強度評価法を選択することが重要である。一般的に、延性材料については、最大ひずみエネルギー説または最大せん断応力説に基づいて強度評価を行う。
最大ひずみエネルギー説に基づく評価では、Mises応力σMと材料の降伏応力σyを比較して降伏を判断する。
最大せん断応力説に基づく評価では、最大せん断応力(トレスカ応力)τmaxを二倍した数値と降伏応力σyを比較して降伏を判断する。なお、トレスカ応力の方がMises応力より安全側の値を示す。
脆性材料では、最大主応力説に基づいて、最大主応力σ1と材料の引張強さσBを比較して強度評価を行う。これは脆性材料は圧縮応力に強い特性をもつためである。
疲労破壊の指標となる応力は、荷重変動に伴う応力変動範囲である。荷重履歴中における応力変動範囲σrを同一点の最大主応力差σemax=(σ1-σ3)と最小主応力差σemin=(σ1-σ3)から求める。ただし、圧縮応力場になる場合は主応力差に負の符号を付ける。次に応力振幅σa=σr/2、平均応力σm=(σemax+σemin)/2を求め、修正グッドマン線図により平均応力が0の場合の等価な応力振幅σaeqを求め、材料の疲労限度σwと比較して疲労強度を評価する。