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Soft Rock Review 01
since 2006/01/15

A Bubble Called You
The Alan Copeland Conspiracy
1967/US
好企画「フィンガー・スナッピン・ミュージック」で遂にCD化が実現した、アラン・コープランド幻の名作。・・・などと言いつつ、僕個人は橋本徹氏やマンスフィールドのリコメンドでお馴染みのキラー・チューン『Frenesi』が入っているという程度の情報しか持っていなくて、ほとんど前知識なしで購入しました。いざプレーヤーにかけてみると、これが本当に良くて、いきなり入れ込んでしまいました。
DJ人気抜群の『Frenesi』は言うに及ばず、全てのトラックが丁寧なアレンジによって漏れなく完璧なソフトロックに仕上がっているばかりでなく、売り物であるコーラス・ワークがとにかく素敵過ぎなのです。大所帯による重厚なコーラスながら、耳あたりは軽快そのもの。適度にテンポがあって、贅沢なまでにポップな作品の数々が必ずや聴く人を幸福感で包んでくれるでしょう。
『Cant't Take My Eyes Off You』なんて少々苦手な題材もあったりするんですが、他が好き過ぎてちっとも気になりません。コーラスだけでなく、ベース、ドラム、ギター、鍵盤なんかも的を射たアレンジ&音色で作品を彩っています。 (Feb 2006)
If Love Comes With It
The Alan Copeland Singers
1969/US
以前このページで掲載した『A Bubble Called You』から2年を経た1969年にリリースされたアラン・コープランドのアルバムは、アラン・コープランド・シンガーズ名義となりました。当時、テレビの音楽ショー番組を多数手掛けていたアランが、番組でコーラスを務める為のシンガー・チームを発足。それこそがアラン・コープランド・シンガーズなのです。
歌謡界華やかなりし頃のショー番組を彩る、実力派コーラス・チーム。とは言え裏方ですから、突出して有名な人がいるわけでもありません(アランは例外ですが)。それでも、こんなに素敵なアルバムをシンガーズ名義で発表している。いい時代だったんですね。
技量のバカ高いハーモニーやコーラスと、いかにもショー向きな管楽器を中心としたバンド・アンサンブルとの一体感は見事で、しかも、とにかく温かで楽しげ。「A&M」系ポップスとして一流なだけでなく、ソフトロックやジャズ・コーラスのレコードとしても素晴らしい。男声中心なのも雰囲気ありますね。僕に限らず、こんな再発を待っていた人は多いことでしょう。
本作リリース直前には、『Mission Impossible』にビートルズの『Norwegian Wood』の歌を乗せるという、言わば“マッシュアップ”作品で賞を獲得していたアランですが、ここではその続編とも言える作品に挑戦しています。それが本作収録の『Classical Gas / Scarborough Fair』で、メイソン・ウィリアムスのインスト曲のバッキングの上に、サイモン&ガーファンクルの歌メロを滑らせていくというもの。飛び道具的な企画に終わっていたらさぞ滑稽だったのでしょうが、そこはさすがプロフェッショナル、アラン・コープランド。違和感なく、美しい1曲にまとめあげています。 (Dec 2006)
Now
Astrud Gilberto
1972/BRA
アストラッド・ジルベルトが初の自己プロデュースのもと、「パーセプション」レコードからリリースした1枚です。
アストラッドを音楽的に評価することがどこかくすぐったいからでしょうか、いつも賛否が分かれる彼女のレコードですが、少なくとも本作は、あらゆる音楽ファンに是非聴いて欲しい作品だと思います。例の『イパネマの娘』から「ヴァーヴ」時代の紆余曲折を経て、自ら楽曲を手掛け、またプロデュースまでするに至り、いよいよ等身大の自分に自覚的になったアストラッドが再び故郷への想いを募らせたのか、エウミール・デオダードとのコンビを選択。他にもアイルト・モレイラ、ロン・カーター、マリア・トレードといったブラジル色の強いわくわくする様な面子が参加していて、ほんの数年前まではこの『Now』がレア盤(今では定番になりましたが)であったなんて信じられないくらい充実したアルバムなのです。
楽曲はどれもキャッチーでポップ。拙くて一本調子なアストラッドのガーリーな歌声とのミスマッチ加減が何とも楽しいです。彼女の自作曲もよく出来ていて、デオダードやミルトン・ナシメントの名曲らと堂々渡り合っています。
何より素晴らしいのがデオダードによるアレンジの良さ!メロウ&サウダージなものから、グルーヴィ(『Take It Easy My Brother Charlie』を始め、クラブ人気の理由はココにあります)なものまで、見事に料理しています。ソフト・ロック、フォーク、ジャズ、そしてボサやMPBなどブラジルのテイストが調和する世界観は、あたかもアストラッドのこれまでのキャリアを祝福するかの様ですね。(Jun 2007)
Bobby and I
Bobby and I
1970/US
信用のブランド「Celeste」から再発された男女デュオ、ボビー・アンド・アイのアルバム作品です。
えてしてソフトロック周辺に多い張りのある歌声があまり得意でない僕にとって、ボビー・バーチとケン・フィシュラーのヴォーカルもやはり美声すぎて少し苦手だったりします(スキャットやバロック調コーラスなんかは見事!なんですが・・・)。しかしそれを補って余りある、美しくソフィスティケートされたトラックにこそソフトロックを聴くのをやめられない最大の理由があるのです。例に漏れず、本作のバッキングも聴きどころ満載です。有名な『Hurt So Bad』での軽妙なジャズ・アレンジは言うに及ばず、『Ben Lomand Lament』のクラシカルで美しいトラック、『Mohair's Sam』のグルーヴィなピアノ・ソロなどなど。
バラエティ豊かで、高度なアレンジが矢継ぎ早に登場するアルバム後半は、かなりオススメです。アレンジャーのトミー・オリヴァーの力量もさる事ながら、当人達にクラシックやジャズの心得がある点が、アルバムを知的たらしめているのでしょう。 (Jan 2006)
Stars・Time・Bubbles・Love
The Free Design 
1970/US
ソフト・ロックの系譜を語る上で、もうどれだけ論議されてきたかわからない、このフリー・デザインという存在。僕の勝手なイメージでは、例えばロジャー・ニコルスがどちらかと言うとスタイリッシュに評価されてきたのに対して、どうも「オッサンが日曜日に腕を組んで楽しむ」みたいな雰囲気がフリー・デザインにはある気がしていて、取り巻く環境が好きになれなかったのです(今思えば本当に勝手なイメージですね、ごめんなさい)。そんな“加齢臭”さえイメージしなくなれば、こんなに素敵なグループはありませんでした。
この『Stars・Time・Bubbles・Love』は、1970年にリリースされた彼らの4thアルバムです。大人のハーモニーと、ジャズ、ロック、クラシックをミックスした繊細で高品位なアレンジ。メロディアスでありながらコマーシャルにならない(ここが祟って、ビジネス的な成功には結びつかなかった点は彼ららしいですが・・・)楽曲。優しさと緊張感のコントラスト。こうした個性の数々が、定番アイテムになるまでに今日の評価を押し上げてきました。例えば、高度なハーモニーをポップに聴かせる『Kije's Ouija』に針を落とせば、その全てをたちどころに実感できることでしょう。
ちなみに現行の国内盤では、この分野で知らない人はいない江村幸紀さんが解説を書かれていますが、「この作品の音の分離が良いのは、何と35mmフィルムに直接マルチ・トラック・レコーディングしていたからである」という、実に興味深い記述があります。レコーディングに携わった事がある人間なら「へぇ!」と唸ること間違いなしです。ぜひ読んでみて下さい。一昔前は、本当に国内盤の解説が大嫌いでした(そもそも、今でも輸入盤中心に購入しているのですが)が、近年は資料性の高い良い文に出会えることが増えましたよね。勉強になります。 (Jan 2006)
In Wonderland
The Mutual Understanding
1968/CAN
「Nimbus 9」というレーベルから1968年にリリースされた、ザ・ミューチュアル・アンダースタンディング唯一のアルバム作品です。
どちらかと言えば“企画物”色の強いグループ/アルバムであった為、おそらくあまり世に出回らなかったのでしょう。激レア盤として知られ、2005年にこうして待望のリイシューが果たされるまでは聴くことすら難しい存在でした。2005年と言えば、一時のソフト・ロック・ムーヴメントもとっくに落ち着いていた時代だったと思いますが、本作リイシューのニュースを機に再びソフト・ロック熱が再燃した方も多かったのではないでしょうか。実は僕もリイシュー盤を喜び勇んで購入したくちです。早速聴いてみれば、幻の名盤という謳い文句に偽りなし、完成度・エンターテイメント性ともにケチのつけようがないアルバムでした。美しくて高品位な男女混声コーラス&スキャットが、“ソフト・ロック映え”する名曲のカヴァーを中心に紡いでいきます。しかもベン・マクピーク、ジェリー・トス、ジミー・デイルといった、その筋では定評のある面々が仲良く(?)4曲ずつ手掛けたアレンジがまた素晴らしい。中でも『Pretty People』や『Always True To You, Darling, In My Fashion』で愛らしいアレンジを施しているマクピークの仕事に感銘を受けました。もちろんデイルの『You Fascinate Me So』や、トスの『Out Of This World』なんかのアレンジも大好きですけれど。
超スムースかつ作り手たちの体温が感じられる、これぞソフト・ロックの理想形とも言えそうな1枚です。 (Mar 2008)
You've Come This Way Before
Nancy Priddy
1968/US
ナンシー・プリディ唯一のアルバムです。
どこかのレコード屋さんで見たジャケ写がずっと気になっていて、最近リイシュー盤を見つけて購入したのですが、一聴して衝撃を受けました。予想を遥かに上回る出来栄え!すっかりハマってしまい、一時はコレばかり聴いていました。プロデュースでフィル・ラモーン、アレンジや共作でジョン・サイモンといった有名人が絡んでいますね。素晴らしい仕事です。
基本的には優れた女性SSWモノであり、また優れたソフトロックとしても楽しめます。ストレンジかつ高品位な展開がクセになるポイントで、例として適切かは分かりませんが、ソフトロック版『Dreaming(ケイト・ブッシュ)』という印象すら残りました。
ルックスだけでなく歌声もイイですね。重厚なバッキングにも負けませんし、サイモンのピアノのみをバックに歌い上げる『Epitaph』の歌声の素敵さと言ったら・・・。このエンディングは泣けますよ。 (Apr 2006)
Quarteto Forma
Quarteto Forma
1970/BRA
ブラジルの男女混合コーラス・ユニット、クアルテート・フォルマ唯一のアルバム。
僕が所持しているのは「東芝EMI」の国内盤CDで、雑誌で紹介されて有名になった『Rua Cheia』を含む7インチのレア・トラックも収録しています。この国内盤、またすぐに廃盤となってしまったそうで、新品ですと2006年現在、一部のショップで入手できるストック品のみという状況です。お気軽に『Rua Cheia』も楽しみたいという方はぜひ探してみて下さい。
冒頭から4ビートのジャズにダバダバ・スキャットが乗るという、どストライクなトラックで楽しませてくれます。ベスト・トラックは、先に触れた『Rua Cheia』や『E Nos...Anode Vamos?』辺りでしょうか。特に後者の大サビでの開放感はかなりキテます。他にも『All The Things You Are』のゴージャスさ、『A Ilha』のグルーヴなど聴きどころが満載です。
ジャズ〜ソフトロック度の高いメロウなバッキングはとてもいい感じですが、個人的には押しの強いトラックがもう1つ2つあると嬉しいかなとも思いました。それにカバーの選曲が少々平凡ですかね。とは言え『Rua Cheia』や『E Nos...Anode Vamos?』の為に買っても損なしです。 (Jan 2006)
Roger Nichols &
The Small Circle Of Friends 
Roger Nichols &
The Small Circle Of Friends 
1967/US
ロジャー・ニコルズ&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ唯一のアルバムで、ソフトロック観の定着を促した定番中の定番です。
何故この作品が定番なのか。言うまでもなく、有名になったきっかけは小西康陽さんや小山田圭吾さんのリコメンドなのですが、リスナーの心を掴んでしまう“音楽”自体の魔法に何よりその答えがあると思います。とにかく音楽として素晴らしい。これに尽きます。
ハッピーで、時にスウィートな作風。抜群のバランスに施されたミックス。美しいなんて言葉じゃ計り知れないコーラス・ワークとアレンジメント。まさに90年代以降の日本のミュージック・シーンの道しるべとなった1枚なのです。オリジナル作、例えば『Don't Take Your Time』や『Love So Fine』も最高なのですが、ビートルズの作品をここまで素晴らしくアレンジ/カヴァーしてしまう例が他にあるでしょうか。ビートルズは大好きではありますが、正直言って『With A Little Help From My Friends』、『I'll Be Back』に限って言えば、ニコルズ版の方が良い仕上がりだと個人的には思います。
スミス・フリークの僕は、“7インチ・シングルの3分ポップ”的な作品に目がありません。3分ポップの理想形とも言うべき彼らの音楽を、僕は断然支持したいと思います。
勉強不足で知らなかったのですが、現行品のCDではさらにボーナスが1曲増えて、20曲仕様(またまたレアな7インチ音源が追加されたとのこと)らしいですね。この作品を巡る熱は未だ決着がついていないということなのでしょう。何だか、スゴイです。 (Jan 2006)
Meet Triste Janero
Triste Janero
1969/US
ソフトロックの隠れ名盤として知られるトリステ・ジャネイロのアルバム作品が近年リイシューされ、ようやく多くのリスナーの手元に届く様になりました。それが、この『Meet Triste Janero』。ブラジル、ボッサ、ジャズ・サンバ作品でスマートにまとめられた、まさに名盤の名に恥じないアルバムです。
90年代以降に再評価が進んだソフトロックの王道を行く洒脱なアレンジがたっぷり堪能できるのが魅力です。『Today It's You』のピアノの使い方なんて実に今日的ですし、『You Didn't Have to Be So Nice』のイントロのリフがアルバム冒頭で効果的に使われていたり、長尺インスト『T.J. Blues』におけるオルガン・ソロや、テープ・コンプが気持ちいいスネア&キックのコンビネーションなどなど、アレンジの妙を挙げればきりがありません。中でも『Rene de Marie』のアレンジ(録音も!)は完璧ですね。センス良すぎです。
バーバラ(ギタリストの妹だそうです)のヴォーカルもかなり好きな感じ。随所で生きるダブリングも心憎い巧さを感じます。 (Jan 2006)
Genesis
Wendy & Bonnie
1969/US
ヴァイブ奏者でプロデューサーのゲイリー・マクファーランドがオーナーであった「Skye」レーベルから、ひっそりとリリースされたウェンディ&ボニーの唯一のアルバムです。
レーベルともどもソフトロック/ジャズ・ファンから再評価の声が高まっていることはご存知の通りです。ウェンディ、ボニーからなるフラワー姉妹(姉弟と認識される向きもあるらしいですね。姉妹で正解みたいですよ)による、まさに珠玉と呼ぶに相応しい作品群と美しいハーモニー。とんでもない“隠れた逸品”が、今日、新たな使命を持つことをずっと待っていたわけです。
まず、全曲姉妹によるオリジナル作品だという点に驚きを禁じ得ません。当時の風潮を見渡してみても異例だと言えますし、しかも当時ウェンディ17歳、ボニー13歳というのですから、早熟どころの話ではありません。何せ、収録されている全てが名曲で、しかも難しいハーモニー(まぁ、これは周囲のアレンジ力があったればこそ、だったかも知れませんが)ばかりなのです。これが17歳と13歳による仕業だとは俄かには信じられないほどです。
バッキングも素晴らしいです。ゲイリーのプロデュースの元、あの『Pet Sounds』にも参加したというマイク・メルヴォンや、ラリー・カールトンといった面々がデリケートに、また時にはジャジィなプレイで盛り立てているのです。完璧としか言いようのないアレンジも含めて、彼らの功績は計り知れません。
ソロもカッティングも映えまくりのハモンドと、超グルーヴィなベースがぐいぐい引っ張る必殺の『Let Yourself Go Another Time』。白昼夢の様に切ない『The Paisley Window Pane』や『By The Sea』。ドリーミーなヴォーカルとイントロが実に泣ける『Children Laughing』。モダンで大人っぽいヴォーカルの『The Winter Is Cold』。ベースのリフが印象的な『Endless Pathway』。ロッキンな4つ打ちスネアが炸裂する『It's What's Really Happening』などなど、どのトラックも漏れなく魅力的です。
ガーリィな脆さと、大人びたサイケデリアとが同居した、目がくらむほど美しい1枚です。 (Jan 2006)


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