雛誕生観察記


目次
3月20日 雛の誕生 3月21日 春分の日
3月22日 休日 3月23日 有休
4月4日 2週齢雛 4月11日 3週齢雛
4月18日 4週齢雛 4月25日 5週齢雛
5月2日 6週齢雛 5月9日 7週齢雛
2ケ月齢雛 番外 その後の新入り
隣のガマは親子ガマ、羨ましい!
タヌキに乗る雛


産まれた翌日の雛達
3月20日(土)
昨日、一昨日とうってかわり、朝から雨が煙り、肌寒い。今日は卵を抱いてから21日目、孵化予定の日である。
女房が抱卵中の娘達に餌を与えるべく、鶏舎へ。娘達の側に死んでいる雛がいると報告。
早速、鶏舎に入ってみると割れた卵から出ようとしたままの形で一羽の雛が死んでいた。
じっと見ていると娘達の羽根の下から一羽の雛が顔を出し「ピヨピヨ」と鳴きだした。
嫌がる娘達を持ち上げて見るとその下に3羽の雛と5個の卵があった。雛の一羽は産まれたばかりとみえて、羽根がまだ濡れている。
卵は、と見ると卵殻に親が突ついた痕があるのが1個ある。卵は外側から卵殻、卵白、卵黄の3つに大別され、卵殻は外側からクチクラ層、卵殻、卵殻膜より成っている。
娘達が突ついた痕は卵殻膜を残すように卵の鈍端部から3分の1弱のところを一周している。雛が産まれて残っている卵の殻も規則正しく同じ場所できれいに2つに別れている。
本能のというべきか、遺伝情報のというべきか、子孫を残す為の不思議さを思う。多分、雛はこの薄くなった部分を中から突つき破って出て来るのであろう。
卒啄同時」という言葉が浮かんできた。(卒には口偏がついているのが本来の字であるが、漢字コードに無いので略す)
「卒」とは孵化寸前の雛が内から卵を突つくことを言い、「啄」とは親鶏が外から卵を突つくことを言う。この行為の同時性が雛誕生仕上げの大事な作業である。
禅の世界で時機到来のその瞬間の重大性を説く言葉に「卒啄の迅機」と言う言葉があるが、この自然界の計らいから由来したものである。
しかし、最近の雛は人工孵化機により産まれているのだが、この「卒啄」はどうなるのであろうか?疑問が湧いてきたが、暫らくは忘れることにした。
今ひとつ、特徴的なことは孵化した後に残された卵殻の脆さである。殻に粘りがなく、触るとポロポロと崩れていく。これは娘達の抱卵熱によるものか?
暫らくして、例の卵を見てみると突つき痕を境にして2つに割れ、雛が産まれていた。
「かわいい、かわいい」で女房と小生が入れ替わり立ち代わり鶏舎に入り、観察をするものだから娘達もさぞ迷惑であっただろう。寒い雨が一日中降しきる夕刻、見てみると雛が五羽になっていた。


水を飲む雛
3月21日(日)春分の日
田舎から出てきている母を佐野市高萩に迎えにいく。出迎えの時間が4時であるので、その道中の途中にある小山市のO物産に立ち寄ることにした。
朝10時前に家を出る。普段であれば2時間で着くのに3連休の中日、春分の日であり、渋滞に巻き込まれ、1時間遅れて到着。
まずは有精卵を頂いたお礼と雛の誕生を報告。
確率的に雛の半分は雄である。そこで「雄を貰って貰えないか」とお願いしたが、逆に「雄を持ってかえってよ」で雄処分の話は別途考えなければならないことになった。
早速に一升瓶がでてくる。「今日はこれから母を迎えに行くので、酒はいらない」と断るも「まあ、まあ」で、予感はしていたが、酒盛りになってしまった。
鶏論、人生論を酒の肴に1時間半で一升瓶が空になってしまった。時間もころあいとO物産を辞し、佐野市に向かう。
4時半頃、佐野市を発し、帰路につくが、道中、渋滞だらけで家に着いたのが9時過ぎ。とにかく、疲れた、酒も効いて眠い。
朝、家を出る前に見た時、また一周に突つき痕がある卵が一つあった。多分、孵化しているだろうと思うが、睡魔に勝てず確認しないままに寝てしまった。


餌を啄ばむ雛達
3月22日(月)休日
朝、起きて居間のカーテンを開け、外を見ると、雲は低く垂れ込め、風は強く吹きすさび、前の公園の木々が激しく右左に揺れ動いている。
おまけに気温も低い。外に出て鶏舎を覆っていた覆いを取り外す。雛達が娘達の羽根の下から顔を出していた。寒いのか親の下から離れようとしない。
時折、雲の間から陽光が鶏舎にかかり、暖かくなる。雛達が少し動き始めるが、また娘達の下に潜り込む。娘達は両の翼を少し広げぎみに雛達が入り易い状態を作っている。それもどっかりと座り込むのではなく、人間でいうと中腰の姿勢である。
今まで低くあった雲が飛んで行き、春の太陽が輝き始めた。
雛達が動き始めた。
メロンを突ついたり、水を飲んだり、玄米や飼料、小さく刻んだ緑餌を啄ばんだり、走り回ったり、座った娘達の背中に飛び上がろうとして滑り落ちたり、数度のチャレンシジでやっと背中に飛び上がったり、寒くなると娘達の下に潜りこんだりで、見ていて厭きがこない。雛の数を確認する為に鶏舎に入り、娘達を持ち上げてみた。
まだ、卵が3個、残っている。しかし、良く見ると1個には赤い印がついていない。今日、産まれたばかりの卵だ。新入りが産んだ卵を抱き込んでいるのだ。雛は全部で6羽孵った。残りの卵は無精卵か、中で死んでしまったか、何れかであろう。一日おいてから処分することにした。


鶏舎から出てきた雛達
3月23日(火)有休
当日は平日であるが、母との時間を共にすべく事前に有休を取ってあった。
朝になっても2個の卵は孵化していない。孵化しなかった場合は割って確認しようと決めていたので割ってみた。思った通りで、卵に何の変化も無く無精卵であった。
雛達は鶏舎の中を動き回っている。その内、一羽が開けっぱなしの鶏舎の戸口から出てきたが、娘達が呼び戻し、中に入ってしまった。
一昨日から出てきている母親が帰るという。
「今回が出てこられる最後かもね」という。女房が「3年前にも同じ事を言いましたよ」と返す。思ったより元気だが82歳、歳だ。車でJRの駅まで送り届ける。
家に帰ってみると娘達も雛も外に出て、陽気な春の日差しを浴びながら庭で遊んでいる。
これはシャッターチャンスとばかりにカメラを持ち出し、シャッターの機会を覗う。
娘達はしきりに砂掻きをし、雛はその周りを動き回り、砂掻きした所の何か啄ばんでいるようだ。
そばに寄ると警戒して庭に植えた雑草の茂みに潜ったりして、シャッターチャンスがない。仕方なく離れて様子を覗うことにした。
鶏の子は他の鳥達、ハトやスズメと違い、親から口移しに餌を貰って育てられるのでなく、産まれた次の瞬間から自分で餌を食べていく宿命の鳥だと思っていた。事実もその通りで人工孵化機から産まれた雛はみな人間に与えられた餌を食しているのだ。
親鳥がどのように雛の面倒をみるのか考えたこともなかった。
それ故、娘達の行動は意外でもあり、感動でもあった。
最初に気づいたことは、雛への危険に対する警戒である。
上空にハト、オナガ等の鳥が飛んだり、近くで遊ぶ子供たちの自転車の「キー」というブレーキの音に、近くで引越しでもあるのか、荷物の上げ下げの音に、娘達は普段であれば見せない程の警戒の姿勢を示す。首を高く上げて回りに警戒を怠らない。
娘達がある鳴き方をすると雛達は素早く近くの雑草の中に身を潜める。その動きの速いことに目を見張る。
ここまでは、親の子に対する情愛の表れだろう位に見ていたのだが。
次に見た娘達の行為は意外で、烏骨鶏親子の情愛を顕すものであった。
娘達は休みなくに砂掻きをする。そして「クォッ、クォッ」と普段出さないような低いクグモッタ声で鳴くと、雛達が急いで鳴いた親鳥の前に走り寄る。そして、何かを啄ばんでいる。
また、娘達が砂を掻く、雛達は少し離れる。時折、離れ遅れた雛が砂掻きの足に蹴られて、「ピッーピー」とか「ピー」と鳴いている。それでも雛達は離れない。他の親鳥が「クォッ、クォッ」と鳴く。すると、雛達は一斉に鳴いた親鳥の前に「トコトコトコット」と表現すべきか、「ツツッツー」と表現すべきか、素早く走りより、何かを啄ばんでいる。
この鳴き声は明らかに雛を呼ぶ鳴き声である。雛を呼び、餌を与えている。その後、砂掻きあとから雛の一羽が2−3cmの小さいミミズを咥えて走っていた。
他の一羽がそれを追いかけ回している。娘達の雛の時と同じだ。娘達の一羽がミミズを捕らえると、捕らえた一羽が逃げ回り、他の一羽がミミズを横取りする為に追いかけまわすという光景がよく見られたものだ。
驚いたことに産まれて4日齢の雛はそのミミズを食い込んでしまった。少しすると、他の雛も先のミミズより大き目のものを食い込んでいる。
娘達は砂掻きをし、餌を見つけては、雛を呼び寄せ、自分が食わないで与えている、雛に口移しで餌を与えることはないが、次に見せた娘達の行為は驚きであった。
娘達が座っている小生に近寄って来るので好物の落花生を小さく砕いて投げ与えた。当然、雛達も一緒に寄って来る。すると、どうだろう、娘達は砕いた落花生を食したが、雛が前に来ると落花生を咥えては雛達の前に落とすではないか。そして、また咥え落とす。それを繰り返す。すると、雛達がそれを食い始めた。次に長さ2cm位の干しエビを与えてみた。
やはり咥えては雛達の前に落としている。それも更に小さく食い千切って、落としている。それを雛達が食べている。
その後、注意深く見ていると庭に撒いた玄米や小麦に対しても啄ばんでは雛の前に落とし、雛に食べるように催促している。
母親を送っての帰りである、この娘達の行動は胸にくるものがあった。
次に醗酵飼料を少し離れた土の上に少し撒いてみた。普段であれば、それを直ぐ食す筈だが、全く無視し、砂掻きをしている。
2羽の雛は撒いた飼料を少し啄ばんだが、すぐに娘達の方に行き、砂掻きの中から出て来る餌を啄ばんでいる。雛達も親鳥を真似て1−2回砂掻きをするが続かない。その姿は何とも愛敬がある。
暫らくすると場所を移り、撒いた飼料に近づいてきたが、撒いた飼料を一顧だにせず、その飼料を砂掻きで蹴散らしてしまった。そして、土の中の何か分からない餌を雛達に与えている。只、与えるのではなく、雛がその餌をチャンと食べるか、どうか確認している。玄米程の大きさのものになると、雛は場所を少し離れて食べる。大抵、一度では食べられず2−3回、食べ落としては啄ばみ、やっと食い干すという感じである。
雛達は人間が与えた飼料よりも娘達が与える土の中の粗餌、と思うのは人間の勝手だが、そちらの方を好んで食している。
人間が雛達の為にと考えることと、娘達の行為の間には大きなギャップがある。雛達の将来の為には娘達の育雛方針の方が正しいのであろう。


2週齢の雛