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    N.nubaensis Maada Mulaha SUD 06-3

 

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採集コード表

国別採集コード

KilliDataの読み方

ラテン語表記

各地の気候

 

 

 

はじめに

  ノトブランキウス(以下ノト)の仲間を飼育しだして数年がたちました。はじめて購入したのはコーソザイのレッドで,卵研さんのカウンターに置かれたジャム瓶の中にいた真っ赤な雄でした。あのとき見た赤さは未だに出ないどころか,先祖返りかイエロー系が出たりしていますが,細々と現在も累代できており,里子にもかなり出ていきました。

それから,何と言ってもエッゲルシのルフィジ。これは豊橋アマゾンさんからカタログで引いたのですが,なんともはや愛らしい!の一言。よちよち,いい子だね,可愛いね,なんて馬鹿なこと言いながらの状況でしたが,これが如何にも手強いのです。他種に比べて成長はかなり早く,結構のサイズにはなるのですが,3ヶ月ともちません。そろそろ,見応えが出てきたと思うころに,コロッと逝きます。頻繁な水換え,塩での調整,水温アップなどいろいろ考えられる手だてを尽くしていますが,未だ満足のいく飼育ができていません。

   eggersi Killimani TAN 02-15

eggersi Rufiji River Camp TAN 95-7

eggersi Kigongo TAN RB 05-43

TAN 95-7

 

また,東アフリカのソマリアに産するジュビーとウォーファブルーの識別に関する問題を調べるうちに,ロカリティーを追いかけるおもしろさを知りました。ノトは, 20 世紀後半から現地での分類学的な記録が始まったため,結構のデータが正式手法に則って残されています。特に最近はGPS位置測定が簡単にできるようになったので,日本にいても居ながらにして採集記をトレースできます。近い将来には変異種の分布を元にして,進化の道筋が明らかになるのではないかと思います。

そして, eggersi のTAN95-8 の採取地にみるように,車の轍にたまったわずかな水たまりの中でノソ達は生き延びています。サバンナに生まれたという宿命に逆らうかのようにそれぞれが鮮やかな色彩を競い,自分の子孫を残そうとする努力を続けています。水槽の中の魚を見ていて,このことを思うと何かしらいじらしさやけなげさを感じてしまいます。

また, furzeri の産地であるジンバブエ,そして virgatus のスーダン,それからソマリア,ウガンダ等々と,内紛を伝えるニュースを聞く度に遠いアフリカの地に思いを馳せ,魚たちが安全に生息できるような自然環境をはぐくむ平和な社会になられることを願わずにはいられません。

さて,以下にはこれまでの私の経験をもとにし,ノト飼育全般に関するノウハウをまとめました。あくまでも一個人の飼育法としてお読みいただけるようにお願いいたします。

 

1 分類について

少々難しくなりますが分類学上の位置を確認しておきます。何故かと言いますと、一般にメダカといいますと,日本のメダカ( Oryzias latipes)をさしますが実は分類学上は結構、遠縁なのです。

 

動物界(ANIMALIA)〜脊椎動物門(CHORDATA)〜脊椎動物亜門(VERTEBRATA)〜

      顎口上綱(Gnathostomata)〜硬骨魚綱(Osteichthyes)〜棘鰭上目 Acanthopterygii〜カダヤシ目 (※)

        (※ここで、 ダツ目メダカ科 に属する日本のメダカとは分かれます。

 

次に、カダヤシ目(Cyprinodontiformes)には, 4つの科 (family) があり、私たちが血迷っている所謂、熱帯卵生メダカのすべてのグループがあります。

リブルス科 ( Rivulidae オーストロレビアス属、ラコビア属、リブルス属、シンプソニクティス属 など

カダヤシ科 ( Poeciliidae グッピーなどの卵胎生メダカ

キプリノドン科 ( Cyprinodontidae アファニウス属

アプロケイルス科( Aplocheilidae アダマス属アプロケイルス属、アフィオセミオン属 エピプラティス属 フンドゥロパンカックス属、 ノトブランキウス属 、パチパンカックス属、プロノソブランキウス属  

 

  いよいよ、ノソの (genus) が登場です。聞き慣れないカタカナ表記はラテン語読みです。

   Nothobranchius ノトブランキウス属 (genus)

        Nothobranchius 亜属,  Adiniops 亜属,   Zononothobranchius 亜属 Aphyobranchius 亜属 ,

に加えて一風代わった、 Paranothobranchius亜属    の4亜属があります。

  現在40種類を越える種が同定されていますが、現在も現地での採集が進行しており、続々と新しい種類が登場しています。

 

亜属についても少し覚えておいた方が、飼育上の共通点があり、便利な場合があります。

 

亜  属  名

形 態 的 な 特 徴 

属 す る 種 名

Nothobranchius 亜属

原始的な体型を残すグループで、大型になる種が多い。

elongatus , furzeri , interruptus , jubbi , orthonotus

Adiniops 亜属

中型で優しい標準的な体型、カラフルな体色のものが多い。

albimarginatus , eggersi , flammicomantis , foerschi , guentheri , korthausae , patrizii

Zononothobranchius 亜属

Notho -亜属と Adinio -亜属との中間型。どちらかというと渋い色彩が多い。  

kafuensis , kirki , nubaensis , rachovii , simoensis , taeniopygus , ugandensis , virgatus

Aphyobranchius 亜属

非年魚の Aphyosemion との中間型でスリムな体型をしている。

geminus janpapi, luekei

Paranothobranchius 亜属

属として独立する議論があるほど特異でいかにも獰猛そうな体型。

fasciatus , ocellatus

 

2 生息地について

 

ノトは不思議なことにアフリカ大陸の右半分,つまり東アフリカ地方にだけ生息し ( 唯一、ナミビアに産する sp. Caprivi は別 ) 、北は赤道をまたいでスーダンが北限で、南は南アフリカ共和国の北部まで分布しています。

       

img5.gif


大きな地図で見る 

  これに対して非年魚は西南アフリカのギニア湾に面した地域に固まって生息します。これは気候的にいうとノソは基本的に熱帯草原(サバンナ),非年魚は基本的に熱帯雨林ということになります。サバンナはご存じのように,年間で雨季と乾季が交互におとずれ,これに伴って気温も変動します。

下のグラフは,多くのノソを産するタンザニアの首都ダル・エス・サラームの各月の平均気温と平均降水量の周年変化を示しています。一応,南半球にありますから日本と逆で,6月〜 月までが冬で気温も低くなっていますが,逆に降水量は少なく乾季になります。これに対して 11月〜3月は気温は高いのですが,降水量は多く雨季になります。したがって,地表下10数センチほどに産み残された卵は夏の炎天下,地表温度が40℃を超すような過酷な状況を耐えて生き延びるのです。カチカチに固まった土中であり,動物たちに踏みつけられることもあるだろうに,何とも 生命力の強さを感じます。

 

コンゴ・Bukeyaのビオトープ(fromDRCH2008)

スーダンの乾季(Sudan2006)

ただ、各国の気候を細かく見ていきますと(資料編を参照)アフリカとは言っても結構気象条件には際があります。この点も難しい種類を飼育するときなどの参考になりますので頭に入れておいた方がよいでしょう。

つまり、赤道付近の国々は気温変動が少なく降水量も通年にわたって少ない、のに対して南部に下がるほど、気温変動が大きく降水量も多くなっているのです。ビルガータスのスーダンは炎天下でカチカチの表土なのに対して、ラコビーのモザンビークは夜露で湿るなど結構土壌に水分が残っているようです。

 

img3.gif

 スーダンのビオトープ(Maada Mulaha)

img2.gif N.virgatusの採集地

img4.gif サバンナ風景(Savanna)

さらに、実際の生息地は訪れたことはありませんが採集記等に見られる限り3つの地理的状況がみられます。第1に背の低いイネ科の草本が見渡す限り繁茂している湿地帯に点在している水溜まり,それぞれの水溜まりは,お互いに独立していて思わぬ近さに別の種類が生息しているようです。ただし,一旦スコールが来ると水溜まりどおしは繋がってしまい,簡単に種の交雑が起こりそうです。第2に立派な川の様相を呈している場所で,結構の流れのあるような所でも生息していて,水槽の中でも時折見せる俊敏な動きや体型のスリムなタイプがいることが頷かれます。最後に,前述した家畜たちの水飲み場みたいなところや車の轍にできた水溜まりのように,簡単に干上がってしまったり,大雨によって簡単に別の所に移ったりするような場所です。いずれの場所においても,水深は1mまでくらいと浅く,その中でも 30 aほどの水辺の浅いところで多く採集されています。

また、雨季と乾季は1年に1回ずつとは限りません。短い雨季が間に一度はいって、一年に 2 回の周期である地域が結構多いようです。このことは意外と重要で、卵の休眠期間に影響を与えるのです。つまり,一年に1度のサイクルなら休眠期間は基本的に6ヶ月なのに対して、2度のサイクルなら3ヶ月前後の休眠期間となるのです。

いずれにしても、日本の趣味家の飼育下で長年累代され、発泡スチロールの箱の中で一定の温度で過ごしてきている卵達にとっては故郷の休眠期間は忘れてしまっているのでしょうが、20℃少々25℃以下で保管した場合は現地のサイクルに近い発眼状況を示すように思います。そして、難種と言われるものほど習性の変更が効かないのか、発眼する期間が非常にばらついているように思えてなりません。

 

3 ライフスタイル

 サバンナに生きる卵生メダカたちは,雨季と乾季が繰り返すという過酷な条件に見事に適応しました。稚魚の孵化から始まる雨季,その短い一生の始まりです。降り続く雨によって随所にできる池や水溜まり,そして忽然として現れる川の流れによってメダカたちは長い眠りから目覚めます。おそらくはものすごい数のボウフラもわいているのでしょう,生まれた稚魚たちはこれらの餌をむさぼり食って急激に成長します。そして,早いものでは1ヶ月少々もすれば成熟して産卵行動を始めます。

雄は雌を誘い,長い背びれで抱き寄せるようにして土中に導きます。雌は底土の表面に押さえつけられ絞られるようにして卵をいくつか産み落とします。それに雄が精子をかけ,受精が完了します。通常の動物では直ちに卵割が始まり発生が進行しますが,このメダカたちはおそらくは精子の核と卵の核が合体しただけで休眠状態に入ります。

この休眠状態については発生学者達によって研究されており,機会があれば紹介したいと思いますが,休眠期間中には3つの発生停止段階があるようです。

池や水溜まりにはおびただしい数のメダカたちが群れているはずです。雄達は雌をめぐって,エラを張り,ヒレをいっぱいに広げて相手を威嚇し,体当たりをします。水槽の中でもこの時の光景は雄が最も美しく見えます。シャッターチャンスです。順調にいけば,一匹の雌は通算で少なくとも 100 個以上の卵を産むのではないでしょうか。そして,雨季が終わり,徐々に干上がっていく池や水溜まりの中で,やがて短い一生を終わるのです。

<産卵行動 

 

産卵行動1

産卵行動2

産卵行動3

産みつけられた卵

産みつけられた卵

産みつけられた卵

 

このような実にドラマティックな一生であるがゆえに,メダカたちは極彩色の体色やヒレを進化の中で獲得してきたのでしょう。お世辞にも澄んでいるとは言えない池の中で,他魚よりも派手に,他魚よりもヒレを大きく色鮮やかに発達させてきたのでしょう。また水溜まりや池は,時には洪水によってお互いにつながり,種の交雑を余儀なくしてきたのでしょう。GPSを駆使した現代の採集者にしても,後日には必ずしも同じ場所で同じ魚が捕れることはないと聞きます。

なにはともあれ,色彩の美しさ,コレクション性の高さに加えて,このはかない一生をドラマチックに生きるメダカたちのゆえに私はノソ飼育にのめりこむのです。

 

 

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