“ヴォーカル・アルバムの聖典”の誉れ高いこれほどの名作に、おいそれと形容する言葉も思い浮かびませんが、多くの音楽ファン、それもジャズ、ソウル、レア・グルーヴ、ポップスとあらゆる分野のリスナーに30年以上愛され続けてる事実が、何よりもその素晴らしさの証になっていると思います。
例に漏れず、僕も『Who Is This Bitch, Anyway?』の虜です。しかも聴くたびに新しい発見があるので、いつまでたっても古典にならず、僕にとっては常に最新のアルバムなのです。つまりこうです、今日は特にローズに耳を傾けようとか、キックとベースの関係に注視しようとか、まぁ頭でそう考えて聴いているワケでもないのですが、気分によってその時々の楽しみ方を自然と満喫出来る。そう考えると、味わい尽くす日なんて、きっといつまでも来ない気がしませんか?
マリーナ・ショウのゴスペル/ブルーズに根ざしたヴォーカル・トラックも素晴らしいのですが、完璧過ぎるこのバッキングこそ注目たるポイントでして、例えばジェイ・ディラの『Welcome
2 Detroit』みたいにインスト版があったら是非欲しい・・・なんて妄想をしてしまう程です。もっとも、デヴィッド・T・ウォーカー、ラリー・カールトン、ハーヴィ・メイソン、チャック・レイニー、ラリー・ナッシュ、デニス・バディマーといった名うてのミュージシャンが紡ぎ出す極上のトラックは、マリーナの歌を優しく、それでいて強力にサポートするものであって、決して独りよがりなテクニック合戦になど陥ってはいません。しかも一発録りが多いとのことで、渾然一体の形で楽しむのが一番ということなのでしょうね。
とにかく、ドラムとベース、エレピ、そして左右に振られたギターを中心としたアレンジの美しさは、他のどんなレコードをも凌駕していますね。この時代のバッキングには良いものが多いとは言え、飛び抜けています。『Feel
Like Makin' Love』とか『You Been Away Too Long』は究極の出来栄えですよね。かと思えば『Prelude for
Rose Marie』みたいなクラシカルなサウンドがあったり、冒頭のダイアログでソフィスティケイトされた雰囲気を取り込んだりと、変化にも富んでいます。整理されたミックスも大好きです。楽曲も軒並み素晴らしいし、ズルイくらい完全無欠な1枚ですね。 (Jan
2007) |