村井正誠はエッチングのデッサンの心構えとしてよく「三段階」と言っていた。
そのときはエッチングの黒を含めてグレースケールが二色の構成と思ったのだが、今思うと、それは、地の白を含めた三色としての三段階のことのようだ。これは、シルクスクリーンの作品を見ればわかりやすい。私が一番村井正誠らしいと思うのは赤と黒二色構成の作品だ。つまり、赤、黒、白構成の三段階である。シルクスクリーン授業の課題が一貫して二色二版と変わることがなかったのは、村井正誠が造形の基本としてこの3という数字を重要視していたからに違いないと思う。
3という数があれば、もしかしたら7にこだわっているかもしれないと直感を得た私は、画集を調べてみると黒のシリーズを除いて、やはり色を多く使っている油彩画はみんな7色だった! そんなに色を使っていないように見える作品も隅から隅まで数えると驚いたことに必ず7色使っている。
これらの作品を白黒写真で撮ってみればよく分かるのだが、構成のしっかりした作品は白黒でも色彩を感じ、作品の色気を損なわない。黒のシリーズで言っているように、人間の目の可視領域において、黒はあらゆる色を混ぜ合わせた果てに出来上がる。一方白は感じ取ることのできる限界である。この境界領域から作品を眺めてみるとその作品の色彩のセンスが見えてしまうのである。東洋はこのことをよく知っていた。
村井正誠のシルクスクリーン、素描、エッチングの作品群もよく見てみると、5色のものも少し混じっているが必ず3、5、7の奇数であった。基本は3と7である。
3と7は数の神秘に興味を持った者は必ず思い当たるのだが、色は三原色、大脳は新皮質、古皮質、旧皮質の三層からなり、われわれ動物の体は三層の胚葉(内、中、外胚葉)に包まれている。その他、三位一体、過去、現在、未来の三世、3密、霊魂体の意識等々。
一方、7は虹が7色、音階、一週間、北斗七星、七福神、七変化、七賢人、七癖、七五三とこれまた多い。
5は仏教の五識がある。そして五感というものもある。
はたして、厳密に意識して絵画制作をしていたかどうかは聞いてみたことがなかったのでわからない。三段階というセオリーは意識していたと思うのだがそれ以外はあくまで私の推測の域を出ないことをお断りしておく。でもこれだけはいえると思うのは、長年続けていると意識しているしないにかかわらず自然とそうなってしまうということはあるということです。
○色というのは、どんな色にもあうようになっているんです。選んでも選ばなくてもどちらもいいんですよ。不思議なもんですよ。