Phew(フュー)のキャリアは、バンド「アーント・サリー」からスタートしました。本作たった1枚を残して1年足らずで解散してしまったアーント・サリーは神格化され、バンド名を冠したこの1stも500枚の限定プレスであったため(後の再プレス盤を合わせても世にたった1,000枚!)激レア・アイテムとして扱われ、その価値はますます伝説めいたものへと高まったのでした。版権を巡る紆余曲折を経て、21世紀になってようやくCD化が実現したことは喜ばしいことですね。
これらの経緯を知っている以上「すごい名盤らしい」という先入観は拭えないもので、評価に冷静さを欠いてしまうきらいもありましょうが、それでもやはり名盤と断言したい1枚です。国内におけるパンク・シーンの黎明期を担った歴史的な重要作品という意味合いもさることながら、パンク・ロックやポスト・パンクのスタイルだけを拝借した様な浅はかさとはかけ離れた、ワン・アンド・オンリーなオリジナリティを既に確立している点で信頼を持てようと言うものです。
とは言え、フューに対しては多少「エキセントリックぶってるのでは・・・?」なんて勘ぐってしまうところもありますが(例えば『醒めた火事場で』あたりは演出過多による軸のブレも感じてしまうのですが・・・いかがでしょう)、その後の彼女が、自らを嘯くことなく充実した活動を続けていくことを知っているので、わざわざ穿った見方をするのも意地が悪いですよね。
時代の空気をたっぷり含んだチープな録音と拙さが、いわゆるポスト・パンクとしての味わい深さに繋がっています。また、当時からフューの言葉には“容赦”なんてフィルターはありませんから、例え詩的表現を用いていても、実に鋭角的。ビッケのカン高いギターと同様に、聴き手の胸に突き刺さります。ディスコードな不安定さにも静かな攻撃性を感じますし、やはり素通りを許してくれない特別なレコードなのだと思います。
「物を拾えば吐き気がするし/鏡を見ると耳鳴りがするし/紅茶を運ぶと不整脈/人と話すとぞっとするけど/私は今でも此処にいる」と歌われる『フランクに』や、オープニング・トラックにしてバンドの存在感を端的に表している名作『Aunt
Sally』のライヴ音源(CDにのみ収録)はまさに必聴。今の時代だからこそ、さらに多くのリスナーに爪あとを残すであろう強烈な1枚です。 (Oct
2007) |