イデア
「古来より我々魔女は幻想の中に生きてきた」
「おまえたちが生み出した愚かな幻想だ」
「恐ろしげな衣装を身にまとい残酷な儀式で善良な人間を呪い殺す魔女」
「……くだらない」
「幻想に幻想を重ねて夢を見ているのは誰だ?」
「現実は優しくない」
「現実はまったく優しくない」
「ならば、愚かな物、おまえたち!こうするしかない」
「みずからの幻想に逃げ込め!」
「私はその幻想の世界でおまえたちのために舞い続けよう!」
「私は恐怖をもたらす魔女として未来永劫舞い続けよう!」
「おまえたちと私。ともに作り出す究極のファンタジー。その中では生も死も甘美な夢」
「魔女は幻想とともに永遠に!魔女のしもべたるガルバディアも永遠に!」


魔女は恐ろしいもの、というのが歴史上のイメージ。歴史上で言えば良き魔女は騎士ゼファーを従えていた魔女のみ。あの魔女はかなり珍しい。だからこそ、あの魔女の物語が映画化された。

だが、歴史上に名を残していなくても、魔女は何人か存在する。そして、それらの魔女達は身を隠してひっそり暮らしている。悪い魔女だけでは無い。歴史に残った魔女の多くが悪い魔女なだけ。それなのに、一般人が教わる教科書の中には恐ろしい魔女しか居ない。当然といえば当然。ひっそり暮らしていた魔女の話など教科書に載るわけが無い。歴史上に数人出てきた、恐ろしく凶暴なアデルのような魔女だけが歴史に名を残す。
ただでさえ、魔女は人々から偏見の眼差しで見られる。そこにきて「SeeD」。

「SeeD。バラムガーデンのSeeD」
「ガーデンはSeeDを育てる。SeeDは魔女を倒す」

全てのはじまりはこれだった。SeeDはアルティミシアを倒すという目的のために作られた。だが、魔女は全てが悪しき魔女では無い。

「幻想に幻想を重ねて夢を見ているのは誰だ?」

私は悪くない。悪いのは夢を見ているお前達だ。

恐らく、アルティミシアは普通の魔女だった。良き魔女とされてきた魔女達同様、人目を避けて、ひっそり暮らしていたんだろう。それでも「SeeDは魔女を倒す」という概念に捉われた未来のSeeD達によってアルティミシアは命を狙われた。

アルティミシアは我慢に我慢を重ねていたが、SeeDの追手は執拗だった。神話のように受け継がれてきた物語では、伝説のSeeDによって自分の名前と同じ「アルティミシア」という魔女が倒されている。

「現実は優しくない」
「現実はまったく優しくない」

アルティミシアは気がつく。私は殺される。このままだと伝説のSeeDに。

「ならば、愚かな者、おまえたち!こうするしかない」

アルティミシアの中で何かが切れた。アルティミシアは怒り狂う。そうするしかなかった。自分の運命を破壊するために、アルティミシアは運命の根源となった伝説のSeeDの時代へ赴く。SeeDを育てるというガーデンを破壊すれば、なんとかなるかもしれない。

「反魔女軍のSeeDを育てている罪でバラム・ガーデンは破壊される」

アルティミシアが本当に自分が伝説のSeeDに殺されることを知っていたのなら時間圧縮などしなければいい、とよく耳にするが、アルティミシアには他にどうすることもできなかった。
このままだと自分が殺されるという運命を知って、じっとしていられるだろうか? 何とか過去を変えられないか、自分の運命を変えることはできないか、そう考えないだろうか?

「過去は変えられないって人は言う」
「でも、それでもやっぱり、可能性があるなら試してみたいじゃない?」

(過去を変えたいだって?本気で言ってんのか?バカバカしい……)

その通り。バカバカしい。だが、アルティミシアの時代にはジャンクション・マシーン・エルオーネが存在する。
運命を変えられるかもしれない。アルティミシアは「エルオーネ」という小さな望みを捜すために、未来から旅立つ。

例え過去を変えられなくても、私には時間圧縮がある。時間圧縮によって、自分が倒されるという運命そのものを消せばいい。

まさか時間圧縮後の世界にまでスコール達が追ってくるなど予想もしなかっただろう。
本来ならば消えてなくなるはずの存在がそこにいるのである。

アルティミシア
「……eeD…」
「SeeD……SeeD……」
「SeeD,SeeD,SeeD!!」
「気にいらない……」
「なぜ魔女の邪魔をする!なぜ私の自由にさせない!?」
「もう少しで完全なる時間圧縮の世界が完成するというのに……」

何処を見渡してもアルティミシアの周りにはSeeD。なるほど。私はどうやらここで殺される運命らしい。運命だとわかりながらアルティミシアは感じる。妙な余裕を、安堵感を。アルティミシアは疲れていた。疲れすぎた。SeeDとの戦いに。

私のつらく悲しい物語は……ここで終わる。

 

「さあ、最初に来るのは誰だ!?誰が私と戦うのだ!?」
「ふ……誰であろうと結果は同じこと!私が選んでやろう!」

 


「ほら、よく言うだろ〜?」
「人生には無限の可能性があるってさ〜」
「僕はそんなの信じてないんだ」
「いつだって選べる道は少なかった。時には道は1本しかなかった」
「その、少なかった可能性の中から自分で選んだ結果が僕をここまで連れてきた」
「だからこそ僕はその選んだ道を……」
「選ばなくちゃならなかった道を大切にしたい」


……でも、ここまで書いてちょっと考えた。アルティミシアが何を考えていたのかって。彼女は、きっと生き残ろうとしたんだよね。過去から時間を圧縮して、知ってしまった自分の運命を消そうとした……んじゃないのかな。だとしたら、ここであたしが一方的に書くのはフェアじゃない---そう思ったんだ。

だから、つづきは直接話そう!聞きたい人はあたしのところに遠慮なくきてね!学際実行委員の勧誘もオマケでつけちゃうぞ〜。

(アルティマニア、セルフィ最新公開日記より)


アルティミシアは自分の運命を知っていた。だが、スコールを「伝説のSeeD」と認識していなかったことからも、ジャンクション・マシーン・エルオーネを使って13年前の自分の死の瞬間を見ていたわけでは無く、「伝説のSeeD」が誰であるかも未来へは伝わっていない。

「アルティミシア」という名前は、デリングシティの人々が口にしていることからも、一度は話題になった魔女である。しかし、魔女アルティミシアは、一般人に姿を現すことなくスコール達によって倒されることになる。

「新しい魔女が現われたのよ。アルティミシアっていうんだって。でも、信用できるのかしら?」 

「今度の魔女アルティミシアは、騎士サイファー・アルマシーと新しい契約をかわしたそうだぜ」 

「今度の軍指揮官?まあ、お手並み拝見だね……フン。新しい魔女が現われたらしいが、未だ姿を見た者はいないそうだ」
「魔女自らが歴史の表にとって出るとは。まったく何を企んでいるのかね?忌々しいことだよ」

何故、スコール達の物語が伝説になっているのか疑問に思った。それは実態の無い魔女アルティミシアが民衆の前に姿を現すことなく倒されたからではないか、と。「伝説」なんて大体そんなものだ。「伝説」と言われているだけに、具体性は全く無く、「伝説のSeeD」の名前すら残って居ない。だが、バラムガーデンの生徒から外へ伝わったのか、「SeeDは魔女を倒す」ために作られたという話から、どうやらその姿を現さなかった魔女アルティミシアはSeeD様によって殺されたらしい、と。それが未来に残っている「伝説のSeeDが魔女アルティミシアを倒した」という、アルティミシアが消したかった運命なのだろう。どこで、どうやって倒されたかは残っていない。

時間圧縮しなければアルティミシアは助かったはず、とよく言われるが、それはプレイヤ視点で見てるだけであって、当のアルティミシアからしては、このままじっとしていれば運命のように殺される、そんな危機感を味わっていたはず。ただでさえ、未来のSeeD達は伝説のSeeDの姿を自分達に照らし合わせ、アルティミシアに挑んでくる。「もしかしたら、俺達が伝説のSeeDなのかもしれない」と。


「おまえが伝説のSeeDだったのか」

(意味不明……だまれ)

「なるほど立派なものだ。おまえ、じゅぶん立派だよ」
「……立派すぎて目障りだ。ここで消してやろう……」

「素晴らしいリーダーね」
「いつでも冷静な判断で仲間の希望を否定して楽しい?」


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