中国の水環境問題について

 

 

はじめに

文責 太田治希 岡本康世

1.なぜ世界の中でも中国なのか

 近年の中国の発展はめざましく、日本はその恩恵を多分に受けている。しかしその経済規模ゆえに、経済発展を加速させる中、環境問題も地球規模のレベルで影響を及ぼしている。さらに日中の経済相互依存が中国経済の発展に寄与し、その環境問題を深刻化している事実も忘れてはいけない。例えば発展を続ける中国都市部での煤煙は日本へも流れ、酸性雨を降らせている。また日本のスーパーでは、かなりの量の中国産野菜が並べられているが、その野菜を栽培する際に大量の水が使われ、中国での水不足を助長している。このように経済的に日中関係が親密化することでの負の影響は深刻ではあるが、友好関係が中国の環境問題に対してプラスに働きうることも注目しておきたい。その最たる例が、高度経済成長期に日本が直面し、乗り越えていった公害問題である。経済発展をしながら環境問題を解決しなければならない中国にとっては、日本が過去に蓄積してきたノウハウを活かすことができると考えた。

 

2.なぜ水環境問題を扱うのか 

このように深刻な中国の環境問題の中でも水環境問題は早急に解決しなければならない問題である。なぜなら水とは、人間が生きていく上で最も必要な要素であり、生活に大変密着しているからである。我々は水道水を当たり前のように飲む事が出来るが、中国では、きちんとした処理がされておらず、水道水を直接飲む事が出来ない。また中国の水利用目的は、農業、工業、生活、都市用水に分けられるが、経済発展が著しく、13億人の人口を抱える中国にとって、水の利用量、需要量は想像をはるかに超えるほど大きい。その分、水が枯渇し、さらに水の質が悪いために利用出来る水の量が大幅に減ってしまう場合の悪影響も大変大きなものとなる。また、中国において水環境問題の解決は人体への被害をくい止めるだけでなく、経済発展を支える上でも重要な課題である。昨今、「日中水フォーラム」が札幌、北京で開催されたが、中国の水環境問題について日本も大変注目しており、水環境保全に向けた取り組みを行うものとしている。

 

3.なぜ上海・北京・大連の三都市か

我々は訪問先リストで記したとおり今年の夏に、上海、北京、大連を訪れた。

上海は、中国の中で最も経済発展の著しい都市で、中心都市といえる。それに伴い、水使用が増え、水質汚濁が深刻化しており、水環境の悪化が激しい。中国の水環境の現状を目の当たりに出来、どのような政策をたてているか知る事が出来る。

北京は、首都であり、水に関する国家研究施設が数多く集まっている。水環境問題を調べる際、正確で全体的な水環境に関する研究と政策の概要を得る事が出来る。

大連は、日中間の国際協力がさかんな都市である。また、日系企業や、外資系の工場が数多くある事から国際協力のあり方を勉強出来、輸入設備を使った排水処理場や汚水処理場を見学する事で、上海や北京の排水処理のモデル都市になるのではないかと考えた。

 

1章 三都市の現状

1節 上海市

文責 佐藤由季 奈須晴美

【上海】

中国、長江河口南岸、黄浦江・呉淞江の合流点にある中国最大の商工業都市。北京、天津、重慶とともに中央政府直轄市の一つ。横浜市大阪市と友好都市関係でもある。

DATA人口1474万人(戸籍人口)         面積:約6340ku  

気候:温帯気候(日本と同様に四季がある) 年間降水量931.2mm  

一人当たりの水使用量650

 

1.上海市の現状

(1)上海市河川の水質

1.2004年上海市内主要河川水質状況分類

注;この図は、中国で定められている、地表水の水質基準(GB3838-88によるもので、30指標について、汚染の軽い順に5段級に分けて基準値を設けている。T類基準を満たす水質には、汚染は認められないが、X類基準の水質の汚染が深刻である、ということになる。

 

 

上海市水務局、「上海市水資源広報 2004年」

この図は、上海市が市内の主要河川16本の水質を総合評価したものである。この水質総合評価によると、飲用水として使用できるU類、V類基準の河川は10%程度で、X類基準を下回る河川が半数を占めているため、上海の河は全体的に水質が悪いと言える。また、NEDOで伺ったお話から、上海市は、黄浦江という大きな河川を給水源としており、水資源は豊富だが、その水質の悪さから、使用できる水が少なくなっているため、「水質的水不足」と呼ばれている事が分かった。そこで汚染源を、工業排水と生活排水の大きく2つに分けて現状を見ていく。

(2)工業排水の現状

上海市は、中国最大の経済都市であり、発展に伴い工場の数も増えてきた。何年もの間、排水に関する規定がなかったためそれらの工場は、汚水を垂れ流しにし河川を汚染してきた。そのような中、中国中央・上海市レベルの政府が1980年代から、産業公害対策を水環境保全の中心課題として工業排水に対しての法規制に取り組み、1「三同時」制度、2水質汚染物質の排出登記と許可証制度、3水質汚染費徴収制度といった汚染者負担原則の制度を確立した。これによって工業排水の状況は、改善されるようになってきた。

1.上海市工業排水の内訳(19802000年)    (単位:億トン)

 

工業排水排出量

処理水の再利用量

排水基準達成率(%)

工業排水の処理率(%)

1980

13.15

1981

14.11

62.4

・・

・・・

・・・

・・・

・・・

1999

8.52

8.24

89.9

95.7

2000

7.25

10.21

93.2

98.2

上海市統計局『上海市統計年鑑』(2000年)(2001年)より

11980年から2000年までの上海市工業排水の内訳によると、この20年の間に、工業排水排出量はほぼ半減し、工業排水の処理水再利用量、排水基準達成率も改善されるようになっている。また処理率に関しても、98%と非常に高い数値が出ている。

以上の事から、企業が政府によって確立された汚染者負担原則の制度に従い、個々の対策をとることによって、工業排水の状況が改善されている事が分かる。しかし、NEDOでは、企業が不正排水を行っているとの話をきいた。これによって上記でも述べたように、上海市の河川の水質は非常に悪くなっている。このような企業の不正排水については、「2.上海市の課題」で詳しく述べるものとする。

(3)生活排水の現状

2.上海市における生活排水の排出量の増加

 

1991

1992

・・・

1995

・・・

1999

2000

総汚水排出量(億トン)

19.58

20.28

・・・

22.45

・・・

20.28

19.37

その中の生活排水

6.33

6.58

・・・

10.84

・・・

11.76

12.12

上海市統計局『上海市統計年鑑』(各年版)および『上海環境状況広報』(各年版)より

上海では生活排水による汚染が深刻である。上海市の排水全体に占める生活排水の割合は年々高まってきている。経済発展に伴う人口の増加、第3次産業の増加、洗濯機・水洗トイレ・シャワー等の水の消費の多い生活設備の利用増加などを背景に、生活排水の排出量は右肩上がりに伸びている。しかし、その年々増え続ける生活排水の処理に都市のインフラ整備が間に合っていないのが現状である。現状として上海市環境保護局によると上海市では現在45基の汚水処理施設が稼動しているのだが、上海市の汚水処理率は60%程ということで40%程は未処理のまま河川に垂れ流されているのだという。

 

2. 上海市の課題

(1)パイプラインの不足

上海ではせっかく処理場を建設しても処理場と家庭などを結ぶパイプラインが未整備なため、河へ直接排水しているという現状がある。上海市環境保護局によると、とりわけ地理的に点在している郊外においてはパイプラインを引くのに中心部よりも効率が悪く採算も取りにくいのでほとんど整備が出来ていない状況であるという。それにくわえてパイプラインの建設は処理場建設の34倍の資金がかかり、資金不足に悩む上海では敬遠されがちになっているのも実情である。ゆえに資金不足を解消し、整備資金を調達することが重要である。

(2)企業の不正排水への監視強化

上海市環境保護局で伺ったお話によると、上海市では、工業排水の管理は市と省で分けられており、1000t以上の汚水を排出している企業に対しては、月に1回で排水基準を達成しているかどうかの調査を実施しているそうだ。しかしNEDOでは「2つの排水口」と呼ばれている問題があると伺った。それは企業が、政府からの目を逃れるために、調査が実施される時だけ技術の高い処理施設を使用し、普段は別のパイプラインから汚水を垂れ流しているという事であった。「1.上海市の現状」で述べたような、工業排水の改善されているデータが出ている裏では、工業排水による水質汚染が進んでいるのである。これは、上海だけに限らず中国全土の企業が持つ問題点で、常時監視できる体制が必要である。

 

3. 新しい取り組み

上海市環境保護局によると、上海市では新しい取り組みとして、税収を増やすことで資金不足を補おうと下水料金の見直しを検討しているそうだ。他に市民の環境意識を高めるための宣伝・教育にも力を入れているという。また局員の方に、2004年から重点的に取り組んでいる、蘇州江モデル事業を見せていただいた。これは、雨水処理や、植物浄化など新しい処理技術を市民に紹介するもので、公園のような外観であった。更に景観の良さから、その周辺の地価が上昇する事で、経済効果もあるとおっしゃっていた。このモデル事業の他に、蘇州江の付近に既に3つあるそうで、今後更に9つの施設を建設する予定だそうだ。

 

4. まとめ

上海では、資金不足によるパイプラインの不備にはじまるインフラ整備の遅れや、「2つの排水口」の問題などから、生活排水や、工業排水による汚染が激しい。上海は経済発展が著しく、全体的に排水量が増加傾向にあるので、これ以上汚染が進まないように対策を講じていく必要がある。上海を訪問して、上海市は経済発展の方に、重点が置かれていると感じたので、環境保護の政策優先順位を高め、政府から環境意識を高めていかなければいけない。

 

2節 北京市

文責 辻村園恵 橋本典子

【北京】

 中華人民共和国の首都。国家主要機関が多く置かれている。故宮・万里の長城をはじめ、名所旧跡が市内に散在する。路地裏には下町の情緒を残す一方で、2008年開催の北京オリンピックを控え、高層ビルが立ち並ぶなど、変貌を遂げ続けている。

DATA  人口:1383.3万人           面積:16,808ku

気候:暖温帯半湿潤気候(四季の区別がはっきりしている)

年間降水量:640mm        一人当たりの水使用量:290(2000)

 

 

1.北京市の現状

(1)資源的水不足

北京市は華北省(中国大陸の北東)に位置し、乾燥した気候に属しているため、年間降水量がわずか640mmしかない。しかも夏の降水量が年間の70%を占めており、一年を通した水分の配分には大きな偏りがある。また、19992003年は干ばつに見舞われ、北京市は安定的な水の供給が非常に困難な状況にある。

(2)水源の汚染

北京市の水源としては主に2つのダム、官庁ダムと密雲ダムがある。20044月に北京市内で行なわれた「日中水フォーラム」の北京市水利局代表の報告によると、かつて最大の年間水供給量があり、北京の最重要水源として利用されていた官庁ダムは、水質悪化により、1950年代の25分の1まで減少、一方、密雲ダムも当時の11分の1にまで減少している。特に官庁ダムでは、上流の汚染がひどいため、1998年から飲料水として利用することができず、工業用その他の用途として利用されてきた。また、上流には多くの住民を抱えており、経済発展に伴い水使用量が増加したことなども水供給量を抑えつける原因として挙げられる。

(3)水道料金の高騰 

北京市の水道料金は、中国全土でも非常に高くなっており、「下水道年鑑2005年版」によると、2003年だけでも1㎥あたり2.9元から4.07元へと約1.4倍値上げさた。これは、水源確保や下水の整備によるものと考える。また今後、6元まで値上げされることが予定していることから、更なる高騰が予想され、市民の生活を脅かす要因になる。

 

2.北京市の課題

(1)水量の確保

@南水北調計画の完遂

2.南水北調計画ルート

『中国環境ハンドブック2005-2006年版』p84より

長期的視野から見たときに、将来は南部の豊富な水資源を北部に運び利用する「南水北調計画」が実行中である。これは毛沢東の時代から構想があり、計画まで約50年を費やした超国家的プロジェクトとして知られている。このプロジェクトでは、東、中央、西の合計3本のルートの建設が計画され、このうち中央ルートによって長江の水が北京市内に入ってくることになる。現在、東、中央の2ルートがすでに着工しており、NEDO現地スタッフの方によると、工事は順調に進行中とのことだった。

北京市へ入ってくる中央ルートは、漢江の丹江口ダム〜河南省南西部を通り、北京市・河北省に入ってくることになっている。20031230日に工事が始動されたこのルートの2010年の完成と同時に、北京市民が長江の水を飲めるようになる。また、完成後には、諸施設の円滑な管理・運営の問題、また工事に伴う生態系への影響やそれに対して十分な環境調査が行なわれているかなど、様々な問題がある。その一つに、南水北調に伴う住民移転問題がある。プロジェクトに伴う住民の移転は、全体で40万人に上る見込みであり、(北京市、天津市、湖北、河南など5省)北京市内の南水北調計画に伴う強制退去に関する報告はまだ見られていないが、湖北省では丹江口市周辺の住民328000人が移転対象となることが明らかになり、各地の住民の反発が相次いでいる。

A官庁ダムの汚染防止

一方、現在の水源としては北京市郊外には2つの大きなダムがある。30億立方の貯水能力をもつ密雲ダムと10億立方メートルの供給量をもつ官庁ダムである。そのうち官庁ダムはダム上流の汚染によって現在、取水不能である。53億立方の供給量が不足する北京市では官庁ダムの改善、汚染防止が不可欠である。しかし、NEDO現地スタッフの方によると、官庁ダムの水は飲めるようになったと聞くということから、水質改善の効果は上がっているようだ。          

3.水位の低下した官庁ダム

『中国環境ハンドブック2005-2006年版』p82より

B周辺省からの水の調達

 NEDO訪問の際、北京市のある河北省に隣接する山西省から3000万㎥の水を調達したというお話を伺った。「中国環境ハンドブック2005-2006年版」によると、20039月、山西省大同市にある冊田ダムから官庁ダムに向かって水を流されたことを最初の事例として山西省の他に河北省、内蒙古自治区からの水の調達も行なわれている。

(2)水の管理

@洪水からの防災

北京の洪水は一度起こると、およそ2ヶ月の間、何十万人の市民に影響を与える大規模である。そのため市民の防災管理と洪水を起こさないような運河などの水の管理が重要な課題として挙げられる。

Aオリンピック行動計画の実行

短期的視野からみると北京市は2008年に北京オリンピックをひかえ、インフラなどハード面に関しても早急な対策がもとめられている。特に水に関して現在、北京市は「オリンピック行動計画」を策定し、水利インフラの都市化、郊外地区の水利インフラの整備、市内河川湖の水質改善・保全などを目指して重点的に工事を進めている。

B地下水の管理

また現在、北京市では不足する地表水を補うために、地下水を水源として利用しているが、過剰摂取によって地盤沈下を引き起こす危険性がある。以下に示すグラフによると、過去19591981年の22年間にその地下水が20億㎥も減少していることがわかる。このため北京市では地下水の利用に関して規制をかけて管理している。

4.北京市地下水下降略図

『中国環境ハンドブック2005-2006年版』p83より

C節水規則

 北京市では、20055月に市民の意見を直接取り入れて「北京市節水規則」が改正された。これまで、北京市では節水によって水使用量を減少させてきていることから、今後節水による効果に対し、より一層の期待が膨らむと考えられる。

 

3.新しい取り組み

水利科学研究院における植物浄化の研究

我々が訪問した北京市水利科学研究院では、中国全土に渡る水環境に関する研究がされている。今回の研修では、水生植物を用いて水中の有機物を取り除く生物浄化の研究の様子も拝見させていただいた。スタッフの方のお話では、この生物浄化の研究目的は、都市部の生態改善のために、副作用のない植物を利用した研究を進めて、湿地を作るということだった。また、中国西部の乾燥した土壌を改善し農地化することを目指していた。

(以下の写真は実際に研究が行なわれていた植物 左からアシ、ハス)

    

4.まとめ

 中華人民共和国の首都である北京市はその水環境を考えたとき、地理的に降水量が少ないこと、また経済発展に伴い主要水源の汚染が進んだことにより資源的水不足の状態にある。今後は、現在進行中の水量確保するための「南水北調」計画や節水政策・技術によって水不足の改善が期待される。

 

3節 大連市

文責 高橋由希子 山口小百合

大連

1978年に始まった改革開放政策の一環として1984年に経済技術開発区に指定された。 現在、2000以上の日本企業が進出し,在留邦人は2,400名以上に上る。これは上海、北京、広州に継ぐ規模である。また最近は韓国企業の進出が著しい。

DATA】 人口:約590万人    面積12574ku

気候:温暖帯大陸性モンスーン気候(四季がはっきりしている。年間平均気温は10℃前後)

年間降水量931o   一人当たりの水使用量:約624

 

1.大連市の現状

(1)資源的水不足

    大連の年間降水量は700oであり京都市の年間降水量1814oの年間降水量と比較しても、非常に少ないとわかる。また、雨は主に789月に降るため年間を通して一定の降水量を得られない。さらに訪問した大連自来水廠によると、2005年大連市の浄水量は出来る限りの浄水をしても135tであり、一方用水量が119tである。このため、用水量に対し浄水量に余裕がないとわかる。

(2)水供給と水質

水供給はほとんどダムからされているためダムが多く建てられている。ダムの数は大中小合わせて261個あり、そのうち大は7個、中が16個である。水源は碧流(びる)河ダムと英那(いんな)河ダムで水源の質は国家2級、3級と良好である。水源の質の保護のため、上流には保護区を設けて規制をかけている。また水源から大連市までの距離が遠距離であるため、パイプラインを通して引水している。パイプラインを用いているので、水源から市内へ引水する際に汚染はされないので大連市の水質は良好である。

 

 

 

(3)汚水処理場不足

3.汚水処理状況

 

2001

2003

都市汚水処理場数(ヶ所)

5     

5

汚水処理能力(t/日)

370,000

370,000

汚水処理量(万t

8,768

9,221

そのうち生活汚水処理量(万t

8,138

8,575

都市生活汚水排出量(万t

13,295

12,780

都市生活汚水処理率(%)

61.2

67.1

                           環境年鑑より

現在大連市には汚水処理場が5ヶ所あるが、生活汚水処理率が2002年は62.1%200367.1%とあまり改善されておらず依然と低い状態にある。このことから、今後、汚水処理場を作る必要性があることがわかる。現在、大連市では5箇所の汚水処理場が建設中でありこの5ヶ所の汚水処理場を建設することによって汚水処理率80%を目指している。工場排水は大きな工場では建設の際に処理場の設置が義務づけられており、その工場自身で処理を行わなければならない。一方、小さな工場では処理場のある大きな工場に依頼している。また、外資企業は地理的に集結しており、2ヶ所の大きな処理場で一括処理を行っている。

 

2.大連市の課題

(1)郊外のパイプラインの敷設

@水道利用人口

訪問先の大連市自来水廠によると、2005年の人口は590万人であり、うち水道利用人口は260万人であった。残る330万人は井戸水などから水を得ているという。しかし財団法人茨城県薬剤師会公衆衛生検査センターによると、井戸水は窒素,有機物などが異常に多かったり大腸菌が検出されたりその他の細菌が増えていたりすることがあり,このような場合には,飲用には適さないことになる。

A降水量

4.1961年〜1990年の30年間の平均降水量

           財団法人茨城県薬剤師会公衆衛生検査センターより

 また表4より、大連市の降水量は多い月と少ない月の差が激しい。井戸水の水量は降水量により大きく左右されるため、水供給が不安定になる。

井戸水では水質的にも水量的にも不安要素が大きいため、郊外へのパイプラインの敷設が求められる。

B海への工業排水垂れ流しの厳重な取締

中国環境年鑑(2001,2003)によると現在、大連では工業排水の海への直接排出量が深刻である。このため水質状況が悪化し、赤潮の発生も問題となっている。この直接排出により海洋生態系を脅かし今後、国際的な環境問題につながる恐れもある。                 

5.海への汚水直接排出量

 

2001

2003

上海(2003)

総括工業企業数(社)

588

533

1655

工業廃水排出総量(万t)

31874

31889

61112

そのうち海への直接排出量(万t)

29276

28965

14830

                         中国環境年鑑より

このように大連の海への直接排出量は2001年に比べて2003年には減少し、改善されているが2003年度の上海の状況と比べても分かるように、大連の海への直接排出量はまだまだ深刻であることが分かる。

中国環境年鑑(2003)によると、この工業排水に対する対策の一つに、省・自治区・直轄市にある、海に直接、または間接的に排出する企業や事業、特殊な性質の汚水を排出する施設(核施設・機密施設)に対して「水汚染物排出許可証」の発行がある。この汚染排出許可証を受領するためには、汚染物の種類・数量・濃度、水汚染防止に関する技術資料を提出しなければならない。これにより汚染物排出濃度の制御管理、汚染物排出総量制御を目的としている。また、巨大プロジェクトを実施する際も許可証が必要である。この「水汚染排出許可証」は国務院の環境保全行政主管部門が発行しているさらに、現地の環境保全行政主管部門は、管轄区域内の『排出許可証』を受領した企業と事業体に対して現場での測定・検査を実施する権限を有している。これにより、企業や事業体が虚偽報告や違反をした場合、許可証の取り消し、警告、または罰金という罰則が課せられる。

 しかし、このような制度があるにも関わらず海への工業排水の直接的な排出量は改善されておらず、今後さらなる改善策が必要とされる。

 

3.まとめ

大連市は外資系の企業が多く存在し、汚水処理場や浄水場でも多くの輸入設備が導入されていた。そのため汚水処理の技術などは日本とほとんど変わらなかった。しかし、大連では発展と共に変化すると予測される水問題にも量、質の両面において十分な処置が必要である。

 

2章 三都市に共通する問題

文責 岩崎 優輝

 上海、北京、大連の現状について述べてきたが、この三都市には共通する3つの解決すべき主要な問題があると考えた。

 

1.不適切な排水処理

 まず一つ目の問題は、「適切な排水処理ができていない」という事で、三都市に共通する大きな問題である。第21節から3節でも述べてある通り都市ごとに状況は違うが、生活排水・工業排水共に適切な排水処理ができていない。生活排水の面では、年々増え続ける排水にインフラ整備が間に合っておらず、処理が不十分なまま河川に垂れ流されているという現状がある。この主な原因としては処理場の数が足りない・汚水の処理技術が低いという2点が挙げられる。また工業排水の面では、企業による汚水の海への不正な垂れ流しが深刻で、「水汚染物排出許可証」の発行など取り締まる制度があるにも関わらず、工業排水の直接的な排出量は改善されていない。このように政府の規制も上手く効果をあげる事ができず、処理場の量・質共に不足が深刻である今、隣国である日本の行政・民間からのアプローチが考えられる。

 

2.資金不足

 次に、資金不足という問題も浮上してくる。前述した適切な排水処理ができていないという事においても、「資金不足」という問題が絡んでくる。規制や罰則の制度の甘さという面もあるが、資金不足による処理場の不足が排水の垂れ流しを促進させているとも考えられる。また、パイプラインの未整備問題も、資金不足によるものであり、早急に解決しなくてはならない課題である。

 

3.水資源の不足

さらに、「水不足」という問題も挙げられる。都市によって資源的水不足であるのか、水質的水不足であるのかという点で若干の相違はあるが、三都市の現状で述べられている通り人口に対して水は確実に不足している。そこで、全てを上下水処理施設や南水北調などの対処療法的な政策に頼るのではなく、人々が節水をして水を大切にする事も必要である。

以上3つの事から、第3章ではこの三都市に共通する主要な課題を解決するために、日本は何ができるかという日本からの視点で解決策を提言していく。

 

3 解決策

1節 リユース

                              文責 張 沖

これまで述べてきたように、中国都市部では資金と水処理設備が不足している。日本の水道設備は更新時期を迎え、より高性能の設備に切り替わりつつある。しかし、水処理設備がまだ十分に使用可能なため、それらを中国に移転し、リユースすれば、資金と設備の問題を解決できると考えた。しかし、訪問先のヒアリングによると、上海、北京、大連の三都市ではリユースが望ましくないことが明らかになった。都市部では、リユースより世界一流、高性能な設備を求めているのである。

それら三都市では、経済発展のペースが早く、中国の代表的な都市であり、資金の融資先が想定できると言われている。また、中国では、年々環境規制が厳しくなってきている。そのため、リユースされた設備では近い将来、排出基準を達成できなくなってしまうので、水処理設備のリユースは難しいと考えられる。

過去に公害問題を克服した日本の経験を生かし、中国が抱えている資金と処理設備の不足という問題を解決するために、求められる環境ビジネス、国際協力の視点から考察していきたい。

 

2節 水環境ビジネス

         文責 松尾由香

中国で適切な水処理を行うためには、「必要とする技術を使用できる環境」を整える必要があると言える。そこに日本がどのように協力できるのかを考えた時、まず第一にハード面としての「設備」が必要になる。しかし、これまで述べたように中国は資金不足の問題を抱えている。そこで私達は、日系の企業がこれまで培ってきた技術やノウハウを活かして、環境ビジネスという形で中国の求める設備を提供できるのではないかと考えた。深刻な環境問題を抱える中国の拡大する環境ビジネス市場で、日本の持つ既に一般化し商業化した技術を利用すれば、中国の環境問題にも日系企業にもプラスの効果を得ることが出来るといえる。

 

1.中国環境ビジネス市場の成長

現在中国政府は、環境技術開発を促進し、環境対策投資資金の不足問題を解消するため、これまでの環境規制強化とともに、投融資制度の改革と民間資金(内外資を問わず)導入の奨励などの経済的手法による環境対策の制度整備に政策の重点を移している。つまり、環境事業を収益の上がるビジネスとして環境事業の主体を政府から民間に譲ろうとしているのである。図5が示すように、2000年時点で産業環境対策投資における政府の役割は後退し、企業の役割が大きくなってきている。

 

2.日系環境ビジネスの中国進出への可能性

一方、日本では1967年の「公害防止対策基本法」の成立などを契機に環境問題への関心が高まり、1970年以降公害問題や都市環境対策に積極的に取り組む動きが見られ始めた。日本を始めとする先進諸国では、国内生産物か輸入品かを問わず、国内の生産や消費に影響を与える先進国の環境規制基準は膨大な数になっており、その厳しさも年々増してきている。これらの規制により先進諸国では環境ビジネス市場が作り出され、日本でも環境問題を解決するための技術が開発されビジネスを形作る環境産業が形成された。

これらの投資により、先進国の抱える従来の環境問題はかなり解決されてきた。そのような中で日本を含め先進国の環境ビジネス市場は飽和状態になりつつある。供給過剰で各社の経営は厳しさを増している状況なのである。

 

3.水分野の日系環境ビジネスの現状

実際に日本、アメリカ、ヨーロッパの環境関連の企業が、環境ビジネス市場への進出を加速している。ところが水処理のビジネスで進出している日系企業の多くは、日系企業の工場の排水処理事業への進出がほとんどであることに気がついた。具体的にはまず、北京、上海、広州に拠点を持つ富士化水工業は松下、資生堂、ソニーなど多くの大手日系企業工場の廃水処理施設を手がけている。栗田工業では水処理薬品、水処理装置の販売、メンテナンスを行っており、主に中国のWTO加盟後に増加した日系の電子機器工場のために半導体や液晶向けの水処理装置などの製造を行っている。オルガノでは中国を水処理施設の製造拠点として日系企業向けに販路を広げる一方で、日本市場向けの用水、排水処理装置の輸出拠点としても位置付けている。その他中国に進出している日系の水環境ビジネス企業は、ほとんどが日系企業のための進出なのである。

一方中国のインフラ市場への進出にはフランスやドイツなどの企業が多く、日系企業は出遅れている状況であると言える。

 

4.日系環境ビジネス企業の解決すべき点

 このような日系の環境ビジネス企業が解決すべき点は主に3つ挙げることが出来る。

一つ目は、日本の設備は高コストであることである。日本の環境ビジネスは官需が多いためコストダウンの意識が薄く、また日本の設備は中国の規制で求められるより、はるかに技術的な質が良いため、コストが高くなっている。そのため中国の環境市場での競争力が弱い。また、日本人駐在員が多いために現地企業にくらべてコスト高になっていると言える。コストダウンのための部材の現地調達では、信頼できる調達先の選定が難しい。よって、求められている技術を中国の市場にあったコストで提供できるビジネスモデルの構築が必要なのである。訪問したNEDOの方のインタビューでも、日本以外にも技術力のある国はたくさんあるため、中国での環境ビジネスではコストダウンが一番重要であるということであった。

二つ目は、中国人スタッフに権限を与えないという人事の問題である。現地法人の権限が小さく、日本人をトップにすることが多いため優秀な人材が集まりにくいのである。画一的な給与体系が優秀な中国人を引き付けないという問題もある。また日系企業は経営判断が遅く、経営判断の早い欧米の企業に先を越されがちである。このことからも中国人スタッフの活用を重視する必要があるのである。実際に、日系企業のなかでも環境ビジネスで比較的成功している4荏原製作所では、「現地の権限が増えてから経営判断が早くなった」と実感している。更に中国では現地市場に詳しい現地企業との提携が不可欠であると言える。NEDOでのインタビューでも、現地のパートナーの重要性は強調されていた。その先進的な例としては、20054月に日本のプラスチックパイプメーカーとして初の中国進出を果した積水化学工業がある。中国最大手の強化プラスチック複合管メーカーの永昌社の経営権を取得したのである。永昌社は同事業においてシェアNO1で、海外への輸出も盛んである。このような永昌社の販売実績、営業力をベースとして製品、技術の強みを持ち寄り、市場優位性をより強固なものにするのがねらいであるという。2000年に外資企業法が改正され外資に国内市場が開放されてからは、中国側パートナーとのトラブルというリスク回避のために、100%独資で進出する日系企業が増えている。しかし国内市場を販路とし、中国の政策と密接に関わる環境ビジネスでは、現地企業との提携で相手の市場経験を活かした市場開拓という視点が重要であると言える。

三つ目は、せっかく持っている高い技術も、中国語による情報伝達が少ないために、中国でなかなか認知されないという問題である。また、中国語を話せても、中国の事情に精通していなければ、的確に情報伝達できないのである。NEDOでもモデル事業やモデルプラントによるPRの大切さを強調しており、そのような事業へ助成金を出すなどして、企業のコストダウンにも寄与している。

 

 

5.中国の環境ビジネス市場の問題点

日系の環境ビジネス企業が解決すべき課題は多いが、中国市場側にも問題は多い。例えば許認可・規制の問題である。中国では工場建設などの際に、許認可の担当部局が細分化されており、手続きが煩雑になる。担当者によって、許認可の基準が異なる場合もある。また、日系企業など外資系企業には環境規制が厳しく適応されるのである。このような現状はリスクとして捉えられ、外資系企業は対中ビジネスで慎重にならざるを得ないのである。しかし5日本リファインなどでは、中国語で地方政府の担当者とじかに意思疎通できる中国人社員が許認可や規制への対応を一手に引き受けていたり、米系企業では内部で中国地方政府の信用ランキングを作成するなどして市場開拓を進めている。

 更には知的財産権を始めとする、商習慣の違いも問題となる。契約を一方的に破棄されたり、コピー製品が出回り知的財産権が侵害されるなど、ビジネス環境が整備されていない面があるのである。欧米企業とはライセンスによる技術提供等によるビジネス展開が出来るが、中国では技術対価を払ってもらえるライセンスの受け皿が欠如していると言われる。NEDOでのインタビューでは、地場企業に安価なコピー商品を作られることは現状だが、コピー商品は非効率であったり技術的に低いということである。やはり日系の強みである、高度な技術力を活かしていくべきであるといえる。

 

6.まとめ

以上のようなことから、日系企業の技術力と中国市場の接点を見つけだす事で、日系企業の持つ技術力をビジネスとして中国のインフラ設備に活かせると言える。人の現地化、技術の現地化、資金の現地化という広い意味での「現地化」推進という競争戦略、高度な技術力という強みを活かせる事業戦略が必要なのである。そのことによって中国の環境と日系企業がWin-Winの関係を築け、中国が必要とする設備を提供できるのである。

5.企業の汚染対策資金調達の構造変化

富士通総研経済研究所より<図表1> 企業の汚染対策資金調達の構造変化

 

3節 国際協力

文責 小峪悠輔

次に中国が必要とする設備を使用できる環境を整備する上で、設備としてのハード面からの環境ビジネスに加え、ソフト面から、つまり国際協力による技術者の育成が必要であると考えられる。現在、日中間において技術専門家の派遣や研修員の受け入れなど、人材の育成が行われており、数多くの成果をあげている。

6.研修員受け入れ実績

 

H 8

H 9

H 10

H 11

H 12

H 13

H 14

H 15

H 16

H 17

合計()

中国

14

21

26

37

42

42

32

 

47

39

300

その他の地域

36

46

43

53

68

52

48

47

31

34

438

H15の数字は、SARS(重症急性呼吸器症候群)の影響により中国からの受け入れを中止したことによるもの                   

CLAIR :()自治体国際化協会より

特に盛んに人材育成の国際協力がなされている例として、北九州市と大連市の事例が挙げられる。

 

1.北九州−大連の事例

 北九州市は環境国際協力を市の主要な政策として位置づけ、事業を実施する機関として

()北九州国際技術協力協会(通称:KITA) 」を設立しており、KITAはこれまでに数多くの研修員の受け入れ、技術専門家の派遣を主な協力事業として行ってきた。

られる。

グラフ1. 海外研修員受け入れ実績

KITA:()北九州国際技術協力協会より

北九州市は、大連市と友好都市提携を結んで以来、長年にわたって交流を進めてきた。現在では、北九州市の発案から始まった「大連市環境モデル地区整備計画」へも協力を実施している。「大連市環境モデル地区整備計画」事業がもつ大きな特徴は、自治体レベルの環境協力が政府レベルの協力案件に取り上げられたということである。そこで自治体は、JICAと共同調査を行うことになり、ODAの枠組みの中で自治体が持つ経験やノウハウを効果的に移転することが可能となったのだ。また、ODA案件として認められたことで、今後のプロジェクトに対し円借款の供与が決定している。このような北九州市の協力は、政府から「中国国家友誼賞」を受賞するなど、中国から高い評価を受けている。

 

2.今後の国際協力

今後も中国に対しての国際協力は、ソフト面の支援として重要な役割を担っている。ここで重要なのは、援助をする側は援助を受ける側のニーズに即した支援を行うということである。北九州市と大連市の事例を含め、日中間の国際協力は数多くの実績を残している。しかし中国を訪問した際のインタビューでNEDOは、二つの不足している点を挙げた。

一点目は、日本の協力で機械設備を設置しても、それを運営・管理する人材が不足しているということである。中国が求める技術よりはるかに高い技術を移転しても、それを使いこなせなければ意味がない。機械設備が設置された後も中国側が自らそれを運営・管理し、さらにその技術を国内に普及させることが重要である。そのためには、日本側では中国側が設備を十分活用できるようにアフターケアや教育訓練を行う必要があると言える。

二点目は、政策に関わることのできる人材が足りないということである。先に述べたように、日本を含む海外からの技術に加え、自国で開発された技術を国内で普及させるということが重要であり、それを推進するための制度づくりが必要になってくる。また、ヨーロッパの環境先進国といわれるような国が独特の法規則をもっているように、中国でも環境に対する法を整備することは有効であると言える。環境ビジネスに関しては、中国市場での許認可・規制の問題、知的財産権等の法制度の改善を進めることが大切である。これは、中国だけでなく日本にも利益をもたらす市場の構築を推進することができる。これらの制度づくりや法整備に対して、政策提言できる人材の育成を強化することが求められている。

 

3.まとめ

日本のほかにヨーロッパ、特にドイツは中国に対しての協力を積極的に行っている。しかしNEDOの話で、ドイツからの協力のほとんどが、能力の育成・向上を行うキャパシティビルディングを中心とするソフト面のみにとどまるということに対し、日本の協力はソフト面に加えハード面での協力も伴うということだった。ハードを直接提供するということは、資金不足の問題を抱える中国にとって非常に有効な手段である。このような日本のもつ特徴を生かした協力を継続していくことが重要であろう。援助を行う側が、一方的に不必要な支援を行っても意味がない。中国は日本がもつ技術の情報を理解し、日本は先に述べたような中国が求めているニーズを十分理解し、双方が納得できる援助を行うことが必要なのである。相互の理解のもとに協力が進み、互いの国がともに発展していくことで、国際協力の意義を見出すことができるであろう。

 

4節 節水技術

             文責 岡本康世 野村佳美

水資源の不足という問題点においては、節水という解決策が挙げられる。中国は水資源不足の国である。一人当たり水資源は約2200㎥で、世界の平均レベルの4分の1にすぎない。にもかかわらず、発展途上であることから、工業化、都市化が進み、工業用水や生活用水の利用が著しく増えている。下の表7で示したように、生活、工業用水の廃水量が年々増えてきており、このまま、廃水排出量や無駄な水使用が増えていけば、中国の水不足はさらに深刻になる。節水を行う事は、水不足を解決するための根本的な方法である。

また、NEDOで頂いた資料「中国節水技術政策大綱」[1](以下「大綱」)によると、中国の灌漑水の利用は未だ4050%である。工業生産額(付加価値ベース)1万元当たりの取水量も先進諸国の510倍で、節水の潜在力は極めて大きい。そして、「節水と効率の高い水の使用は水資源の需要矛盾を緩和する根本的な道筋である」というように、節水が中国の水資源不足の解消につながることを示唆している。

「大綱」では、下の<資料>で示したように、様々な節水技術について詳しい内容が述べられている。中国政府や国民がこれらの技術を活用し節水の発展に努めることで、中国の水不足の解消につながっていくことを期待する。                                                                                                                                                

 

7.中国の年別廃水排出量

 

 

    廃水排出量 (億t)

 

生活用水

シェア(%

工業用水

シェア(%

2000

    221

        53.2

        194

      46.8

2001

        230

        53.2

        203

      46.8

2002

        232

        52.9

        207

      47.1

2003

        248

        53.8

        212

      46.2

2004

        261

        54.2

        221

      45.8

       

 

 

 

 

 

 

 

 

(出典)中国環境保護総局Web版 「2004中国環境状況公報」

 

(資料)

工業用水の節水技術

工業用水の反復利用技術

冷却節水技術

熱エネルギーと製造法システムの節水技術

洗浄節水技術

工業給水と廃水処理の節水技術

海水の直接利用技術

節水製造法                等

都市生活用水の節水技術

節水型器具の普及

都市の再生水利用技術

雨水の直接利用技術

都市の水道管網の漏水検査技術

公共給水企業の自己使用水節水技術

都市行政の環境節水技術

都市の節水情報技術            等

節水技術を発展させる保障制度

節水法制建設と行政管理の強化

節水技術発展の奨励メカニズムと制限メカニズムの確立

節水技術の研究開発と普及サービスの体系の確立

  (「大綱」を参考に著者作成)

 

おわりに

文責 岩崎優輝 田中健太郎

我々は今回のレポートで上海、北京、大連という三都市の現状をまとめ、これら三都市の主要な問題点に対する解決策を提示してきた。これら三都市は共通して「不適切な排水処理」「資金不足」「水資源の不足」という問題を抱えており、これらの問題を解決するために「不適切な排水処理」「資金不足」に対しては環境ビジネス・国際協力、「水資源の不足」に対しては節水という解決策を提示した。

中国は、世界の中で最も多い人口を抱えつつ、近年急速な発展を遂げている。そして、環境面や経済面など様々な面において、日本だけでなく世界に対し強い影響力を持つ大国になった。このような中国の重要都市である三都市の水問題は、もはや中国政府や中国の各自治体だけで解決できる問題ではない。だからこそ、こういった問題を解決するためには、我々が提示したような行政や民間、さらには中国国内・国外の枠組みを越えてこれらが連携した取り組みが必要となるだろう。

中国の水問題は、各都市や地域によって違いがある。しかし、こういった各都市の問題を少しずつ解決していくことが、最終的には中国全土の水問題を解決することにつながるのである。日本にとって隣国である中国の水問題に協力するということは、自国の経済水域の水質を守るという環境面や、環境ビジネスを進出させるという経済面からみてもメリットが大きい。したがって日本は今後、中国の水環境問題を解決させるための一翼となれるよう、多方面から中国と関わっていかなければならない。

 



1 「三同時制度」は、1973年の「環境保護と改善に関する若干規定」(試行)によって初めて導入された中国の特色ある管理制度である。その内容は、新設、改造、増設に関するいかなる建設事業においても、汚染防止のための施設が主体工事と同時に設計、建設、操業されなければならない。李(1999)P101

 

2汚染物質に関する登記制度は、1982年の「汚染費徴収臨時弁法」、許可証制度は1988年の「水汚染物排出許可証管理臨時弁法」によってはじめて導入された管理制度である。登記制度とは、汚染物質の排出組織は国家規定により、所在地域の環境保護行政機関に汚染物の排出施設、排出種類、排出数量、排出濃度、処理施設、及びその他関連技術資料を登録する制度である。許可証制度とは、汚染物質汚染物質の排出組織は、環境保護行政機関に許可証を申請し、許可証に定められる条件にしたがって、汚染物質を排出する制度である。李(1999)P103104

 

3水質汚染費徴収制度とは、水質汚染物質を排出する場合、排出基準の達成いかんとは関係なく、水質汚染費を徴収する制度である。排出基準を超えて、水質汚染費を排出する場合、水質汚染費だけでなく、基準超過汚染費も徴収されることになる。李(1999)P105106

 

4水処理、ゴミ処理、大気汚染防止装置事業など幅広く環境ビジネスを行っており、ODAが関わる受注プログラムも行っている。

 

5蒸留をコア技術として、精製リサイクル事業、環境エンジニアリング事業を行っている。

 

参考文献

上海市水務局(2004)、「上海市水資源広報 2004年」

上海市統計局(200020012002)、「上海市統計年鑑」(各年版)、中国統計出版社

上海市環境保護局、「上海環境状況広報」(各年版)

李志東(1999)「中国の環境保護システム」東洋経済新聞社

『下水道年鑑2005年版』 水道産業新聞社

『中国環境ハンドブック2005-2006年版』第U部 1.中国北部の水危機 高見邦雄

蒼蒼社 中国環境問題研究会編 20041210

稲垣清著『図解 中国のしくみ WTO加盟後と新指導部体制対応版』中経出版 2005年4月23日第4刷発行

雑誌 『日系エコロジー』 第一特集「中国を汚すな!動く日系企業」2005年5月号

中国節水技術政策大綱資料

参考URL

http://www.waterforum.jp/jpn/china_japan/backnumber/what.htm

 「日中水フォーラム」2005年 1227日 1741

http://news.searchina.ne.jp/2005/0419/national_0419_007.shtml

「中国情報局」2005年 127日 14:05

http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2005100900112&genre=E1&area=Z10

「京都新聞」 2005年 1210 22:50             

http://www.people.ne.jp/2004/01/02/jp20040102_35488.html

 「人民網日文版」 2005121923:58

http://www.jica.go.jp/china/cooperation/suiri/water/pdf/01_04.pdf

「日中合作JICA中国水利人材養成プロジェクト 中国の水に関する情報」200512200:08

http://www.zhb.gov.cn/japan/env_info/3_5_2003_81.htm 「中国環境年鑑2003年度」 2005121723:06

http://www.jbic.or.id/en/JBIC」 2005121800:10

http://www.china.org.cn/japanese/jp-shuzi2004/sh/htm/p36.htm「チャイナネット」 2005121800:33

http://www.ibaraki-kensa.or.jp/top.htm「財団法人茨城県薬剤師会公衆衛生検査センター」 2005121800:55

http://www.zhb.gov.cn/japan/env_info/3_5_2001.htm 「中国環境年鑑2001年度」 2005121916:50    

http://www.npec.or.jp/northeast_asia/environmental/page02.html

北東アジア環境情報広場」 2005121918:32

http://www.21ccs.jp/china_report/eco_report.html「21世紀中国総研」 200512811:15

http://www.mmjp.or.jp/sososha/tizu06.pdf「対中進出地図 環境関連機器」 200512920:22

http://www.ebara.co.jp/「荏原製作所」 200512922:09

http://www.sekisui.co.jp/「積水化学工業株式会社」 200512923:24

http://www.n-refine.co.jp/index2.html「日本リファイン株式会社」 2005121019:09

http://www.clair.or.jp/j/sien/kouryu/first/jisseki.htmlCLAIR :()自治体国際化協会」 2005121617:58

http://www.kita.or.jp/KITA:()北九州国際技術協力協会」 2005121619:36

http://www.mizuho-ri.co.jp/research/economics/pdf/asia-insight/asia-insight051024.pdf

「みずほアジアンサイト」 2005121319:58

 

 

 

 

 

 

 

中国フォーラム訪問先リスト

 

 

 

 

都市

訪問先

概要

 

上海

上海市環境保護局

上海市の環境保護政府機関。下水処理の監察を行っている

 

 

上海市水務局

上海市の水管理政府機関、上水に関する設備などの管理を行っている

 

 

蘇州河モデル事業

上海市環境保護局による、河の整備、生物浄化、汚泥を利用した人工島などのモデル事業

 

北京

中国水利水電研究院水環境研究所

国家の水環境に関する研究を行っている

 

 

中国水利水電研究院防災減災研究所

国家の洪水防災に関する研究を行っている

 

中国エネルギー研究所

国家のエネルギーに関する研究を行っている

 

NEDO (新エネルギー・産業技術総合開発機構)北京事務所

中国における、日本の技術の普及促進など、環境、エネルギー技術関連事業を行っている

 

大連

大連市下水処理場

大連市の三大汚水処理場の一つ

 

 

大連市自来水廠

大連市の浄水場

 

大連市水務局水資源所

大連市の水管理政府機関

 

 

担当教諭: 慈道裕治 教授  周瑋生 教授  本田豊教授

メンバー:(国内政策班)佐藤由季 橋本典子 山口小百合 辻村園恵 那須晴美 高橋 由希子

    (国際協力班)松尾由香 張沖 太田治希 田中健太郎 小峪悠輔 野村佳美 岩崎優輝 岡本康世