きれいな水と森づくりの話(水質保全特別対策治山事業)  (世界水フォーラム京都2003年の資料に掲載)
                                    [個人情報保護のため、個人名・団体名などは原文を一部修正しています。]

1.水は森林からつくられる
 コンクリートで固められた都会では、降った雨のほとんど全部は、土にしみこまずに、すぐに下水道を伝って川から海に流れ出てしまいます。
 森林は、土が“ふわふわ”なので、降った雨はまるでスポンジにしみこむように、ゆっくりと森の土の中にしみこんで、地下水に貯えられます。そして、少しずつ川に流れていきます。大雨が降ってもすぐに川があふれないし、日照りが続いても川の水がすぐになくならないのは、このためです。
 また、雨水は、森林にしみこむ間に、自然の力でろ過されると同時に、自然のミネラルが溶けこんで、きれいなおいしい水になるのです。雨水をそのままコップに受けて飲んでも、ちっともおいしくないでしょう?
 しかし、森林が荒廃すると、この働きがなくなって、人は生きていくのに必要な水を得ることができなくなってしまいます。

2.森林が荒廃するということ
 では、森林が荒廃するということは、どのようなことなのでしょう。
台風や地震や山火事などで、森林がなくなったり傷つくことがあります。また、人が町や工場や農場などを作るために森林を伐り開いて壊す場合もあります。
しかし、それだけではありません。森の木が茂りすぎてもいけないのです。
 木が茂りすぎると、日光が森の中に差し込まなくなり、地表の植物が育たなくなります。植物がなくなればこれを食べる虫や動物もいなくなり、やがて森の土はやせて雨で流れ出て、地下に水を貯える働きも衰えてしまいます。
 ですから、人は、森に木を植えるのと同時に、茂りすぎた木は伐って、森全体がバランスのとれた良い環境になるように管理していかなければなりません。これを「森林の管理」、「森林の整備」といい、「治山事業」は、そのような仕事をしています。

3.治山事業の一例
 では、具体的な治山事業の一例を紹介します。
 岡山県矢掛町の東三成という所は、かつての川の三角州の上に発達した集落です。一帯は風化の進んだ花崗岩類であるため、浸食された谷が多く、また、周辺の森林は松くい虫の被害による荒廃が進んでいました。
 人々は、生活用水と農業用水を川からの取水と地下水に頼っていましたが、大雨のたびに水がにごり、悩まされていました。
 このため、平成4年度から「水質保全特別対策治山事業」などにより、水がにごる原因となる荒廃した森林の整備や、水土・水質保全施設の整備など、総合的な水質保全対策に取り組みました。
 中でも、「濁水防止流路工」は、高さの低いダムを階段のように設けて、その間に木炭と石を敷き詰めたもので、木炭が水の汚れを吸いとる働きと、水が石と石の間を流れる間にきれいになるろ過の働きを組み合わせて、水質をよくするように工夫したものです。
 また、自然保護や景観の保全を考えて、「森林水環境総合整備事業」として、人々が渓流沿いの美しい森の景色や散歩を楽しめる森(渓畔林)を造成しました。
 この事業にかかったお金は、約4億5千万円でした。



(1)森林整備
 5年間で約22ha(サッカー・グラウンドの約50個分の面積)の荒廃森林を整備しました。木の少ない所に木を植えるとともに、茂りすぎていた木は伐採して、高い木と低い木、常緑樹と落葉樹がバランスよく混じった広葉樹の森(広葉樹複層林)を作りました。



(2)水土保全施設
 18個の治山ダムを作り、浸食された急な谷を緩やかな角度に安定させて、大雨が降った時に森の土が流れ出るのを防いで、川の水が濁るのを少なくしました。



(3)水質保全施設
 水質浄化作用のある木炭と、ろ過作用のある石を敷き詰めた「濁水防止流路工」などを4か所作り、水質を良くする工夫をしました。



(4)渓畔林
 自然環境の保護を考えて、きれいな花が咲き、小鳥を呼ぶ実のなる木を植えて、みんながピクニックを楽しめるような森を、川沿いに作りました。



4.まとめ
 このような努力により、水質はたいへん良くなり、ここに住む人々は安心して暮らせるようになりました。
 大雨の時には洪水を防ぎ、日照りの時には水不足を防ぎ、そして質の良いきれいな水を安定して得るために、森林はたいへん重要なのだということがわかります。
水をつくることのできない川下の都会に住む人々は、川上の森林でつくられた水を飲み、生活用水や農業用水や工業用水に利用して、暮らすことができるのです。
私たちは、この森林の恵みを思い、森林を大切にしなくてはなりませんね。


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