special issue: Pixies

about album single visual etc


album


Come On Pilgrim
Pixies
1987/US
ピクシーズのデビュー・ミニアルバムです。
恐らく単独では国内盤化されたことがないと思うのですが、後の1stフル・アルバム『Surfer Rosa』にカップリング(CD盤のみ)されているので、ファンの誰もが音源として所有していると思います。しかし、このお得なカップリングが災いしてか、どうも単独で『Come On Pilgrim』が評価されて語られているのはあまり耳にしないですね。まるで『Surfer Rosa』の一部の様に扱われてしまっているからでしょう。ですが僕がピクシーズのレコードの中で一番好きなのは、断然この『Come On Pilgrim』なのです。
言わばデモ音源集から切り出された、厳選の8トラック。その全てに当時のピクシーズの個性と勢いが宿っていて、捨て曲ナシで知られる彼らのキャリアにおいても別格のオーラを今なお放ち続けています。その異端たる個性はあたかもクラシックとなることを拒絶する様です。
1曲目に泣きの『Caribou』を持ってくる辺り、一筋縄でいかないバンドのスタートとしては上々です。ライブでは常に主役となる『Vamos』。得意のスペイン語の響きが無国籍っぽさを演出する『Isla de Encanta』。エンディングが個性的な『Ed Is Dead』。シングル向きな“カッコイイ系”ロックの『The Holiday Song』。チャールズのアコギにジョーイのレスポールが加わった瞬間がスリリングな『Nimrod's Son』。ポスト・パンク的な軽やかなギターと、サビでのハードな展開とのギャップが素晴らしい『I've Been Tired』。実にクライマックスらしい、感動的な展開を見せる『Levitate Me』。この8トラックは、そのままピクシーズのベスト10に丸ごと送り込みたいほど、例外なく大好きです。プロデューサーもスティーヴ・アルビニでなくゲイリー・スミスですし、『Surfer Rosa』とは別物として聴くことをぜひオススメいたします。 (Mar 2006)
Surfer Rosa
Pixies
1988/US
ピクシーズの1stフル・アルバム。
あのスティーヴ・アルビニをプロデューサーに迎えたことで、強いインパクトを世間に与え、後の成功への第一歩となる高い評価を得ました。ピクシーズの全カタログ中で最もパンキッシュな一面を持っていて、これはガレージ・サウンドを得意とするアルビニの音作りによるところが大きいと思います(・・・ガレージ・パンクだなんて書くと誤解されそうなので一応注釈を入れさせてもらいますが、現代アートの域に達したピクシーズのひん曲がった個性はパンク的単調さなどとは無縁であり、1stである本作の時点で既に、その個性はハッキリと楽曲・演奏に表れています)。
ジリジリとしたガレージ・サウンドに丸みは皆無ですが、メロディ・ラインや進行は実にポップ。もしかしたら中には「ノイジーで難解」と捉える人もいるでしょうが、少なくともピクシーズに興味を抱く様な方にとっては、快適な時間を過ごすことになるのは間違いありません。
ちなみにクレジットではキム・ディールがミセス・ジョン・マーフィーとなっています。離婚前のキムはそんな風に名乗っていたのですね。 (Mar 2006)
Doolittle
Pixies
1989/US
フル・アルバムとしては2枚目にあたる、ピクシーズの代表作。
元ビッグ・ブラックのスティーヴ・アルビニ・プロデュースによる前作が、カレッジ・チャート中心に好評を博したにも関わらず、敢えてプロデューサーを変えてこの『Doolittle』のレコーディングは行われました。白羽の矢が立ったのはギル・ノートン。ピクシーズとは何かと縁が深いスローイング・ミュージズや、エコー&バニーメンらの仕事に携わっていた彼との出会いは、結果的に言って、ピクシーズがオルタナティヴ・ロック・シーンに多大な影響を与えるに至る、最も幸運な出来事であったと言えるでょう。それほどノートンのプロデュース・ワークはピクシーズにハマっていたワケです。
具体的には、アートでアンダー・グラウンドなシーンに向けられた感があったアルビニの音作りに比べ、ノートンのそれはより大衆を意識したものになっており、だからと言ってピクシーズが“大衆音楽”に迎合することなど起こり得ないワケで(当のメンバーが、どれだけの成功を目指していたかは別にしてです)、正に理想的なバランスで、オーヴァー/アンダー・グラウンドを行き来できるという元来バンドが持つポテンシャルの高さを形にして見せてくれたのでした。こうしたノートンの功績は、後のミュージック・シーンを大きく路線変更させるくらい、大きなものだったのです。
そんなノートンですが、ピクシーズが持つ奇妙なエッジには理解を示しながらも、チャールズの楽曲の短さには悩んだそうです。例えばある曲において「2コーラス目を追加してサビをもう一度繰り返せば、それらしい尺と構成になって聴きやすくなるハズだ」とするノートンのもっともな意見は、彼のプロフェッショナルなプロデューサー性によるものでしょう。しかしチャールズはこの助言を聞き入れません。こうして意見が対立したときに、チャールズはバディ・ホリーのCDを買ってきてノートンに渡したそうです。2分にも満たないのに素晴らしいエネルギーを湛えたバディ・ホリーのレパートリーの数々を聴いて、楽曲の長さが良し悪しを左右することはないと改めて理解したノートンは、以後「ポップスは4分あってしかるべし」という業界の通例に拘らなくなったそうです。とても好きなエピソードです。
こうして、2分そこそこの素晴らしい楽曲がズラリとラインアップされた『Doolittle』が完成しました。『Debaser』、『Wave of Mutilation』、『Here Comes Your Man』、『Monkey Gone to Heaven』、『Hey』といった日本でも人気の代表曲が綺羅星のごとく並ぶ様は圧巻です。ライヴでの再現性を最優先したというアレンジ面でも、「何故こんなコトに?」と聞きたくなってしまう様な奇抜なアイディアが、ごく自然に(ここ重要ですね。奇をてらってるのでなく、特殊な感性が集まっているんでしょう)反映されていて、曲ごとの個性が際立っています。特に『Dead』なんかは、全パートカッコ良すぎのアレンジが本当に素晴らしいです。
もしこれからピクシーズを初めて経験する人がいたら、やはり推薦すべき最初の1枚はこの『Doolittle』で間違いないと思いますね。(Jun 2007)


single


【EP】Gigantic
Pixies
1988/US
ピクシーズの4曲入りCDシングルです。
ブラック・フランシスことチャールズによれば、バンドはシングルのリリースに関しては常にノータッチで、良いアルバムを製作することに専念していた様ですね。ですから、ここに収録された『Gigantic』、『River Euphrates』も、レーベルである「4AD」の依頼で再録音が行われ、シングル化されたとのことです。アルバム『Surfer Rosa』とはヴァージョン違いである上記2曲が楽しめる他、ライヴでのクライマックスを担当する2作品『Vamos』と『In Heaven(Lady In The Radiator Song)』が、ライヴ音源にて収録されています。オフィシャルの音質でライヴ音源が楽しめるのは本当に嬉しいものです。
ちなみにこの『In Heaven〜』は映画『イレイザーヘッド』の挿入歌で、チャールズはしばしばデヴィッド・リンチからの影響を語っています。 (Mar 2006)
【EP】Dig For Fire
Pixies
1990/US
チャールズ本人のシングル観はといえば、アルバムに比べて意識が低かったことは間違いないでしょうが、ファンにとってのピクシーズのシングルは、アルバムでの完成度の高い彼らとは違った、よりラフでリラックスした音源を楽しめる有難いものだったりします。もちろん、この『Dig For Fire』も例外でありません。
表題曲はアルバム『Bossanova』とはミックス違い。トライアングルで幕を開けるアルバム版とはアレンジも違います。『Velvety Instrumental Version』は歌モノのイントロだけが延々続いているかの様な代物なんですが、何だか愛らしい。『Winterlong』は、チャールズも大好きなニール・ヤングのカヴァー。冒頭から真っ当なメロディをキムとハモるというちょっと貴重な音源で、多分元ネタを知らなくてもこれを聴いてピクシーズのオリジナルだと思う人はいないでしょう。ニールへのトリビュート作品にも収録された様です。最後の『Santo』はテンションの低いサビが奇妙な作品で、ハデさはないけどピクシーズらしい佳作です。 (Jan 2007)
【EP】Head On
Pixies
1992/US
日本オンリーの編集で発売された4曲入りシングル。
英国では、ほぼ同じジャケで『Alec Eiffel』を冠に据えたシングルがリリースされており、その翌年の1992年に『Alec Eiffel』を『Head On』に挿げ替えた本作が出たわけです。それ以外は同じ3曲が収録されていることから、『Head On』の方が日本では受けると判断したのかもしれません。ちなみに『Alec Eiffel』は、まったく違う編集のUS盤がリリースされてたりします。なんだか複雑ですね。
『Head On』と『Motorway To Roswell』は、傑作アルバム『Trompe Le Monde』からのカットで、嬉しいライヴ音源モノでは『Planet Of Sound』と『Tame』が選ばれています。この2作品は、どちらもチャールズの絶叫が(特に英米で)人気の様で、ピクシーズにラウドなサウンドを求めるファンにはもってこいの選曲と言えるでしょう。とは言え、僕らみたいなアヴァンギャルドでポップな一面を期待するリスナーにとっても、結局、彼の絶叫は大好物なのですが。 (Mar 2006)
【EP】Debaser Live
Pixies
1997/US
背表紙には『Debaser(2)』と表記された、デジパックのシングルCDです。一度目の解散から数年が経過した97年にリリースされました。
内容は、89年シカゴでの秀逸なライヴ音源を編纂したもの。『Debaser』、『Holiday Song』 、『Cactus』、『Nimrod's Son』という、初期のアルバムからのバランスよい選曲が成されていて大満足です。特に注目したいのが『Nimrod's Son』。途中のテンポ・チェンジの機会から、かなりスローにした遊び心(?)溢れるヴァージョンを楽しめます。
コアなファンには真新しい音源ではないかも知れませんが、こうして正式リリースされたことに意義があるのではないでしょうか。全4トラックで10分に満たないところもピクシーズらしくて潔いですよね。大好きな1枚です。 (Mar 2008)


etc


【boot】Return of the Fatman
Pixies
1989/US
スリーヴの記載を信じるならば、89年8月5日ブリストルでのライヴの模様を収めたブート・レコードです。まぁ日にちは正しいのでしょうが、タイトル表記はデタラメばかりですね。『In The Doubt』、『Debase』といった具合です(もちろん正解は『Into The White』と『Debaser』)。よくあることですけれど。
ブート系にはあまり食指が動かない僕ですが、本作はかなり聴き込みました。たまたま手にした作品なんですが、予想を裏切る高品質!このテのものとしては音質も充分ハイ・レベルですし、何と言ってもラフな演奏がカッコ良過ぎです。どちらかと言えばカッチリした演奏が多いイメージの後期と違って、『Doolittle』時代のピクシーズは場数の問題でしょうか、結構ヘタです。そこがすごく味わい深くて、各曲に新しい命が宿ってすら聴こえます。あのデヴィッドでもタイム感に苦戦していて新鮮です。
『Come On Pilgrim』、『Surfer Rosa』、『Doolittle』から万遍なく、たっぷりチョイスされた全23曲。ちっとも飽きずに通して聴けてしまうのがスゴイです。チャールズがテレキャスターからアコギ(この音色、大好きです)に持ち替えてのラスト4曲、特に『The Holiday Song』や『Nimrod's Son』なんかは最高の時間帯ですね。・・・ラスト4曲と言っても、実は『Nimrod's Son』と表記された21トラック目の後半に『Vamos』が入っています(ですから実質5曲というワケです)。コレなしでは終われないですよね。
飾り気はないけれど、ピクシーズのライヴ映像や音源はホント好きです。 (Mar 2006)


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