ヨットにサーフボード積んで奄美に向けて出発
ヨットでサーフィンに行くってどう思う?楽しそう?またはあんまり興味わかない?っていうかイメージ涌かない?
じゃあヨットにサーフボード積んで、南の島、例えば南太平洋にサーフィンに行くっていうのはどう?フィジー、タヒチ、フィリピン、サモア、ニューカレドニア、トンガ、それにあまり良く知られてない何百以上の島にある無人のパーフェクトウェーブにヨットに乗って行くっていうのはどう?あったかくて透明な海、冒険、発見、サーフィン、風まかせ気分任せに南太平洋中の島々で波を探すっていうのはどう?楽しそうでしょ。
そういうわけでわたしもこのコンセプトに一目惚れしました。それからいろいろあって12年。とうとうヨットでサーフィンに行く事になりました。奄美大島に向けて、四国、九州、種子島などのサーフスポットを経由しながらという計画をたて、神戸を出発。
えっ、フィジー、タヒチじゃないのかって?いや、とりあえず奄美。そっから沖縄行けたら沖縄。更にフィリピンって感じで南下していこうかな、みたいな。まず奄美です。でも奄美の波もいいらしいよ。奄美着いたらどうするのかって?まあ、よくわからないけどなんか適当にバイトみたいなことしながら1年くらい生活してみたいな。ヨットで寝れるしね。仕事はしてないし、結婚もしてないし、彼女もいないし、なんにもない男なんで心配しないでください。それがある意味唯一のとりえかな。じゃあ、そろそろ出発します。無事に奄美に着きますように。
ドドーン、バタバタバタ。オーマイガー。ヨットってこんなに過酷なものやったん。うわっ、セイルがマストから外れた。あかん、風が強すぎてこのままじゃ、島に当る。そしたら船を引き上げるのにめっちゃ金かかりそう。頭のなかのレジがチーン。エンジンに藻がからまって、進まへん。あかん風に乗って沖に流される。早く港に入らんと危ない。おーい、漁師さーん。このヨットをひっぱってくれー。手を振ってるのに無視するなー。おーい。
命からがら行き着いた先々の港で漁師さんにお弁当作ってもらったり、お風呂入れてもらったり、ご飯食べさせてもらったり。地元でレストラン経営してる人においしいご飯食べさせてもらったり、これから行くであろう港々にいる友人達を紹介してもらったり。ほーんとお世話になりっぱなしですわ。なんちゅうのそういうの。嬉しいけど、逆に怖いな。なんか親切にされるばっかりでお返しがなにもできへんから。貰うばっかりで自分が悪い奴になったみたいで。と、思うのは今になってからですわ。その時は必死ですわ。毎日毎日次の港の事。ヨットが岸壁に当ってこすれないかとか、明日の天気、風とか。もうものすごい必死やからね。自分がしっかりしてないと次に進まないんでね。自分だけが頼り。この広い海原で。うーみよーオレのうーみよー。スゲー最高。オレって最高。そんな時もあります。風もいい具合に吹いていて上手く進んでる時とかね。そんな時はお世話になった人のこととかまるっきり考えてなかったと思うわ。
まーとにかくいろんな港に寄ったよ。それが結構楽しいのね。なんちゅうか、例えば車での旅と比べるとわかりやすいよね。ヨットは動く家だからね。車とは違うのよ。でもRVはどうなん。ハイエースかって住めるでっていうお兄さん。甘いィィィ。ヨットは港に着くまで大変な思いをして辿りついてるわけ。貴方達みたいにガイドブックを見てナビに教えてもらいながら彼女とぺちゃくちゃ喋りながら目的地に辿りついてるわけじゃないのよ。オレは一人で海図を睨みながら死にそうな目にあいながら港にたどりついてるわけよ。そりゃ、ホッとするでしょ。だから行く先々の港がすごく楽しいわけ。彼女がいないのはお前のせいだろって?それを言わないでください。
まず港ついたら、その町を散策。スケボーが移動手段だったね。運動にもなるし、なんかスケボーが好きなんだよね。よく恥ずかしくないなって思われるかもしれないけど、恥ずかしいが3としたら楽しいが7なわけ。最初ぎこちない感じがするけど、いったんこぎ始めると楽しくなっちゃうわけ。だから徳島の街や小さい漁村や四国の小さい町なんかをかなりゴロゴロしてたよね。スケボーは金もかからないし、早いし、楽しいしでいいこと多いよ。ゴロゴロうるさいけどね。
えっと、サーフィンだっけ?ヨットに乗って南太平洋でサーフィンだっけ?無理ムリ、やめといたほうがいいよ。って、おい。いきなり結論かい?いや、そういう一面もあるかなみたいなのを説明するよ。まず、ヨットでの移動、停泊等が大変すぎてサーフィンどころじゃない。日本みたいにある程度の深さのある港があちこちにあるところでさえ大変なのにだよ。インドネシアとかフィジーとかタヒチとかに行ったら、ホントどこに泊めたらいいのってなるよ。絶対。フィジー、タヒチは行った事ないから知らないけど。インドネシアなんて深い港、そうそうないもんね。でかい街とかそういうとこいかないと船をつけれる港がないのよ。漁船は沢山あるけど、そういう漁船は男7人くらいで担ぎ上げて浜辺に上げておけるようなタイプなわけ。港とかにつないであるわけじゃないの。だから、例えばサーフスポットの前にアンカー打って停泊してたとしても、急に大風が吹いてきたらどうするの?っていう話なわけ。怖いでしょ。頭の中のレジがチチチチーンなわけ。
奄美、奄美。話がなかなかすすみませんね。そう、奄美に向かって神戸を出発しました。まず大坂、淡路島、沼島、四国入って徳島、阿南の淡島、紀伊水道の伊島、太平洋に出て由岐、日和佐、浅川、でもってついにサーフィンが出来る海部、宍喰、甲浦に着きました。そしてサーフィンしました。楽しいからサーフィンばっかりしてたら秋になってしまいました。寒くなったし、もう奄美行くの大変そうだから神戸に帰りました。って、おい。全然奄美ちゃうやん。そう、そういう結果になってしまったんですよ。でもね、そのまま奄美に向かって進まなかったのにはもう一つ理由があるんです。海部の港にヨットを泊めてるときにそこの港のカツオ船に次の年から乗る事になったからなんですよ。次の年の2月から仕事が始まるのに秋から奄美に行くなんて無理でしょ。仮に行っても長く滞在できないならしょうがないし。
そうだね、ほかに特におもしろい話はないね。ただ、その夏にサーフィンしてた時にものすごい沢山の人と出会ったり、再会したり、訪ねてきてくれたり、訪ねたりしたよ。それはヨットに乗ってサーフィンしにきた変わった奴ってことでいろんな人に興味もたれたんだね。知り合いが多いとサーフィンしてても楽しいよ。海の中でもゆったりした気持になれるし。そうだね、その夏のサーフィンはいままでのサーフィンの中でも一番くらいに楽しかったと思うよ。
まあ、そんな感じでヨットサーフィンの旅は終ったわけだけど、振り返るとその時の記憶ってのは結構印象深いんだよね。それだけ一生懸命生きてたってことだと思うよ。ヨットでサーフィンに行くという10年来の夢も実際にやってみると思い描いたものとは違ってかなり厳しいってのもわかった。お金も思ったよりかかるし。そしてもうヨットで南太平洋の島々を巡るっていう夢はあきらめたんだ。というかあまり魅力を感じなくなった。ここ10年間頭の隅にずっと考えてたことがなくなってすっきりしたよ。夢を持つってのはけっこうしんどいことだよね。追い立てられるような気持になったりして。だけど夢を実行に移してるときってのはすごいパワーが出るもんだね。このヨットの件に関してはそうだったよ。時間もお金も労力もものすごい注いで、例えば電気のこととか、エンジンのこととかいろんなことを覚えたり、いろんな工具を買ったり、いろんな修理をした。そういうのは確かにおもしろい。ある意味ね。でも、大変だよ。すごい大変。神経をすり減らすね。まあそれは自分で商売をやってたりする人も同じなんだと思う。自分でやらなきゃ始まらないってところがね。
一つの夢が終って、また今度新しい夢を見つけないとね。夢は、志はでかいほうがいい、と思うときもある。反対に、人生あまり欲張りすぎない方がいいって思うときもある。いままでの人生は欲張って生きてきた。だからいろいろ変わった経験をしてきた。後悔をしないようにいつもがんばって生きてきたんだよね。
時々自分の夢がわからなくなる時がある。普段の生活に追われて疲れてたりするとね。でも時々ハッと気づくんだよね。山道を走る車に乗ってる時とかに。あっ、ここで死ねないなって思うんだ。死ぬ前にこれとこれがしたいってはっきりわかるんだよね。だいたいそれは死ぬ前にまだまだサーフィンしたいな、ってことなんだよね。