<前書き>
いろいろとだめな方向に走っています。
ごめんなさい。
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温もり光る1
「は?! 今何て言った!?」
ドアからのぞいた相手の澄んだ青い目がこれ以上開けません! というほど見開かれ、あんぐりと開いた口から白い奥歯まで見えていて、サスケは眉間に皺を寄
せた。
こういう反応をされる事はそれこそ手に取るようにわかっていたが、やはり気にくわない。
でも事情が事情なのでここは我慢だ。
サスケはため息混じりに口を開いた。
「だから一晩泊めてくれって言ってんだよ。忍術だけじゃなくて耳までドベになりやがったのか? 二回も言わせんな」
「はあっ?! なんだってばその言い方はあ!!」
「ったくいちいちわめくな。入るぞ」
ぐい、とナルトを押しのけてサスケはうずまき宅にすたすたと入っていく。
きょろきょろと見回しながら構造を確認していく様は何とも言えない。
「ちょっ!! 不法侵入だってばよ!!」
ナルトが慌ててサスケを振り返るが何ら返事は返ってこなかった。
原因は些細と言えば些細な事だった。
里の復興第一という当面の方針の元ほとんどの忍が臨時休暇をもらい、住居の修理などにあたっていた。
それはうちは家も例外ではなかった。
九尾の妖狐事件の際は建物に被害はそうなく、イタチとサスケは両親亡き後もその住居に住んでいたのだが、今回は違ったのだ。
音の忍たちがうちはの集落を粗捜ししたようで、それは空き巣以上の被害に合っていたのだった。
うちはの集落は神社とイタチ、サスケの住居以外は少しずつ解体したり、そのまま新たな住居者を迎える家があったり、もしくは建て直したりと開発が進んでい
たが、そんなことは関係なく被害に合っていた。
敵はかなり荒々しく、うちはに関するものを探していたのか屋根が壊れたり、ひどい家では襖や障子などが形がないほどになっていたりと大変な状態だった。
「これは…がんばって2週間だな」
大工の言葉である。
イタチとサスケの家は、襖や障子は無事なものの、玄関や屋根に被害があった。
平屋建ての家の屋根が半分ほどない状態では、さすがに困る。
任務が忙しく、ほぼ寝るだけに帰っていた家なので物が荒らされていることには大した被害はなく、とりあえず屋根だけでも…と大工にみてもらった結果がその
言葉だった。
今回壊れたところの修繕だけなら2週間もかからないのだが、かなり年数の経った家なので、柱や棟板が傾いているので、これを機会に家の歪みを直してはどう
か、ということだった。
非常事態として里外からもたくさんの大工が里に応援に来ており、今ならしっかりと仕事ができるのでどうせなら、という大工の申し出を、イタチとサスケは了
承したのだがーーー。
「一晩は外泊か」
大工に相談したのがすでに夕刻で、作業は明日からになるということだった。
明日にはすぐに屋根の仮修繕をするので、明日の晩からは雨風が凌げるようになるとのことだが、今夜はこの状態のまま。
イタチとサスケは外泊を余儀なくされた。
「俺は…火影様の護衛でおそらく夜勤になるからいいが…お前、どうする?」
「…まあ、適当になんとかする」
と短い会話をして兄と別れたのだが、サスケには特に妙案がなかった。
「…野宿は勘弁したいな」
昨日まで野宿に近い状態で里の復興に駆り出されていた。
今日からは各自の時間を優先するようにと指令が下っていることもあり、のんびり、ゆっくりしたい。
ゆえに、仮宿舎には行きたくなかった。
ーーーとなると。
「…誰かに泊めてもらうしかないか」
全部の家が被害にあっているわけではない。
自分の同期の中でも、被害にあったのはうちぐらいだった。
さて、と泊めてもらえそうな人を浮かべようとして、はたとサスケは気づいた。
(泊めてくれっていえる友達っつー友達なんていねえじゃねえか)
アカデミーの頃から一匹狼を決め込んでいたサスケには、友達らしい友達などいなかった。
同期の下忍たちとは話はするが、一緒に食事をしたり、まして家にお邪魔するような関係のものはいない。
そうなると、他の知り合いになるが…。
(イルカは何かとうるさそうだし……カカシの所は……汚そうだな。サクラならすんなりいきそうだがさすがに女の家に泊まるってのは抵抗あるし…)
残るは…とサスケは顔を上げた。
「……ナルトなら」
(あいつも女だが普段があーだし、火影と二人暮らしだし…)
なにより、ナルトだからなんとなく、受け入れてもらえる気がした。
そう自決して、現在に至る。
サスケは玄関から入ってすぐの居間に扇風機を見つけて風にあたった。
しばらく外にいたせいで全身じっとりとした汗をかいて気持ち悪いのだ。
居間は卓袱台を中心に角にテレビが置かれ、いくつかある飾り棚には小さな鉢植えの観葉植物がいくつも置かれていた。
入り口の襖の向かいは窓になっていて外に出られるようになっている。
全体的に暖色系の色で統一された部屋は嫌みがない程度にあたたかい印象で、初めて居るというのに妙に落ち着けて、サスケはふー、と目を閉じた。
「何でお前がうちに泊まるんだってば!」
バン! と卓袱台を叩いてナルトが叫ぶが、扇風機の風に髪をなびかせているサスケには効果がなかった。
「一晩ぐらい別にいいだろ」
「お父さんに聞かないと私ではいいかどうか答えられないってば。とりあえず、事情を話してくれってばよ」
ナルトは突然のことに戸惑っているようだが、何かわけがあるのだろうと気遣っている様子が眼差しに現れていた。
サスケは、それに表情を緩めた。
(基本的に、やさしいんだよな)
思いつきでダッシュしているイメージがあるが、かなり周りのことをみていて気遣ってくれるのがナルトだったりする。
だから自分は甘えてしまえるのだろう。
サスケは事情を話す事にした。
それを「うわー、大変だってばね」と大きな目をさらに大きくして聞いていた。
「そういうことなら良いってばよ。あ、でも一応お父さんに聞いとくね。ちょっと待ってて」
ナルトはそういうと立ち上がり、玄関のほうへーーー電話をかけに行ったようだ。
ほどなくして話し声が聞こえて来る。
「うん、そう。一晩ぐらいならいいよね? …うん。うん。……ん??!! あ、そうだよね、サスケがそうなら。ん、わかったってば」
話はかなり早くついたらしい。
ナルトは居間に戻って来ると、サスケに笑みを見せた。
「お父さん、いいって。あと、仕事にきりがつきそうだから早く帰って来るって」
「そうか」
ナルトの父、四代目火影の顔を頭に思い浮かべて、サスケは許可が出た事に素直にほっとしていた。
これで駄目だったら切ない事になっていた。
それにーーー。
(父親がいたって…ナルトと一つ屋根の下)
ラッキーに違いない。
そう小さく幸せを噛み締めていたサスケの耳に、思いも寄らない名前が聞こえた。
「で、イタチさんも泊まる事になったから、サスケ、布団出すの手伝って」
「そうか………ってえっ!? 兄貴!?」
「今日のお父さんのお付き、イタチさんだったみたいで」
四代目が帰宅するということは、護衛のイタチの仕事もそこで終わるということでーーー家に帰れないイタチは適当に火影邸の仮眠室でもどこでも過ごすと言っ
たらしいのだが、「弟君を預かるんだから、君1人増えたって変わんないって」と四代目の一言でイタチもうずまき家に泊まることになったらしい。
(まあ…仕方ないか)
サスケははあ、とため息をついた。
そんなサスケのため息は、布団などを支度をし、ナルトが晩ご飯の支度を始めた頃にはとても大きなものになっていた。
「お、今日は先客がおるではないか」
「!!!!」
帰ったぞー、と大きな声と玄関を盛大な音で開け、ずかずかと居間まで来たのは自来也だった。
ちゃんと顔を合わせるのが初めてだったサスケは、初対面ということと、突然の登場にめずらしく目を見開いた。
そんなサスケを尻目に、ひょこっと台所と居間の敷居の暖簾から顔を出したナルトは、「また来たんだってば??」と眉をひそめている。
その様子に自来也はにか、っと笑った。
「ナルトのうまい飯を食べようと思ってのお。それに今日は自分で酒を持参したからそう怒るな」
「…全く。そう言って毎日のように来るのやめてほしいってばよ。食費も馬鹿にならないってば」
そうは言うものの追い出そうとはせず、台所に戻って行ったナルトにサスケはめずらしくテンパっていた。
(…三忍の…自来也だよな…??)
大きな体躯と白く長い髪。
豪快という言葉がしっくりくるーーーはどしっと卓袱台の前、自分のすぐ横に座ると、テレビのチャンネルをいじっている。
と、こちらに目を向けて来た。
うわ、っと何も言えず見上げていると、んー…と彼は唸った。
「お前は…確かうちはサスケじゃな? 今日はどうした?」
「音忍に家壊されたんだって。で、今日はうちに泊まるんだってばよ」
「ほー、それは大変だったな。…お、すまんのお」
応えたのは自来也に酒用のグラスとするめを炙ったものを持って来たナルトだった。
ナルトはサスケの前には麦茶の入ったグラスを置くと、箸を卓袱台に並べ始めた。
「そろそろお父さんたち帰って来るってばよ」
「ただいまー」
ぴったりのタイミングで玄関が開き、四代目の声が響いた。
ああ、今度はナルトの親父と兄貴か、とため息をついたサスケの目の前に、その2人とは別にもう1人、見知った相手がいた。
「あ? なんでカカシがいんだよ」
「あ? じゃないでしょ」
それはこっちの台詞だっての、と片方だけ見えている目がサスケを睨んでいる。
カカシは火影邸から四代目とイタチがうずまき家に帰る途中たまたま遭遇し、事情を聞いたカカシが「それならナルトの晩ご飯だけでも食べさせて」と何がそ
れならなんだという強引さでついてきたのだという。
そんなこんなで、うずまき家の居間はかなり窮屈になっていた。
普段は台所のテーブルで父と2人向かい合って食べるところだが、今日はテレビの前の卓袱台に、最終的にもうひとつ押し入れから卓袱台を出してくっつけて食
卓とした。
部屋は狭くなるが、充分に皆が食卓を囲めるだけのスペースが完成する。
「とりあえず俺、着替えてくるわ。あ、イタチとサスケも楽な格好のがいいでしょ? 里の支給品のでよければ俺のあるから着替えなよ」
とりあえず一晩、ということでうちは兄弟はまともなお泊まり準備はしてきていない。
四代目にも促されたことで、2人は素直に着替えに立ち上がった。
と、サスケを見て四代目は小さく唸る。
「ん、サスケぐらいのサイズだと…。ちょっと一緒に来てくれる? 直接タンスと相談しないとわかんないや」
ということでサスケは四代目と共に二階へと上がっていった。
とりあえず残されたイタチは、ナルトを探して台所へと入っていった。
ちなみに自来也とカカシは既に一杯はじめている。
「ナルト」
「あ、イタチさん、お疲れ様だってばよ」
ナルトはテキパキと食事を完成させているようだった。
テーブルの上には肉じゃがから筑前煮といったような煮物を中心に和風の献立が所狭しと並んでいる。
イタチはナルトの家に入るのも、朝食以外こんな風に料理をしているのも初めてみたが、その様子と並ぶ料理に素直に驚いていた。
四代目の代わりに家事をしているとは聞いていたが、実に板についている。
思わず黙り込み、エプロンをし、お玉を片手に汁物の味をみているその後ろ姿に魅入っていると、くるりとナルトが振り返った。
「お待たせして申し訳ないってば。もうご飯も炊けるから、もう少し待っててほしいってばよ」
「いや、その…今日はすまない」
「ほえ?? 何が?」
謝られた理由がわからない、ときょとんとするナルトに、イタチは困ってしまった。
けれど彼女はこういう性格だと思い直し、苦笑する。
「サスケともども押しかけてしまって…。お前も作業で疲れているのに料理まで……。この埋め合わせは必ずさせてくれ」
「うーん…緊急事態だし、イタチさんが悪いわけじゃないからいいんだってばよ。休めるときにはしっかり休んで欲しいし」
あんまりお構いできないけど、気にせずゆっくりしてってばよ−。
と笑顔で言うナルトに、イタチは胸があたたかくなる。
実を言うと、四代目からうちに泊まらないかと言われたときは、その好意もとても有り難かったし、なによりとても嬉しかったのだ。
(ナルトの家に…)
サスケが押しかけたことがきっかけで弟と一緒に泊まることになったとしてもとても魅力的な状況だった。
ナルトとは暗部での最初のツーマンセル以来、それなりの数の任務に共にあたっている。
自分はナルトとの暗部の任務がメインで、任務が空く時に四代目の護衛の任に就いている。
ということで、うずまき家族にはとても接点があるのだが、けれどもそれでもナルトに会えるのは任務のときだけ。
もしくはお互いの休みが合った時に修行をする程度で、家に来たりするようなことはしていなかった。
それが家にお邪魔するどころか一泊できるという状況に、内心は自分ではびっくりするくらい舞い上がっている。
今だってそうだ。
いつもの忍服を脱ぎ、Tシャツにデニムのショートパンツ、そしてそこにエプロンとお玉をプラスしたナルトは、超絶的にかわいい。
このままお持ち帰りして、自分だけで愛でられるのなら、ぜひそうしたいくらいかわいい。
そんなナルトが、自分に気遣いせずゆっくり休んで欲しいと逆にこちらを気遣ってくれている。
(本当に、かわいい)
ナルトに出会うまでは、かわいいという感情を誰かや物に抱いたことはなかった。
それがナルトが相手だと際限なくかわいいかわいいと胸が熱くなる。
ああ、いつまでもここにいたいが、それではナルトの邪魔になってしまうな。
イタチは緩みそうになる顔を意識してひきしめると、テーブルの料理を手に持った。
「もう運んでもいいよな?」
「あ、うん。助かるってばよ」
そうまぶしい笑みを見せるナルトに、イタチも微笑んだ。
その後面々の着替えが済んだところでちょうどご飯も炊けたので食事となった。
食卓には和食をメインにした実にさまざまな料理が並んでいて、サスケは目を見張った。
「これ、全部お前が作ったのか?」
「そうだってばよ。うーん、失敗はしてないと思うけど」
「ナルトの料理はおいしいよ。俺がいうのも変だけど、遠慮せず食べなさい。イタチも。まだまだ君も育ち盛りなんだから」
「ありがとうございます」
言われなくても食べている自来也とカカシをよそに、イタチとサスケは箸を持った。
ちなみに、台所を背にナルトがお誕生日席に座り、その左側の手前からイタチ、サスケ、カカシと座り、右側に手前から四代目、自来也と座っている。
サスケは取り皿に煮物をとり、一口食べてまた目を見張った。
「うまい」
思わず呟いてしまう程おいしかった。
とても凝っていたり、高級なお店のような見た目ではないが、家庭的で素朴な味はあたたかい。
実においしくてサスケはすぐに二口目を食べていた。
イタチも食べて、しみじみと呟く。
「久々にこんな料理を食べたな。お前は、…俺が料理をしないから初めてだろう」
「いや、初めてってことは……。兄貴、俺が小さいときはいろいろ作ってくれてただろ?」
下忍になってお互いに任務で生活のペースがばらばらになってからは各自の炊事になっただけの話だ。
という会話をする兄弟に、四代目とナルトは一瞬複雑な笑みを浮かべた。
「…そうか。まあ自分だけだとわざわざ料理もしないしね。うちはナルトが俺の身体のこと気遣っていろいろ作ってくれるから助かってるけど」
「俺はそれにお邪魔してる感じだからほんとナルトには頭あがんないんだよねー」
「…それなら任務に遅刻せずちゃんと来るようになってほしいってばよ」
ナルトの料理は相変わらずおいしいなあ、と幸せそうな顔をするカカシにナルトが目を細くする。
えー、それならナルト、モーニングコールしてよ、という上司に、ナルトはえー、とますます目を細くしている。
「なんで私がそこまでしなくちゃいけないんだってばよ」
「俺とナルトの仲でしょ」
「カカシさんは、ナルトが小さい頃から知り合いなんですか?」
あまりに気兼ねない様子が気になってイタチが聞けば、にんまりとした空気をカカシが出した。
やはりそうらしい。
四代目が説明してくれる。
「ナルトが生まれたばっかのときからカカシはうちにきてナルトの面倒みててくれたんだよ。俺もなかなか忙しくて、職場にもなかなかつれていけなかったから
甘えっぱなしで」
ナルトの出自はいささか複雑なので、たとえそこが火影邸でもおいそれと連れて行けなかった。
それで四代目の弟子であるカカシがナルトを面倒みていたのか、とイタチが納得していると、でもさ、と四代目が優しい目でイタチを見た。
「…イタチは俺と違って本当にサスケの面倒をよく見てたよね。サスケ背負って下忍の任務行く姿みて俺関心してたもん」
「っげほ!! ………ってえ!! イタチさん、サスケつれて任務に行ってたの!?」
そんな姿が想像できなくてナルトが食べているものを喉に詰まらせるほど驚いていると、四代目がお茶の湯飲みを差し出しながら続ける。
「サスケ、今はどうかしらないけどものすんごいお兄ちゃん子で、人見知りも激しくてイタチがいないと泣いてばっかで1人にしておけなかったんだよね」
「そういえば……そうでしたね」
「おい、俺にはそんな覚えないぞ」
もうだいぶ前のことだ。
イタチが記憶を反復しながら応えると、サスケが当然のごとく抗議した。
それには、四代目は当時を知るカカシと顔を見合わせて「そりゃ……」と答えた。
「君がまだ3歳か4歳ぐらいの頃だから覚えてないのは当たり前だよ。でも僕もカカシも君がイタチが草むしりやらゴミ掃除してる後をよちよちついて回ってる
の見たことあるよ」
「そんな馬鹿な……」
信じられないと目元を手で覆ったサスケにナルトはけたけたと笑った。
「はははっお前ってば可愛い時もあったんだってばね」
「このウスラトンカチが! 俺は覚えてないって言ってんだろ!」
完全にからかうナルトにサスケはもういい……と食べる事に関心を向けた。
ヤケ食いに近いサスケを尻目に四代目の口は閉じない。
「にしてもよくイタチってサスケの面倒よく見てたよね。別にいやじゃなかったの?」
「……いやというか……気づいたらそうなっていたという感じですから。あ、ナルト、これもおいしいな」
「え? ありがとうだってばよ」
イタチはそれ以上会話を続けたくなくて、四代目の目を一瞬だけ強く見てからナルトに微笑みかけた。
(ナルトは、うちの事情を知っている)
うちは一族は九尾の妖狐事件で壊滅した。
父は九尾との戦闘中に戦死、母は非戦闘民の誘導の際に直接ではないが九尾の攻撃を受けた。
そのときの怪我がもとで、サスケが1歳になる前に亡くなった。
ナルトは完全ではないがこういった経緯を知っているので、このままうちの話題をしたくなかった。
彼女が必要のない責任を感じることが目に見えてわかるからだ。
四代目は純粋に自分がよくサスケを面倒みていたということを褒めてくれようとしているのだろうが、自分としては大したことをしたつもりはなかったので、褒
められても正直身に余る。
サスケを任務につれていっていたのも、保育園の空きがみつかるまでの数回のことだ。
確かに家事をして、幼い子供をみて、任務もこなして、という生活は慣れるまで時間はかかったが、人に頼るほどでもなかった。
ひとえにサスケが聞き分けがよかったこともあるので、自分が評価されるならサスケも褒められて良いはずだ。
とにかく、ナルトには変な気を回してほしくない。
実際おいしかった料理を褒めれば、ナルトはこれ以上ないほど極上の笑顔を返してくれた。
任務のときにはあまり見る機会がない表情だ。
(せっかくこんな機会に恵まれたんだ。俺のことではなく、ナルトのことが知りたい)
四代目は自分が話題を変えたいことを察してくれたのだろう。
ふっと微笑むと、隣の自来也にお酌をし出した。
そんな頃には男ばかりの食卓である。
ほとんどの料理が空になってきていた。
それにナルトがテキパキと片付けを始めたのでイタチは手伝おうとしたが、「お客さんだからだめだってばよ」と小首を傾げて笑顔で言われたので(たまらなく
かわいかった イタチ談)のでおとなしくしていた。
サスケは久々にまともにおいしい食事にありつけて満ち足りた顔をしている。
最近富みに素直じゃないだけ可愛げがない(同期にはクールビューティーと言われているようだが)弟でもほわーんとした顔をしているのを見ると微笑ましい。
そうイタチものんびりとしたとき、ふっと四代目が挙げた話題が空気を変えた。
「そういえば、先生はいつまで里にいらっしゃるんですか?」
「特には決めておらん。まあ…小説のネタがもうひとつふたつ見つかったらかのお」
「え! 自来也様、その小説って…!!」
きらきらとした目で身を乗り出したカカシに、自来也もフフンと決め顔で答える。
「そうだ、イチャパラの新作だ!」
「きゃー!!」
「いやいや、カカシ、そんな盛り上がらないでよ。先生も。未成年がいるところで官能小説の話はしないでください」
ピシ!! っと四代目の叱責が飛ぶものの、一気にテンションがあがってしまったのかあまり効果はなかった。
真剣にネタについての話が進んでいる。
「ネタなあ。それが行き詰まっておってな。こうイエーイ! とした刺激が最近なくての、とんと筆が進まん」
「イエーイ! とした刺激というと……例えば?」
「例えばっつーと……そーだなー……おっ!」
「え? なに?」
自来也はざっと後片付けをして台所から戻ってきたナルトを見てにやーっと締まり無く頬を弛ませた。
その顔に嬉々としてカカシが、訝しげに四代目が身を乗り出した。
「何か思いついたんですか?」
「先生、変なこと言いませんよね?」
「おう、変なことではないぞ。ナルトのおいろけの術だ。あれやった時のナルトがイエーイ! って感じだのう」
イエーイ! と片手を挙げた自来也の言葉と裏腹に、一瞬シーンとなった。
が、すぐにどよめいた。
「いきなりなんだってばよ!!」
「ええっ!! 見たことあるんですか!?」
「え、お前それって…アカデミーの…!」
「「おいろけの術?」」
上から、ナルト、カカシ、サスケ、そして四代目とイタチである。
それぞれが反応を示したのに再びシーンとして、なんとなく四代目が場を仕切り始めた。
「おいろけの術というのがあるんですか?」
「何だ、お前知らんのか」
「知りません。カカシとサスケは知ってるみたいだね」
「一度みたいんですけど、いくら頼んでもやってくれないんですよ」
「アカデミーの授業で女子だけでやった変化の術だろ?」
サスケによると、女子だけで変化の術のテストをした際、テーマを決めてやろうということになり、さらに審査員として三代目などを呼んでの機会があったとの
こと。
その際のテーマが「色気」。
ただこのテーマに女子たちは必要以上に盛り上がりかなり過激な変化の術が多く出て「とにかくすごかった」と伝説になったのだ。
そのとき、特にナルトがやった術が審査にあたった男性陣に好評で(術の工夫、多重影分身というレベルの高さなどもちゃんと評価されて)一時期話題になって
いたらしい。
それをカカシが聞き及び、ぜひ一度見せて、といっているがナルトは了承しない。
そこまで聞いて、四代目は「ああ……なんか三代目が言っていたかも…」と首を傾げた。
「鼻血が止まらなかったって言ってたよ。ナルト、そんな際どいの?」
「うーん。。。あれはみんなの意見をもらってやったやつで…際どいっていうか…ほぼ裸だってばよ」
「いや、裸じゃないだろ! 雲がかかって見えそうで見えない、その絶妙さが良いんじゃ! ほれ、皆にみせてやれ!」
「やだってばよ!!」
即答したナルトの顔は真っ赤だ。
(裸? 雲がかかって見えそうで見えない??)
一体どんな術なんだ!
イタチが思わずナルトを見れば、彼女は顔を赤くしたまま、少し目を潤ませていた。
よほど恥ずかしい…というかやりたくないのだろう。
とても気になるが、これでは聞けないな。
そう思っているとナルトが心底こまった様子で嫌だと訴えている。
「いやほんと、あれはもうタブーなんだってばよ。エロ仙人に見せたのはどうしても修行つけてもらいたかったからで…」
「なんだつまらんのおー」
「つまらないって何ですか。俺の娘に変なことさせようとしないでください」
「そうは言ってもなー。変化して大人になったナルトはこう、色気に溢れているというか」
「じゃあナルト、この人は言い出すとなかなかうるさい人だから、とりあえず大人に変化してみて」
お父さん、これまでの説明でだいたいどんなのかわかったから詳細は聞きません。
とりあえず、変化してみせたという事実だけでいいからちゃっちゃとやりなさい。
と言外に冷静に諭す父の様子に、ナルトはう、っとさらに涙目で言葉に詰まった。
それがいたたまれなくてそっと顔をうかがうと、ふっとナルトがイタチを見た。
「うう、イタチさん…」
「ナルト……。俺は無理にしなくてもいいと思う」
小声で悲鳴を上げるナルトにイタチも小声で返すと、ふるふるとナルトは首を横に振った。
「一度エロ仙人に見せた私が悪いんだってば。大人になるだけなら」
変化の術にもいろいろある。
第三者の姿を真似るのが最もよくあるケースだが、それ以外にも自分の身体をベースに年齢を変えたり、性別を替えたり、ということもありうるケースで、アカ
デミーなどでも練習する。
実際の任務では自分の正体をばらさないために全くの第三者になるが、後者も少なからず実用する。
うん、とナルトはイメージをちゃんと頭に浮かべると、印を結んだ。
「変化!!」
ぼふん、と白い煙がナルトを包んだ。
<後書き>
総ナルコ受です。
おいろけの術、アカデミーでの変化の術の練習内容については、私がここでのナルコのための設定を勝手に作っています。
ご了承ください。
イタチさんはナルトがかわいくて仕方がないってことでお願いします。
次で完結です。
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