街の中の野球
2002年4月
地下鉄の駅を降り、階段を登りきったところは意外にも普通の街角だ。どこに球場があるというんだろう?しかしそこかしこからオフィス街には不似合いな「やきそば」の匂いが漂い、「球場より安いよー」という威勢のいい声が聞こえてくる。どうやら、この普通の歩道沿いを歩けば球場につくようだ。そちらへ急ぎ足で向かう人々の、独特の目の輝きを見ればわかる。スーツで会社帰りの人も多い。うれしそうな父子連れの姿もある。その人の流れと、周囲の単なるアフター5のオフィス街のほっとした雰囲気がなんだかおかしい。私の 神宮球場初体験記 である。 |
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子供が標準語だからって上品ってわけじゃなかろうが、
「今日は勝つかなぁ お父さん」ってのは
「今日勝たな しばかれんどー、なぁ?おとん」
とはずいぶん違う。東京だ。
しばらく「やきそば」ストリートを歩くと、
右の方に照明塔が見えてくる。
神宮球場は、街の中に潜むように佇んでいた。
この日は巨人戦でもないし、
人の流れも少なかったのかもしれない。
昨年日本一のチームの本拠地の華やかさは、ない。
いささか古びた神宮球場の壁は、
どこか くすんだ匂いがした。
でもそれは、嫌な古さじゃない。
街と街路樹によく溶け込んだ、懐かしい風情だ。
そのさりげなさが、いいんじゃない?(標準語)
いろんな人が神宮球場をほめていた。
ドームのようなわざとらしさがない、と。
居心地のよさではGS神戸が最高峰と信じる私も、
神宮球場のことは気になっていたのだ。
村上春樹も愛するという、外野席に座ることは決めていた。
ゲートを入ると、なるほど内部も古っぽい。
昔のコンクリートのひんやりした質感を感じる。
ちょっと西宮球場を思い出した。
階段を上がれば、あっけないほどすぐにフィールドだ。
これが、神宮か。。
こじんまりしていいかんじ。
内野スタンド後方にはオフィスビルがそびえ立ち、
夕暮れをバックに影絵のような背景を作る。
街の中の球場だ。
すいているレフトスタンドに座り、
神宮の風を感じてみる。
たしかに のんびりしてる。
いろんなものの「作り」が古っぽいのがいい。
なぜかフェンス広告が少なく、ごてごてしていない。
でもなんだろう?この親密さは。
有名な東京音頭の応援をぼんやり見ながら、
こう思った。
わざわざ感 がないのだ、神宮は。
普通の勤め人が、「今日行くか?」ですぐ来れる。
「今晩見るテレビもないし、野球でも見よっか」 な。
山の中にあるGS神戸でたまに感じる
「おもへば遠くへきたもんだぁー」感が、ない。
なんか街に抱かれて野球を見ている感じ。
見えているオフィスビルがまたいいんだな。
まだ点いている窓では仕事をしている人がいる。
その、目に見える現実との距離が素敵だ。
ひょっとしたら野球好きがいて、
輝く照明塔にそわそわしながらデスクにいるかも。
途中下車でふらっと寄れる球場。
それが神宮だ。
まわりにコンビニすらないGS神戸とは違い、
球場を出てからの予定も立てやすい。
ちょっと歩けば、街はまだ宵の口。
都市生活者のお楽しみは、これからだ。
なんか野球が実生活に寄り添っているよな。
神宮球場は、とってもさりげないや。(標準語)
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