要約

 1960年代にポップ・アートという美術界ではこれまでに見た事もないような動きがイギリスそしてアメリカで起こった。いままで、卑俗なものとして純粋美術からは敬遠され、軽蔑されていた、漫画や洗剤の箱といった日常的なモノをモチーフとして取り上げ、一部の人の為に存在していた芸術から、一般大衆へむけたわかり易いイメージを発した。消費社会の申し子というべきポップ・アートは瞬く間に世界へと広がっていった。

 ポップ・アートは1960年代、スーパースターを生み出すこととなる。アンディ・ウォーホルである。ウォーホルは、現代における、<死>のイメージをリアルに表現したアーティストである。その活動は多岐にわたり、絵画、映画、雑誌、広告へと実にさまざまである。商業美術界で成功を収めたウォーホルは、その商業美術の手法で、純粋美術との壁をなくそうとした。広告的な一般日常的なモチーフ、作者の情感を排除したタッチのフォト・シルクスクリーン技法、派手で目に留まる色使い、同一イメージの連続、の各テクニックの長所と短所を見極め、巧みにあやつった。<死>の持つエネルギーと、そのエネルギーを繰り返す度に吸収し、大きくなっていくマス・メディアの存在を、ウォーホルは彼の生涯を持って表現し続けた。

導入

 2001年9月11日、ニューヨークのワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ。テレビでは、パキスタンの現地の映像が毎日のように流れる。そこにはビルや舗装された道路を見ることはない。いっぽうレンズ隔てた私達は電気をつけて、こたつに入りながらテレビを見ている。このギャップにはたと気付く。そして、今回のアメリカへのテロ行為は、近代国家の大量消費社会を警告するものであったのかもしれないと思った。しかし、近代国家でも、はるか40年以上前、この大量消費社会に警告を発していた人々がいた。それが、ポップ・アーティストといわれる人々である。

 ポップ・アーティスト達は、新聞、漫画、テレビといったマス・メディアに注目し、高度資本主義社会が作りだした<モノが大量生産される文化>と<モノを消費していく文化>の中から表現の題材やアートとしてのイメージを求めた。そして彼らは、この、<モノが大量生産される文化>と<モノを消費していく文化>を肯定すると同時に、皮肉ったのである。日常にありふれたモノをモチーフとして取り上げるこのアートは、その頃の抽象的で難解なモダン・アートとは一線を画し、見た目にわかりやすく、<ポップ・アート>と呼ばれ1960年代に大流行となった。その代表的人物の1人がアンディ・ウォーホルである。

 彼の作品の『マリリン』や、『キャンベルスープ缶』は、ポップ・アートの代表作品としても広く認識されている。どこかの雑誌の切り抜きを<フォト・シルクスクリーン>という技法で、キャンバスに連続して転写し、またある時はスーパーにある缶詰をキャンバスに描いた。こんなありふれた絵が、美術館に飾られた時、それはなんとも立派なアートとなり、専門家達を唸らせるのである。これはなんとも痛烈な皮肉と言わずして何と言おう。彼のそうした皮肉の根底には、<消費>や、ひいては<死>という概念の考え方を通して、あらゆる価値観を見直す姿勢が見られた。そのためには、まず現状を知る事が必要であった。彼は、冷たい感情を排したタッチで絵を描くことにより、冷ややかに<大衆文化>を描写した。

 この論文は、1960年代に起こったポップ・アートや、その周辺の美術様式を調べるとともに、ポップ・アートの代表的人物のひとりであるアンディ・ウォーホルの考える<大量消費社会の死>について、生い立ちや作品を観ていく事で探っていこうとするものである。

バウハウス

ダダ

抽象表現主義

ネオ・ダダ

コンセプチュアル・アート

ミニマル・アート

導入

裾野の文化

ニューヨークでの発展

アンディ・ウォーホル

生い立ち

1928年〜1960年 商業美術家としての成功

1960年代 絵画から映画へ

ポップ・アートの終焉 そしてウォーホルの死

日常的なモチーフ

フォト・シルクスクリーンの効果

<死>のイメージ

現代における<死>とは?

ウォーホルの色彩と<死>