| Disk Review Site HAND IN GLOVE*** |
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| since 2006/01/15 |
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| Mwandishi | |
| Herbie Hancock | |
| 1971/US 【Warner Bros.】 | |
| ハービー・ハンコックほど長いキャリアを誇るアーティストになると、作品によって作風やクオリティ、世間的な評価は様々でして、今回取り上げる『Mwandishi』は、彼の膨大なカタログの中でも、これまであまり積極的に評価される機会が少なかったアルバムです。直前まで在籍した「ブルーノート」時代の諸作で得てきた名声を思えば、その差は歴然。不幸にも「暗黒時代」というレッテルが貼られてしまった「ワーナー3部作」の中の1枚なのですから、当然と言えばそれまでなのですが・・・。 しかし、酷評されていたのも今は昔。クラブ・ミュージックを通過した今日のジャズ・ファンであれば、きっと本作を「暗黒時代の駄作」だなんて感じる人は少ないでしょう。たしかに、後の大ヒット作『Head Hunters』の様な明解さはありませんが、時代の空気を感じさせるカオティックな構成と、ディープで重厚なアフロ・スピリチュアル・ジャズといった佇まいが魅力です。 収録されているのは全3トラック。個人的には、アナログA面にあたる『Ostinato (Suite For Angela)』と『You'll Know When You Get There』に大いにハマりました。前者は、反復する変拍子のリフがクセになるトラック。ハンコックのフェンダー・ローズと、エディ・ヘンダーソンのトランペットがエフェクティヴに飛び交う様子が実にスペイシーです。また、端正な美しさと内省的な深みとを同時に感じさせるテーマ部分があまりに素晴らしい後者は、まさにハンコック作品の面目躍如と言えるような知性と感性が融和したトラックです。 相通ずるところの多いマイルスの傑作『Bitches Brew』辺りが好きな人はもちろんのこと、あのスラム・ヴィレッジにもサンプリングされたことから、ヒップホップ・ファンにも愛されている本作。とてもじゃありませんが「暗黒時代」なんて代物ではありません。少なくとも僕にとっては、紛れもない名盤です。 (Oct 2009) ( →その他のHerbie Hancockレビューページ) |
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| The Elements | |
| Joe Henderson Featuring Alice Coltrane |
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| 1973/US 【Milestone】 | |
| 個人的に最も好きなテナー奏者のひとりであるジョー・ヘンダーソンが、「マイルストーン」時代に残した作品で、いわゆるスピリチュアル・ジャズの視点におけるジョー最高傑作のひとつに数えていい1枚だと思います。 本作における最大のポイントは、やはりアリス・コルトレーンをフィーチャーしていることでしょうか。アルバムの名義にもきっちりとアリスの名がクレジットされています。そこにジョン・コルトレーンの幻影を重ねるのは不毛なことだと理解しながらも、我々の様なジョン・フリークがふと、このスピリチュアルさにジョンの気配をみてしまうのは無理からぬことなのかも知れません。とは言え、相変わらずジョーのブロウにはワン・アンド・オンリーな個性が際立っていることは間違いありません。ましてディレイなどでエフェクティヴに演出されることで、その個性はますます浮き彫りとなるのです。 ハープやピアノで参加のアリスの他に、マイケル・ホワイト(vn)、ンドゥグことレオン・チャンクラー(d)、ケネス・ナッシュ(vo、perc、fl)といった面子がいい仕事をしています。とりわけ素晴らしいのが、チャーリー・ヘイデンの重いベースですね。 本作はコンセプチュアルな構成を持ち、全4トラックにはそれぞれ『Fire』、『Air』、『Water』、『Earth』の名が与えられています。つまり火・風・水・土という古代ヨーロッパにおける“四大元素”がテーマになっていると考えられるわけです。自然への慈しみと畏敬の念が、精神性を重んじるプレイへと無理なく繋がり、雄大でフリーキーな本作へと結実していったのでしょう。そこに重苦しさを感じる方も多いと思いますが(それもよくわかります)、例えば『Fire』の様な純粋にカッコいいテーマなどに音楽的魅力を見出して聴き込むのも一興だと思います。 もし未聴でしたら、ぜひ本作をチェックしてみて下さい。ジャケこそ今イチですが、中身の充実は保障いたしますよ。 (Sep 2008) ( →その他のJoe Hendersonレビューページ) |
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| Inner Voices | |
| McCoy Tyner | |
| 1977/US 【Milestone】 | |
| マッコイ・タイナー、77年の「マイルストーン」作品。 生粋のモダン・ジャズ・リスナーには今ひとつ評価を得られていないとも言われる(本当だとしたら信じられません・・・)タイナーですが、他ジャンルのファンや、何と言ってもコルトレーン時代を軸としたスピリチュアル・ジャズを求める向きには絶大な人気がありますね。僕もタイナーのプレイは大好きです。 彼の作品中でも異色とされるこの『Inner Voices』は、大所帯のホーン・セクションと、男女混声の合唱団を大胆に起用した作品として知られています。あまり一般的な名作として名が挙がる機会はありませんが、今日的な価値観で取捨選択を見直すなら、ぜひ注目したいアイテムです。 1トラック目の『For Tomorrow』から、タイナーのピアノとロン・カーターのベース(アルバム全編を通して、実に存在感のあるベース・プレイを披露してくれます)のみの演奏に重厚なコーラスが加わるという、何とも実験的な作り。でもこれが荘厳でスピリチュアルな空間を生み出す結果となり、アルバムに独自色を与えているのです。以降も、濃厚で高揚感のあるトラックが続き、ホーンやコーラスの分厚さも手伝って「意志の強さ」みたいなものが感じられるアルバムに仕上がっています。 実は僕が本作のファンになったのは最近でして、現行のCD(2000年に再発されたもの)で初めて購入したのですが、なぜもっと早くチェックしなかったのかとちょっと悔しい思いもしました。竹村ノブカズ氏に影響を与えたことは有名でしたが(氏もそのままズバリ『For Tomorrow』というタイトルの作品を発表していて、しかも傑作揃いの竹村作品でも1、2を争う素晴らしいトラックなのです)、彼のファンを自称しておきながら、元ネタ云々に興味が薄い性分もあって、タイナーの『For Tomorrow』のチェックを怠っていたわけです。いざ聴いてみれば、これはある種の「オーラ」の伝承でしたね(ちょっと大袈裟でしょうか)。ほんと、もっと早く聴くべきでした。 (Jul 2007) ( →その他のMcCoy Tynerレビューページ) |
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