熱帯卵生メダカとは ( about
Killifish ) 
日本の里山や小川にありふれて泳いでいたメダカ達は、誰しもが親しみをこめて接し、生活の中にしっくりと溶け込んでいたように思う。しかし、環境が荒廃してしまった今、「メダカの学校は〜♪」を口ずさむように水面をそーっとのぞいて見た経験をもたれる方は少なくなってしまったかもしれない。
日本のメダカは水面近くを泳いで生活しているから、目が上の方についていて「目高」と呼ばれたのでしょうが、頭にもキラッと光る斑点をつけている。水槽に泳がせて横から見てみると、メタリックな輝きをもっていて結構きれいだ。元来、日本では金魚や鯉をはじめとする観賞魚を飼育するときは、睡蓮鉢などを用いて魚を上から見て楽しむ風習があるためメダカがアクアリウム界に導入されることはなかった。しかし、大がかりな飼育装置もいらず、簡単な容器に藻をいっぱい入れておけば結構ふえてくれるメダカたちは今後静かに私たちの周りに浸透してくれるものと期待している。
このような日本産のメダカ:Oryzias latipes(Temminck & Schlegel,1846)に対して、アフリカや南米大陸には実に鮮やかな色彩をまとったメダカ達がいる。日本産と区別するために「熱帯卵生メダカ」と呼ぶ魚達である。同じように卵を産んで繁殖する魚なのに、この違いは何なんだろう。何ともはやカラフルで、生ける宝石、神様の贈り物、などなど様々な賛美がなされ、実に多くの色彩変異をもっていて人の心を魅了するのである。
東アフリカ の 非年魚 |
西アフリカ の 年魚 |
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アピュオセミオン |
プロパンチャックス |
ノトブランキウス |
プロノソブランキウス |
南アメリカ の 年魚 |
南・北アメリカ の非年魚 |
アジア のメダカ |
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アウストロレビアス |
シンプソニクティス |
リウルス |
オリジアス(楊貴妃) |
1 卵生メダカの四大ジャンル
アクアリウムの世界では飼育繁殖の仕方によって「熱帯卵生メダカ:Killifish」は大まかに4つのグループに分けられる。つまり、
●西アフリカのジャングル(カメルーン、ガボンなど)に住む:アピュオセミオンやエピプラティスの仲間
●東アフリカのサバンナ(タンザニア、モザンビークなど)に住む:ノトブランキウスの仲間
●南米(ブラジルやアルゼンチン)のサバンナに住む:オーストロレビアス(注:温帯系)やシンプソニクティスの仲間
●南米に住むリウルスの仲間、東南アジアに住むオリジアスの仲間、アフリカに住むプロカトーパスの仲間、ランプアイの仲間
なお、このジャンルは「その他」的にまとめられることが多いため、三大ジャンルとして分類し、アピュオグループに準じる場合がある。

2 特異性(年魚と非年魚)
熱帯卵生メダカを語る上で押さえておかねばならないことは「年魚:annuals」と呼ばれる一年生のグループにみられる特異性である。東アフリカのノトブランキウス属、南米大陸のオーストロレビアス属、シンプソニクティス属などをはじめとするグループがそれで、このグループは雨季と乾季のあるサバンナやステップに棲み、半年から1年に満たない短い期間で誕生から死までを終える。いみじくもはかない命のように思えるが、水がなくなってしまうという過酷な環境に見事に適応した成果なのである。
年魚達は、数ヶ月という短い雨季の間に、急速に成長・成熟・繁殖を行って土中に休眠卵という子孫を残して自らは死ぬ。休眠卵は表土から10pほどの深さで寒暖の激しい条件を耐え抜き、次の雨季に再び誕生するというライフサイクルを繰り返す。長い進化の道のりで、このような手段を獲得してまでも生き延びてきた生命のダイナミックさには感動を禁じ得ない。
これらの年魚達に対して、日本のメダカたちのようにきれいな清流に棲み、水草に卵を産み付け、長ければ数年というライフサイクルを送る「非年魚:non-annuals」の仲間達もいる。流れのあるところに棲むためか、体型も日本のメダカによく似ているが、これまたカラフルなのである。日本やアジアのメダカたちが体色を地味にして捕食されにくい姿に進化したのに反して、自己アピールを高めることで子孫を残す方を選んできたのだろうか。
さて、このような卵生メダカを飼育するに際して、アクアリストとしては両者の違いをよく理解しておかねばならない。つまり、水槽内で彼らのライフサイクルに合わせた環境を再現する必要があり、年魚の場合は親が死んだ後の休眠期間を人工的に再現していかなければならないのである。
産卵行動(N.rachovii ) |
産みつけられた卵(発眼済み) |
非年魚は水草に産みつける |
休眠卵
3 年魚の休眠
ピートモスという産卵床というか休眠床が用いられるようになってから、アクアリウムで年魚を繁殖させることが実に容易になった。あく抜きをしたピートモスを水槽に沈めておき、産卵が行われると取り出して、半乾燥させて密封し、数ヶ月の休眠をさせるのである。難しい種類においては休眠の期間に卵が消失することもある。孵化させるタイミングを誤るとベリースライダーといって発育障害になる。さらに、低温系の魚を真夏に孵化させてしまうと元の木阿弥という始末になるから、休眠を如何にうまくコントロールするかが腕の見せ所となるのである。
しかし、卵をピートモスとともに小さな袋に入れ、これを封筒に入れて航空便で送れば世界中に届けることができる。所謂、卵の交換が容易で各国にメダカ仲間が誕生するわけである。
発生が完了した卵 |
ピートモスを袋で保管する |
非年魚卵はカップで育てる |
http://www.youtube.com/watch?v=i1MzPPGl5P0&feature=related