進化する人相
2004年11月28日 初稿
少し前、私が、歌舞伎町の雀荘で麻雀をしていた時にあった事件です。
その雀荘に集まるいつものメンバーで2卓ほど場が立っていました。
いつものメンバーといっても、場所が場所だけに、893から、トイチ金融屋から
風俗店経営者などと、みるからにいかがわしい輩ばっかりでした。
そこに、一人の20歳代後半の若い男が顔を出しました。
客が一人で麻雀できるフリーの雀荘ですから別に当たり前のことですが、
店のメンバーがどいて、すぐ卓に着きました。
「この店は、初めてなんでよろしくお願いします」
こうした雀荘では、めずらしく、丁寧な挨拶で、しっかりとお辞儀しました。
ジャニーズ事務所から来たんじゃないかと思われるくらい、さわやかな
いい男で、にこにこしています。
どちらかというと、あのサラ金のコマーシャルにでてくるチワワに似ている、
かわいい雰囲気を持っており、少し母性本能をくすぐる顔です。
こんな場所に出入りして大丈夫かなと心配になりました。
それから、彼は、ちょくちょく顔を出すようになりました。
麻雀の打ち方のマナーも礼儀ただしいい、いつもさわやかな笑顔を絶やさないし
で、みんなの人気者です。
893の組長などは、大のお気に入りで、
「日本も、これくらい礼儀正しい若者が居れば、安泰だな。
お前達は、こんな純真な若い時なんかなかっただろう」
と、言っては、飯などをご馳走していました。
ある日、刑事が3人店に入ってきました。
「ここに、こんな男が来ていませんか」
と写真を見せますと、そこには、さわやか兄ちゃんが写っています。
店のみんなが、興味津々で集まってきました。
「そういえば、ここ4,5日は、顔出していません。なんですか?」
と、店のマスターが聞きますと、
「こいつは、病院あらしの常習犯で、指名手配を受けているやつです。
最近、歌舞伎町の雀荘に居るらしいという情報があったので、捜索しているところです。
店長さん、ちょっとそこの交番まで来て、協力してくれますか」
と、言います。
それを聞いた、店の全員の驚きようといったら、まるで、ドラマの中の一場面でした。
海千山千の裏家業の人たちですから、人を見る目だけは、常人のレベルではありません。
それが、誰も見抜けなかったのだから、驚くのも無理がありません。
交番から帰ってきた店長が報告した事実は、さらに追い討ちをかける驚きでした。
手口は、花束を持って、病院に入り、見舞い客の振りをして、病室に入る。
レントゲンなどでベッドを留守にしている人のベッドの枕などを探してお金を盗むという方法です。
これまでに2回逮捕されており、手口が似ている事件が発生したので、
病院のセキュリティカメラ映像を調べたら、写っていたので、彼の仕事だと断定したというものでした。
そして、店長の報告で、一番驚いたのは、過去2回の逮捕の際の写真を見せられると、
最初の1回目は、普通のどこにでもいる青年、2回目は、少しかわいい顔になっているということでした。
つまり、私たちが会っていた、さわやか青年は、
さらに進化したバージョンだったという驚愕の事実だったのです。
キリンが高いところの木の枝を食餌するために首が長くなっていったように、
彼の人相は、進化を遂げていたのです。
蛇足です。
彼をベタほめしていた、893の組長は、それから少しの間は、しゅんとしていました。