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水族館でサメを観察しよう!
Haieのお任せウォッチング

第七弾 微小なサメの歯を掘り当てる


▲サメの歯入り小瓶(左:川崎マリエンの売店 右:???で見つけた歯)
 ※特別出演:ホホジロマグネット&ブリューゲル展のフィギュア

 サメ好きであれば、ほぼ持ちうるサメの体の一部といえば、ズバリ「歯」でしょう。
 水族館のスーベニアショップ(土産物店)には小瓶に入ったサメの歯「魔よけのお守り」やペンダントなども売られています。
 しかし悲しいかな、サメの種類まで記したものは、なかなかなかったりします。
 それでも三角形のサメの歯は、サメ好きの心を満足させることでしょう。

 またある水族館では、バックヤードツアーの際に水槽の底に落ちていたサメの歯を見せてくれたり、場合によってはプレゼントするイベントまであったりします。
 かさばらず見栄えもするサメの歯は、そういった思い出の素敵なアイテムとなるでしょう。今回はそんな「歯」にまつわるお話です。


サメの歯の仕組み
(イタチザメの歯:エナメル質がコーティングされた
"たけのこの里"状態)
水族館の水槽に溜まるもの

 しかしながらサメの歯は、何も大ぶりなものばかりではありません。
 水族館でも飼育数の多い小型のサメたちも、日々歯を新しいものにしています。でも、彼らの歯を目にする機会はまずありません。
 なぜならあまりにも小さすぎて気づかれないからなのです。
 例えばシロワニは、2m以上であれば間違いなく3cm以上の機能歯(きのうし=今使っている歯)を有して、それをポロポロと生え変わらせていることでしょう。
 そういった歯は目に留まりやすく、積極的に回収されることでしょう。

 ですがドチザメやエイラクブカなどは、きっと歯であることすらわからないほど小さな歯をたくさん持っています。数も多いのでシロワニなんかよりも歯の代謝は盛んであることでしょう。



見つけにくい微小な歯
(ドチザメの歯:タッチプールより肉眼で見つけたもの…底には十円玉)
小さな歯を探し出すこと

  私が須磨水族園のタッチプールで見つけたドチザメの歯(左図)などは、その好例だと思います。(サメコラムで詳細)恐らくそれらは施設側にとっては、砂やフンなどと同じ塵芥の類にしか過ぎないのです。
 そんな小さな命のかけらを見ると、サメをとても愛おしく感じます。
 この緻密な設計でもたらされた仕組みを持った稀有な生き物の存在が、数億年を経て今を生きている。
 少なくとも私は、その塵芥に確かな価値を見出しています。
 この価値を共有できる方というのは、なかなか出会えないものです。でも私のこの狂人めいた趣味嗜好を理解していただける聖人のような方がおりました。私が件のドチザメの歯を見せた時に、とても感動してくださった方です。

 「サメであれば、その大きさに関係なく歯は入れ替わる」

 この単純な事実を、この小さな欠片を示すことで私はその方に伝えたのです。

 サメを楽しむということは、こんな簡単ですけどなかなか気づけないことに気づけるちょっとしたことなんですよ。


石灰の露出した貝殻片
200gほどの中にサメの歯がある…?
貝殻片には、サメの歯が混じる?

 その私の楽しみをいたく理解されたのか、過日のサメ談話会にご参加いただいたときにあるお土産をいただきました。
 某水族館のある水槽の底に落ちていた、アサリなどの貝殻片の詰まった袋です。
 見せていただいたとき、私はすぐにピーンときました。
 ああ、こんな風に応用してくださったのだ、と私はとても心を揺さぶられました。
 曰く、「Haieさんならきっと見つけてくれるだろう」と思い、相好を崩しながら袋に詰めたとのこと。
 ここまでしていただける私はなんと幸せ者なのでしょうか。

 とはいいつつ、いただいてからひと月近く経って、この宝箱を開けることになりました。 一見すると貝殻片しか見えない中身は、園芸肥料の石灰のようです。
 「でも、本当に入っているだろうか」
 私も、理論的には間違いなく混在しているであろうサメの歯の存在を信じていないわけではなかったのですが、半信半疑でした。
 貝殻の石灰への進行具合から見るに、サメの歯も溶けてしまっているのではなかろうか。
 あるとすれば歯片かエナメロイドの剥離した基部があるぐらいかも…。


見つかった!サメの歯たち
私が肉眼を通して発見した5oに満たない歯群
宝は「そこ」に眠っている…

 貝殻をざるで選り分けて、目の粗いものでふるいにかけてみました。5o以上の貝殻片は残り、粉末と粒状の欠片と分離しました。
 すると、貝殻片の中には、肉眼でもわかる大きさのもサメの歯が少し入っていました。
 その水族館の水槽を私は熟知している(つもりな)ので、ツマグロかヤジブカのような鈍角の二等辺三角形が尖った形状のものだとわかりました。
 それでも1センチには満たないほどです。

 全国の水族館さん、サメのいる水槽をさらった砂やゴミは、少しとっておいて、この選り分けて発見する楽しさをぜひ体験させてあげてください。
 ちりめんモンスター(チリモン)とよく似たイベントかもしれません。

 ただ、かなり根気のいる作業で、鑑識班の気持ちが理解できそうなぐらいです。
 いうなれば窓ガラスの破片の中から、コンタクトレンズだけを拾い出すようなものですから。私自身はこの作業に1時間半ほど有しました。
 さて、さっそく中身をあらためて見るとしましょう。

拡大してみると…。
歯の形も様々で面白い
 
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サメの歯と断定できそうな三つの群
サメ図鑑などを参照しても酷似しており、種までは難しい
 一瞥してサメの歯とわかるものは、3つの歯群として類似したものが複数ありました。A群は、メジロザメ(ヤジブカ)かツマグロのようなサメが持つ特徴と似ています。B群は、ネムリブカかとも思いましたが、シロワニの形状にも近いのでその可能性が高そうです。C群は、前述したドチザメの歯にかなり形状が似ています。
 おおまかに3つのグループに分けましたが、そのグループ内でも形状が微妙に異なるのですべての歯が違う種の可能性もあります。
 また、同じ種でも生えている場所によって形状が異なることもあるので、特定は極めて困難です。
 参考にしたのは、豊橋自然史博物館「おもしろサメ博」の解説本、メジロザメ属の種判別ガイド「Field Guide for Sharks of the Geuns Carcharhinus」、「Sharks of the World 2013」、サメの歯検索「elasmo.com」などです。


特定できない歯群
特定できないサメの歯のほか、硬骨魚類の歯や食べかすなど
正体不明のミクロな塊

 正体不明の歯群とその欠片のようなものも有意な形状としてピックアップできました。
 しかし、その正体は不明でA〜Hまで分類しましたが、確実にサメの歯らしきものは。AGの二つだと思われます。
 Aはサメの歯の先端部分だけで、シロワニのものだと思います。Gも大きさがかなり小さいですが、シロワニの顎の端部に生える細かい歯の一つにも見えなくはないです。問題はそれ以外。
 Hなどはサメの歯にしては歯根が深く、形状だけではウバザメのような「イネ籾」状になっています。不明です。
 また黄褐色のEは、硬骨魚類の歯のようにも見え、サメの歯ではないようにも見えます。
 Bは貝殻ではない石灰の塊ぐらいのもの。Cは脊椎のようにも見えますが、小さすぎて不明です。Dはかろうじて歯冠と歯根があるということしかわからない球状のものです。Fに至っては、ただの丸い粒です。樹脂にも見えますが、どうでしょう?


ただのスラッジとして、水槽の底に溜まった貝殻やゴミ。そこには多くのサメたちの生きた痕跡が眠っていることでしょう。
 私は、もっとこういった隠れた資源をサメを知るためのツールとして活用してほしいな、と思っています。もちろん細かい作業になりますので、ある程度の年齢でないと難しいことだとは思います。さらにベアタンク、いわゆる底砂がない水槽での残渣が適していますので、その点の条件もあります。

 またサメのアイテムコレクターは、歯で満足できず発展してよく顎を持ちたがりますが、価格の高騰などマニア価格として取引される向きもなくはないため、学術施設の限られた予算で購入することが難しくなっているようです。
 ホホジロザメなどはやはり人気で、ワシントン条約の規制の影響でさらに手に入りにくくなっているようです。価格を知って表に出ない取引も懸念せざるを得ません。明らかな入手経路であるか、気をつけなくてはならないですね。

 これはあくまで私の信条なのですが、もしサメの顎を収集されるのであれば、それは大事にしまっておくのではなくて、ある程度人の目に触れる機会へ供することがコレクターとしてのあるべき姿と考えます。
 幸いにしてサメ好きは、そういった篤志をお持ちの方も多いので私の考えていることは杞憂に過ぎないのですが、サメ好きみんながみんな顎を持ち出すとそれはそれで厄介なので、私はコレクトアイテムからは外しています。
 なので、今回いただいたような、普段はゴミのように扱われるようなものの中から、「宝」を見つけ出すことが何より楽しいのです。

 最後に、この素敵な宝箱をくださった友人に心から感謝したいと思います。
 またサメを通して、一緒に楽しい時間を過ごしましょう!

 

▲私のもう一つの趣味、ビーチコーミングで得た全国の砂(の一部)。
さしずめ今回は「シェル・コーミング」とでも言いましょうか。


水族館はあなたの想像力を刺激する場です。でも、その度合いはあなた次第なんです…トップへ