人為的な攪乱 「移入」
(「沖縄に帰化したヘビ類」の一部を修正:2007年8月)
帰化動物とは
本来の生息地から人の媒介などによって他の地域に運ばれ、繁殖して定着するようになった動物を帰化動物といいます。動物が移入後、放逐され、定着して帰化動物となるのですが、その移入と放逐は人の手によるものということが大前提となります。
移入には、ペットや食用など人が目的を持って持ち込んだものと、物資に紛れ込んだりして人の意志にかかわらずに偶然に持ち込まれたもの、の二つのタイプがあります。また放逐も、有害動物の駆除用など人が意図的に野外に放したものと、逃げ出したなど人の意志にかかわらずに野外に放されたもの、の二つのタイプがあります。
帰化動物の代表例として、ミドリガメがあげられます。ミドリガメは本来アメリカ原産の動物ですが、ペットとして持ち込まれたものが野生化し日本各地でみられるようになりました。ミシシッピーアカミミガメが正式な和名です。大型のヌマガメで、植物質のものから貝類、昆虫、魚類などの動物質まで貪欲に食べるので、在来の小動物などへの影響が心配されています。また、本土在来のクサガメやニホンイシガメの競争相手となり、在来種の数が激減しています。その他の帰化動物の例として、沖縄ではインドマングースが有名です。ハブの天敵として移入されたのですが、主に他の小動物などを食べるので、在来の小動物への影響が心配されています。数年前までは沖縄本島の中南部にしか分布していませんでしたが、近年では沖縄本島北部山原地方でも多数目撃されており、ヤンバルクイナやトゲネズミなどの天然記念物の動物を直接食害することが心配されています。
他にも、毒ヘビなどは人への危害が、昆虫などは農作物を食害し産業への被害が心配されます。また、外来種と在来種が交雑してしまい雑種が現れ、遺伝子レベルでの攪乱が起こることもあります。その他、外来種によって新たな病原菌や寄生虫が持ち込まれ、在来種がこれらに感染し絶滅の危機に直面するというような、予測できない事態になることも考えられます。
これらのように、帰化動物には問題点ばかりが目立っています。
移入動物と沖縄の自然
島の生態系は、大陸の生態系と比べると、構成要素や構成種類数が貧弱なのが特徴です。大陸にいて沖縄にいないものの例としては、リスやシカなどがあげられます。構成が貧弱でも、バランスはしっかりとしています。例えば、沖縄のヘビ類の産卵数は、大陸のヘビ類と比べると半分位と少ないです。このことは高次消費者であるヘビにとって、島の生態系のバランスを保つための適応だと考えられます。
島の生態系は構成が貧弱なので、移入動物にとっては定着する余地が大いにあります。専門的には、生態的ニッチの空白部が多いと言います。沖縄県で確認されている帰化動物は、昆虫類で約80種、哺乳類で約 9種、鳥類で80種以上におよんでいます。
沖縄などのように小さな島の生態系にとっては、移入動物はバランスをかき乱す恐ろしい存在なのです。
沖縄に帰化したヘビ類
(一部修正:2007年8月)
沖縄本島にすでに帰化したと確認されているヘビ類は、タイワンスジオ、タイワンハブ、サキシマハブの 3種です。
タイワンスジオは、展示や食用として持ち込まれたものが逃げ出して帰化したと考えられており、沖縄本島中部を中心に広範囲で確認されています。タイワンスジオはナメラ属(Elaphe)のヘビですが、沖縄本島には元々ナメラ属のヘビは生息していませんでした。ナメラ属のヘビは、木にもよく登り小哺乳類や鳥類を貪欲に捕食します。沖縄本島北部山原地方まで分布を広げた場合、ヤンバルクイナやノグチゲラなどの天然記念物の動物への影響は避けられないと考えられます。また、同じネズミなどを餌とするハブの競争相手となることが予想され、ハブの個体数減少や小型化が起こる可能性もあります。私はこのタイワンスジオの帰化が、沖縄本島の生態系を大きく狂わす可能性が最も高いのではないかと懸念しています。
タイワンハブとサキシマハブも、展示や食用として持ち込まれたものが逃げ出して帰化したと考えられています。タイワンハブは沖縄本島北部名護市周辺、サキシマハブは沖縄本島南部糸満市周辺で確認されています。両種とも毒ヘビなので、住民への危害が最も心配されています。また、両種とも在来のハブとの交雑と思われるものが数個体確認されており、遺伝子レベルでの攪乱が心配されます(ただし、近年(2000年以降)では野外での雑種個体の発見例はありません。また、近年は県や市町村によるタイワンハブ及びサキシマハブの捕獲数は明らかに増えていますが、雑種の捕獲例はありません)。これらの雑種個体の毒の強さは個体により差がありますが、既存の血清を用いた治療が可能です。血清が効かないという「うわさ」が広まっているようですが、これまで捕まった雑種個体の毒を使った実験により、既存の血清が効くことが確認されています。また、両種(両親)とも毒成分や組成が似ているので、血清が効かなくなるほど雑種の毒が大きく変化することはまず考えられません。
管理者のモラル
飼育していた移入種が逃げてしまった。または、逃がした。何も問題が起こらなければいいのですが、後々目に見えない深刻な問題へと発展するケースが多いのです。どんな生き物でも飼育する以上は最後まで面倒をみてやるべきです。それが不可能だからと、近くの川や森林に逃がすことは絶対にしてはいけないことなのです。なぜなら、その逃がした個体は生き延びられたとしても、元々その場所で生活していた生物種への影響が避けられないことが多いのです。生き物たちには、それぞれに生息地域があります。それは永い進化の歴史の中で決定されてきたのです。
生き物を移入する場合又は移入された生き物を飼育する場合、責任を持ち徹底した管理が必要です。これは、管理者にとっての最低限のモラルなのです。
トップページ
ハブとの共生を考える
|