夜を裂く4
「兄貴?」
ぎし、と廊下の板が軋んだ。
が、サスケは縁側で、立てた膝に顔を埋めている兄の様子に足を進めていた。
そろそろ日付が変わるという刻限に帰宅したサスケは、玄関を入ってすぐ、いつもと違う気配に首を傾げたのだ。
幼い頃のようにその横に座ると、微かに兄の頭があがる。
「…どうした?」
「それは兄貴のほうだろ」
部屋に入るわけでもなく、庭を見るわけでもなく、―――こんな時間に一体何をしているんだ。
任務から帰って来たなら早く休めばいいだろう。
サスケ自身は今日の昼過ぎからの活動だったので、何日にも渡る任務についていたイタチよりも疲労は少ないはずだが、それでも家に帰って来ると風呂に入って
早く横になりたいと思う。
とサスケはそれだけを最初思ったが、あまりにも兄が、―――悩んでいるようだったので疑問に思ったのだ。
なんとなく並んで座り、顔を腕の中に埋める兄の頭を見つめながら、サスケはため息をつく。
「任務で何かあったのか?」
「…いや……」
任務中ではあったが、任務自体ではない。
今はあの男の言ったことを思い出したくなくて、短くそう返す。
サスケは大して気にした風もなく、だが呆れたように再びため息をついた。
「ナルトと喧嘩したわけでもないんだろ?」
「……?」
確信を持って言う弟に、イタチは顔をあげた。
なぜ断言できるのだろう。
顔をあげた自分に、サスケは細めた目を向けて、仏頂面で答えてきた。
「さっきまでナルトといたからな」
あいつ、普通に元気だったから兄貴と喧嘩したとは思えない。
そう言ったサスケに、なぜ今まで一緒にいたんだろう、としばし思案して、そういえばサスケが大蛇丸に弟子入りしたのだと思い出して納得した。
現在木の葉は、綱手と大蛇丸を担当にして、音の里の解体作業を始めている。
それがこの折り、いくつか拠点がある音の里のうち、本部を実地調査するとして、綱手とカブトが派遣されることとなった。
そこにナルトが綱手の護衛として同行していた。
帰還した調査隊は報告書の骨子を大まかにでもまとめるため、そのまま火影邸の一室で作業に移った。
大蛇丸に弟子入りしたサスケは、師とともにその作業に携わることとなり、当然、調査組に同行していたナルトと顔を合わせることとなった。
「元気そうだった。…兄貴が帰ってるかどうか聞かれたけど、わからなかったからな。そのように答えといた」
「…そう、か…」
「あいつに会ったら、無理しないように言ってくれ。兄貴の言う事なら聞くだろ」
「…何かあったのか?」
「大蛇丸の器候補とやり合ったらしい」
「やりあった…? ナルトは…?!」
まさか怪我を…?!
思わず大きな声が出て、は、っとサスケへ表情を歪めると、弟は苦笑していた。
「無傷だよ。…やりあった相手と、やりやった理由が問題なんだ…」
ため息をついて、サスケはカブトから聞いた、とこぼす。
大蛇丸は自分に目をつけたように、次代の器候補を何人も監禁し、ときには自分の配下として里においていた。
その中でもずば抜けて優秀で大蛇丸の器にふさわしいとされていたが、不死の病で器にもなれないと自暴自棄になっていた忍がおり、そいつを生かすためにやり
あい、結果約束をしてその場を治めたらしいが…。
「自分は大蛇丸を捕まえた忍だ。自分が憎くないか、と言ってたきつけたらしい。激昂したその忍に当然攻撃されたけど、自分が何がなんでも治療法を見つける
から死ぬな、と」
…またあいつは…。
知らず握りしめた手に力が入る。
大蛇丸の器候補の中でもその筆頭で、不死の病を負ってもなお生かされていたとなれば、殺すには惜しいほどの相当の手練か…能力を持った忍のはずだ。
情報が少ない中、そんな輩を相手にするなど無謀だ。
ナルトに実力が備わっているのは認めるが、時折の無鉄砲さはいつもひやりとする。
はあ、と苛立ちと安堵感で息を吐き出していると、サスケが庭へと目を移しながら呟いた。
「…でも、あいつに言われると、信じたくなるんだよな」
何事にも全身全霊で、その言葉は本当に心から言われているのが、なぜだかわかる。
底抜けの明るい笑顔に、引き寄せられる。
心のどこかに存在する孤独感が、彼女に添いたいと願う。
ーーー無条件に、信じたくなる。
ーーー自分の信頼に、必ず応えてくれると確信できるから。
「…俺が呪印で暴走したときもそうだった。あいつは自分のすべてをかけて俺を止めてくれた」
…仲間だから、とか友達だから、とか…俺が後悔するのを気にかけて…命をかけてくれた。
そういう人物だとわかっているから、こちらも自分のすべてもかけられる。
「まあ、あんなことがなくても、初めて会ったときから不思議と信じられる奴だったから…確か、君麻呂だったか…そいつがほだされたのもなんとなくわかるん
だよな」
「…そうか」
イタチは縁側から降ろした膝頭にそれぞれの肘をのせ、組んだ手に顎をのせるとふっと空を見上げた。
ーーー月は、厚い雲が覆ってしまって、見ることができない。
(ナルトは、もう隠れなくても良くなってきている)
木の葉崩し以来、里の人々のナルトへと向ける眼差しは変わってきている。
近い将来、”月読”としてではなく、”うずまきナルト”として暗部に所属する日も近いだろう。
それほど、彼女の存在は里の中でその価値を増し、求められることも増えているのだ。
(…それであれば…)
彼女は、大丈夫だ。
それならばーーー。
「………」
「…兄貴?」
「サスケ、ありがとう。おかげで頭がすっきりした」
「は?」
小さくではあるがめずらしく笑みをみせた兄に、ぽかん、とサスケは口を開けた。
が、俊敏な動きで立ち上がり、玄関へと進み始めた行動に、慌てて自分も立ち上がる。
「こんな時間からどこに行くんだよ?」
「調べなければならないことができた。…お前は早く休め」
そう言って振り返ることもなく家を出て行った兄に、サスケはもう一度声をかけようとして、口を閉じた。
何かを確信したような雰囲気だった。
こういうときは何を言っても、本人の気が済まないと無駄だろう。
ふぁあ、とサスケは大きな欠伸をした。
「こんなに支部あるんだってば?!」
「研究施設に…収容所に…、まあ、いろいろと用途があったからね」
カブトのまとめた資料をみたナルトは驚いた声をあげた。
音の里は木の葉とは違いさまざまなところに小規模から中規模の支部を有しており、その数にナルトは目を丸くしていたのだ。
火影邸の一角の、図書館のような区画と小さな部屋がいくつか連なったそこは大蛇丸のエリアだ。
木の葉の里での軟禁が決まった際に三代目と相談した結果、大蛇丸に研究室を与えることに決まり、部屋の多く余っていた(主に地下の区画)火影邸を改装した
のだ。
当然反対意見も多かったが、三代目や綱手、今は自来也、そして四代目をはじめとし、暗部や精鋭部隊が控えるここが最も大蛇丸監視にふさわしいとの意見が通ったのだった。
音の里は簡易的に本部を木の葉に置き、大蛇丸子飼いの忍たちは地下に作られた区画に移動、捕らえられ、収容されていた者たちは派遣された木の葉の忍の審
査を受けた後、そのまま解放か、木の葉によって再拘束かが判断され、整理される。
その業務も甚大な規模であるが、今現在大蛇丸の研究室に運び込まれた”紙の山”も膨大な量だった。
これらはすべて大蛇丸が独自に研究しまとめた、忍術や血継限界などについての資料だ。
それ以外にも裏の業界に関するものなどもあり、実に種々様々で分類するだけで大変である。
ナルトはカブトについてその整理を手伝っていた。
ちなみに大蛇丸はサスケを連れて、すでに木の葉入りしている大蛇丸の側近であった音の忍たちに話をーーーいや、サスケがかり出されきっと力尽くでーーーし
にいっている。
部屋には他にも忍がおり、カブトの作った分類表に沿って着々と作業を進めている。
大蛇丸の片腕であるカブトは、名実共に優秀なので、ナルトは脱線して、運ばれた資料とは別にカブトが作成した音の里の組織図を眺めていた。
「ふーん。術の開発のためだってば?」
「まあ、それもあるけど…情報収集・研究もかねてそれぞれの分野の場所を作った感じかな」
話ながらカブトは手元にまとめた資料を束ねて、ファイルに閉じると箱に入れた。
と、思い出したように、そういえば、と棚へと視点をめぐらせた。
「きみ…というか、九尾のような存在についての研究も大蛇丸様は特にされていたよ」
「それは…」
「きみも詳しく知らないだろう? これは里の上層部…木の葉では特に公にされていないことだから」
鼻歌を歌い出しそうなほど軽やかに言うカブトに、ナルトは正直に表情を歪めた。
「…カブトさん、その事はまた今度聞いてもいいってば?」
「あれ、興味ない?」
「…お父さんが…私に言わないのは意味があるからだってば。…そろそろ真朱にもちゃんと聞こうと思っていたことだから…。その後で詳しく教えてもらいた
いってばよ」
生まれたときには九尾と一緒で、そんな自分に対し里の他の人々の反応から、自分という存在がめずらしいものなのだと思っただけで、自分のような人間が他に
いるなど頭にもなかった。
我愛羅に会い、ようやく疑問を抱くようになったのだ。
そして、それとはまた別の必要性があって九尾である九喇嘛と歩み寄り、その過程で大蛇丸拘束の任務があり、自分の怪我の治療に専念したり…と慌ただしくて
ゆっくりと疑問を考える暇がなかった。
けれどこれからは、比較的任務も落ち着くだろうから、自分の時間も持てるようになる。
そろそろ頃合いだろう。
そう考えて、ふっとナルトは思い当たった。
「大蛇丸、真朱を捕まえようとしたとき…どこからか真朱の居場所の情報を得たって言ってたってば。ってことは、自分で調べたわけじゃなくて誰かから聞い
たってことだってば?」
「え? …ああ、それはーーー」
「ナルト!」
カブトが一瞬目を大きくし、けれど答えようとしたとき、サスケが部屋に入ってきた。
…ところどころぼろぼろな有様だが、話し合いはちゃんとしているようだ。
「ちょっとこっちに回ってくれ」
「わかったってば。じゃあカブトさん、話はまた!」
「ああ、気をつけてね。いってらっしゃい」
パタパタと足音をさせて部屋を出て行ったナルトを見送り、カブトは棚に入ったたくさんのファイルの背に指を這わせた。
「僕があまりしゃべっちゃうといけないんだろうけど…。でもそろそろ彼らも動きだすはずだ」
狙われるのは一番最後だから、少し時間はあるけどね。
準備をしなければならないだろう。
「あんな可愛い研究材料、みすみす渡せないからね」
くつり、と喉の奥で笑って、カブトは棚から離れた。
かつて、忍は里というものを持っていなかった。
というのもその歴史は浅く、およそ百年経たない以前はただの一族単位の武装集団であり、戦国時代の真っ直中で国に雇われる形態をとっていた。
忍の能力は種々様々。
けれど、その中でも”森の千手一族”と、”うちは一族”は特別だった。
千手は、その溢れる生命力を。
うちはは、その強靱な戦闘力を。
千手とうちははライバルとも言える、均衡した力を持ち、幾度となく戦った。
けれど時代の流れの末、休戦条約を結び、後ろ楯となる火の国との協定をもって一国一里の組織ーーー木の葉の里が生まれた。
ただ、ここで問題だったのは、誰が ”影” となるかだった。
結果として千手一族の柱間が火影となり、木の葉は華々しく興った。
当然うちはは憤った。
けれども、それも柱間の人徳で収まり、それでも納得できない者は里を去った。
対し、うちはは里の中心からどんどん離れていったが、戦続きで疲れ切っていた一族は柱間のもと沈黙を保った。
そのまま何事もなく木の葉は統治されるはずだった。
だが時間が流れれば人々の考えも変わるもの。
ある時から、うちは一族には木の葉警務部隊という、自里の忍を律し、取り締まる役目が二代目火影の代より与えられていた。
これは火影直轄の暗部とも、密かに活動する根の組織とも異なり、相当の権威を持った名実の伴った名誉職であった。
けれども、これは木の葉の中枢部からうちはを遠ざけ、尚かつうちは一族をひとまとめに監視するためという側面も持っていた。
これに気づいた一族の人間は当然木の葉の中枢ーーー千手一族へと反感を高めた。
なぜ誇り高き”うちは一族”が、千手の言いようにされているのか。
二代目亡き後の火影の座は、世襲制をとっているわけではなかったが、やはりそれでも火影の流れは千手一族のものであった。
それにさらに反感を持つ者が多くなっていった。
生まれた思想はその存在理由に輪をかけて成長していった。
なぜ、我々が木の葉を率いぬのか。
我々こそが木の葉の長にふさわしい一族なのではないか。
自分が幼き頃ーーー4、5歳の頃だ。
既に一族の中でそういった声は高く、警務部隊隊長であった父の元には毎日のように人が尋ねてきていた。
それはすぐにでも粛正を!ーーーとつまりはクーデターを…という非常に危険なものだった。
自分は直接その会話を聞いたわけではない。
ただ子供ではあったが戦争を経験していた自分には、何か緊迫したものが差し迫っているのを肌で感じていた。
だから父や訪れる人々の口から漏れる言葉の端々を今でも覚えているのだ。
そこから拾いだせたのが、”クーデター”だ。
父は正直、悩んでいた。
自分とてうちは一族の扱いには反感を持っていた。
けれども、里の最上部ーーー火影がうちは一族に対する抑制をなんとかしようと動いていることも知っていた。
父は四代目火影であるミナトと真実友人関係を築いていたから。
それは一重に、妻のミコトと、ミナトの妻のクシナが親友であったから。
うずまき夫妻は友としても、同僚としても、親身になってうちはのこれからについて話し合い、尽力してくれていた。
自分と、サスケを理由にうずまき宅を訪れていた母は、クシナと話しながら安堵したように涙を浮かべていたのだ。
誰も内乱など望んでいなかった。
けれども誇りをいう名のもとに高まった思想は、今にも爆発しそうだった。
そんな折、九尾の妖狐が木の葉を襲撃した。
幸か不幸か、うちは一族は壊滅した。
数人の生き残りはいたものの、その後の戦争や任務で自分たち兄弟を残して皆死んでいった。
自分としては、うちは一族が壊滅してよかったと思っている。
うちは一族のほとんどが生き残った場合はそれでも幸いであったが、おそらく里の中での立場はさらに悪くなっただろうからだ。
九尾の妖狐という天災を意のままにできるのは、うちは一族の強力な瞳力だけと言われていたからだ。
遅かれ早かれ一族は疑われ、うちはをよく思わない里の上層部につぶされていただろう。
(今はうちは一族にあった動きを知る者はいないはず)
だがあの男は、どうも違う。
明らかに同族であるのはわかるが、自分の見知った一族の人間の雰囲気はない。
自分の知っている一族の者は、里に所属し、命じられた任務にあたり、日々の生活を送るーーー今の忍の典型的な生活の中で生きているゆえ、どこか型を出ない
というか、危険な思想を確かにもってはいたが、平和な家があるだけで多少なりとも穏やかな雰囲気を持っていた。
それに引き替え、あの男からは、底知れぬ、言いようもない澱んだ闇を感じる。
まさに赤黒い血のような瞳は、異様なほどの輝きを秘めていた。
そして、対峙しただけで感じた圧倒的な力量ーーー本気で闘っても、勝算があるのかわからない。
一体あの男は何者なのか。
『ああ、そうだ。お前は四代目火影の護衛担当だったな…。敏いお前なら言うまでもないだろうが、余計なことは話さないほうがいい』
ふと、男との会話が思い出された。
男ははっきりと言ったのだ。
四代目には話すなと。
それは単に内密に事を進めたかったからか。
それともーーー。
「…四代目様は、あの男にとって注意しなければならない存在ということか…」
確かな力と、自信ーーーそういったものに溢れた男がわざわざ口に出したということは、自分を己の仲間に取り込むにあたり四代目が障害になると判断したから
ではないのか。
すると、あの男のことを四代目は知っているのだろうか。
イタチはかぶりを振った。
(確信が持てない。それに、説明できるほどあの男の特徴は掴めていない)
イタチは目線を下げた。
目の前にはうちはの者で無ければ読むことの出来ない石版がある。
対して新しい情報があるわけではないが、未だ里に残されているうちはの遺物を確かめるうちに一つの可能性に行き当たったのだ。
だが、頭に浮かんだそれにイタチは目を細める。
(彼は、死んだはずだ…)
けれども、あの男の言ったキーワードをつなぎあわせ…そこに四代目ら火影も加えると、浮かび上がった人物は少ない。
その中で写輪眼を有する者は、ほんの僅かだ。
自分やサスケ以外ーーー九尾の妖狐事件以後のその生き残りはいないはず。
それは一族が閉鎖的で、そこから出たり、新たに入って来るケースがなかったからだ。
その中で例外を起こした人物はーーーただ1人。
「まさか…」
静かに、イタチは目を大きくした。
そして強く拳を握りしめた。
真っ白に染まる手は、想像した状況に小刻みに震えている。
こうなれば、あの男のそばで、自分の想像を確信していくしかない。
それがーーー彼女を守ることになる。
(1週間後と言っていたが…)
今日は丸一日うちはの史実を辿っていたため、何も準備らしいものはしていない。
だが、できるだけ早く、期日まで待っているよりも、こちらから接触したほうが得策だろう。
ーーーそれくらいできなければこの先何も情報など得られない。
イタチは踵を返し屋外にでると、すでに夜を迎えようとしている赤い空が視界に広がった。
毒々しいと感じるほど鮮やかな空に余計に胸が沈むのを感じながら、イタチは足を速めた。
かちゃかちゃと夕食の後片付けをしていたナルトは、父の言葉にその手を止めた。
「え、イタチさん?」
「うん。里に帰ってきてから会った?」
「ううん、会ってないってばよ? 任務から帰ってきて…私はそのままカブトさんやサスケの同行してるからあんまり時間なかったし」
洗い物はまだ残っていたがナルトはスポンジを置き、水道の蛇口も止めて父へと身体を向けた。
なぜわざわざ父は聞いてくるのだろう。
素朴に疑問で、ナルトは首を傾げた。
「何かあったんだってば?」
「いや、たぶん大丈夫だけど……昨日少し話したんだけど様子が変だったから。まあ、俺の気のせいかもしれないけど」
「……?」
そうへらりと笑って、父は居間へと言ってしまった。
残されたナルトはそのままの体勢で口元に指をあてた。
「どうか、したのかな」
イタチはあまり感情がそのまま表に出るということはない。
それが父からすると自分に声をかけるほどおかしかったのだ。
何かあったに違いない。
(でも、私やお父さんに話せないようなことなのかもしれない)
そうだとしたら、無理に会って話をねだることはできない。
けれども、やはり心配になる。
ムムム、としばらく唸っていたナルトだったが、とりあえず片付けをしてしまおうと再びスポンジを手にとった。
(サスケは…忙しすぎてそんな話する暇なかったもんな。まあ、明日聞いてみよう…)
今までは同じ任務にあたることが多かったので特に意識しなくても会えたのだが、最近はそうもいかない。
けれどもなんとなく偶然に会える事が多かったので、これまでわざわざ事前に連絡をとって会う、ということをしたことはなかった。
がーーーこんなときはしてみてもいいのだろうか。
(うー、でもなんか恥ずかしいってばよ)
なんだろう?
自宅に電話すればいいのだろうか?
それとももう直接家に行くとか?
いやいや、サスケに会ったらきまづい。
…やっぱり明日サスケに少し聞いてみよう。
(本当に大変だったら…きっとイタチさんが来てくれるってばよ)
だから、大丈夫。
ざわりと騒ぐ自分の胸にそう言い聞かせて、ナルトは片付けに集中した。
← ↑ →