水素と酸素について(研究詳細経緯)
福島高校科學部
2006/12/31
記録者(PN)さくら
【前年度からの移行】
H17年度の研究内容はH16年度の福島県生徒理科研究発表会県北地区大会に
「水素ロケットを作る」という題で発表した物をさらに研究したものだ。
H16年度の時点では研究が十分ではなく、また実験機の完成度も低いものであった。
そのため研究着手時にはすでに書きの問題に直面していた。
1、水素と酸素の混合気体(以下混合気)の量産化。
2、混合気の高質化。
3、より正確な測量方法。
だが、それとは引き換えに前年度の研究から方向性は決定していた。
1、爆発の効率化(出力比の不具合の解消)【実験1】。
2、電気分解時に分解装置に蓄えられる電気について【実験2】。
しかし今年度、この研究に着手したのは夏休みの8月頃。
半年以上ものブランクが生じてしまったのはわれわれの不手際であっただろう。
非研究期間が長かったために実験機に著しい破損が生じてしまった。
破損の状況は下記の通り。
・ 電気分解装置・・・炭素電極の溶解、及び深刻な電解液の劣化。
・ 発射装置 ・・・点火装置の破損、及び錘として使っていた電池の液漏れ。
・ ロケット ・・・安定翼の破損、及び本体のサビによる劣化。
ほとんど全面的に壊滅状態になっていたため、全て作り直すことにした。
【今年度研究、実験1の事前準備】
損害の最も酷かったものは電気分解装置だった。
この分解装置に求められていたのは、「高質」な混合気を「量産」出来るということだ。
そのために目をつけたのは車用鉛蓄電池であった。
鉛蓄電池は通常、充電時には
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のような反応が起こる。
だが、充電が終わった状態でさらに充電(過充電)をすると
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のように水が分解される(と思われる)。
分解の際にPbO2が溶け出しそうだが今のところの影響はない。
なのでこの反応を利用することによって、混合気を入手することが可能である。
鉛蓄電池は上図のような構造になっている。
陰極と陽極そしてそれを隔離するセパレーターが交互にあり、内部は希硫酸で満たされている。
それぞれのセルは連結版によって繋がれ、実用的な出力が可能になっている。
給水口はセルごとにあるので給水口を加工し、混合気を取り出す。
加工の手順は下記の通りに行った。
1、給水口のキャップを外す。(ねじ状になっているので10円玉で外せる。)
2、キャップの中央にドリルで穴を開ける。穴の大きさは使用するケーブルにあわせる。
3、ケーブル(同軸ケーブルなど)の中身をペンチで抜き取り、外側の皮膜だけを手に入れる。
4、皮膜をキャップに差し込み、セメダインなどで固定する。
5、皮膜を1本に纏め、出力しやすいようにする。
乱雑極まりない方法だがこれで取り出せる。
電源装置を繋ぎ分解をしたところ、数Aをかけても発熱はなかった。
分解されたりなくなった分の水は水道水(本当は蒸留水や希硫酸が望ましいと思われる)を加え補った。
混合気採取の方法だが、これは上方置換法を用いることにした。
大きめのバケツのような容器に水を張り、そこにケーブルを入れて採取する。
採取容器は昨年度に引き続きペットボトルを利用した。
なぜペットボトルを利用するかについては下記の【実験の方法】で詳しく解説する。
次に劣化が酷かったものはロケット本体だ。
使用済みカセットボンベを加工して作っていたのだが、何よりもサビという問題があったので昨年度の物は破棄せざるを得なかった。
だが、カセットボンベは元々内部からの高圧力に耐えられるように設計されており頑丈だ。
爆発にも耐えられることが昨年度の研究で分かっている。
そこで今年度もカセットボンベを使用した。
加工の手順は下記の通り。
1、カセットボンベの上部を缶切りで開ける。
2、切り口をペンチで押しつぶし、安全にする。
3、プラスチック製の安定翼を取り付ける。
やはり力任せなやり方だが、問題はないことが昨年度で分かっている。
元々のボンベの性能が高いから特別な強化の必要はない。
むしろ、変に改造を加えようとすると、軌道が安定しなかったり計測結果が安定しなかったりするようだ。
続いて発射装置だが、昨年度は点火に誘導コイルを用いた電気火花を用いていたが今年度は圧電素子を使用した。
この素子は電気火花を作るためにライターなどに点火用に入っている。
素子の電極に導線を取り付け、数m延長し発射者の安全を確保する。
延長先の導線は棒状の木材に取り付け、それを錘につけたものを水中に沈めることにした。
また、発射装置として安定性を出すために左図のような装置を作った。
下のU字の部分の上にロケット本体を設置する。
赤い線は先ほど書いた圧電素子からの導線で棒の先端で放電し、電気火花を起こすようになっている。
棒はU字部に固定してあり、発射の際にロケット本体に接触したりしないようになっている。
【実験1の方法】
実験はバケツのような巨大な容器に水を張り、そこにロケット本体と発射装置を沈める。
ペットボトルに入った気をロケット本体に水中で注入する。
空気が入ると実験のデータが正確にならないために気体の注入には細心の注意を払う。
この際、容器に張られた水の量が多すぎると注入された気体によりロケット本体が浮かび上がって不安定になる。
そのため水面はロケット本体の下部2〜3cmが水に浸る程度(発射装置から2〜3cm上ということ)でなくてはならない。
故に水中で変形させるなど使い勝手がよく、また手入が容易なペットボトルを気体採取容器として使用している。
また発射地点で数本のペットボトルを用意しておくことにより効率よく実験を繰り返せる。
それ以外にも、分解装置の安全性を考えてのことである。
発射実験が野外で行われるため、分解装置を持ち運びしなくてはいけなくなる。
分解装置は給水口に穴を開けてしまっているためそこから希硫酸が漏れ出す危険がある。
昨年度は高度を目安で求めたが、今年度はより正確に計測できるようにした。
校舎の屋上に上がり、そこから測量することで正確に求めようというものだ。
具体的には以下のような方法を取った。
1、発射位置と測量地点(屋上)までの距離を求める(水平距離、垂直距離)=(12.0m、7.5m)
2、測量地点から角度を求める。
3、角度から高度を算出する。
上昇時にはほとんど水平方向の移動がないため(強風時を除く)、高度は観測地点からの角度のみを用いる。
角度をxとすると高度hを求める式は次の通りに求められる。
h=12.0+7.5tanx
【実験結果】
まず、観測地点からの角度を記載することにする。
1回目・・・不発
2回目・・・61°
3回目・・・50°
4回目・・・49°
5回目・・・62°
先ほどの式に代入し、それぞれの高度を求める。
1回目・・・0m
2回目・・・25.5m
3回目・・・20.9m
4回目・・・20.6m
5回目・・・25.5m
平均すると、23.1mとなる。
【今年度研究、実験2の事前準備】
上の水素ロケットの研究と並行して行っていたのが『電池』についての研究だ。
研究は去年用いた電気分解装置が分解後マブチモーターを回すほどの電力を持っていたことから始まった。
だが前述の通り分解装置は破損していたため、今年度は新たに下の図のようなものを作り直した。
作成手順は下記の通り。
1、ペットボトルを切った容器に希硫酸を注む。
2、備長炭にドリルで穴を開け導線を通す。
3、備長炭を容器内で固定する。
※左図の硫酸が青いのは見やすくするためではなく
製作中に銅が溶け出して青くなったためです。
基本的には実験の準備はこれで全てだ。
【実験の方法】
我々はまず『炭素が水素や酸素を蓄えることにより「燃料電池」のように発電している』と予想を立てた。
そのため、以下のような実験方法をとった。
1、分解装置に約10Vで電流を流す
2、分解装置の炭素電極の大きさを大きくしに電流を流す。
3、分解装置の炭素電極を銅版に取替え上記の1,2を行う
銅版を陽極にすると銅が溶け出してしまうため最後に行う。
【実験結果】
1
テスターを使用した所、1.5Vを記録した。
モーターを接続した所、数分間の回転を記録した。
2
テスターを使用した所、4.5Vに記録した。
モーターの接続は確認していない。
3
テスターを使用した所、0.8Vを記録した。
また電流を逆にした所、銅版が溶け出した。
以上のことから備長炭に水素が蓄えられていることが分かった。
通常、このような燃料電池は多孔質炭素にPt、Pd、Ni触媒を添加したものを電極として用いる。
【まとめ・考察】
水素の燃焼熱は242kJ/mol(反応後に気体の場合)だ。
これは混合気200ml弱(水素約0.005mol)ならば質量100gの物体を1200mまで打ち上げられるエネルギーに等しい。
だが一体どのぐらいの効率で発射され、どのぐらいの空気抵抗を受けているかは不明である。
水素の有用性を科学雑誌として名高いNewtonの別冊から引用すると
『水素ガスの燃焼エネルギーは同僚の天然メタンガスと比較し約2.5倍にも相当する。
このエネルギーはスペースシャトルの打ち上げにも使われている。』とある(一部改)。
メタンガスの燃焼時には今温暖化の原因として指摘されているCO2が放出される。
一方水素ガスは燃焼後は水しかのこらない。
このことは、水素を『クリーンなエネルギー』として認めるには十分な事実ではないだろうか。
近年では水素に関する研究も進みLiNi5を初めとする水素貯蔵合金などもある。
あと40年ほどで石油の枯渇が叫ばれる中、新エネルギーの重要性はますます大きくなるだろう。
その新エネルギーの1つとして水素の研究は重要に違いない。
【謝辞】
この研究に協力していただいた先生方、爆発、爆音、落下物などでご迷惑をかけた福島高校の生徒の皆様に謝辞を申し上げます。