父との別れ
2004年11月30日
1972年8月4日 私は、
新聞配達をしながら、予備校に通っていた。
夕刊の配達を終えて販売所に戻ると、九州の郷里から父が上京していた。
上京した理由を尋ねても、父は答えない。
「ちょっと用事があってな」としか答えない。
漁師をしている父に東京に用事があるはずがないし、
東京に親戚、知人が居るということも聞いたことがない。
二人で夕食を取りながら、故郷の近況などをそれとなく話す父だったが、
もともと、酒乱だった父を嫌い、高校の時から家を出て、
一人で生活していた私との会話がそうはずむはずがない。
午後八時の夜行列車で帰るということで、東京駅まで見送りに行った。
駅のホームで、「たっしゃできばれ」
と、言って列車に乗り込む父の背中を見た瞬間、私の目から涙が溢れた。
私には、すべてが解っていた。
この別れが一時の別れではなく、永遠の別れになることを。
小さいころから自分の変なセンサーに気づいていたが、
それは、近しい人や肉親になるとより強烈に頭の中でフラッシュする。
この私の変なセンサーは、父からもらったことも解っていたし、
父もどうやら同人種であることを自覚していたようである。
父が心筋梗塞で他界したのは、それから6日後だった。