閉会式 2

『――――それでは気にせず参りましょう。 
 続いて15位から11位までの方々! 裏葉さん、柳也さん、ユンナさん、ベナウィさん! そして里村茜さん! 
 ステージまでお越しください!』 

 外からの喧騒を余所に、というか完璧無視しつつ、千鶴は進行を続けた。 
 他の連中もわざわざ係わり合いにはなりたくないので、拍手でもってそれを支持する。 


『まずは裏葉さんと柳也さんです! 名実共にアベック入賞、おめでとうございます!』 
 千鶴の言葉とともに、壇上の平安夫妻に手渡せるのはひとつの熨斗袋。 
 このあたりは運営側も気を利かせたようで、二人分の賞金も既にひとつにまとめてあるようだ。 
 壇上の二人の装束は当たり前のごとく時代錯誤だが、この場では誰もそんなことは気にしない。 
『……………………』 
 仏頂面のまま、柳也がそれを受け取る。 
『ほほほ、いかがしましたか柳也様。ご尊顔が赤うございますよ』 
『…………悪いな。こういう場は慣れていないのでな』  
 俯いたままの柳也だが、裏葉は気にした様子も無くにっこりと微笑んだ。 

「…………嬉しそうですね」 
 そう呟いたのは鹿沼葉子。会場の一角で、神奈と並んで壇上の光景を眺めている。 
「ん? む……余は笑っていたか?」 
「ええ、とても。幸せそうに」 
「そ、そうか」 
 葉子に指摘され、慌てて緩んだ頬を引き締める神奈。 
「ま、まあ配下の者らが成果を出したのだ。主として、それを喜ばしく思うのは当然のことであろう」 
 コホンと咳払いしつつ、どうにか威厳を保とうとする。 
「そうですね。私もそう思います」 
 からかうこともなく、葉子は心底それに同意する。 
「…………ああ」 
 改めて、神奈は壇上の二人を仰ぎ見た。 
「本当に…………よかった…………。二人とも…………」 

『さてそれでは続きまして、13位! ユンナさん、ステージへどうぞ!!』 
 その声と同時に会場中からうなるように電波が発信された。 

 ゆ〜ん、ゆ〜〜ん、ゆ〜〜〜〜ん……… 

 数人が何事かとあたりを見回すが、なんのことはない。 
 アルルゥご一行様がユンナの名を呼んでいるのだ。 
 サランラップは必要ありません。 

『はいはい、わかったから』 
 ユンナは形のよい眉を八の字に、苦笑しながらも呼び声に手を振って応える。 
 ややあって電波ゆんゆんも落ち着きを取り戻し、壇上のユンナを拍手が喝采した。 

『それではこちらが賞金になります!』 
 手渡されるのは、先ほどの平安夫妻と同じ熨斗袋。 
 大して嬉しそうでもなく、ユンナは受け取った。 
『ありがとう』 
『それでは、今大会に関するユンナさんの思い出など、一言どうぞ!』 
 千鶴に促されるユンナだが、一瞬、その表情が何とも言えない感じに曇った。 
『まあ……思い出したいような出したくないような、微妙な想い出だけど………。ま、それなりに有意義だったわ。 
 できれば……私に関する全データは抹消しといてもらえないかしら?』 
『それは、ダメです』 
『でしょうね』 

『それではまだまだ行きますよ! 続いて12位! ベナウィさん、どうぞ!!!』 
『失礼します』 
 呼び声と同時にしっかりとした足取りで壇上へと上がるベナウィ。 
 さすがにシシェは連れていないが、愛槍は携えたままだ。 
 とはいえ今更そんなのは瑣末なこと。誰も気にはしない。 
『ではこちらが賞金になります! ベナウィさん、賞金の使い道などは何かお考えですか?』 
『國庫へ返還します。当然のことです。私がここにいるのは民あってのもの。 
 その結果得たものは民、つまり國へと返すのは当然のことです』 
『はい、役人の鑑のようなお答えありがとうございました! それでは今大会に関して一言どうぞ!』 
『よい仲間ができました。よい思い出ができました。最後まで守りきれなかったことは残念でしたが、得たものは多かったです』 
『そう言っていただけると私共も尽力した甲斐があります。それではベナウィさん、お疲れ様でした!』 
『では』 

『さて、お次は………里村茜さん! 壇上へおあがりください!』 
 拍手に包まれ、続いて出てきたのはおさげ少女里村茜。 
『……………………』 
 しかしその表情は何か腑に落ちない様子だった。 
 なにを気にしているのか、察した千鶴は続けて説明する。 
『11位の里村さんと10位の上月さんは捕まった時間にほとんど差はありませんでしたが、ビデオ判定の結果里村さんの方が一瞬早かったと結果がでました! 
 残念でしたが、どうぞご了承願います!』 
 ここまで聞いて、ようやく茜の表情が晴れる。 
『あ……なるほど』 
『そういうわけで、こちらが里村さんへの賞金になります! どうぞお納めください!』 
『ありがとうございます……』 
 受け取った茜は早速袋を開け、中身の額面を確認する。 
 そしてそれを山葉堂のワッフルの値段で割ると、満足そうな、しかし近しい者しか判別できそうにない程度に笑みを浮かべた。 
『では里村さん、なにか一言どうぞ』 
『…………ワッフル?』 
『はい?』 
『あ、と、す、すみません』 
 慌てて我に返り、改めてマイクを手に取ると 
『……正直、私がここまでやって来れるとは思いませんでした。 
 私と一緒に頑張った方々。私をここまで導いてくださった方々。すべての人に感謝します……』 
 といった感じに、無難にまとめた。 
『はい、ありがとうございましたー!』 


『さて、まだまだ授賞式は続きますよ! 
 続いては10位から6位までの方々です!』 


【閉会式(授賞式) 続行中】 
【鶴来屋別館パーティーホール】 
【北川、住井、サラ、ティリア、リアン、エリア、ニウェ、源之助以外全員】