月を読む2








(なんて速さだ)


右足の傷が痛むが、イタチは構わず飛んだ。
未だ月読との距離は数メートルはある。
迷っていてはすぐにまかれる。









 体力はまだ持ちそうだが、半刻ほど真剣に走っているとさすがに疲れてくる。
 すでに里までほどない所まで来ていた。


(一体どこに行くつもりだ。この先は里の森に入るだけだぞ)


枝の間から里の防壁が視界に入り始めているが、月読のスピードは俄然落ちる様子がない。
2人は山腹を縫うように登っていた。


「!」


イタチは急に進むのをやめ、足場にしていた木の枝から飛び降りた。
空中で前転し、空気抵抗をつけて着地する。


「・・・気配が・・消えた?」


今自分が立っているところで、忽然と消えたのだ。
何かに掻き消されたように一瞬にして。


 イタチは視線をせわしなく四方に向けた。
かすかに上がった呼吸を落ち着かせ、じっと神経を張りつめる。
じんわりと目が熱くなった。


イタチはちょうど前方で視線をぴたりと止めた。
目を凝らし、ひっかかったものを見極める。


(これは・・・)


前方の森一帯にチャクラの膜が張られている。
ーーー結界だ。
確かめるようにイタチはそれに手を伸ばした。
ちりり、と火にかすったような痛みが走ったが、するりと手は結界を越えた。


(侵入者を拒む類ではない・・。だが)


一歩でて半身を結界の向こうに入れて、イタチは頷いた。
結界の向こうは全く景観が変わっていた。
何もせずにこの結界を越えれば、知らず森の中をぐるぐると彷徨わされることになっていただろう。
結界に隠れるようにして幻術が張られているためだ。
とても無造作にみえるその二つの忍術にイタチは感嘆した。


(見たところ半永久的なものだな。・・月読か)


凝っては以内が、永続的なものであれば凡人にできるものじゃない。
 半身を結界のこちら側にもどし、もう一度イタチは視線を彷徨わせた。
今度は結界を這うように目を凝らす。


(どこかに抜け穴があるはずだ)


これほどの術を解くのは正直骨が折れる。
少しでもチャクラが弱まっている所を見つけて部分的に破壊したほうが効率がいい。










目的の場所はすぐに見つけられた。
すこし左手の方向の下方。
イタチはそこに片膝をつき、かけられている幻術を解くべく、反対の印を結ぶ。
 ぱん!、と乾いた音がして、そこだけ幻術が破壊された。
これだけ微弱な破壊ならば月読に気づかれないだろう。
イタチはそこをくぐった。












 月読の気配はすぐに見つけられた。
思ったよりもずっと近いが、何か月読のいるだろう方向から響いてくる音がある。
何かが流れ落ちる盛大な音だ。
夜の静寂を破るそれは、けれど自然の景観を壊すものではない。


「・・・滝?」


訝しげにつぶやいて、イタチはそちらへ歩きだした。











 針葉樹の立ち並ぶ森をしばらく歩くと、次第に視界が開けてきた。
目線の上のほうに大きな岩と下へと動くものが見える。
やはり滝のようだ。
木々がなくなった分、地面を覆うのは笹になり、少し歩きづらい。
奔放に生えている笹をかき分けて、イタチは岩場に出た。
彼のいる所からほどない距離に 怒濤のごとく飛沫をあげる滝があった。
夜の滝はその身を漆黒にし、あたかも黒い龍のようだ。
絶対的な存在感に、イタチを一瞬息を止めた。
そうして滝に近づこうと歩を進めようとした時、見つけた。
滝のすぐそばに、ぼうっと小柄な影が見える。


月読だ。


思わず動きを止めたイタチの見る前で、月明かりにほのかに浮かぶ彼女はふいに左腕を伸ばした。
イタチのはめた手袋をはずし、包帯もはがす。
次の瞬間イタチは我が目を疑った。


(傷が・・・ない?)

淡い月光に浮かぶ彼女の腕は、イタチの見ている所からでも真っ白で、どこにも傷なんて見えなかった。

(馬鹿な・・そんなはずは・・)


驚愕するイタチの前で、月読は黙々と動いていた。
手当てに使われていた包帯やらを丁寧に畳みホルダーにしまうと、目にも止まらぬ速さで何か印を結んだ。
ぼん、と煙に覆われ、その中から出てきた彼女は月読であって月読でなかった。



(金の・・?変化していたのか?)


漆黒だった髪は、金色になっていた。
金の鱗粉を振りまくしれは神々しいばかりに輝いている。
所々付いた血が黒く変色しているが、そんな事が気にならないほど美しいものだった。




 イタチは空に舞うそれに、心から魅入った。




















 そして、月読の手が顔に伸ばされ、面がとられた。
容貌が露わになる。










腕と同じ白磁の肌に、血色の少し欠けた唇。
頬には引っ掻いたようなあざが左右三つずつ。
変化していたのは髪だけだったようで、瞳は青のままだった。
金の睫に縁取られたそれは水晶のように光っている。










 誰だ・・・? いや・・自分はあれが何者は知っている。
木の葉の里の者ならば誰でも知っている。
イタチはつぶやいた。


「うずまき・・ナルト」


弾かれたようにこちらを見た彼女の顔には、これでもかと驚倒の色が浮かんでいた。

































































(うそだってばよーーーー!!!!!まいたと思ったのに何でここにいるんだってば!!??)


ナルトは身動きがとれないほどに慌てた。
もう頭の中はショートしそうで、それは口調が普段のそれに戻るほどだった。




























 火影岩から見て右側を囲む山腹の一端にあるここはナルトの隠れ家的場所だった。
幼い頃、里の人々の目に付かない所はないかと森に入り、山腹を登っているうちに見つけたのだ。
家では忍術の修行はできないし、かといって里の演習場や周辺の森では里の人の目に付く。
ここは里からあまり離れていないが、わざわざ山を登ってくる人は少ないし、いたとしてももっと山裾のほうで狩りをしたり山菜を採って帰ってしまうのでここ までは誰もこない。
それでも念のためにと結界を張り、幻術をかけた。
そうする事の自分のエゴに気が引ける部分はあったが、これ以上里の人々に冷たい目で見られるのは耐え難かった。





 滝の脇には巨木がある。
真っ白な幹の、冬でも細長い三日月のような葉を茂らせる不思議な木だった。
その木の中は室になっていて、うねる根の間からそこに入ることができる。
ナルトはそこに修行用の巻物やら忍具やらを持ち込んでいた。
暗部となってからはここで支度をしている。
家や火影邸で支度をして、入る所や出て行く所を万が一見られ、自分が暗部であることがバレたら父に迷惑がかかる。
九尾の器である自分は目立つ事を極力避けた方がいいのだ。
里の運営的に無視できないほどの力を身につけていたとしても、それを表に出しては何が起こるかわからない。




人前では呪印の影響を受けて、ドベでお調子者でいればいい。
 






というわけで任務を済ませたナルトがここに辿り着き、さあ着替えよう!と変化を解いた時イタチの声が聞こえたもんだからたまったもんじゃない。


(ど・・どうしよう・・・私が月読だってばれちゃったってばよ・・・)


父には何があるがわからないから絶対に正体がばれないようにと言われている。
とりあえずーーー逃げる?
でも、今更逃げても正体がばれた事実は変わらない。
それに相手はあのうちはイタチだ。
今からうまく逃げられるわけがない。


(・・・っていうかうちは一族にとって九尾ってかなり危険だってばよ!)


九尾はうちは一族を壊滅させた。
イタチが自分を快く思っているわけがない。
ダブルパンチのこれこそ絶体絶命。
ナルトの背筋を冷たい汗が滑り落ちた。


 身を退きたい気持ちが表に出て、おずおずと後ろに下がった。
が、それはまずかった。
ナルトは汚れを落とそうと滝壺に非常に近い岩の端にいた。
そのため踏み下がった所に足場はなかった。
突然の浮遊感にナルトは悲鳴を上げた。


「えっ・・!わっ嘘!」
「・・・っ!!」


イタチはとっさに瞬転してナルトの所まで飛ぶと、彼女の腕を掴んで引いた。
がくんとひっぱられたナルトは、そのまま反動でイタチに抱き留められた。

「・はあ・・・助かったってばよ・・・・・・・って今はそれどころじゃない!」


ばっとナルトは腕をつっぱってイタチから離れようとするが、彼が腕を掴んだまま咎めるような眼差しで見下ろしてきたので動けなくなってしまった。
低い声音がナルトの耳朶を打つ。


「また逃げるのか?」
「べっ、別に逃げてないってばよ!!」
「逃げようとしている」
「あんたが追っかけてくるからだってばよ!!」
「イタチだ」
「・・・・は?」
「うちはイタチだ。名前ぐらい覚えてくれてもいいだろう」


イタチはそう言うとナルトの負傷していたはずの腕を見た。
そこにはやはり傷は残っていない。


(確か九尾の影響で・・・・)


怪我をしても瞬く間に治ってしまうと聞いたことがある。
それにしてもこんなに早いものなのか。
なめらかな肌の感触に少し酔いしれながら、イタチは傷がないことを確認すると彼女の腕を放した。
ナルトはすぐに距離を置こうともしたが、イタチの様子に足をとめた。
彼の様子はあまり馴染みのないもので、ナルトは居心地の悪さを感じたが、危機感のようなものは感じなかった。
不思議そうな視線を相手に向ける。


「・・えっと・・・イタチ・・・・・さんは・・私の事・・その・・嫌いじゃないってば?」
「嫌いも何も今日会ったばかりだろう」


 イタチはつぶやくと岩に腰掛けた。
目線が近くなったことにどきりとしながら、ナルトは問いを続けた。


「いやそれはそうだけど・・だってイタチさん・・うちはじゃん」
「俺がうちはだとお前を嫌うのか?お前は俺がうちはだから逃げるのか?」
「それは違う・・・別にイタチさんじゃなくても逃げたってばよ」
「やはり逃げるつもりだったか」
「え!!あっ!!・・・・っ〜・・」


痛い所をつかれて頭を抱えるナルトは、外見に相応した普通の子供に見える。
本当に月読なのかと疑いたくなるほどだ。
イタチは苦笑すると自分からも問いかけた。


「お前、歳は?」
「お前じゃないってば。ナルトだってばよ」


むっとした声で返されたことに、イタチは笑みを深めると律儀に返した。


「悪い。・・・ナルト、歳は?」
「今年で12歳だってばよ」


(そうか・・サスケと同じ歳だったな・・)


「いつから暗部に?」
「んー・・・3ヶ月ぐらい前だったかな・・・って何でこんな事聞くってば?」


小首を傾げると、謝罪を請う切なげな眼差しを向けられた。


「・・・嫌だったか?」
「へ!?いや全然嫌じゃないってばよ!」


むしろナルトは嬉しかった。このように肉親やそれに近い人以外から質問されるのは初めてなのだ。


(イタチさんは私の事、嫌じゃないみたいだってばよ)


里の大人たちは自分を毛嫌いする。
温かく接してくれるのは父とその弟子のカカシ、師匠の自来也。
三代目にアカデミーのイルカや一楽のおっちゃんぐらいだ。
物心ついたときから罵声を浴びていたので慣れたといえば慣れたが、やはりこうして普通に接してもらえるのは嬉しい。
かなり嬉しい。


 自然とにこにこするナルトをイタチは不思議に思ったが、質問を続けた。


「忍の技術は誰に教わった?火影様か?」
「うん。お父さんに習ったってばよ。エロ仙人にも習ったことあるってば」
「エロ仙人?」
「あ・・・えーっとお父さんの先生なんだけど・・」
「まさか・・三忍の自来也の事か?」
「そうそう!自来也だってば!なんでイタチさんがエロ仙人の名前知ってるってば?」
「忍なら誰でも知っていると思うが・・・」


三忍と言えば木の葉のみならず他里にも名が轟いている。
そんな三忍の1人と面識があるばかりか修行までつけてもらったというのにこの子の無頓着さは何だろう。
だがそれは好ましいものだとイタチは受け止めた。


「小さい頃から修行してたのか?」
「うん!だから私ってば今はかなり強いってばよ!」


胸をはる彼女にイタチは苦笑した。


「確かに・・一度手合わせを頼みたいな」
「ええーっ!!それは駄目だってばよ・・・」
「・・・駄目?」
「その・・・・私と一緒にいるとこ見られたら、イタチさんに迷惑かけるってばよ」


しゅん、と俯いてしまったナルトに、イタチは地雷を踏んだと自分を叱責した。
ナルトはーーー里の者から九尾憑として蔑まれ、四代目火影がいるというのに言葉にするのも躊躇われるようなことをされている。
四代目はなんとか歯止めをかけようとしているが、例え信頼の篤い四代目が出たとしても、恐怖心や怒りというものは簡単にはなくならない。
 イタチ自身、九尾の妖狐事件についてはいろいろと思うこともあるが、実際にナルトと話してみて、負の感情は全く感じない。
もともとあった同情心や庇護の気持ちのほうが大きくなる。


「俺も、正直九尾は怖い。・・・うちは一族はあのときに壊滅したからな。父は九尾との戦闘で死に、母はあの時の怪我がもとでしばらくして死んだ」
「・・・・・」


ナルトがびくりと身体を震わせた。
それに気づいたがイタチは続けた。


「四代目火影様は強い。俺なんかよりもずっと強い。忍としても・・人としても」
「・・・何が言いたいんだってばよ?」


悲しげに揺れた晴天色の瞳を、イタチは真っ向から見返した。


「例えお前に封じられているのが九尾だとしても、俺はお前を怖いとは思わない」


里長を信頼している。
彼の術を信頼している。
だから恐怖心はない。


「それに、お前と話してみて、怖さもなにも感じない。俺は、お前を嫌おうとは思わないよ」
「・・・っ・・」


ナルトは胸で詰まっていたものが溢れ出すのを止められなかった。
とっさに顔を手で覆うが、それでも隠しきれずに零れたものをイタチに咎められる。


「なんで泣くんだ」


ため息をつき、立ち上がってすぐそばまできたイタチから俯いて顔を隠しながら、ナルトはひきつく声を絞り出した。


「っ・・だって・・・だって・・嬉しいんだってばよ・・・っ」
「・・・嬉しい?」
「・・うん・・・そんな風に言ってもらえることなんて・・・一生ないと思っていたから・・・」


ぐす、と鼻をすすりながらも涙を拭い顔をあげたナルトは満面の笑顔だった。
任務開けでところどころ汚れた顔。
涙で目元もぐちゃぐちゃでーーーでも、花がやわらかくほころぶような愛らしい笑みに、イタチは大きく目を見開いた。


「・・・・・っ」
「・・・イタチさん?」


微かに笑みをひっこめて小首を傾げ、潤んだ大きな目でこちらを見上げてくる様子に、イタチは顔が熱くなるのを感じた。
咄嗟に口元を手で覆うが、少しでもその笑みをみていたくて、顔は背けられない。
なぜだろう。
目の前の金の光をーーー無視できない。
何故もっと早くこの子と出会えなかったのだろう。
里にとって、さまざまな意味で有名な少女だというのに。

イタチは複雑な思いを感じながらも安心させるために微笑むと、そっと指先でまだ残っている涙をぬぐってやった。





































「もう一つ聞いて良いか?」
「いいってばよ」


ナルトはほどなくして泣きやんだ。
目の下が少し赤くなっているが、表情は明るい。
防具を外し、いつもの忍衣に着替えて、今は濡らしたタオルで髪の血を落としている。
声をかけたイタチはといえば、適当に歩き回ってナルトの隠れ家を物色していた。


「何で名前が月読なんだ?何か由来があるのか?」
「えっ・・ああ、由来・・あるってばよ」


どこか歯切れ悪くナルトは答えた。
ぎゅっ、と髪をタオルで挟む。
だいぶ血は落とせたが、つんとした鉄のにおいは消えない。
ナルトは顔をしかめた。
このにおいは嫌でも自分のした行為を思い出させる。
覚悟を決めた事でもやはり心のしこりがふさぶられる。


沈黙した彼女のそばにもどりながらイタチが再度声をかけた。


「ナルト?」


金色の頭が動く。
しばらくしてどこか掠れた声が響いた。


「・・・私が初めて殺した子が・・私を見て月読って言ったんだってばよ」


その子は血継限界を持っていた。
誰にも手出しが出来ないほどに強力で、対処に困った地域政府が木の葉に依頼した。
事前調査の結果、いまだ五里がちゃんと形成される前に一族として名を馳せていた者達の子孫が先祖返りで能力がでたのだろう、ということだった。
里で保護するか、という話もでたらしいが、結局は殺害するということで任務が決まった。


「私よりもちっちゃくて・・やせ細ってて・・・。私を見て、本当に嬉しそうに笑って、月読様がつれてってくれる。お父さんとお母さんの所に早くつれてって くれるって・・」


 その子は心から死を望んでいた。生きることを諦めたその子笑顔はとても忘れられない。


膝を立てて座り、その上に顔を置いてナルトは儚げに笑った。
イタチは黙ってその笑みを見つめていた。


「里に帰ってきてから調べてみたら、月読っていうのはその地域の昔話の中の死の国の神様だってわかったんだってば。特にあの子の一族は月読という神を信仰 してたんだってばよ。・・・あの子にとっては、血継限界も、・・・ましてや忍なんて関係なかった。・・・制御できない力があるってだけで・・・」


ぐ、っと唇を噛んだ様子に、イタチはあえて問いかけた。


「月読は・・どんな姿なんだ?」


ナルトは弾かれたように彼を振り返ったが、しばらくしてまた口を開いた。


「髪が黒くて、肌が真っ白で、右頬に模様があるんだってば」
「・・・お前は月読になりきっているというわけか」
「私が初めて殺したあの子のことを忘れないために。・・・やるならところんやらないと」


にしし、と笑ってナルトは立ち上がった。


「私はこの里が大好きなんだってば。だから守りたい。だから暗部になった」
「それが殺しでも?」
「その覚悟は忍なら誰でも持たなきゃいけないものだってば」


それを自分はあの子の時に覚悟した。


「イタチさんは違うの?」
「俺は・・・」


見つめるナルトの顔を白い光が照らした。
月の光とは違う熱いほどの黄金を纏った白い光。
イタチはそれに言葉を切って空を見上げた。夜が明けたのだ。



 答えられないでいる自分を彼女は振り返ると、太陽と同じ目映さで笑った。


「もう朝だってばね」
「ああ」
「早く帰って朝ご飯の支度しなきゃなー・・あう、宿題終わってない・・・。またイルカ先生に怒られる・・・ああ、きっとサスケにはまた馬鹿にされるって ば」


思い悩む様子に思わず笑ったイタチは、そこに登場した弟の名に柳眉を潜めた。


「サスケを知っているのか?」
「アカデミーで同じクラスだってばよ。・・・お兄さんの前で悪口は言いたくないけど、あいつ、いっつも私に突っかかってきて、馬鹿にするんだってばよ。気 に入らないならほっといてほしいのに」
「それは・・・・」


イタチは少し考えて、嫌な顔をした。
どこか高飛車な性格の弟は、好き嫌いがそれなりに激しく、嫌いなものには目も向けないだろう。
だが好ましいものにはとことん執着する。
食べるものも好きなものであれば三食それでも平気なタイプだ。
それがナルトに対して突っかかっているとなればーーー。


(これは、早々に地盤を固めたほうが良いか)


自分はナルトと出会った。
今回のこの縁をなんとか続けるためにできることをしなければ・・・。



「ナルト、・・・朝ご飯を作るということは、火影様はご在宅か?」
「うん。昨日はあんまり残業せずに帰るって言ってたから」
「そうか。・・・少しお話をしたいのだが、家に伺っても大丈夫だろうか?」
「え?うん、別に良いってばよ」


何か仕事のことかな?とあまりナルトは疑問に思わずにイタチに了承の旨を伝えると、彼はよかったと微笑んだ。
その笑みに、ナルトはドキッとした。


(な、なんでこの人こんな綺麗なんだってばよ)


あまり美というものはわからないが、イタチがとても美形だということはわかる。
弟のサスケも同期うちではとても人気があるしーーーナルトからするといけ好かないクールなガキだが。
イタチは年上であることもあり、精悍な顔立ちと落ち着いた雰囲気に厳しそうな印象も受けるが、今のように笑うとがらりと印象が変わる。
とても華やかで、でも男性らしいものも感じて・・・でもなんというか綺麗で・・・とにかくどきどきとしてしまう。



(うう、このどきどきはなんなんだってばよー)


家路に着くまで、ナルトは落ち着かない胸元をぎゅっと掴むこととなった。























 そして、突然の来訪者に四代目が驚きつつも、イタチをナルトのペアになることを了承したのは、それから1時間ほどあとのことだった。