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カンボジア>蒸気機関車                       カンボジア鉄道応援会 Reborn!

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▲231形蒸気機関車(動体保存車両)

 

 カンボジアに鉄道が存在することを認識したのは、たしか10代の頃だったと思う。TVの番組の中でSL231型508番が突然に登場したからだった。当時はまだ鉄道車両にはあまり興味がなかったので、動輪配置がパシフィック(4-6-2)であることには気づかなかった。

 TV番組の中でプノム・ペン中央駅からバッタムバン駅に向けて蒸気機関車牽引列車が旅立とうとする瞬間、妙なものが先頭に付いているのが目に付いた。どういうわけか先頭にはJRのコキのような最長クラスのコンテナ用台車が2両も連結されていた。あれじゃあ視界も悪くなるし、発展途上国の鉄道はやっぱりいい加減にやってるなあ、という感じた。

 すぐ後にTV番組のナレーションがコキ台車はポル・ポト派の仕掛ける地雷攻撃から大切な機関車と運転士を守るために連結されているのだと語ってくれた。それがボクの頭の中にカンボジア鉄道に対する評価として鮮明に残った。もちろん、カンボジアは危ないんだなあという一般的なリアクションとして。

 時は過ぎ・・・運命のいたずらでタイ在住者となり、カンボジア鉄道に興味を持った。しかしカンボジア鉄道に関する情報は隣国タイにいてもまったく入手できない。それどころかタイ人の多くはカンボジアに鉄道があることすら知らなかった。そんなわけでいつの日か自分でカンボジアに行かなければならないと確信した。

 しかし当時タイからカンボジアへは航空機でしかアクセスできないという問題があった。そう航空機のチケットは7000バーツを超えるほどに高価で、会社を辞めて独立したばかりのボクに捻出できるような金額ではなかった。それでも1998年になって状況は一転した。カンボジア・タイの陸路の国境が外国人にも開放されてと言う情報がタイ在住日本人の間を駆けめぐったのだ。出入国を陸路で行えるならほとん食費代だけでカンボジア旅行ができるということである。そこでボクは居ても立ってもいられずにカンボジアに行くことにした。

 ところでカンボジアへ向けてタイを出発する段階では、カンボジアが蒸気機関車王国であるというイメージだけが先行していた。それはミャンマーやヴィエトナムでもまだまだ蒸気機関車が現役なので、内戦で疲弊し続けたカンボジアには蒸気機関車牽引列車が全国の幹線・視線を我が物顔で走っているに違いない信じていたからだ。

 しかし入国してビックリである。どこに行っても蒸気機関車がないのである。それどころか蒸気機関を支える給水施設などもすでに遺跡となり果てていた。それもそのはず、なんとカンボジア鉄道は1992年の段階で、周辺国より一足早めに無煙化を達成してしまっていたのだ。

 そこでせめて動く蒸気機関車ぐらいはないものか、と思って探してみると1両だけ動態保存車両があることが分かった。カンボジアで制作された映画「戦争の後の優雅な夕べ」にも登場していたSL231型501番がそれである。カンボジア鉄道としてはこの蒸気機関車を先頭にして観光列車の定期便を運行したいそうなのだが、予算的な問題がクリアーできずに、すでに2年は車庫で眠りっぱなしになっている。興味深いのはSL231型500番代は急行用機関車でありながら、客貨混成列車か貨物列車を牽引していたというところだ。他にもSL231型508番が準動態保存となっているが、これに気づく人は極めて少ない。ボクはこれらSL231型500番代は、おそらくはゴールデン・アロー特急を牽引し、ヨーロッパでも最大級の蒸気機関車と唱われた231G型500番代のミニチュアとして製造されたのではないか、と勝手に信じている。

 


▲131形蒸気機関車(静態保存車両)

 

  ところでカンボジア鉄道の主力蒸気機関車はフランス製の新旧2種であったようだ。それらは万能機のプレーリー(動輪配置2-6-2)と急行用のパシフィック(動輪配置4-6-2)だ。

  旧式であるプレーリーは131型と呼ばれていた。第二次世界大戦前に製造された機関車で、ヴィエトナム鉄道から配置変えでカンボジア鉄道に送られて来たらしい。第二次世界大戦前の機関車では他に130型と呼ばれたモーガル(2-6-0)が存在していたが、現在では残骸すら残されていない。

 新型であるパシフィックは231型と呼ばれていた。第二次世界大戦後に製造された機関車で、カンボジアの独立前後の時代である。これはカンボジア鉄道での使用を前提に製造された新品だった。 他に第二次世界大戦前に製造されながら、第二次インドシナ戦争中にカンボジア鉄道の路線上に登場した蒸気機関車もある。それは10型と呼ばれたコンソリデーション(2-4-0)で、タイ鉄道より無償供与されたNBL社製のE型蒸気機関車である。

  カンボジアで最後の蒸気機関車牽引列車の通常運行されたのは1992年である。ここでもまた間に合わなかったかと思うと、ちょっと悔しい。しかしカンボジア鉄道を取り囲む事情から考えるといくつかの偶然が重なりさえすれば、この先に蒸気機関車牽引列車が100%復活しないとは言い切れないのではないかと密かに期待している。

 実はカンボジア鉄道の列車密度は幹線であろうと極めて低い。だからこそ小両のディーゼル機関車のみで全運行列車の牽引をまかなえるのである。しかし予想以上のペースで鉄道輸送の需要が高まったならば、やもえず休眠状態の蒸気機関車を起こして急場しのぎの対策とするのではないだろうか? なぜならカンボジア鉄道はカンボジアで唯一の公共輸送機関であり、路線は他国の鉄道とも連接していない。それはつまり機関車が足りなくなっても自前で調達するしかないということなのだ。そんなわけでボクはシハヌークヴィル港でさばかれる貨物の総量に注目している。もしかしたら、という淡い期待を持ちながら。








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