Disk Review Site HAND IN GLOVE***
Psychedelic / Acid-Folk Review 01
since 2006/01/15

Art Of Virtue
Adrienne Young
2005/US
オールドタイミー系の女性SSW、エイドリアン・ヤングの2ndアルバムです。メジャーなのかマイナーなのかすら知らない予備知識なしの状態で、店頭でたまたま見かけてジャケ買い。最初にプレイヤーにかけた時は「及第点くらいかな」なんて思ったのですが、何故か何度も聴きたくなってしまう魅力があって、今ではすっかりハマってしまいました。普段積極的に聴いている音楽とは違うジャンルであったことも僕には新鮮だったのかも知れません。
彼女はプロデュース/作詞作曲もこなすヴォーカリストで、かなりの頻度で自らバンジョーやギターも弾いています。トラッドやグレイトフル・デッドのカヴァーもある一方で、オリジナルの出来栄えもキャッチーでとてもいい感じ。アルバム全編を通じてフィドルやバンジョーをフィーチャーしたアレンジで統一され、近年ますます再評価されるオールドタイム・サウンドを楽しみたい方にオススメしたい1枚です。
アナログ・レコーディングも彼女のこだわりの様で、オタリのマルチ・トラックが採用されています。ただ、個人的にはもっとウォームでもよかったのに、なんて贅沢な感想も持ってしまいました。確かに現状でもアナログの良さは出てはいますが、例えばエフェクティヴなくらいのアナログ風演出があるとか・・・。まぁ、飛び道具になってしまっては本末転倒でしょうから、クリアな録音で正解だったのかも知れませんね。いずれにせよとても好きな作品です。 (Apr 2006)
Sung Tongs
Animal Collective
2004/US
お馴染み「FatCat」レーベルが2004年に世に送り出した大傑作です。
NYを拠点とし、4人のメンバーが流動的に組んだり離れたりしながら育んできたコミュニティこそがアニマル・コレクティヴの実体。本作は4人の内、エイヴィ・テアとパンダ・ベアが中心になって製作されたそうです。
それにしても、NYを始めとして各地で絶賛の声が挙がるだけのことはあって、その内容は驚くほど良いものでした。個人的にもアシッド・フォーク・ブームとリンクしたこともあって、完全にやられっぱなしの日々を過ごしました。街なかで本作をヘッドフォンにセットして喧騒と隔絶されると、まるで自分だけが白昼夢を漂う様な、内へととんでいく感覚にさらされるのです。
延々繰り返される呪術的なアコギが心地よすぎてアブナイ12分半もの旅『Visiting Friends』は最高です。また、声がSEとして効果的に使用されているのもポイント。この感覚は、例えば『We Tigers』の中盤などで味わうことが出来ます。
新しい音が鳴っているのにメランコリック。人間の本能を揺り動かす1枚です。 (Jan 2006)
【EP】Prospect Hummer
Animal Collective
2004/US
噂に名高いヴァシュティ・バニヤンの声を僕が耳にしたのは、このEPが最初でした。すぐに幻の名盤と言われたヴァシュティの『Just Another Diamond Day』(もちろん、リイシュー盤ですが)を買いに走ったことは言うまでもありません。新しい解釈のフォーク・シーンにおけるキーパーソン同士、アニマル・コレクティヴとヴァシュティのコラボレーションは、僕を含めた多くの音楽ファンにとって本当に大きな意味と影響力を持っていたのでした。
本作はアニマル・コレクティヴの連中が、自らのルーツであるヴァシュティを招いて製作した4曲入りEPです。幽玄なサイケの森で呟くように儚い歌声を聴かせる彼女。この完璧なマッチングが、どうしようもなく泣けるのです。
30数年の時間を越えて再び歌い始めたヴァシュティを祝福するこの1枚は、ずっと鳴っていればいい、ずっと浸っていたい、そう思わせる大傑作です。 (Dec 2006)
Dream And Images
Arthur Lee Harper
1968/US
「LHI」レーベルより発売された、アーサー・リー・ハーパーの1stアルバム。僕が購入したのは2ndアルバム『Love Is The Revolution』と2in1でCD化されたものです。
フォーキーでサイケデリックな音が欲しくて食指が動いた身としては、本来2ndの方がよりストライクなハズだったのですが、歌唱法が耳障りに感じられて苦手でした。一方で「アーサー」名義にて68年にリリースされた1st『Dream And Images』はかなり気に入りました。1stでの歌声は儚く澄んで、アコギと管弦楽器によるバッキングにとてもマッチしていると思います。とびきり美しいメロディを包む、優しくてどこか妖しい静かなバッキングは、ジャンルは違えどヴェルベッツのそれに勝るとも劣らない極上品です。 (Jan 2006)
Moon Over The Freeway
The Ditty Bops
2006/US
アメリカの女の子デュオ、ザ・ディティ・バップスの2ndアルバムです。
昨年、輸入盤店のカントリー系コーナーでひっそりレコメンドされていて出会った1枚でして、ジャケを一目見て「良さそう」という直感もあり、またクレジットに「Produced by Michell Froom」の文字を見つけて購入。聴いてみてビックリ、予想をずっと上回る素晴らしい歌の数々が踊りだしたのでした。
まず何より、アビィとアマンダの才能の豊かさに唸らされます。彼女たちが作る楽曲の水準は抜群に高く、ハーモニーまで含めたメロディ・ラインの良さは特筆すべきでしょう。また、ノン・ヴィブラートで正確にハモる透き通った歌声も魅力的で、クールにすました佇まいで歌ってるのがまたいいんですよね。感情をあまり入れないこの感じが、ディティ・バップスの大きな特徴のひとつと言えそうです。アレンジ(これは彼女たちによるものなのか分かりませんが・・・)も最高でして、アコギやマンドリンを自ら操り、ラグタイム風、フォーク/カントリー風、果てはボードヴィルっぽい雰囲気なんかを高度に演出していく様は、かなり熟練したセンスを感じずにはいられません。あっという間に何十年も昔のアメリカにタイム・スリップさせてくれると同時に、どこかオルタナティヴな手触りも感じさせる、本当に稀有な存在なのです。
楽曲単位では、冒頭からレトロな世界に引きずり込んでくれるキュートな『Moon Over The Freeway』がオススメです。『In The Meantime』なんかもヴァイオリンやトイピアノ風の絡みがいい感じ。
そして、見逃せないのがミッチェル・フルームの健在ぶり。90年代半ばは僕もフルームの音色に夢中になっていたクチでして、彼の生み出す音色・・・つまり膜を一枚取り払った様にリアルでソリッドな、それでいてアナログ的な歪みとウォーミーな立体感を併せ持った、そんなフルーム・サウンドのマジックは結局解明できないままでしたが、その存在感は今も変わらず魅力的であることに改めて気付かされました。
彼女たちの一歩引いたスタンスから生み出されるコミカルさは、特に同姓ウケすること必至ですが、老若男女、全ポップス・ファンに聴いてもらいたい1枚でもあります。 (Jul 2007)
Gypsy People
Jan & Lorraine
1969/UK
サイケ・フォークのレア・アイテムとして一部で知られていたジャン&ロレインの1stアルバムが、昨年めでたくリイシューされました。
ジャン&ロレインは英国の女性デュオで、インナー・スリーヴによると2人とも6弦/12弦のギターとヴォーカルを担当し、さらにジャンは鍵盤も自分で演奏している様です。そこにドラムやベースなどが加わり、アシッド・フォークにロック・テイストをも持ち込んでいます。そのせいか、まどろみばかりの精神世界ではなく、どこか開かれた印象を残し、むしろ英国ロックやソフト・ロックのファンに受けそうな感じもしますね。
ジャケット(素晴らし過ぎです!アナログの方が羨ましい)から受けるイメージよりもはるかに音楽的な幅が広くて、よくウェンディ&ボニーに比較される様にハモりを生かしたソフトロック系から、タブラやタンブーラを持ち込んだサイケ、アコギ+ストリングス+ファルセット・コーラスによる妖しく美しいフォーク、カズーとピアノが狭いレンジでひしめくオールドタイミー風まで、まさに多種多様。これまで不遇に扱われてきたのが不思議なくらいセンスと閃きに満ちた、音楽的レベルの高い1枚です。 (Feb 2007)
Idols of Exile
Jason Collett
2005/CAN
現在、何と20人近くにも及ぶと言われるブロークン・ソーシャル・シーン。そのギタリストであるジェイソン・コレットの2ndアルバムが、バンドと同じ「Arts & Crafts」からリリースされました。相変わらずカナダのインディ・シーンは盛況の様で、本作にも同郷の面々が参加し、充実の仕上がりとなりました。
ジェイソンはSSWとしての優れた才能をここに如何なく発揮しています。楽曲も漏れなく良質ですし、何より声がいいです。適度に男っぽくて、甘さもある。主役として遜色のない“ヴォーカリスト”でもあったワケですね。
また、彼が担当するアコギ以外にも、ドラムス、ベース、ギター、パーカッション、ピアノ、弦、管、シンセ、バンジョー、ペダル・スティールなど実に多彩な楽器がバッキングを支えており、しかもそれらが多くの「人」によって奏でられている辺り、まさにコミュニティとして成長を遂げるカナダのシーン面目躍如といったところでしょうか。
肌触りはシンプルなロック/フォークながら、例えば『I'll Bring The Sun』や『These Are The Days』の様にアレンジに華がある作品も多く、本家のバンドさながらに飽きさせない構成力を持っています。
ついついベタ褒めになってしまうほど、隠れた(?)傑作です。まずは初っ端の『Fire』を体感してみて下さい。名曲です! (May 2006)
The Lady And The Unicorn
John Renbourn
1971/US
ペンタングルの活動と平行して作られた、ジョン・レンボーン1970年のソロ・アルバムです。
ヴィオラやヴァイオリン、フルート、グロッケン・シュピール、そしてコンサルティーナ(小型アコーディオン)などの名手たちが集い、ジョンのフォーク・ギターとの優雅なセッションを繰り広げ、中世の楽曲や英国トラッドを新たな解釈で表現。斬新ながらもクラシカルな風合いが楽しめる意欲作に仕上がっています。フォーク/トラッド界隈のファンはもとより、多くのロック・ファンにも高い評価を受け、名盤として語り継がれている1枚です。
ウォームなトレモロ・ギターで爪弾かれるバッハ作の『Sarabande』や、管弦を交えて展開されるお馴染みのトラッド『Scarborough Fair』、何度聴いてもギターの“鳴り”に心奪われるジョンのオリジナル作品『The Lady And The Unicorn』などなど聴きどころ満載です。
古楽とフォークとを自在に行き来するという試みが見事に成就した本作。方法論だけを言葉にすると小難しい様にも感じられるかも知れませんが、その実、よく整理されていて分かりやすい作品であると言えるでしょう。 (Apr 2008)
Kuutarha
Lau Nau
2005/FIN
フィンランドの女性ソロ・ユニット、ラウ・ナウ(多分この読み方で合っていると思うんですが・・・)が、あのマトモスらを擁するレーベル「Locust」からアルバムをリリースしました。
レーベル・サイトで見てみると、彼女一人で、いかに多くの楽器を操っているかがわかります。アコースティック・ベースやアコギ、バイオリン、オルガン、リコーダーといったサイケ・フォークには欠かせない素材から、タブラなどの民族楽器、果てはトイや空き缶まで。その多才ぶりと、そうした音源を選んだセンスの良さも窺い知れます。そして、それらの楽器は脱力ヴォイスと共に夢見心地の時間を演出します。
アシッド・フォーク的な観点からベスト・トラックを選ぶとしたら、音程感まで含めてもっとも虚ろな眼差しを持つ『Kuljen halki kuutarhan』辺りが浸りやすくて良いのではないでしょうか。
音のイメージそのままといった趣のアートワークも世界観の演出に一役買っていますね。カヴァーのイラストでは民族楽器が扱われ、また(CDに限りますが)盤面などには、色使いが何ともサイケデリックなヘタウマイラストが施されています。
これを書いている時点で、まだ1stを出したばかりの彼女ですが、次作あたりで日本での話題が高まると予想します。 (Jan 2006)
On Your Side
Magnet
2003/NOR
2002年頃にジャケ買いした『This is Norway』というノルウェーのコンピレーション・アルバムに収録されていた、マグネットなるシンガー・ソングライターの1stEP『Where happiness lives』にすっかり魅了されてしまい、このアーティストのアルバム作品を心待ちにしておりました。翌年、ついにリリースされたこの『On Your Side』は、予想通りの傑作に仕上がっていました。どうやらロック雑誌でフィーチャーされたらしく、個人的には苦手なロッキング・オン的なノリや文脈で語られることが多くて少々幻滅もしたのですが、それだけ多くのファンを抱え込むキャパシティが本作にあったということでしょう。
ノルウェーの小さな港町で育ったというマグネットことイヴァン・ヨハンセンは、バンドでのヴォーカリストやギタリストとしてのキャリアを経てソロ・デビュー。マグネット名義でのアルバムとしては、本作が最初ということになります。当時の北欧シーンは世界的な注目を浴びていた背景もあって、広くメディアにも取り上げられました。とりわけ、北欧のフォークトロニカ路線に佳作が集中していた頃ですから、先述の傑作EP『Where happiness lives』らに比べてエレクトロニカ的なアプローチが増えた本作は、高い支持を受けたのだと思います(ちなみに『Where happiness lives』は本作にも収録されていますが、シングルのテイクの方が断然素晴らしいと思います。気になる方はぜひチェックしてみて下さい)。たしかに、このエレクトロニカ要素を湛えた奥行きのあるバッキングは上質の出来栄え。オーケストレーションを巧みに用いたアレンジと共に、ロマンチシズム溢れる彼のファンタジックな世界観を具現化するのに一役買っています。そして何より素晴らしいのが、イヴァンの歌声!優しさと哀愁、また男っぽさと甘さとを同時に感じさせるその声色が、彼の最大の武器と言えるでしょう。 (Sep 2009)
The Gipsy
Mr.Fox
1971/UK
ボブとキャロルのペグ夫妻を中心とする、ミスター・フォックスの2ndアルバムです。2005年に国内盤がリイシューされ、たまたま煽り文句に突き動かされて購入しました。正直、個人的にはそれまで馴染みのないグループだったのですが、結果として大当たり!すっかり気に入ってしまいました。
もともとは英トラッド色が強い作風を得意としていた様です。フィドルなどを用いたアレンジを見ても、本作もトラッド色は充分強いのですが、オルガンの持続音を大胆にフィーチャーしたりと、より混沌としたサイケっぽい作りになっています。長尺ものは特にアシッドな感じが最高で、購入時に一瞬アタマをよぎった「普通のプログレっぽかったらつまらないな」という悪い予感を杞憂にしてくれました。とりわけ弦のドローン・サウンドや、多用されるフロア・タム(?)はかなり気持ち良いですよ。 (Jan 2006)
Makers
Rocky Votolato
2005/US
ワックスウィングスというバンドのフロントマン、ロッキー・ヴォトラト。「Barsuk」からリリースとなった4作目のソロ・アルバムです。
・・・という情報さえも個人的には後に知ったことでして、たまたま音を耳にして一撃KOされ、予備知識ゼロで即買いした1枚でした。何しろ楽曲も声もイイ!僕だけでなく、KOされる人は後を絶たないに違いありません。
基本的にはロッキーのアコギ弾き語りに、パーカッションやペダル・スティール、あるいはごく稀にバンド・スタイルでのバック・アップがあるというのが基本スタイル。カントリーの要素もほのかに忍ばせた、フォーキーで有機的なサウンドが味わい深い音質で録音されています。
渋過ぎずハデ過ぎず、絶妙のさじ加減を保ったメロディ・ラインはいかにもバンド出身者らしいそれで、シリアスなロック・ファンに受け入れられそうですね。
さらに素晴らしいのが、その声です。しゃがれた男っぽさと甘さとがある、このテの声に僕は弱い様で、このページでも紹介しているジェイソン・コレットやマグネット、それにカート・コバーンなんかにも共通の魅力を感じます。 (May 2007)
Soon To Fail
Sainte Chapelle
2004/US
ダンとゲイリーによるデュオ、セイント・チャペル2004年の作品。勉強不足で申し訳ないのですが、実は彼らについての知識は皆無という状況です。Webでリサーチしようとも試みましたが、国内のサイトではまったくと言っていいほど触れられていない様です。
音楽的には、気だるいダウン・テンポを基調としたアシッド・フォーク〜ポストロックといった感じで、時折ヴォーカルものも交えたりしながら、たゆたう様に進んでいきます。主役はフォーク/エレキ・ギターとドラムで、今日のフォーク・ムーヴメントともシンクロした雰囲気があり、中毒性が高いサウンドと言えるでしょう。特に、ドラムの音色で遊ぶ感覚が気に入っています。“遊ぶ”と言っても決して飛び道具として使うのではなく、『To Crave』での跳ね返るスネアや『Black Is The Color Of My True Love's Hair』後半でのタム、『In Search Of Skip』でのシンバルなど、ルールの中で音色重視のプレイをするセンスが好きなのです。
霧懸かった湖か森を行くような、無国籍かつアブない『Mantra』の中盤は最大の聴きどころだと思います。 (Mar 2006)
On The Shore
Trees
1970/UK
あまりにも有名なジャケが人気の、トゥリーズ70年の2ndアルバムです。ヴァシュティ・バニヤンの再評価などに顕著に見られる、近年のフリー・フォーク・ブームともどこかリンクしていて、2006年という今だからこそ聴かれるべき要素が、ここにはあります。
とは言いながら、もともとトゥリーズを高く評価し続けてきたのは、むしろロック・ファンだったというイメージが強いです。特にプログレッシヴ・ロック好きの人たちには受け入れられてきたと思うのですが、さもありなん、トラッド・ナンバーを長尺に渡ってプログレッシヴに展開していく『Sally Free And Easy』などは格好の餌となり得たワケですから。でも僕が本作で一番惹きつけられる要素は、そうしたテクニカルな部分よりもむしろ、ほのかに漂う狂気の香りです。それはジャケ写から受けるイメージかも知れませんし、あるいはセリア・ハンフリーズのヴォーカルによるところが大きいかも知れません。彼女の、決して歌いこみ過ぎないヴォーカル・スタイル、あるいはロック度を増したバッキングには収まりがいいとは言えない声質が、何とも浮世離れして聴こえるのです(実直なフォーク・ファンには叱られてしまいそうですが)。
アコギやキックの音質も好みの音ですし、僕にとって手放せないアイテムになっています。 (Oct 2006)
Good Arrows
Tunng
2007/UK
主にネオ・フォークの文脈で評価されているタンの3rdアルバムです。昨年、知り合いからの激プッシュを受けて予備知識なしで聴いた1枚でしたが、穏やかなソフト・サイケ具合が気分にハマり、以来愛聴しています。
ポスト・ロック以降の音の粒立ちを持ち、また、エレクトロニカ的なアプローチもありながら、英国フォークの血統も同時に感じさせるあたりが新鮮で、現代と過去とが絶妙にブレンドされた感覚を味わうことが出来るアルバムです。よく聴くとポスト・プロダクションによるギミックがかなり豊富なんですが、これ以上やると嫌味になるスレスレで止めるセンスも見事ですね。
ウォームな質感をもって奏でられる、優しくもキャッチーな楽曲はどれも高水準の出来栄えで、耳に残るいい作品ばかり。決してはしゃがない大人のハーモニー(男女混声なのがまたいいんです)がよく似合います。それでいてユーモアも忘れていません。とりわけ、PVも素晴らしい『Bullets』は必聴です。
よく調べてみると、ヴォーカルのひとりは元チャプターハウスのドラマーだとか!ベテランが新たな持ち味を発揮して、改めて活躍しているワケですね。 (Mar 2009)
Illusion Of Maintenance Man
Virgin Insanity
1971/US
幻のレア盤として知られるヴァージン・インサニティの1stアルバムが、世界初のCD化を果たしました。
本作が幻とまで言われたのにはワケがあります。自主制作レコードとして、たった200枚のみがプレスされただけだったのです。1971年当時のアメリカの片田舎ではまったく相手にされなかったこの1枚は、ひっそりと人々の記憶から消えていくだけの運命を辿るハズでした。しかし人騒がせなことに本作は、アシッド・フォーク好きにはたまらない、何とも魅力的な音楽がたっぷりと詰まっていたのです。かくして、今日のフリー・フォーク再評価の波とも相まって、ヴァージン・インサニティの名はコレクター達の注目の的となったのです。こうしてめでたく「P-VINE」からリリースされたCDには、なんとグループの中心人物であるボブ・ロング当人による解説が封入されています。ヴァージン・インサニティがどの様に結成され、本作がどの様に録音されたかまでが実によくわかります。
何と言っても魅力的なのは、その手作り感たっぷりのインディな雰囲気。冒頭の『Don't Get Down』でのドラムのよたり具合から、いきなりヤラレます。そして『For a While』、『Touch The Sky』、『River Town』、『Time of Sorrows Gone Soon』などなど、どれもこれも名曲ばかり。アシッド・フォーク系のファンからインディ・ギター、ポップスのファンまで、今日であれば多くのリスナーを魅了し得る出来栄えです。ボブ氏の奥さんであるイヴ・ロングのヴォーカルも素晴らしいです。 (Feb 2006)


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