Disk Review Site HAND IN GLOVE***
since 2006/01/15

The Best of
Blind Willie McTell
Blind Willie McTell
2004/US
ブラインド・ウィリー・マクテルが1927年から35年までに録音した音源の中から選ばれた、現行のベスト盤。戦前ブルーズ作品の大概はこうして編集盤で楽しむことしか出来ないので、選曲や音質が重要になります。「Yazoo」レコードが編纂したこの『The Best of』は、そのどちらをも満たしているのが嬉しいですね。
個人的な彼との出会いは、戦前ブルーズの入門編(?)として有名な『Blues 1927-1946(RCAブルースの古典)』を聴いたときです。50トラック近くが収められたコンピレーション盤の中で、たった2曲だけ収録されていたマクテルの歌声に感銘を受け、彼のことを調べてみました。すると、ジョージア州アトランタのブルーズ・シーンを担った一人であったけれど、戦後の“再発掘”ムーブメントの頃には亡くなっていた盲目のシンガーだということがわかりました。
鼻にかかった高くて甘い歌声、丸みを帯びた12弦ギターの音色は、どこか切ないものを感じさせます。その繊細なサウンドがノイズ混じりにプレイヤーから立ち昇ってくると、古きアメリカの情景そのものが想像出来たりして、そんな瞬間が何とも好きなのです。
『Broke Down Engine Blues』、『Statesboro Blues』、『Travelin' Blues』、『Dark Night Blues』、『Atlanta Strut』など、時空を超えて胸に響く名作が目白押し。ラグ・タイム風など意外と曲調にも幅がありますね。大好きな1枚です。 (Oct 2007)
Parchman Farm
Bukka White
2004/US
デルタ・ブルーズの巨人、ブッカ・ホワイト。
彼が1937年と1940年に録音した、渋いながらも鈍く輝く宝石の様な、珠玉の14曲を集めたアルバムです。37年に録音された2曲には代表作『Shake 'Em On Down』が含まれており、また、殺人容疑によるパーチマン・ファームでの囚人生活を経て行われた40年のセッションには、あのウォッシュボード・サムも参加しています。
それにしても、何度聴いても惚れ惚れするレコードです。力強く、ヴィブラートが味わい深いだみ声。パーカッシヴなギター・プレイに絶妙に挟み込むスライド。自らの経験や想いを綴った詞(僕が所有しているのは04年の紙ジャケCDなのですが、シンプルだけど泣かせる、三井徹氏による訳詞が素晴らしい!)は、風貌からは想像できないほど繊細で、母や友人、そして自らの死をテーマとしたり、去った女性に想いを馳せたり、弱い自分を見つめ直したり、刑務所生活を振り返ったりしています。同じボクサー出身でも、例えばプリンス・バスターとは随分とタイプが違うものですね(比べるのもどうかと思いますが・・・。)
これまでずっと、何となく敬遠してきたブルーズに、この1枚によっていともあっさりとハマってしまいました。以来ブルーズのレコードをよく買う様になりましたが、やはり僕の中で原点はブッカ・ホワイトにあり、その意味でも本当に特別な1枚なのです。 (Mar 2007)
Blues After Hours
Elmore James
And The Broom Dusters
1955/US
「クラウン」よりリリースされた、ブルーム・ダスターズとの録音をまとめたエルモア・ジェイムズの名作アルバムです。54〜55年にロスとニュー・オーリンズでレコーディングされたという10曲が『Blues After Hours』の本編で、そこに70年頃の音源など(新しいところでは93年なんて代物も!)8トラックをボーナス収録した現行品CDを僕は購入しました。ブルーズにハマりかけた頃に、ビッグ・ネームであるエルモアの、とりわけジャケ画がよかった本作を選んだわけです。結果的に本作はお気に入りとなり、頻繁にリピートするに至っています。
エルモアの代名詞である強烈な三連フレーズからスタートし、スローなブルーズを交えながらシャウトしまくる中身の濃い前半10トラックが特に素晴らしいですね。基本的には70年以降の録音でも変わらぬシャウトとボトルネック三連フレーズを聴かせてくれるエルモアですが、やはり感情移入してしまうのは55年録音の方です。とりわけ、渋みとアツさを持ち合わせたバラード『Goodbye Baby』なんて掛け値なしにカッコよくて、思わず唸ってしまいます。 (Apr 2008)
Moanin' in the Moonlight
Howlin' Wolf
1959/US
月夜の荒野に吠える狼。彼の作品中最もカッコイイジャケットも魅力であるハウリン・ウルフの1stアルバムは、51年から58年までの録音を集めた、まさに定番の名に恥じない1枚です。
最初期の、より荒削りな音源にこそウルフの本質があると考える僕は、メンフィス時代のウルフに強く惹かれますが、シカゴ移住後もウルフの南部魂は消えてはおらず、その一貫性にこそ男・ウルフの絶対的とも言えるカリスマが象徴されています。それはたとえ本作以降でウィリー・ディクソン色が高まり、洗練されてからも言えることなのです。とは言え、やはりアグレッシヴで荒涼としたウルフに比べると、2ndの“ロッキンチェア・アルバム”はちょっとキレイ過ぎてアクが足りないかな、なんて思えて(まぁ彼の唄にアクが足りないなんて在り得ないんですが)、荒さとモダンさを奇跡的に両立させている本作には特別な魅力を感じます。何度聴いても飽きません。
1曲目は『Moanin' at Midnight』。狼と言うにはあまりにゴツイ大男が初っ端で唸りをあげる瞬間から、もう鳥肌もの。歌い出せば、チャーリー・パットン直系のダミ声。うぅ、カッコ良すぎです。さらに、そこから5年を経て録音された『Smokestack Lightning』では、ソリッドなリズムと最高のエレキ・ギターに乗せて泣き吠えるウルフに心を鷲掴みにされてしまいます。 (Apr 2007)
Sings The Blues
Howlin' Wolf
1991/US
ハウリン・ウルフがレコード・デビューを果たしたのは41歳の頃。その直後に録音された51年から52年にかけての「RPM(後の「モダン/ケント」)」音源を全て(!)まとめたものが本作です。近年、再編集とリマスタリングが成された“改訂版”がリリースされたようですが、ここでは「PCD-3005」の型番で知られる旧作(ちなみにCDです)を取り上げます。
ウルフは僕にとって1、2を争うほど好きなブルーズ・マンですが、『Moanin' in the Moonlight』の項でも書きました様に、シカゴに移る前の荒削りなウルフがとりわけ魅力的だと思います。この『Sings The Blues』は、まさに荒削りな魅力溢れる最初期の録音を扱ったウエスト・メンフィス時代のレコードということで、特別な思い入れがあります。
ブギ/ロックン・ロール系の作風が多い(『Worried About My Baby』のロックなハープは必聴!)ので、ブルーズ・ファンでなくとも案外ニーズは多いのでは、なんて思える1枚なのですが、一部のセッションは信じられないくらいラフです。特にチューニングもろくに合わせていない(国内盤でしたら、この辺りを小出斉さんがライナーで触れられています。相変わらず資料性とこだわりを併せ持った解説をされていて、尊敬に値する方です)と思われるトラックなんて、まるで伸びたテープのピアノをオーヴァー・ダブしたかの様な有様です。でも何故でしょうか、ラフでルーズでピッチも悪い音源・・・例えば『My Baby Stole Off』や『Passing By Blues』なんかに妙に惹かれてしまうわけです。おそらく、ルールに縛られて鯱張ったウルフなんかより、荒々しく唸りをあげるウルフにこそ、その真髄を見るコトが出来るからでしょう。
いわゆる「美女ジャケ」の外見に騙されると怪我をしかねません。洗練されたモダンさを手に入れる前の狼は、荒っぽくて実に危険なのです。(Jun 2007)
Hoodoo Man Blues
Junior Wells'
Chicago Blues Band
1965/US
ジュニア・ウェルズが「ジュニア・ウェルズ・シカゴ・ブルーズ・バンド」名義にて65年にリリースした1枚です。50年代から活動してきたウェルズですが、アルバム作品の発表はこれが最初。ブルーズ・ファンのみならず広くロック・ファンにも愛される歴史的名盤として知られており、つまりたった1枚のレコードでウェルズは名前を轟かせたわけです。
その唄声ももちろんカッコイイのですが、個人的に惹かれているのはハーピストとしてのウェルズです。アレステッド・ディヴェロップメント『Mama's Always On Stage』の元ネタでもあるインスト『We're Ready』はウェルズのブルーズ・ハープをたっぷり堪能できるだけでなく、アツいブルーズ・ロックの名曲として、ぜひチェックしておくべきトラックだと思います。
そして忘れてはならないのが、ギタリストとして参加しているバディ・ガイの存在です。『Snatch It Back And Hold It』や『Good Morning School Girl』、『You Don't Love Me Baby』といったロッキンなトラックではキャッチーなリフを提供し、一方でスロー・ブルーズではピッキングの感触まで伝わってきそうなカウンター・ラインを爪弾く、変幻自在なギター・ワークを披露。ウェルズを見事にバック・アップしているのです。
数年前、個人的にブルーズの面白みに気付き始めた頃、音楽ライターの知人に「オススメのアルバムは?」と聞いてみたことがあります。その時に知人が答えとしてAACファイルで送ってくれたのがハウリン・ウルフの『More Real Folk Blues』と、ジュニア・ウェルズの『Hoodoo Man Blues』だったのです。どちらも大変気に入りまして(何しろ、今ではウルフが一番好きなブルーズ・マンですし)早速CDで購入したのですが、知人がアナログから起こしてくれた音声データのチリチリいうダスト・ノイズがすごく本作の雰囲気にマッチしていて、その心地よさを求めてAACファイルで聴いてしまうこともしばしばです。 (Sep 2010)
Poet of the Blues
Willie Dixon
1998/US
1947〜52年の『Big Three Trio』時代の録音と、1970年に自らの名曲群をセルフカヴァーしたセッションとが収録された、ウィリー・ディクスンの編集盤。
ジャイヴ系の音が欲しい時に、ビッグ・スリー・トリオのお手軽な音源を求めて辿り着いた1枚だったので、どこかスタイリッシュでジャジィな匂いもある『Big 3 Stomp』や『If The Sea Was Whiskey』には結構ハマりました。特に前者でのウィリーのベース、いい感じですね。
ソロ名義の前半は、アクは強いけど妙に憎めないウィリーのヴォーカルが聴きもの。こちらのセッションは、実に多くの名曲を生み出した彼だけにオリジナル作ばかりで構成されています。ハウリン・ウルフやオーティス・ラッシュら名うてのブルーズ・マンたちにカヴァーされたわけですが、あれ、ちょっと待って下さい。よく聴くとほとんどのロック・ファンなら手元に持っているであろう、ロック・レジェンドたちでお馴染みの作品ばかりですね。ドアーズの『Back Door Man』やローリング・ストーンズの『Little Red Rooster』はじめ、レッド・ツェッペリンの『I Can't Quit You Baby』、クリームの『Spoonful』、ジェフ・ベックの『I ain't Superstitious』などなど。さすがシカゴ・ブルーズ伝説のボスだけありますね。作家として超一流、そんな風に称される意味を今更ながら実感できました。最近では、これまで聴き流していた(失礼)前半の音源も、聴き比べなんてしながら楽しめています。 (Mar 2007)


HAND IN GLOVE *** / HOME