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★お伊勢さんの献上品 サメのタレ
伊勢の名物 さめのたれは、ええじゃないか

 昨年、式年遷宮を迎えた伊勢神宮。全国から善男善女が集い、門前のおかげ横丁も大いに繁盛したようです。そんなお伊勢参りのお土産として、筆頭にあがる赤福餅。しかし関西人にとっては、近鉄の駅売店でいつでも買えるお持たせの感覚もあり、なじみ深いゆえ「お土産感」の薄い名物でもあります。(子供の頃、三重出張の多かった父が毎度買ってきてくれたなぁ)

 その一方で、お伊勢さんのご神饌(おそなえもの)としても知られる「サメのタレ」も伊勢土産として実にユニークなものだと思います。

 「サメのタレ」…と聞いて、サメが原料の「液状のタレ」を想像してしまいそうですが、品物は「サメ肉の干物」という切り身そのものなのです。   

 伊勢方面へは何度か行ったことがあるのですが、ことあるごとに食べる機会を逸していました。ようやく土産として手に入れたサメのタレ。では、いざ賞味!


控えめな珍味の表記
ラベルの屋号は販売店名
サメの干物と侮るなかれ

 サメのタレは、テレビ番組で取り上げられたことによるのか、珍味のような扱いで店先にポップで示され、おかげ横丁の土産物店に並んでいるようです。
 モノは、サメ肉に塩をまぶして干物にした一夜干しのような塩蔵品で、大きさは縞ホッケの干物ぐらい(250g入り・20センチ大)で、開いた白身の魚肉が真空パック詰めになっています。価格はこの量で千円程度だそうです。量の割に結構なお値段ですね。この塩干タイプとみりん干しタイプがあるようです。
   においは、いわゆる普通の魚でサメ特有のにおいというものはほとんどしません。よく言われるアンモニア臭もなく、非常に品質の良い加工品です。

 割としまった肉質で、みると原材料には「おながざめ」とあります。オナガザメの仲間は3種類いますが、文献では「たれ」として特に質が高いのは「マオナガ」という種類だそうです。切り身からでは判断しかねますが、マオナガかニタリだろうと推測します。(ハチワレは適さないそうです)
 左のパッケージは購入店のもので、裏には製造元のラベルに伊勢市の西隣「度会郡玉城町」とあります。海には面しておらず、外洋性のサメであることから魚肉を買い付けて加工されているということでしょう。主に熊野方面から原料を調達し、伊勢地方で加工・消費される名物というのが正確な見方ではないかと思います。
 古来よりの献上品として珍重されたということもあって、土産物のランクでは高級品の部類に入るよう。

切り身大と小二つ(小は素炙りで試食)
尾に近いハラスの部位と思われる
身ぶりのいいサメ肉

 とりあえずは、説明書き(お店でつけてくれたようです)のとおり、生では食べられないので、焦げ目がつく程度に軽くあぶります。
 まんま一夜干しのような食べ方。炭火でじっくり焼くとおいしいとも書かれています。あいにく七輪がないので魚焼きグリルであぶります。
 表面にちらほら茶色い焦げ目が出てきたところで火を止めます。
 では実際どんな味なのか。
 焼いてもにおいはさほど変わらず。口に運び舌触りや食味を試します。
 おっ、と思ったのは肉質。想像より締まっていて、関西なじみの棒だら(タラの干物)に近い弾性を感じました。サメ肉はふんわり柔らかいという感覚の私には、ムチムチとした白身魚の食味が面白く思えました。
  そして肝心の味ですが、塩気がかなりきつく単品で食べるとしょっぱく感じました。
 しかしご飯と食べると箸が進みます。これは「酒のアテや!」。
 つまみとして日本酒には実に合うものだと、そのしょっぱさの後に来る魚の凝縮された旨味を味わいました。
 当方ワケあって酒を控えていますが、呑み助ならこれはたまらない一品でしょう。
 献上品とされた理由は、きっと酒宴のアテにベストマッチングするからなのでしょう。
 日持ちさせるための技術で干したものが、コクのある旨味を伴った保存食として価値が高まる、まさに古代の知恵が生んだ海からの贈り物。

 なるほど、これは献上を許された品としては申し分ないはず。

 
見た目は美味しそうだが…。
(塩味がネックに)
 食材として、サメのタレを見る

   おいしい干物というには格別の、なんとも深みのある味わいを醸すサメのタレ。

 恐らく邪道だと思うのですが、私はこれで料理を作ってみたいというハムやソーセージのような素材としての見方を捨てきれなかったのです。

 鯛めしのようなものはどうかと、考えてみましたが風味が飛びそうで断念。
 結局焼き・炙りこそ素材が生かせるなら、その方面で生かそうと、シンプルに考えました。
 まず一つは、バターソテー。
 肉質が固めなので、炙り程度の焼き加減ですが、バターで焼いてパセリをまぶしました。
 結論から言うと、バターで塩味が強調され、素焼きの時よりもしょっぱく感じました。無塩バターではないので、その辺りがよくないのかもしれません。
 旨味そのもののコクが薄まり塩味を強調するだけで、これは失敗です。

 いい食材を無駄にした罪悪感というか献上品であるものを冒涜したような気になり、文字通り後味が悪い気持ちになりました。(完食こそしましたが…モヤモヤ)


 
オリーブオイルは相性抜群
(見た目は変わらないが味に大きな差)
 白身に合うのは、これでした

 残ったサメのタレは半分。 日持ちのする食材ではありますが、言っても1週間程度。(半生なので厳しめの設定のよう)

 そこで私は、白身魚に相性のいい「オリーブオイル」。某イケメンコックの姿がよぎりますが、そこにこだわりはありません。
 干物ということを大前提に、風味豊かな素材として生かすことを考えます。

 結果は大成功でした。
 オリーブオイルの香ばしさがマッチして、アクセントに焼いたニンニクもそれをさらに引き立てます。塩味はオイルのまろやかさでそれを抑え、本来の旨味もしっかり味わえます。
 居酒屋で、このメニューがあったら間違いなくトップランキングに入るでしょう。
(※味覚には個人差があります。好みは人それぞれですので、ご了解の上お試しあれ)


 干物らしからぬ味わいブカさ

 サメのタレは、このオナガザメを最上とし、近海産の小型ザメはそれより劣ったものとみなされるようです。一説には、奈良時代の税の品目に「佐米楚割(サメスワヤリ)」という記述があり、サメの干物は朝廷へ納められていた供物とされています。

 海が遠かろうが新鮮でおいしい魚を現代人はいくらでも口にすることができますが、交通網のない時代においてこの一品は、存在感のある旨味を魚食に飢えた内陸の人々にもたらしたことでしょう。

 でも、サメを安いかまぼこの原料程度に見る関西圏では、落語「兵庫船」のように嫌う描写すらあり、あまり一般的には歓迎されない食材。
 しかし、特に海から遠い地で育った私には、この味は何だか懐かしささえ覚えるものでした。この凝縮された味の魅力を現代では感じにくいかもしれませんが、そこには間違いなく魚食文化の深みを感じることができるものがあり、海の恵みを欲する記憶が呼び起されるでしょう。
 御馳走サメでした。合掌

(参考文献:『鮫の世界』矢野憲一著 新潮社刊)

>>>ほかのサメ料理一覧

サメのタレ、伊勢の地元ではポピュラーなものだそうです。
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