平成18年行コ第11号 不当利得金返還代位等請求控訴事件

控訴人   海老名 徳太郎 外51名

被控訴人  青森市長 佐々木 誠 造

控訴理由書

平成18年9月14日

仙台高等裁判所第2民事部  御中

            控訴人ら訴訟代理人   小 田 切       達

                 記

1、原判決は、本件議員定数協議及び本件在任特例協議につき、いずれも法定の告示を欠いていたことを認定した上で、法定の告示を欠く本件議員定数協議の効力が発生しないから、新たに設置される青森市議会の議員定数を定めた条例が存在しなかったことになると判断した。この認定及び判断は正当である。

  ところが原判決は、告示がなされることは在任特例協議の効力要件ではないとして、法定の告示を欠いていても、本件在任特例協議の協議は有効であるとした。しかし、法定の告示を欠いた在任特例協議の効力についての原判断の法律解釈は誤っている。

2、そもそも、新たに設置される市町村議会の議員定数について条例が存在しなければ、在任特例協議の効力は発生しえない。

(1)旧合併特例法7条1項は、在任特例を適用する場合において、市町村の合併の際に当該市町村の議会の議員である者の数が、地方自治法91条の規定による定数を超えるときは、同条の規定に拘わらず、当該数をもって当該合併市町村の議会の議員の定数とすると規定している。

   ここに言う「地方自治法91条の規定による定数」とは、同法91条7項ないし10項の規定に従って定められた定数を指す。

   すなわち在任特例は、設置選挙を経ずに議員の地位の継続を認めるという点での特例であるばかりでなく、地方自治法91条7項ないし10項の規定に従って定められた定数を超える数を議員定数とするという点での特例でもある。

(2)それでは、地方自治法91条7項ないし10項に基づいた議員定数が定められていなかったときは、どう考えるべきか。

   そもそも、特例を認めるべき対象が存在しないのだから、特例自体が存立しえないのである。

   例えば、旧合併特例法7条1項に言う「地方自治法91条の規定による定数」がいくらなのかが分からないのに、どうやって「定数を超える」かどうかを判断するのか。また、同項は在任特例が適用される場合において「議員に欠員が生じ、又は議員がすべてなくなったときは、これに応じて、その定数は同条(地方自治法91条)の規定による定数に至るまで減少するものとする」と定めるが、地方自治法91条の規定による定数がいくらなのかが分からないのに、減少の下限をどこに求めるのか。

   地方自治法91条7項ないし10項に基づいた議員定数から離れて、在任特例に基づく議員定数を独立して存在させることを、地方自治法及び旧合併特例法は予定していないのである。

(3)原判決は、本件議員定数協議についての告示がないから、新たに設置される青森市議会の議員定数を定めた条例が存在しなかったことになると判断した。この判断を前提とする限り、在任特例協議についての告示が効力発生要件であるか否かを問うまでもなく、本件在任特例協議の効力は発生していないとの結論に至らざるを得ない。

3、在任特例協議についての告示は、効力発生要件である。

(1)原判決は、旧合併特例法は、在任特例協議に係る告示について、文言上、「直ちにその内容を告示しなければならない」と規定しているにとどまるから、その告示を在任特例協議の効力発生要件とはしない趣旨であるものと解されるとしている。

   しかし、旧合併特例法7条4項は、告示について同法6条8項を準用しているところ、同法6条8項は、合併関係市町村の協議により地方自治法91条1項に規定する定数の2倍に相当する数を超えない範囲で議会議員の定数を増加する場合(定数特例)に、その協議につき合併関係市町村の議会の議決及び内容の告示を要求した規定である。そして定数特例は、地方自治法91条7項と同じく、設置関係市町村の協議により新たに設置される市町村議会の議員定数を定める制度なのであるから、地方自治法91条8項の告示が同条7項の協議の効力発生要件と解される以上、旧合併特例法6条8項の告示も同条1項の協議の効力発生要件であると解さなければならない。同じく議会議員定数を定める制度であるのに、地方自治法に基づく通常定数協議の告示は効力要件だが、旧合併特例法に基づく定数特例協議の告示は効力要件でないと解すべき理由はないからである。そして、旧合併特例法7条4項は、効力発生要件としての告示を定めた同法6条8項を準用しているのだから、在任特例協議についての告示もまた効力発生要件であると解するしかない。

   すなわち、原判決の解釈とは逆に、旧合併特例法7条4項は、告示を在任特例協議の効力発生要件とする趣旨と解さなければならないのである。

(2)実質的に見ても、@在任特例は、法律事項である議員任期及び条例事項である議会議員定数に係る特例なのであるから、その告示には法律又は条例の公布と同じ効力を認めるべきであるし、A在任特例は、新たに設置される市町村の住民に対して、当該市町村議会の設置選挙における選挙権及び被選挙権を一方的に剥奪するという著しい不利益を科す措置なのであるから、少なくとも地方自治法91条7項ないし10項と同等の手続的厳格性を要求するべきである。

(3)原判決は、旧合併特例法は、市町村行政の広域化の要請に対処し、自主的な合併を推進し、あわせて合併市町村の建設に資するため、議員の身分の継続について特例を認めたものであるとした上で、@在任特例協議は地方自治法の原則を緩和する例外的措置を定めたものであるから、当然に地方自治法の原則に準じた解釈をすべきことにはならない、A当該市町村の議会の設置選挙における選挙権及び被選挙権に対する制約は、旧合併特例法の立法目的を達成するために必要な合理的範囲にとどまっているから、選挙権及び被選挙権に対する事実上の制約であることをもって、告示が在任特例協議の効力要件であるということはできないとする。

   しかし、議員の身分の継続という結果を達成するためには、設置選挙によらずに議員としての身分を認めること、及び議員定数を増やすことの2点において地方自治法の原則を緩和すれば足りるのであって、手続の点で原則緩和措置を講じる(ルーズな手続を認める)必要は全くない。

   旧合併特例法7条4項が準用する同法6条8項は「協議については、合併関係市町村の議会の議決を経るものとし、その協議が成立したときは、合併関係市町村は、直ちにその内容を告示しなければならない」と規定している。ここでは、議会の議決及び内容の告示が一連の手続として要求されている。原判決の論旨を貫徹しようとすれば、告示が効力発生要件でないとして手続的原則を緩和する以上、合併関係市町村の議会の議決も効力発生要件ではないとして手続的原則を緩和せざるを得ないであろう。しかし、かかる結論は何人も容認できないところであり、かかる結論に帰着する原判決の論証には致命的な誤りがあると断じなければならないのである。                                       以上

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