お気に入り語録(1)

専業主婦をしていた私にある日パートタイムの仕事が近所の友人によって棚ぼた式にもたらされてきた。区のコミュニティセンターで行っている会議室貸し出しの管理運営、受付の仕事で、朝8時半から午後5時まで、週2回のジョブである。区の職員Nさんとの二人勤務で、Nさんは元気の良い、頭の回転の速い、ちょっと勝気でちょっとせっかちな、私より10歳ばかり年下の女性である。

ある日、Nさんが “3階のコンセントの修理を点検しますので一緒に見ておいてください。” と私に指導した。その時私が 
“コンセントの確認なら電気が通じているかどうか調べるために電気器具を何か持って行った方が良いと思います。” と言おうとしているのに、気の早いNさんは “早く、早く。” と言いながらどんどん行ってしまう。私は頭の回転が遅いので思った事がなかなか言葉にならない。Nさんを追いかけながら全部言い終えた時には部屋をずっと離れてもうエレベーターの前まで来てしまった。やっとNさんに話しが通じ、“じゃあ持ってきて” と言われて私は部屋に戻り、一番手近かにあったポータブル電気ストーブをふら下げて3階に向かった。気の早いNさんは当然の事ながら3階で作業を始めていた。このテンポの違い、それからも珍道中が続いた。

朝の会議室点検をした時、“会議室の椅子に張ってある会議室名のラベルがいくつか剥がれています” と見つけた私は手柄をたてた兵士のように意気揚揚と上司Nさんに教えてあげた。Nさんの返事は
 “それを貼るのはあなたの仕事よ” だった。はい、私の仕事には施設の管理もあるんでした。


最近、姉、甥、姪の家族が集まって誕生会だの、母の日だの、忘年会だのと四季折々にパーティを開く。あるパーティの席で私が夫に “定年になったら家事は半分ずつやろうね。” と提案した。掃除くらいはやってもらえるかと思ったのだ。しかし隣に座っていた甥がそれを聞いて 
“家事を半分にしたらあんたの仕事は今より増えるよ、庭掃除、草取り、植木の剪定も家事なんだから” と私に言った。そう言えば私は今は草一本も抜いてはいない。

  03.11.21 ノルウェイ・トロムソにて

私は月曜が祝日だとあと1日出勤日を休暇にすれば10日間自由になる。11月の月曜祝日を利用し、出勤日をやりくりして旅行をしようと思った。美しい自然現象が好きな夫はその季節ならオーロラを見に行く事を希望した。私も異存は無い。忙しい思いをしてせっせと2人のスケジュールに合うプランを探し、その中で面白そうなのをやっとのことで選び、さあやっと申し込もうと思ったら夫は 
“部屋を片付けてカーテンを洗濯したら申し込んでも良いよ。” ですって。ふ〜、申し込みのためにまだやらなくてはならない事があるのか〜。 そんな事をしていたら予約が一杯になっちゃう〜。いつもはほとんどやらない片づけを猛スピードでやり、カーテンを半分洗濯して申し込んじゃった。ああ、くたびれた。その話しを聞いた大方の友人がそんな簡単な事でオーロラを見に行けるなんてうらやましい、と言った。部屋を掃除して片付けるのってそんなに簡単かね〜?





私は最近ソシャルダンスのレッスンに励んでいる。教えてくれるのは長男と年恰好が同じような、私からみると顔が遥かに上の方にあるKインストラクターである。1人で身体を支えきれないらしい私はKインストラクターについついしがみついてしまうらしい。
“ああ、疲れる、藤方さんのレッスンの時はにんにくが必要だ” と言われた。次の週は “今度は焼肉も必要だ” と言われた。こりゃあダイエットをしなくっちゃ。

もう1年半もレッスンをやっている。勤勉な私はKインストラクターの指導を一言一句逃さぬように集中し、実行すべく努力はしている。が、しかしなかなかKインストラクターの思うようにはならない。先回は 
“藤方さんのヒールターンは1度も見た事がない” と言われた。えっ、じゃあ今まで何十回、何百回とやった私のヒールターンは何だったの? まあ、私もうまくできているとは到底思えなかったんだけどね。その場合、凡人は “そのヒールターンはおかしい。” とか “そのヒールターンはできてない” とか言うよね。

いつも同じようにやっているルーティンでも頭の悪い私は時々うっかり間違える。若い
Kインストラクターにはそれが理解できないらしく怪訝な顔をする。クイックを曲に合わせて練習をしていた時、私は例によって途中でステップを間違えた。言い訳をしている間に曲は他の練習をしている人によってスローに変えられていた。“ほら〜、間違えるから曲を変えられちゃったじゃない。”と言われた。その曲が終るのを待ってまたクイックに変えて練習を続けた。ほら〜、今度は曲を変えられなかったじゃない。

 恵比寿社会福祉センターというところでダンスのサークルでもレッスンをしている。教えてくれるのはKインストラクターの夫人Yインストラクターである。初級から中級へ来た時、先輩の男性に “スリーアルマーナもできなくて中級に来たの?” と言われた。これから習うんじゃい。今に見ていろ、絶対うまくなってやる。

せっせとダンスレッスンに通っていらた夫から 
“ダンスばっかりして遊んでいないで少しは英会話でも勉強してきたら” と上昇思考的アドバイスがあった。恵比寿福祉センターの英会話は夜間だ。じゃあ行ってくるからね。私にとってはダンスも英会話も同じように懸命の訓練であり、仕事ではないから見方を変えれば同様に遊びでもある。しかも英会話はアフターレッスンの飲み会付きよ。おおっぴらに夜遊びが始まった。

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