Disk Review Site HAND IN GLOVE***
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Nasty Gal
Betty Davis
1975/US
マイルス・デイヴィスの奥さんであったことでもお馴染み、ベティ・デイヴィス1975年の3rdアルバムは、これまでの作風と変わらずドファンキーでパワフルなアルバムに仕上がっています。
グレッグ・エリコ、ラリー・グラハムら名うてのミュージシャンによる本格的ファンク+ロックなトラックを、ベティのシャウトが喰ってしまう場面もしばしば。それほど彼女のワン・アンド・オンリーなエグさは強烈な個性を放っているワケです。・・・それでも敢えてバッキングの質に着目いたしますと、重心の低いドラム・フィルとスラップ・ベースによるイントロ/ブレイクが抜群にカッコイイ『Dedicated To The Press』がとにかくオススメ!。全編に渡って活躍するクラヴィもお手本になるプレイ満載ですよね。それにしても、僕が所持しているジャケットにはクレジットなどの情報が皆無で、とても残念です。
このベティ、マイルスとの夫婦時代に、ジミ・ヘンドリックスと浮名を流したそうですね。元モデルというルックスもモテる要因でしょうが、性格も奔放なのだろうかと想像させるエピソードです。 (Feb 2006)
This Love's For Real
Chapter 8
1985/US
どうやら、中〜後期80'sアーバン・ソウルが、今日の耳で“アリ”と再評価される風潮が一定の定着をみた様です。この辺のサウンドは、近年では僕にとってもノスタルジーと斬新さが複雑に入り混じった魅力的なものとして響いてくる様になりました。ただしこれまでは、真剣にアレンジを聴き込むというワケでもなく、シャレで流していたに過ぎませんでした。しかし本作は、純粋に聴き入ってしまうくらい音楽的完成度の高い1枚だと言えそうです。個人的には、遂に真打に巡りあえた気持ちにすらなっておりまして、最近のお気に入りなのです。
チャプター8は、かつてアニタ・ベイカーが在籍したことで有名なグループで、この『This Love's For Real』は2ndアルバムにあたります。マイケル・J・パウエルがメンバーとして名を連ね、プロデュースもこなしています。クワイエット・ストーム周辺のファンにはかねてから人気があったようで、昨年初CD化が成された際には大きなリアクションがありました。僕は予備知識なしでたまたまジャケに引き込まれて購入したクチなのですが、もうドアタマのシンセ音から「これだ!」って直感しました。洗練されたアダルトな香り。抜群にキャッチーなメロディ。洒脱な世界観。きっとバブル時代の大人たちは、これをカー・オーディオに仕込んで夜の街を駆け抜けたことでしょう(?)。
甘くてメロウな楽曲も、後半に集中するミディアムな作品も、かなりの高水準。楽曲とアレンジがどれも素晴らしいんです。ちょっと琴線に触れるような切ないカウンター・ラインが良いんですよね。
今だからこそ、敢えてオススメしたい1枚です。 (Apr 2008)
Voodoo
D'angelo
2000/US
現在のR&B/ニュー・ソウルを代表するシンガーはと聞かれれば、多くの人がディアンジェロの名前を真っ先に挙げることでしょう。この2ndアルバムは、彼の評価を絶対的にした名盤として知られています。生演奏を中心としたオーガニックな質感と、ディアンジェロのスウィートなファルセットとが織り成す贅沢な空間は、高い中毒性を持っています。
間(ま)を活かしたグルーヴがサウンドの中核を担っていることは明らかなんですが、この「間」というのもハネやブレイクではなく、まるでカット・アウト。ヒップホップ世代特有のサウンドメイクですね。また、全編を通して派手なフックは極力嫌い、味わい深さで勝負しようという意図が感じられます。これが功を奏していて、リプレイの度に新しい発見(それは些細なことだったりもするのですが・・・)があり、楽しくて仕方ありません。硬質なインストゥルメントもじわじわ利いてきて、いつの間にか『Voodoo』の虜になっているのです。静かで逞しくて、美しいアルバムです。
その終焉があまりにもカッコイイ『Untitled (How Does It Feel)』や、グルーヴィなジャズ『Spanish Joint』、ヒップホップ・ファンにもアピールしそうな『Africa』といった後半のトラックに特に魅力を感じます。 (Jan 2006)
Ellerine
Ellerine Harding
1972/US
この度めでたく初のCD化が実現した、「メインストリーム」レーベルに残されたエレリン・ハーディング唯一のアルバムです。この機会まで縁がなく未聴だったのですが、ジャケに雰囲気を感じて購入してみたら、衝撃の好盤!すっかりハマってしまいました。ホントによく聴いています。
まず演奏とアレンジがいいですね。レア・グルーヴ好きなら知らぬ人はいない、同じく「メインストリーム」レコーズのアリス・クラークの名盤と多くのパーソネルがかぶっているのだとか。なるほど、それなら悪いハズがありませんね。
そして何より、楽曲がいいんです。ファンクからサザン・ソウル系、ノーザン・ソウル系まで幅が広く、アルバムまるごと、まったく飽きさせずに聴かせてくれます。ソウル・ファンには前半のメロウな歌い上げ路線、とりわけ『 I Ain't Got Much (But Whatever I Got It's Yours Baby)』あたりが、またクラブ受けでいくと『To Whom It May Concern (All I Need)』や『Don't Take The Time』などが人気の様で、そのどれもが確かに素晴らしいのですが、僕が1曲だけ選ぶなら、エレリンのキュートさが一番自然に出ている『Sho' Nuff I Need You Baby』にしたいと思います。ポップな佳曲なんですが、「♪ア〜、アハ〜」のくだりが良過ぎです。さらに今回のリイシューに際して、7インチの作品が2トラック追加され、これがまた感動的なゴスペル系とアダルティな作品だったりして、どちらもアルバムとは毛色の違う素敵なトラックなので、これまでオリジナル盤を愛聴されてきた方にも嬉しい出会いとなったのではないでしょうか。
全体の印象として、もったりせずに、キレの良いグルーヴとポップさが目立つ辺りも気に入っているポイントです。今さらながら、僕のなかで当分はエレリン・ブームが続きそうな感じです。 (Sep 2007)
Ain't It Good Feeling Good
Eloise Laws
1977/US
エロイーズ・ロウズ唯一のアルバムは、「インヴィクタス」からレーベル消滅直前の77年にリリースされました。セールス的には全く振るわなかったそうで、まっとうな評価を得るのにレア・グルーヴの概念が生まれるまで待たなくてはいけなかった、悲劇のレコードでもあります。
伝説のチーム、“H-D-H”のひとりであるブライアン・ホーランド・プロデュースのもとで制作されたこのアルバムは、バラエティに富み、また絶妙にソフィスティケートされた傑作と言って過言でないでしょう。エロイーズのヴォーカルはどちらかと言えば器用ではなく、ちょっと硬いところもあったりするんですが、楽曲とプロダクションに重きをおく僕みたいなタイプにとっては気になる程ではありません。ホーランドのディレクションと、“N.Y.P.A(ニュー・ヨーク・ポート・オーソリティ)”の面々によるバッキングがよかったのでしょう、時代を超越する魔力を宿したのです。
もちろん注目の品は、フリー・ソウル絡みで人気を博したタイトル・トラック『Ain't It Good Feeling Good』。ティンバレスとシンセの和めるイントロから一転して、メロウ&グルーヴィな極上スウィート・チューンへと変化し、オーディエンスを惹き込みます。また、ホーランドとのデュエット『Where Did We Go Wrong』はしっとり聴かせるだけでなく、サックス・ソロの入るタイミングなんかも素晴らしいですよね。・・・ですが個人的にもっと注目したいのは、フロアを加熱するアッパーなトラックの数々です。開放感のあるベースのフレーズが軽快に疾走する『You Got Me Loving You Again』。裏打ちのハットにピアノ、そしてクラビとハデなホーンのコンビネーションがフロア映えしそうな『Love Goes Deeper Than』。『Make It Last Forever』や『Put a Little Love Into It (When You Do It)』も何かが起こりそうな夜の雰囲気が漂う、大好きな作品です。
なお、おそらくCD再発の際に明瞭感とかメリハリを微調整したでしょうから、ちゃんとパンチはあるんですが、ノイズはちょっと目立つかも知れません。神経質な方は気になるかも、です。 (Feb 2008)
Worldwide Underground
Erykah Badu
2003/US
エリカ・バドゥ自らがこれまでに牽引してきた「ネオ・ソウル」は「死んだ」として決別。「クラブ・ミュージック仕様」というキーワードを掲げて制作された『Worldwide Underground』は打ち込み主体の、よりR&B然とした、いわゆるヒップホップ・ソウル的な仕上がりとなりました。この変貌ぶりに賛否両論ありましたが、単純にコマーシャル化したワケではなく(むしろアーティステックな開拓精神で“進化”を望んだのです)、また、エッジな作品の多くが再び打ち込みに向かっていた時代背景も鑑みて、断然「アリ」な選択であったと個人的には思います。
それにしても、音響デザインの質が高いアルバムですね。縦横、つまり音域とパンとの広がりを十分に感じさせる空間があり、そこに低域以外は固めの音を配置。プロフェッショナルなミックス/マスタリングが施され、洗練されたR&Bとなって、ゴージャスにスピーカーを震わせます。
心音が文字通りビートを刻み出す『I Want You』は音やアイディアの良さもさることながら、彼女が持つスピリチュアルなオーラを図らずも感じさせる素晴らしいトラック。他にも『Bump It』や『Back In The Day (Puff)』のような、じんわりと深みがある作品も最高ですし、雰囲気を一変させる、クイーン・ラティファ、アンジー・ストーン、バハマディアとの競演『Love Of My Life Worldwide』なんかも楽しい作品です。
ジャケットも大好きですし、タイトルも気概が感じられていいですね。唯一、詞はあまり好きではありませんが・・・とにかく名盤だと思います。(May 2007)
Cosmic Slop
Funkadelic
1973/US
「ウェストバウンド」からリリースされた、ファンカデリック通算5枚目のアルバムです。彼らのシンボルとも言えたペドロ&ブルース・ベルによるイラストのジャケ画シリーズはこの作品からスタートしました(個人的には初期のフォト・ジャケットも甲乙つけ難いくらい大好きなんですけれど)。
この『Cosmic Slop』には、前作から加入したブーツィ・コリンズが参加しておらず、また、ギターのエディ・ヘイゼルも契約などの問題からバンドを離れており、言わば飛車角抜きの状況。では本作が駄作に終わっているかと聞かれれば、その答えはもちろん「ノー」です。バーニー・ウォーレルはいつも通りの活躍を見せてくれていますし、タイロン・ランプキンのパーカッションも最高!タレント不足でも、やっぱりファンカはカッコイイのです。リフ中心のアレンジも個人的に大好きですし。まぁ、たしかにどんよりとした重めのトラックもあったりして、アルバムとしての派手さはないかも知れませんが、聴き込むほどに発見があり、コアなファンに愛される1枚と言えるでしょう。
重要な作品『Nappy Dugout』、『Cosmic Slop』を収録しているのも魅力ですね。他にも、ヒップホップ世代に強烈なアピールとなる『You Can't Miss What You Can't Measure』とか、軽快な小作品『No Compute』なんかも素晴らしい出来栄えですし、ラストを飾る『Can't Stand The Strain』も隠れた名曲だと思います。そんな中に混じって、異色の『This Broken Heart』みたいなストレートなバラードがあったりするのも面白いですよね。
Pファンク好きは放っておけない、そんな名アルバムなのです。 (Sep 2008)
One Nation Under A Groove
Funkadelic
1978/US
ファンカデリックの通算10作目である『One Nation Under A Groove』は、Pファンクの代表作のひとつであり、また歴史的な名盤と言われています。個人的にも本当に大好きなアルバムで、何回聴いても飽きない上に(iPodの再生回数でソートすると必ず上位に入ってきます)、絶対にテンションが上がります。ファンカデリックは他にも好きな作品がたくさんありますが、ベタと言われようと、やはりこの1枚は別格の出来栄えですよね。
まず、音がとにかく気持ちいい。とりわけキックとベースの音色が良くて(『Cholly (Funk Gettin' Ready to Roll)』のイントロなんてホント、ヤバイです!)、それを軸にギター、コーラス、シンセ、パーカッション類が絡みつくイメージです。もちろん、エディ・ヘイゼルのギターを中心とした初期のミックスや構図も捨て難いですし、本作におけるマイケル・ハンプトンのギターも主役級ではあるのですが、この『One Nation Under A Groove』がサイケでカオスな“Pファンクらしさ”は生かしたまま完成度で最高峰に達することが出来た背景には、音の軸をボトム・ラインに移行した点が大きく影響していると思います。
さらに、全トラックが名曲ばかり!すべての音楽好きにとってアンセムになるであろうタイトル・トラックのパーフェクトっぷりは言うまでもありませんが、他の作品も総じて、グルーヴィでバカバカしくて楽しくて、カッコよくてエロくて、切ない。なんだか人間そのものみたいですね。
さらに嬉しいことに、ボーナス(アナログではEPが同梱されていました)として、あの『Maggot Brain』のライヴ音源まで楽しめてしまいます。長尺に渡ってあの泣きのギターを、しかも素晴らしいテイクで味わえるので、本当にお得だと思います。10分を越えるスタジオ音源よりは少し尺が短いのですが、中身の濃さで言えばコチラに軍配が上がるかも知れません。
インナー・スリーヴまで含めて、ジャケも素晴らしいですし、非の打ちどころがないレコードです。 (Dec 2007)
Find Your Way
Gabrielle
1993/UK
かのプリンスがその才能を称えたという触れ込みで知られる、ゲイブリエルの1stです。
アイパッチが印象的な彼女(このジャケット、好きです)、その風貌以上に僕が釘付けになったのは、デビュー曲『Dreams』の素晴らしさでした。アコギの使い方、スネアに繋げるオープン・ハイハットなど、93年当時のR&Bの先端を行ったアレンジ。キャッチーで質の高いメロディ。それを超個性的な歌声でサラっと歌う彼女。メロディアスなストリングスも効果抜群で、まさに文句のつけようのない名作中の名作です。それ以外の楽曲もなかなかにフックが利いていますが、『Dreams』が頭抜けていることに異論を唱える人は少ないでしょう。
恥ずかしながら本作以降の彼女の活動をあまり知らなかったのですが、現在の彼女は、本国イギリスで押しも押されもせぬ人気シンガーに成長したとのことです。プリンスの目と耳は確かだった、ということになるのでしょうか。 (Jan 2006)
Get Lifted
John Legend
2004/US
カニエ・ウェストによる「Getting Out Our Dreams」レーベルからのリリース第一弾として世に送り出されたのが、ジョン・レジェンドの1stアルバムです。1stとは言っても、そこらのペーペー新人とはワケが違います。ジョンはこれまでにカニエ・ウェスト始め、ローリン・ヒル、アリシア・キーズ、ブラック・アイド・ピーズ、メアリー・J.ブライジといった超豪華な面々のセッションに参加し、その才能を高く評価されてきた実績を持っているのです。
そして満を持してのデビュー盤で、ジョンはその評価を揺ぎ無いものにまで高めました。ピアノを弾きながら、本物のソウルを感じさせる歌を聴かせるジョンに、世界中のミュージック・ファンが注目したのです。
カニエのプロデュースによるヒップ・ホップのフィーリングとボトム・エンドを持った作品(代表曲の『Used To Love U』もコレに相当します)ももちろん大好きなんですけど、例えば『So High』みたいな作品を聴いていくうちに、彼のピアノと歌声だけのアルバムも体験してみたい気持ちにさせてくれます。シンプルな構成でも、きっとジョンの深みは魅力を増すでしょう。
堂々とメイン・ストリームを行くこういった作品の中にも、いいものはたくさんあるワケです。 (Apr 2006)
Mind's Eye
Jon Lucien
1974/US
カリブ海はヴァージン諸島の生まれで、渡米後に「RCA」からプロ・デビューしたジョン・ルシアンが74年にリリースしたアルバムです。
80年代はほとんどミュージシャンとしての表立った活動のなかったルシアンですが、80年代末、過去の音源(すなわち本作や前作『Rashida』)がジャイルス・ピーターソン等にフック・アップされる形で長い不遇の時代を抜け、再び陽の目を見ることとなりました。いわゆるアシッド・ジャズやレア・グルーヴといった意義あるムーヴメントが、高い才能を再び世に送り出した好例ですね。
そんな再評価の流れで知られるルシアンの『Mind's Eye』は、本当に本当に素晴らしい作品だと思います。ブラジリアン・ジャズ、R&B、そしてカリブの香り。それらが絶妙なブレンド具合をもって溶け合い、ピースフルで楽園的な音となって踊りだします。しかも極上のベース・ラインやパーカッションがこの上なくグルーヴィで、また、70年代にしか在り得なかった質感がカッコよくも洒脱であり、DJユースからラウンジ、あるいはカフェに至るまで様々なシーンにフィットすること間違いなしといったところです。とりわけ今の季節は重宝すると思います。海に沈む夕日でも見ながら聴けたら最高なのでしょうね。
そして触れないワケにはいかないのが、あのハービー・ハンコックに「奇跡の喉」と言わしめた、ルシアンのヴォーカリストとしての資質の高さです。優しくて太くて甘いその歌声も最高なんですが、やはりファルセットを織り交ぜたスキャットこそ彼の真骨頂。彼のスキャットは楽器の様でもあり、長いフレーズが続くとトランシーな気持ちよさに心を奪われること必至です。
また、当時のルシアンはコンポーザーとしても最強ですね。駄作一切ナシです。特に僕が好きなのが『A Prayer For Peace』。アコギ等のざっくりしたサウンドやルシアンのスキャットはアルバムのトータル・イメージを崩すことなく、それでいて崇高かつゴスペルチックな世界観を表現しているのが見事ですよね。まさにキラー・トラックだと思います。 (Aug 2008)
Musical Massage
Leon Ware
1976/US
リオン・ウェア定番中の定番です。自身の作品として製作中だったアルバム『I Want You』をマーヴィン・ゲイに譲り、ほぼ同時進行で作られた言わば裏『I Want You』だ・・・なんて話は有名過ぎてちょっと聞き飽きてますよね。
ウェアと言えば「官能」「メロウ」「スウィート」といった代名詞でお馴染みですが、まさに本作では、そのどれもが文句無く高い完成度の中でひしめき合っています。現在も若いミュージシャンやリスナーにリスペクトされるウェアのひとつの頂点が生々しく記録されている、そんな1枚です。
楽曲だけでなく、バッキングの出来栄えやアレンジも素晴らしいですね。デヴィッド・T・ウォーカー&レイ・パーカーJr.の冴えたギタープレイ、時にネバり時に切れるホーン、リズム隊、パーカッションとどれをとっても一級品。中でも美しいメロディで宙を漂うストリングスは白眉です。
甘美の極み『Musical Massage』や、クインシーの『Body Heat』におけるファンキーなグルーヴとメロウネスとの両立(ギターと管が最高!)、今日的な解釈で相変わらず定番の人気を誇る『Journey Into You』、思わず身体が動くリズム隊の上で管弦が歌いまくる『Share Your Love』などなど、全曲大好きです。 (May 2006)
Live at the London Palladium
Marvin Gaye
1977/US
悲劇の死から20年以上が経過してなお、世界中の音楽ファンを魅了し続ける世紀のソウル・シンガー、マーヴィン・ゲイ。彼が77年に残したライヴ盤です。
リリースされた77年頃は、マーヴィンにとって決して楽しいばかりの日々でもなかった様です。しかしこのレコードからは、周囲との不協和などまるで無関係の、素晴らしいグルーヴや美しいファルセットが流れてくるのです。お馴染みのヒット曲をメドレーなどに散りばめた豪華なセットを、小気味良く的確に築き上げていくバッキング陣。その並外れた力量は、インストなどで十二分に味わうことができます(『Intro Theme』と『Closing Theme』、カッコ良過ぎです!)。そしてマーヴィンが歌を乗せると、湧き上がる黄色い悲鳴。やっぱこれですよね。
音質も良く、最高のライヴ・アルバムのひとつだと思います。ファンク度も何気なく高くて、そこも好きです。唐突に始まる12分の長尺ファンク『Got To Give It UP』はハマりますよ。 (Jan 2006)
Friends And Buddies
Milton Wright
1975/US
レア・グルーヴの概念が根付いて以降、絶大な人気を誇るマイアミ・ソウルの隠れ名盤『Friends And Buddies』。シンガー・ソングライターのミルトン・ライトが「TK」傘下のレーベル「アルストン」よりリリースした1stアルバムです。
本作が今日の評価を勝ち得たのは、ミドル・ソウル・チューン『Keep It Up』が「FREE SOUL」界隈を中心に話題となり、重用されたからに他なりません。この『Keep It Up』は、ADSR設定が独特なシンセと女性の喘ぎ声との組み合わせが何とも珍妙な味わいをみせる、クセのあるアレンジを楽しむことが出来ます。重厚なファンク・グルーヴと、ファットで真っ直ぐなミルトンのヴォーカルの相性が抜群にいいことは、何よりこの『Keep It Up』が証明しています。
ただ個人的には『Keep It Up』以上に気に入っているトラックも多くて、例えば、女声コーラスによるブレイクやギターのクリーン・トーンに陽の明るさを感じる『My Ol' Lady』や、歌うコンガとフルートが夕暮れに切なく響くようなメロウ・グルーヴ『The Silence That You Keep』などは、楽曲の完成度もアレンジ(ちなみに実の兄弟であるフィリップ・ライトもアレンジャーとして参加しています。また、『Clean Up Woman』を大ヒットさせたベティ・ライトとも実の兄妹であることは有名ですね。彼女もコーラスで名を連ねております)の質も高くて、最高に好きです。
そして今回声を大にして申し上げたいのが、現行の国内盤(もちろん「P-Vine」によるリイシュー!)に収録されたボーナス・トラックの素晴らしさです。もともとの初回プレスには収録されていた『Nobody Can Touch You』(なんと『Keep It Up』は2ndプレスで追加されたトラックなのだとか。差し替えになってしまった不遇のトラックこそ、この『Nobody Can Touch You』なのです)に加えて、レアな7インチ、12インチでしか聴くことが出来なかった『Ooh Ooh I Like It』と『Ooh Ooh Ooh I Like It』もCD収録!郷愁にかられる『Nobody Can Touch You』も、押しの強いダンサー『Ooh Ooh I Like It』、『Ooh Ooh Ooh I Like It』も本当にいい曲なのです。未聴の方は、一昨年にリイシューされた紙ジャケCDに買い換えるという選択肢も検討した方がいいですよ。 (Feb 2010)
Keep Reachin' Up
Nicole Willis And
The Soul Investigators 
2006/UK
イギリスを中心にますます熱を帯びるディープ・ファンク・ブームですが、象徴的な新録アルバムがリリースされたのでチェックしてみました。アシッド・ジャズ時代から第一線で活躍しているニコル・ウィリスが、ザ・ソウル・インヴェスティゲイターズと作り上げた本作がそれです。
ソウル・インヴェスティゲイターズはフィンランドで結成されたファンク・バンドで、現在はなんとファイヴ・コーナーズ・クィンテットのメンバーも加入。ニコルもフィンランドに活動の場を移したこともあって、この相性抜群のコラボが実現したのでしょうね。
音質、楽曲ともに、およそ40年前のサウンドをほぼ完璧にシミュレート。ロックでは以前、レニー・クラヴィッツが機材やら全てをヴィンテージで通したことで、タイムスリップしたかの様な新録を出していましたが、同じく60年代、70年代のノーザン・ソウル、ファンクに恐ろしいほどの情熱を傾ける面々によって、60年代後半と見紛うばかりの現行品を作り上げたわけです。ウォーミーでリヴァーブの利いたサウンドがちょっとビビったりするところなんて、ニヤリとさせられます。しかし、単なるモノマネではヴィンテージには絶対適わないわけですから、そこは現行のクラブ向きの仕掛けも忘れておらず、さすがディグに愛情とプロ意識を持つ連中だけあるなと思いました。
超名曲『Feeling Free』のイントロで、メトロノームにピチカートが絡んでくる流れには痺れました。ただ全体的に、僕にはちょっとスネアがファットでヘヴィに感じてしまいました(好みの問題です)。そこ以外は大好きですね。 (Feb 2007)
Nightwind Featuring
Angela Charles & Wind Song
Nightwind
1987/US
90年代にはあれほど忌み嫌われた80's AORが、一周まわってアイテムとなった様です。小中学生時代に80年代を体感し、90年代に音楽観を確立させてきた僕らの世代にとっては、実に複雑に響くのがこのテの80年代アーバン・サウンドでして、「虚栄で中身がなく、古臭いもの」として長く嫌悪してきたサウンド・プロダクションなのに、当時感じた大人っぽさへの憧れがくすぐったく思い出されたりもするワケです。時代も変わり、一部DJたちや80年代を新鮮に受け入れられる若い世代によって、こうしてAORを改めて洒脱なものとして扱う風潮が出来たからかも知れませんが、店頭でこのジャケに吸い寄せられ、速攻でレジに並んでしまいました。
サウンドもジャケの世界観そのままといった感じで、ブラック・コンテンポラリー色の強いアーバン・ソウル。深いデジタル・リヴァーブに埋もれた、実体を感じさせない音です。懐かしいという感情だけでなく、再評価の波もちょっと理解できる様な新たな価値が感じられ、いい買い物だったと思っています(しかし購入直後に国内盤のリリース予定を知りまして、若干早まったかとも思いました。資料が見たくなったからです。おそらく国内盤であればライナーが付くでしょうから・・・)。プレイ・ボタンを押すとすぐに流れ出すのは、夜景の似合う落ち着いたバッキングに被っていくサックス。まさに今、体感したかったのはこのサックスの入り方だなぁ、なんて感慨に耽っていると、アンジェラ・チャールズのヴォーカルが切れ込んできます。これが一瞬シンセの白球かと見紛うばかりの常人離れした超ハイトーン・ヴォイス!彼女のこうしたヴォーカリゼーションが、AOR信仰者の間では高評価とのことで、このハイトーンが生きるミニー・リパートンの『Lovin You』なんかも収録されています。これが目玉なワケですが、この楽曲にちょっと食傷のところもあり(日本人は『Lovin You』好き過ぎじゃないですかね。コスリ過ぎです)、個人的には敬遠しています。逆に、地味な後半の楽曲に惹かれるものが多いです。 (Sep 2007)
Chocolate City
Parliament
1975/US
表裏一体の存在であるファンカデリック同様、70年代のパーラメント作品はどれも傑作ばかりですが、3rdアルバム『Chocolate City』はとりわけ好きな作品のひとつです。
名盤の誉れ高い4thアルバム『Mothership Connection』と同年に発表された本作は、その影に隠れがちなのが惜しまれる名盤でして、クレイジー(もちろんホメ言葉です!)なストーリー仕立てになっていく4th以降とは趣の違う、ここでしか楽しめない味わいがあります。コクはあるけれどスッキリしているとでも言ったらいいのか・・・。
その味わいの決め手となっているのが、バーニー・ウォーレルの存在です。バーニーの味覚はセンス抜群で、彼がスコアを手掛けたホーン・セクションは鮮やかに楽曲を彩り、高揚感を高め、作品全体をエッジィにしているのです。例えばクールなエレクトロ・ファンク『Chocolate City』の間奏時に複数のホーンが立ち昇ってくる様は実にエキサイティングですし、『Side Effects』や『What Comes Funky』での饒舌でファンキーなラインも最高です。一方で本職のピアノやシンセでも個性を発揮しており、バロック風味がきいたオペラ調の怪作『Let Me Be』などはバーニーのピアノなしでは語れないでしょう。
猥雑なファンク(この辺りは、ズクズクとしたエフェクティヴなベースを鳴らすブーツィ・コリンズのぶっ飛んだ感覚がものを言っていますね。もちろんP-ファンク最大の武器であるカオティックなヴォーカル陣も忘れてはいけません)を、キャッチーかつタイトに展開した力作です。ちなみにタイトルの『Chocolate City』とは、当時ファンが多かったワシントンD.C.とのこと。 (Jul 2010)
Around the World in a Day
Prince And The Revolution
1985/US
プリンス&ザ・レヴォリューション名義でリリースされた、殿下の7作目『Around the World in a Day』は、自身が立ち上げたレーベル「ペイズリー・パーク」の第一弾アルバムとなりました。前年の世界的な大ヒット作『Purple Rain』に比べると、当時のチャート・アクションや評判ではやや劣った様ですが、今日では最高傑作の声も聞かれるほど高い評価を得ています。僕もプリンス作品の大ファンでして、中でも本作が1、2を争そう傑作だと考えている一人です。
ある種のキャッチーさとサイケデリックな風合いを特徴とした本作では、ザ・レヴォリューションの活躍が目立ちます。女声コーラス(ウェンディやリサでしょうか)がキモとなっている楽曲も多いですし、何より、バンド・サウンドならではの有機的な膨らみが感じられるのが大きいですよね。ワンマンなプリンスも大好きですが、本作における“他人を介した揺らぎ”は、他に替えがたい魅力があると思います。
「ペイズリー・パーク」という世界観を軸としたコンセプトもしっかりしていますし、そのコンセプトを具現化する楽曲の出来が総じて素晴らしく、捨て曲一切なしと断言できます。ディスコードを用いたり、あるいは歌メロの音程感が希薄だったりと、手法は必ずしもポップではないんですが、結果として何故かどのトラックも紛れもなくキャッチーな仕上がりなのですから不思議です。プリンスのワン・アンド・オンリーな才能の成せる業なのでしょう。もはや天才という言葉以外、僕には浮かびません。
繰り返しになりますが、どのトラックも例外なく素晴らしいものばかりです。中でも『Pop Life』は、プリンスの華々しいキャリアにおいても最高峰に位置する作品ではないでしょうか。本アルバムの印象を「明るい」と評する人が多いと聞いたことがありますが、僕にはそうは思えません。特にこの『Pop Life』なんて、心の琴線に触れ、いつも泣きそうになってしまうのです。まぁ明るい作品が泣けないなんて下種なことを言うつもりもありませんが、少なくともアルバム『Around the World in a Day』が明るい作品だと感じる感性は、どうやら僕にはないみたいです。
本作を未体験の方、ぜひペイズリー・パークを訪れてみて下さい。きっとそのマジカルな世界に魅了されると思いますよ。 (Jun 2008)
It's Gonna Take a Miracle
The Royalettes
1965/US
60年代アメリカのソウル系ガール・グループ全盛時代を彩った、ロイヤレッツの1stアルバムがこの度リイシューされました。オリジナル盤の復刻はこれが初めてで、例によって「セレスト」さんの良い仕事の一つです。
ロイヤレッツは2枚のアルバムをもって解散してしまった短命なグループだったのですが、バカラックとも並んで称されるメロディメーカー/アレンジャーのテディ・ランダッツォが手掛けたこともあって、近年、レア・グルーヴやソフトロック畑で再評価され、俄かに注目が集まっています。プロデューサーでもあるテディの手腕はさすがで、良質でキャッチーな楽曲と華麗なオーケストレイションを用いて作品性を高めることに成功しています。
テディばかり褒めてしまいましたが、ロス姉妹を中心とした彼女たち4人もなかなかに魅力的です。例えば、アマチュア時代から18番にしていたという『He’s Gone』などは、コンサバに終わりそうなところなのに、歌で聴く者を引き込んでいくところまで到達しています。
ルグランのカヴァーをしっとり聴かせる『Watch What Happens』、力強いロック・ドラムが印象的な『Out Of Signt,Out Of Mind』、テディの作曲能力、アレンジ力が存分に発揮されている表題曲『It's Gonna Take A Miracle』、サビでのたたみ掛けが聴きどころの『Poor Boy』などはとりわけ好きなトラックです。 (Jan 2006)
Flatfoot Hustlin’
The Sidewinders
CAN
カナダのファンク・バンド、サイドワインダーズが唯一残したアルバム『Flatfoot Hustlin’』は、リリースされた年代すら明らかになっていないほど無名の存在ながら、レア・グルーヴ界隈ではよく知られる裏名盤です。
とにかく内容が素晴らし過ぎです。全8トラックとも楽曲の質、アレンジの妙、プレイの切れ味、バラエティの豊かさとどこを取っても申し分なし!中でも僕が特に気に入っているポイントを挙げさせて頂くなら、やはり気持ちのいい“グルーヴ感”になるでしょうか。高速ファンクでもミディアム・チューンでも快感を味わわせてくれるグルーヴの良さは一貫していて、しかも重過ぎずに適度な軽快さがあるので、食傷することなく飽きずに楽しめるのです。
コンプ掛かった音色もすごく好きで、とりわけビーターの素材感まで感じさせるキックの音は、じっくりヘッドフォンで堪能することをオススメしますよ。僕はコレクターでないので、2007年にリイシューされた「P-VINE」のCD(もちろん世界初のCD化です!さすがですよね、本当に嬉しいです)で楽しんでいますが、マスターから起こしたワケではないであろう悪条件の中でも、気持ちいい帯域がちゃんと伝わってくるのです。リイシューに愛(?)を感じてしまいます。
ヴォーカル・メロディ(インストも多いんですが、唄モノでは結構コーラス・グループっぽく聴かせるんです)やベース・ライン、ホーン・アレンジもいちいちセンスが良いですし、グルーヴィなファンクだけでなく、『Time For Loving』みたいな甘いバラードも何気に効いていて、本当に完成度の高いアルバムだと思います。こんな作品が長く陽の目を見ずに眠っていたなんて、不思議なものですよね。 (May 2009)
Stand!
Sly & The Family Stone
1969/US
スライ&ザ・ファミリー・ストーン最高傑作の誉れ高い『Stand!』は、そのままファンク・ロックのレコードの最高傑作と言い換えても良いでしょう。圧倒的なグルーヴから導かれるこの幸福感を、一体他のどんなレコードが約束してくれるでしょうか?
彼の“栄光の日々(それはとても短いものでしたが)”においても最も高揚感に満ちた1枚は、今もってギラギラと輝き、躍動しています。全曲シングルでいけそうなキャッチーなメロディを持ちながら、エグくてクセも強い。一見それぞれが身勝手にアピールしている様な個性的なアレンジなのに、瞬間瞬間の主役はせいぜい1〜2パートで、グルーヴは失わずに聴きどころが整理されている。う〜ん、やはり名盤以外の何者でもありません。
適度にラフなテイクが採用されているのは大正解ですね。特にヴォーカル系のトラックはそう思います。多用されるモジュレーション効果もいちいち気持ちよいし、ロックっぽいフレーズやアプローチも絶妙のハネや粘りで押しの強さが与えられています。楽器単位では『You Can Make It If You Try』での人をくったオルガン、ワウやトーキング・モジュレイターを使ったギターも大好きですが、特に好きなのはホーンですね。必殺のキラー・チューン『I Want To Take You Higher』での切れ味は言うに及ばず、ムードを一変させるピースな『Everyday People』におけるヴォーカルとのカラミなんて、さり気ないながらも最高のアレンジ&プレイだと思います。 (Sep 2006)
Super Duper Love
Sugar Billy
1976/US
「メインストリーム」レーベル関連のリイシュー・ラッシュですね。今回、初CD化となる本作はシュガー・ビリー(a.k.a ビリー・ガーナー)名義で唯一のアルバムとなる1枚で、「メインストリーム」傘下のレーベル「ファスト・トラック」からリリースされたものです。「ファスト・トラック」は76年に幕を閉じますが、移籍先の「メインストリーム」でもビリーはシングルをリリースしており、その作品『Freak And You Shall Find』も追加収録されての復刻と相成りました。
アルバムの中身はと言えば、かなりファンキーな力作です。ヒットしたリード・シングル『Super Duper Love』が有名かつ人気のようでして、たしかに歯切れの良いリズムと、浮遊感すら感じるギターとオルガンが独特な味わいの好トラックなんですが、個人的にはもっとファンク色の強い作品に惹かれました。例えば、スネアのアタマ打ち&クラビの刻みがクールに疾走するトラック上を、ハデなブラスとアツいヴォーカルが乗っかる『Sugar Pie』とか、ビリーの粘っこい熱唱と相性がよい佳作『Treat Me Like You Don't Know Me』とか。それに、冒頭をド・ファンキーに飾る『Too Much, Too Soon』もカッコイイです。その真骨頂を味わうにはヘッドフォンがオススメ。LRに分かれてビリーがひとり掛け合いを聴かせてくれるのですが、それが実に上手いんですよね。
そして特筆すべきは、その音の良さ!リマスターが良かったのでしょうか、深みのあるベースのロー・エンドの出かたなんてホントしびれます。ハイファイという意味でなく、コンプ・サウンド(とりわけローへの掛かり方)の妙味が楽しめて、かなり質感にハマっています。 (Dec 2007)
So Sexy
Sydney Joe Qualls
1979/US
79年に「Chi-Sound」よりリリースされた、シドニー・ジョー・クォールズの2ndアルバムです。
シドニーは「シカゴのアル・グリーン」とも呼ばれたシンガーで、実際、アチコチで言われる様に歌いまわしはそっくり。この5年前に「ダーカー」レーベルから発表された1stでもプロデューサーとして携わったカール・デイヴィス(本作でもエグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされていますね)も、その線をモロに狙ってシドニーをプロデュースした様で、意識的にアル風だったワケです。
では本作が、アル・フォロワーによる猿真似アルバムに終わっているかと言えば、その答えは間違いなくノーです。力作揃いだった当時のソウル・ミュージックにおいても十分に目立ち得る、自立した傑作ヴォーカル・アルバムとなっています。
キャッチーなファンク『So Sexy』で幕を開けた時点では「なかなかカッコイイ」止まりなんですが、続く『Let the Woman Know』がかなりやってくれます。サザン・ソウルの色濃い名曲です。イントロから期待感が募る『I Don't Do This』や『Bad Risk』は、今日的な耳を持った若いリスナーにフィットする隠れた好トラック。他にもバラード、粘るファンクとありますが、どれもスムースで伸びやかなヴォーカル、しっかりしたメロディ・ライン、聴きごたえのあるアレンジによって例外なく高水準な作品に仕上がっています。
程よい時間でサクっと聴ける、エネルギーがギュっと凝縮した全8曲。近年リイシューされたリマスター盤でもボーナス・トラック無しですが、かえって散漫にならずに良かったのではないでしょうか。最高のジャケも含めて、本当に大好きな1枚です。(Jun 2007)
One To One
Syreeta
1977/US
シリータ・ライト、1977年の3rdアルバムです。70年代レア・グルーヴ系の作品中でも僕が最も好きなアルバムのひとつである『One To One』は、レオン・ウェアのプロデュースによって制作されました。そうです、77年ということはレオンが泣く子も黙る有名作品『Musical Massage』をリリースした翌年であり、またシリータはゲイリー・バーツの『Music Is My Sanctuary』に客演し、そのあまりに素晴らしいコラボでファンを感動させた、まさにその年なのです。ひとつの絶頂期を迎えていた二人の合体は計算通りの、いえ、それ以上の相乗効果を生み出したわけです。
僕はいつも、シリータの声に他では替えがたいワン・アンド・オンリーな魅力を感じています。彼女の声質にクセがあるとか、特別個性が突出しているという事ではないのですが、とにかく1ミリの狂いもないくらい、好みの歌声なのです。淀みのないハイトーン。愛らしいとしか言い様のない、ちょっと拙い滑舌(本作リリース時は30代に差し掛かった頃のハズ。とても信じ難いです)。気持ちよく聴き手の身体の中心部まで染み込んで来る、ホントに魅力的な歌声だと思います。その歌声が、レオンが指揮を執るデヴィッド・T・ウォーカー、レイ・パーカー、チャック・レイニー、ソニー・クラークらのメロウ&グルーヴィンなバッキングの上を踊るわけですから、もう極上のアルバムであることは約束されたも同然です。
さらにすごいのが、彼女のソング・ライティングのセンスです。たしかにヒット曲を手掛けた作曲家としても知られる彼女ですから当然と言えば当然なのですが、本作でもレオンやカーティス・ロバートソンJr.との共作でその腕前を揮っています。
本作の楽曲でとりわけ人気が高いのは、いわゆるフリー・ソウル界隈で取り上げられていた『I Don't Know』や『One To One』、あるいは元旦那であるスティ−ヴィー・ワンダーによる『Harmour Love』辺りということになるでしょうか。『I Don't Know』はいかにもレオン・プロデュースを実感できる完成度の高いメロウ・グルーヴで、タイトル曲『One To One』は、伸びやかに歌い上げるシリータの良さを存分に味わえる、キャッチーな作品。空高く舞い上がる歌声&ストリングスと軽妙なクリーン・ギターやエレピ、しっかりボトム・エンドを支えながらも軽やかなテクニックで聴かせるベース、ドラムス、パーカッションらの兼ね合いが最高に気持ちよいトラックです。この『One To One』は、アルバムの最後にはリプライズとしてバッキングのみのヴァージョンが収められているのですが、僕のようにエンジニアリングやミキシング、アレンジに興味がある人間にとっては実に嬉しい贈り物となっています。また、『Harmour Love』は饒舌なアコギのカッティングとキーボードが愛らしいポップスで、こういったメロディを歌うシリータはズルイいくらい可愛らしいのです。
他にも名作がズラリと並んでいて、例えば『Don't Cry』は、とりわけ木管やゲイリー・バーツによるサックスがハッとするほど美しい、優美なオーケストレイションを従えた泣きの1曲で、『Tiki Tiki Donga』は妖しげなムードが異空間へと誘う、来る80年代を予感させる個性的なトラックです。感情を抑えてテーマを歌うシリータと、感情を荒げて(それでも少女性が失われないのがシリータの特徴だと言えるかも知れません)張った歌声を聴かせるシリータとのコントラストに注目です。
ちょっとチープなジャケも僕は大好きですし、もう何から何まで100点満点をつけたくなる作品です。 (Jan 2009)
Totally Tata
Tata Vega
1977/US
後にゴスペル・シンガーとして活躍するタタ・ヴェガの、「Tamla」レーベル所属時代の作品が「P-VINE」さんの好企画で蘇りました。世界初CD化だそうです。
肝心の中身ですが、驚くほどイイ出来栄えです。フリー・ソウル絡みで盛り上がりを見せる、件の『You'll Never Rock Alone』の存在くらいは辛うじて知ってはいましたが、アルバム単位での高い評価はあまり耳にしたことがなかったので、思わず「おぉ!」という感じでした。ソウル、ファンク、さらにポップス・ファンをも取り込む器の大きさがあり、良い意味でとても聴きやすく、各トラックがよく立っています。どうやらアレンジャーのアル・ジョンソンの手腕が活きた様ですね。アッパーなトラックではとことん開放感を追求していて、またスティーヴィーのカヴァー『Blame It On The Sun』等しっとり行くところはロマンチックかつポップにまとめています。
タタのヴォーカルもすごく好きです。張る声がパワフルなのはもう分かりきっていましたが、ここでは予想以上に変幻自在なヴォーカル・スタイルを披露していて、しかも気持ちよい帯域がよく出ていますね。正直、先に触れた『Blame It On The Sun』なども、原曲より彼女が歌った方が好きだったりします。ファンキーな『Mr. Troublemaker』、後半に突然Pファンク風に様変わりする大作『Come In Heaven (Earth Is Calling)』、言わずと知れたキラー『You'll Never Rock Alone』や『Jesus Take Me Higher』から、きっちり聴かせてくれる『Love Comes From The Most Unexpected Places』や『Deep Inside』まで、とにかく全曲好きになってしまいました。生粋のソウル・ファンはどう捉えているのかわかりかねますが、ロック・ファンにオススメしたい1枚ですね。 (Feb 2006)


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