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【特集】食品異物対策の難しさ(2016.05.10)

食品メーカーと切っても切れない問題、それは異物混入。この記事では過去にあった異物混入事例の振り返り及び、異物対策や分析法について触れていきます。

異物混入事例

 まず初めに、東京都の寄せられる苦情の件数内訳を見てみましょう。

 有症を除くと異物混入の件数が一番多くなっています。

 近年は、食品メーカーの異物混入事件が世間を騒がせたために消費者が敏感となり、普段なら苦情にならないようなものが増える傾向にあります。

 個人的に体験した異物混入は、家庭内においては【髪の毛】【食器洗浄用スポンジ片】、外食では【アリ】【芋虫】です。いずれも幼少期に体験したため申告していませんので、潜在的な異物混入事例はかなり多いと思います。

 それでは、今日の異物混入事例を見ていきましょう。


 2014年 1月 冷凍食品に農薬混入(マルハニチロ子会社のアクリフーズ)
 2014年 5月 ゴム片混入により一部加工食品回収(プリマハム)
 2014年 7月 カルピスゼリー容器にカビ(マルハニチロ)
 2014年 9月 カビ混入(日本コカコーラ)
 2014年12月 即席カップ焼きそばにゴキブリ混入(まるか食品)
 2014年12月 冷凍パスタに虫混入(日清食品冷凍)
 2014年12月 ビニール片や金属片等の異物混入が頻発(日本マクドナルド)
 2015年 1月 ベビーフードに昆虫混入(アサヒビールグループの和光堂)
 2016年 5月 即席ラーメンにゴキブリ混入(寿がきや)
 記憶に新しい事例を並べてみました。ペヤングの一件は消費者がSNSにその画像をアップしたことからかなりセンセーショナルでした。また、それ以降ゴキブリ関連の混入が相次ぎました。これはゴキブリの混入件数が増えたというよりも、敏感になった消費者からの問い合わせ件数の増加やメーカーが初動対応の重要性を意識した結果だと考えられます。    

一般的な異物対策

対策としては大きく2つに分かれます。それは【異物を混入させない】【混入した異物を取り除く】です。


【異物を混入させない】  人に関わる部分は社員教育が非常に重要となります。アクリフーズの一件があったように、悪意のある故意の混入は頻度は低くても排除することが困難です。社員の待遇改善など間接的なリスク除去も求められます。
 工程に関わる部分は食品原料と加工食品、飲料など分野によって異なります。清掃の容易さと密閉型の両立は難しく、トレードオフの関係にあります。

【混入した異物を取り除く】  人に関わる部分は上記同様、社員教育に依存します。
 工程に関わる部分は技術の進歩により高精度で取り除くことが可能となっています。しかし、あまりに検出感度を良くすると、良品までもが不良品と判定されることで歩留まり低下や廃棄ロスにつながる危険性を持っています。

一般的な異物分析手法

 異物は非常に多岐にわたります。金属片やビニール片、紙片、プラスチック片、毛髪、微生物、昆虫、植物片…
 加えて異物は消費者がお怒りの場合が多いので、なるべく早く結果を出さなくてはなりません。
 そのため、異物分析は豊かな経験と知識、各種分析手法を熟知した人が行うのが一般的です。

 ここでは、異物の初動分析に用いられる手法を紹介します。


【目視(実体顕微鏡、光学顕微鏡)】
 やはり異物そのものの観察は欠かせません。特に異物は微小かつ非破壊検査が求められる場合もあり、どういった分析を行えば良いのか最初にじっくり考える必要があります。
 光沢を持っていたら金属、特定の構造があれば何かの部品であるなど仮説を立てます。
 目視に準ずる簡単な検査として、水や溶媒への溶解性や匂い、pHや燃焼試験などもあります。
【元素分析(蛍光X線、EDX)】
 異物の初動分析として欠かせないのが元素分析です。ここでは大きく【無機物or有機物】を調査します。有機物であれば、検出される元素は【炭素】【酸素】がメインになり、無機物であれば【鉄】【アルミ】【カルシウム】【マグネシウム】等が検出されます。
 異物が金属であれば、この段階でステンレス製なのかアルミ製なのかメッキされているのか等の推測が可能と成ります。
【化学結合分析(FT−IR、NMR)】
 目視や元素分析で有機物であることが判明した場合、こちらの分析を行います。
 FT−IRは異物に赤外線を照射することにより、得られるスペクトルからその構造を推定するものです。詳しい原理はここでは省きますが、単物質であればそれが糖類なのか油脂なのかプラスチックなのか化学繊維なのかある程度明確な結果が出てきます。
 以上に加え、遺伝子検査や各種呈色反応など、様々な分析を行いそれらから矛盾のない結論を導き出すのが異物分析です。
 技術の進歩により分析精度は年々向上しておりますが、それでも異物は非常に微小で複合物である場合が多く、分析してもよく分からないものも多々存在してしまいます。

まとめ〜異物混入の争点〜

 以上、食品メーカーは人や工程での対策、分析手法確立など様々な策を講じて異物混入をなくす努力を行っています。しかしながら、完璧はありません。現状異物混入を0にすることは限りなく不可能に近いと思います。

 ここで私が主張したいことはもう少し互いに歩み寄ろうということです。
 現在の構図は明らかに【メーカーvs消費者】になっています。メーカーは工程での混入はありえない、消費者も自分が原因ではないと主張することで対立しています。

 メーカーに言いたい。本当に工程での混入はありえないのか、社員教育は十分なのか、きちんと分析したのか、過去に同様のケースはなかったのか。メーカーは食品を売っているが、そこにはお客様がいて、そのお客様を不快にするなどもってのほかである。お客様が受ける印象も含めて対応しなければならないと。

 消費者に言いたい。本当に自分が原因ではないのか、台所に似たようなものはなかったのか、封を開けっぱなしにして放置していなかったか、子供が何か入れた可能性はないのか。SNSの普及により思っている以上に事は重大化する。異物混入は不快そのものだが、一度冷静になり、メーカーや保健所にまず相談してはどうかと。

 メーカーも消費者も透明性の高い、正確な情報を互いに提示し、真摯に対応する事が今後ますます望まれます。以上です。

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