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拭き漆HowTo
本コンテンツのメインです。
かなり長くなりますが、
よろしくおつきあい下さい。
まず、
拭き漆とは、木地(木を削りだしたもの)に
漆をすり込んでいくものです。
何度も漆を塗り重ねるのですが、
その度に余分な漆を拭き取ります。
ですから、拭き漆。
実際に手順を見ていきましょう。
まず、下の写真は木地です。やや大きめの汁椀です。
我が家では味噌汁椀として毎日使っています。
私はろくろは使えないので、木地は買い物です。
『え?丸太を固定して、旋盤で削ったらええんやろ?
会社の工場でなんぼでもオジヂナルができるやん。』
と軽く考えていたのですが、会社の工場の機械は硬い金属を削るもの。
『アホか、お前。木ィなんか削れるかえ』と、
工場のオッサンに軽く笑われてしまいました。
しっかり固定できなくて(木材は金属に比べて軟らかすぎる)、
切削対象(この場合木材です)が
すっ飛んでいく(切削トルク、即ちパワーが強すぎるため)そうです。
危険です。
木材は、写真もそうですが、師匠の受け売りでなんですが、
私は好んで欅(ケヤキ)材を使います。
硬い、と言うのが利点の一つですが、
木目がはっきりと現れるのが気に入っています。
桜や栗も柔らかな雰囲気で良い感じですが、
近所で木地を購入できない(-_-メ)
その木地にテレピン油で薄めた下地漆をバババッと塗ります。
下の写真は、木地に下地漆を染み込ませ、
木地固めをしたものです。
とりあえず、木地に漆を吸わせます。
この段階で、結構見栄えしちゃうんです。
木目もバッチリでていますよね。
ここで止めようかと、毎度思うんですが、いえいえ
次行ってみよう。
次は目地(木目)にサビを擦り込んでいきます。
サビとは砥の粉という細かい砂に水と漆を適当
(テキトーではなく、適切に正しくの適当です)に、
混ぜたものです。
金継ぎでもよく使う、非常に強力な接着剤です。
サビを適量ウエス(ボロ布)に取り、
木地固めした器に塗り込みます。
ヘラでサビ付けをするより、
ウエスでサビ付けする方が余程効率的です。
ええ、素人限定のことかも知れませんが、
私はそうです。
こんな感じになります(^^ゞ
『これやったら、やらん方がええんちゃうん?』現状否定できません。
これで、風呂に入れてしばらく乾かすわけですが、
上述の通り、サビは強力な接着剤。
ナイスすぎるサビを作ると、次の行程で泣くことになります。
写真の作例は、かなりナイス・サビです。後日、腕が泣きました。
風呂ですが、浴室のことではありません。
無論、浴室でも良いと思いますよ、ご家族の理解があれば。条件的にはグッドです。
漆が乾燥するための条件は、高温多湿。
高温はまだ理解できるのですが、いまだに多湿ってのが
理解に苦しむところです。
我が家の風呂は、段ボールです。
段ボールの内側に新聞を敷き、
内壁にカッターナイフで切り目を入れ、
霧吹きで水分を与えます。ジョボジョボに。
そんなええ加減なもんでも、充分なんですね。。。
サビ塗りの行程から、一週間ほど、乾かします。
一週間というのは、テキトーです。
あまりにほったらかすと、サビががちがちに乾いてしまって、
落とすのに苦労します。
さて、サビを水研ぎで落としたのが
下の写真です。
400番の耐水ペーパを使います。
水研ぎとは、紙ヤスリを水に浸けながら
研ぐ方法です。耐水ペーパを使います。
研磨対象が熱を持ちにくい、
水のお陰で研磨対象に大きな傷が付きにくいと、
そう言う利点があるそうです。
さて、サビが落ちてスッキリしました。
木目が黒くなってます。
木目にしっかりサビが入り込んでいる証拠です。
この目地埋めですが、
お椀の強度を増す、と言う実用的な目的以外に、
木目を際立たせるという、視覚的な効果を狙っています。
お椀の縁はペーパが当たりやすく、
気をつけないと木目が消えてしまいます∫(TOT)∫
ザザッとサビを落とした後は、
慎重に研いでいきます。
ダメダメなサビを塗ってしまうと、
水をかけただけでダバダバ〜とサビが流れ落ちてしまいます。
コレはがっかりです。
反対にナイス・サビを塗ってしまうと、
サビを水研ぎするのに腕がパンパンになります。
作例では1時間半、水研ぎにかかりました。
こんな感じ。
ちなみに、写真右上の乾いた液体は、
研ぎ汁です。こいつもくせ者です、かぶれます。
この時点での色調のまだら、傷は徹底的に研いで消します。
漆の作業は、別に漆に限ったことではないですが、
早め早めに手当をしないと、後で
ズボラこいた自分を殺したくなります。
ポインタを上の写真に重ねると、拡大写真になります。
写真の説明は読みにくいですね。
矢印の先に細かな傷があります。
最初の行程、ロクロの跡を消すから研ぎの時に
付けてしまった傷です。
こういう傷を、ここで頑張って研ぎ消します。
後は楽しい楽しい塗り重ねの時間です。
ウエスに少量の漆を取って、薄く薄く塗ります。
どうせ拭き取るんですから、分厚く塗ると無駄です。
漆を塗る
↓
漆をぬぐう
↓
風呂に入れて乾かす
これを傷とかムラとかのヘマが目立たなくなるくらいまで
繰り返します。だいたい4回くらいでしょうか。
その後2回は、以下の行程を繰り返します。
漆を塗る
↓
漆をぬぐう
↓
風呂に入れて乾かす
↓
胴ずり粉で磨いて艶を上げる
『艶は七難隠す』は師匠の受け売りですが、
ホント、そうだと思います。
すると、飴色に輝く拭き漆の汁椀が完成!です。
全行程、約二ヶ月。
最初の内は、余裕で半年かかっていましたが、
慣れでしょうか、今では三分の一になりました。
最後に、
一ヶ月ほどほったらかして完全に漆を乾燥させます。
新品の漆器を使うと、
まれにかぶれる人がいるそうです。
せっかくのユーザ様を
たらこ唇(唇をかぶれさせて)にしてしまったのでは、
申し訳ありませんから。
これはあくまで私個人の感想ですが、
大手百貨店で販売されている拭き漆のお椀、
高いです。
ロクロの跡も消していない。
目地埋めもしていない。
飴色に輝きもしない。
それでも三千五百円。。。。
ロクロの跡は、味であるという意見もあります。
ホントに?それって、ただのズボラじゃないの?
目地埋めなんて、意味がない。塗り重ねれば同じ効果がある。
いやいや、サビの黒さと単なる厚塗りの色の濃さでは
全然違います。

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