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| こどもと魔法 | |
| Nobukazu Takemura (竹村延和) |
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| 1997/JPN | |
| 竹村延和さん2作目のソロ・アルバムであり、氏のキャリアにおける大きな転機を感じさせた、最重要作品のひとつです。 結論から申しまして、僕たちの賛辞の言葉などでは到底言い表せないほどの歴史的傑作だと思います。竹村さんのソロ第一弾『Child's View(本サイトでも別ページにて最もアツく語らせて頂いています。僕にとってあまりに大きな1枚なのです)』に対抗し得る作品があるとしたら、同じく竹村作品の『こどもと魔法』以外考えられないでしょう。 以前から無垢な感性に関心の高かった竹村さんが、ソロ活動開始に伴い「子供の目線」に更に自覚的になったことは明らかで、そこを突き詰めていく行程の中でかつての自らを象徴したジャズやヒップホップはどこかに置いていく結論に達したのかも知れません。『Child's View』と冠しつつも、その実、熟成と洗練を極めたジャズ・オリエンテッドな実体を有した前作に比べても、本作ではより「子供目線」に忠実であろうとする取り組みが成されていると思われます。すなわち、奔放で感覚重視な楽曲構成や、トイ・ミュージックを想起させる音色が積極的にセレクトされているといった具合です。結果的に、後に氏がよりエレクトロニカ的な作風へとシフト・チェンジしていく上での重要な転機ともなりました。 それにしても、この大きな転換が僕たちを一瞬戸惑わせたことは忘れることが出来ません。個人的な話で恐縮ですが、思えばあの日、待ちに待った竹村さんの新譜を緊張しながらプレイヤーにかけ、思いがけない音(つまり『Child's View』とは違う音)が流れ出した時、11年前の僕は喪失感すら感じたことをここに告白したいと思います。竹村さんの真意と、このサウンドがいかに純真で素敵であるかに気付くまでに数ヶ月を要し、そこからは本作にすっかり魅了され、ついには宝物のひとつとなったわけですが・・・。まぁ、僕の感性の鈍さを棚に上げるつもりでもないのですが、実際、全てのファンがたちまち本作に馴染めたわけではなかったようで、身近なところでも、あの日の戸惑いは共通の笑い話になっていたりもします。 さて、『こどもと魔法』の作風を具体的に説明するとしたら、どんな言葉が似つかわしいでしょうか。エレクトロニカ、トイ・ミュージック、ミニマル、アンビエント・・・。あるいはスティーヴ・ライヒかリチャード・D・ジェイムスが絵本仕立ての音楽を作った様な、はたまた夜中のおもちゃ箱で繰り広げられる誰も知らない演奏会の様な・・・。幾つかそれらしいものも思い付くのですが、そのどれをも内包しながら、どれにも属さない自由さがあり、とても難しいですね。まるで、子供の感性が大人の思い通りにはならない様に難しいです。そして、そこが単なる「チャイルディッシュなエレクトロニカ」と一線を画す、『こどもと魔法』だけが持ちえたマジカルな世界の本質なのだと思えるのです。 とは言え、当たり前のことですが竹村さんは大人ですし、むしろ子供とは対極とも言えるほどに知性によって物事を推し量るところがある様に見受けられます。つまり、無邪気な作曲という行為すらも知的に分析されたひとつの方法論として進められているわけです。では、『こどもと魔法』に大人のあざとさがあるかと言えば、決してそうとは思えません。例えご本人が、意外なほど饒舌に本作のあらましをライナーにて語っていたとしても、出音のピュアネスを疑う余地がありません。それは、本作を愛する多くのファンが共有できる信頼と言って過言でないでしょう。 以後、様々な「子供目線」を具現化したエレクトロニカ作品を発表していく竹村さんですが、木管楽器の多用など、ここでしか味わえない色味があるので、他では替えがきかない1枚となっています。97年の時点で先陣を切ってこの世界観を築きあげた竹村さんのセンスとイノセントな奔放さに、すっかり大人になってしまった僕たちは羨望の眼差しを向けるに終始したのです。 (Sep 2008) ( →その他のNobukazu Takemuraレビューページ) |
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