Disk Review Site HAND IN GLOVE***
Techno / Electoro Review 01
since 2006/01/15

Paradolia
Alex Smoke
2006/UK
スコットランドは「Soma」の若き実力派、アレックス・スモーク。リッチー・ホウティンやヴィラロボスらもこぞって取り上げる逸材である彼の2ndアルバムは、ここ2〜3年で一気にシーンの中核へと躍進をとげた豊かなセンスを存分に味わえる好盤です。1stやたくさんのEPに続いて、またしても傑作を生み出したことになります。
ミニマル/クリックは今も変わらず需要が高いワケですが、求められるポイントを外すことなく、それでいて驚くほどバラエティ豊かな回答をしてみせてくれたアレックス。繊細な音像の作り込みや、時にアンニュイなメロディも見事で、稚拙にならないスムースさは、おそらく元々クラシックを本格的に学んでいたという“音楽的”なバックボーンによるところが大きいでしょう。クラブ映えは保障しつつ、リスニング・ユースをも確保する完成度の高さはさすがです。
音の気持ちよさは折り紙付き。テック、クリックの現在形を知る上でも欠かせない1枚と言えるでしょう。とりわけ『Meany』や『Snider』はカッコよすぎですし、妙に切ない『Left Drift』みたいなトラックも好きです。 (Sep 2007)
Transphormer
Alter Ego
2004/GER
近年「Wire」絡みでも注目され、『Rocker』の大ヒットもあって一躍シーンの主役に躍り出たジャーマン・エレクトロの雄、オルター・イーゴ。キャリアが長いとは聞いていましたが、まさか10年選手とは!
バカバカしい程にパワーがあり、音色にしても展開にしてもとにかくハデです。これを大音量でかけられたら、テクノ好きがノックアウトされないワケがありません。全編通して、このハデさが一貫した特徴です。
それにしても件の『Rocker』のノイズ、ブリブリしたベース、カウベルは気持ちがいい上に楽しいですね。その他のトラックでも個性的な音色を配したり、リズムを変えたりといった工夫がされていて、キャリアの成せる業か、その引き出しの多さによって一曲一曲がしっかり立っています。例えば、疾走感に溢れた『Raw』、キャッチーなシーケンスの『Daktari』、リズムがポップな『Vincent Van Dance』といった具合です。 (Jan 2006)
Caliente
The Ark
2005/FRA
フランス人DJ/プロデューサー、ギョーム・ベロワイエのソロ・プロジェクト、アークの傑作アルバムです。あのリカルド・ヴィラロボスやルチアーノのリリースでも知られるベルリンのミニマル・ハウス系名門レーベル「Perlon」からのリリースとなりました。
4つ打ちからはみ出したエレクトロ・ファンクなトラックが特に素晴らしく、もう冒頭の『A.P.Day』から人をくった感じが最高です。よく“変態的”なんて形容されるそうなんですが、すごくわかります。どの作品も割とファニーなんだけれど、どこかちょっとマッドで不穏な雰囲気も見え隠れしているところが奥深いんですよね。豊富なネタがカットアップされるサンプル使いや歪んだ音色の多用、気持ちよさが追求されたベースやリズムなどなど、どこを取ってみてもクオリティが高い1枚です。 (Mar 2008)
BCD
Basic Channel
1995/GER
モーリッツ・フォン・オズワルド&マーク・エルネストゥスによるベルリンの伝説的ユニット/レーベルであるベーシック・チャンネル。その初期音源をCDのフォーマットでまとめたものが、この『BCD』です。今日まで続くミニマルの系譜を紐解けば、彼らこそそのパイオニアであったことがわかりますし、もはや説明不要な傑作12インチの数々をこうしてまとめて楽しめるのは実に贅沢なことだと思います。
ストイックなまでに贅肉をそぎ落とした、まさにミニマリズム極まる構造と構成。あたかも受け手のイマジネーションを試すかの様な、霞掛かったミックス。ロウでアブナい質感。これらの要素は、今聴いても経年劣化を感じるどころか、ますます研ぎ澄まされて感じられます。おそらくこの分野においては稀であろう、時代を超越したクラシックと言うことが出来るでしょう。
また、後のリズム&サウンド名義での活動(コチラも本当に素晴らしい!)や、あの「ワッキーズ」レーベルともコネクトしていく流れを例に出すまでもなく、ベーシック・チャンネルの重要なキーワードとして挙げたいのが「ダブ」の要素です。彼らのサウンドに深みと空間性をもたらしただけでなく、多くのテクノ系DJやクリエイター、あるいはリスナーにダブの概念を注入した功績は大きいでしょう。
最近久々に本作がリイシューされ、入手しやすい状況となっていますので、お持ちでない方はこの機会に購入しておくことをオススメいたします。くぐもった媚びないキックに、改めて衝撃を受けること間違いなしですよ。 (Mar 2009)
Roots And Wire
Deadbeat
2008/CAN
個人的に、ここ数年に聴いたクラブ・ミュージック系のアルバム作品の中でも5本の指に入る傑作と位置付けている、デッドビートのフル・アルバム『Roots And Wire』。カナダの名門「ワゴン・リペア」からリリースされた1枚です。
本作の特徴としてまず挙げたいのが、その雑食性です。ベーシック・チャンネル風のミニマル・ダブを軸に、テクノやレゲエ、ダブステップなど様々な要素を取り入れています。しかも音色選びやフレージングのセンスが抜群で、どのジャンルのトラックも最高にカッコイイ!
もうひとつの特徴は、ビートの強靭さ。ダークでタフなリズムがボトムエンドを支える様に僕は夢中になりました。とりわけ『Grounation (Berghain Drum Jack)』におけるトライバルな雰囲気漂うリズム・トラックの重厚さ、高揚感は圧巻です。ダブワイズされた上モノとの相性もいいですし、一番のオススメトラックです。
ポール・セント・イレールのヴォーカルをフィーチャーしたダブ・トラックが、ミニマルなアルバム中盤を挟むように配された構成も味があって面白いですね。 (Apr 2010)
Kosi Comes Around
DJ Koze
2005/GER
インターナショナル・ポニーのDJコツェが、「コンパクト」よりリリースしたソロ名義での1stアルバムです。
久々にイマジネーションを揺さぶられるようなテクノに出会いました。元来ロマンチスト(であろう)な彼が織り成すエレクトロニカ系の作品は、アルバムの“品”をよくし、完成度をも高め、また売れっ子DJとしての一面がそうさせるのでしょうか、フロアへのフィードバックだって忘れていないのです。実際、彼は半分のトラックでクラブ向けを意識したと語っているようですが、断然リスニング・ユースに愛されそうな緻密なプロダクションが最大の魅力と言えそうです。1音1音が研ぎ澄まされていて、ちゃんと取捨選択を経てから鳴らされている気がしますし、誤解を恐れずに言わせてもらうなら、真面目につくられたテクノって趣でしょうか(彼のユーモアを無視するわけじゃ決してないですよ)。特にミニマル路線のトラックでは、クオリティの低い音色がたったの一度も出てこないといった具合です。
かつてインテリジェントなテクノが盛り上がりを見せた時代に熱狂していたあなた、ぜひオススメです。ハウス好き、クリック好き、ミニマル好きな方もお見逃しなく。ポップ〜エレクトロニカ風の作品のノスタルジックな感覚も、日本人にはとても馴染みやすいと思います。
以前、同じく「コンパクト」からリリースされたコツェのミックスCDも愛聴してきましたけど、本作の方がずっと好きですね。かなりの名盤だと思います。 (Apr 2007)
TB Resuscitation
Hardfloor
1993/GER
TB-303使いの名手・ハードフロアの1stアルバムにして、アシッド・ハウスの最高峰。
何はなくとも『Lost In The Silver Box』ですね。93年なんて、もうこの1曲の快楽にどれだけ溺れていたかわかりません。分かりやすい4つ打ちを中心にしたリズムの抜き差し、そしてとんでもない高揚感を生み出して脳内麻酔を分泌させるビヨビヨ・フレーズ。アンダーワールドの『Rez』と“最強のキラー”の座を争う作品だと言えます。
基本的にローランドのリズム・マシンであるTRとTBを中心に組み立てられ、後はパッドを引っ張ったり、ガッツリ上モノとして使うサンプルを持ち込んだり・・・。たったそれだけの構成でアルバム1枚通して躍らせてしまうんですから、当時の2人がいかに冴えまくっていたかが窺えます。既にTB-303ブームは到来してはいましたが、神器にまで高めたのはハードフロアでした。
熱狂の渦に人々を巻き込んだ伝説の作品として、また多くのファンをツマミバカ、フィルタバカに変えた伝説の作品として、殿堂入りさせるべき1枚です。また、その後の失速ぶりにも革命者ならではの苦悩が滲んでいて、敗れてあっぱれなんて無責任に思ったものでした。 (Jan 2006)
Future History
Joris Voorn
2004/HOL
今をときめく「Technasia」傘下の「SINO」レーベルから、ヨーリス・ヴォーン満を持しての1stアルバムがリリースされました。
一聴して、数々のクラブ・クラシック・・・とりわけデトロイト・テクノを愛していることが伝わってきます。先駆者たちから実直に影響を受け、質の高いミックス・センスで料理し、逞しいトラックを生み出しているのではないでしょうか。周りを見渡しても、これだけ脳天を揺さぶる気持ち良さが詰まったテクノなんてそうそう無いワケですから、彼の実直さがいかに強力な武器であるかが窺い知れます。
ミニマルやデトロイト好きは勿論、多くのクラブ・ミュージック・ファンは聴き逃し厳禁の1枚です。特にオールド・ファンにこそ注目して頂きたいアイテムでして、単純にキックそのものや、シンセのフィルタやパッドに陶酔できたあの良き時代にタイムスリップできますよ。フロア直撃の人気トラック『Incident』も収録しています。 (Jan 2006)
7 Dunham Place
Loco Dice
2008/GER
リッチー・ホウティンの「minus」からのリリースや、リカルド・ヴィラロボスとのスプリットで知られるドイツのDJ/クリエーター、ロコ・ダイス。「Planet E」のマーティン・バトリッチとロコ・ダイスとで運営している気鋭のレーベル「DESOLAT」から、アルバムとしては第一弾リリースとなる『7 Dunham Place』が発表されました。
ニューヨークに移り住んだ環境の変化が音に影響しているかは定かではありませんが、多くのファンの予想を上回る完成度を持つ、リスニング・ユースに耐えうる音楽的な作風となりました。クリック/ミニマルというストイックで強靭な軸は保ちつつ、バラエティ豊かにアレンジの幅を広げた聴き応え充分な1枚です。その意味で、音数も多い『Breakfast At Nina's』なんかは象徴的なトラックと言えそうですが、そうした存在があってこそ『Black Truffles In The Snow』みたいなミニマル作品も個性が際立ってきて、相乗効果でどのトラックも新鮮に楽しむことが出来るのだと思います。つまり、アルバム全貌を見越した音作りがしっかり意識されているのでしょう。さすがですね。
ベースが気持ち良過ぎな『Tight Laces』や『Pimp Jackson Is Talkin Now』あたりが特に気に入っています。また、全体として有機的なニュアンスが散りばめられている点もいいですね。 (Sep 2008)
Afro Finger and Gel
Mu
2003/UK
フランスの「Tiger Sushi」からリリースされた、ムーの1stアルバムです。
ムーは、元ベースメント・ボーイズのベテラン、モウリス・フルトンと、その奥さん(って本当でしょうか)でもあるムツミ・カナモリによるユニットです。エレクトロ・クラッシュやポスト・パンクの要素を持ちながら、出音は完全にムー・オリジナル。超個性派お下品エレクトロです。
ことさら日本では話題になった『Afro Finger』ですが、他のトラックも総じてブッ飛んでいて、妙なリズムに妙なヴォーカルが乗っかる妙な作品ばかり。特に、ムツミの「ハイ!」の声がなんだかクセになる先行シングル『Let's Get Sick』や、他にも『Hello Bored Biz Man』や『My Name is Tommi』などヴォーカルの処理が面白い作品が目立ちますね。ヴォーカル・チョップやヴォコーダーの使い方も新しい手法ではありませんが、本人たちが徹底して遊んでいるので新鮮に響きます。また、突然生ドラムが使われる『Chair Girl』、気持ちよいテクノ・チューン『Destroying Human Nature』なども印象的な仕上がりです。
そして何より、ムツミの圧倒的な存在感は特筆すべきですね。ビッチともパンクとも違う、とんでもないポジションにいる感じです。 (Jan 2006)
Surfing On Sine Waves
Polygon Window
1993/UK
リチャード・D・ジェイムスの変名ソロ・ユニット、ポリゴン・ウィンドウ。「正弦波をサーフィン」というタイトルも印象的な名盤です。
実に10数年ぶりに棚から引っ張り出した1枚。その音は思いがけず、今の耳にも新鮮に響きました。当時から何ものにも左右されず、自らの中にある音を録音し続けていたのだということを再認識できた気がしました。
それにしても懐かしい1枚です。高校を出たばかりの頃、池袋のWAVEで購入した日を何故か鮮明に覚えています。池袋WAVE、当時は場所も違って、内装や造りに高級感があってカッコ良かったんですよね。思えばタワーやレコファン、WAVEといった大型チェーン店は全て、駅から結構遠いところにあったんですよ。・・・すみません、関係ないことを長々と書いてしまいました。
で本作ですが、「R&S」ではなく「ワープ」からリリースされました。リチャードがミステリアスな存在としてクローズ・アップされ始めた頃でしたから、先入観もあって音もミステリアスに聴こえたものです。今では手法自体が一般に浸透してしまったので神格化こそされなくなりましたが、それでも内向的でストレンジな質感は今日のアーティストたちに多大な影響を与え続けています。
サンプリングやTB-303のフィルター・プレイ、4つ打ちなど、意外と正統派なアプローチを多く楽しめるのも当時のリチャードならでは。叙情的なメロディも聴きものですよ。 (Apr 2006)
En.Vi.Sion
Quince
2007/HOL
僕たち日本人がテクノ大国として連想するオランダでも、相変わらずデトロイト・テクノは人気が高い様です。オランダの「Delsin」レーベルから1stアルバムをリリースしたクインスは、そんな中でも屈指のデトロイト・フォロワーとして知られる逸材で、なるほど、一聴して彼の地への愛情が溢れていることに気付かされます。
今やレジェンドともなったジェフ・ミルズやカール・クレイグらの、かつての音源を彷彿とさせる手法と音色。キックやハットにも古き良き時代へのリスペクトが感じられますし、上モノにおける荘厳でシンフォニックなシンセ使いもたまりません。
デトロイティッシュなサウンドを求める方には、懐かしくも新しいこのクインスのアルバムをぜひチェックして欲しいと思います。 (Oct 2007)
【EP】Fizheuer Zieheuer
Ricardo Villalobos
2006/CHL
世界中で絶大な人気を誇る、チリ出身のカリスマ・アーティスト、リカルド・ヴィラロボス。今もシーンの主役であり続ける彼が2006年にリリースしたシングル、それがこの『Fizheuer Zieheuer』です。元々ファンの間では知られる存在であった表題曲を、たっぷり37分に渡るフル・レングスで収録。話題に事欠かない1枚となりました。CD派には特に嬉しいニュースでしたよね。
この『Fizheuer Zieheuer』、硬質なパーカッシヴ・ミニマルに、まるで3・3・7拍子風の人をくった様なリフが乗っかるというかなりマッドな代物です。さらに、時折ブワ〜っと東欧チックなブラスが現れるのですが、これがまた得も言われぬ妙な味わいでして、ボンヤリと浮かび上がる様が不気味かつドラッギーです。
そして、2トラック目に収められた『Fizbeast』は、『Fizheuer Zieheuer』のベーシック仕様とも言うべきミニマル・トラックで、コチラも35分半に及ぶ長尺作品。つまりシングルと言えど、収録時間が70分を超えるわけですね。
時の人、ヴィラロボスの才気と狂気を凝縮した1枚と言うことが出来るでしょう。 (Nov 2008)
Made Within The Upper Stairs
Of Heaven
Sasse
2006/GER
ベルリンのベテランDJで、フリースタイル・マンとしての活躍でも知られるサッセ。この名義でのアルバムは何と初めてという1枚が、「Moodmusic」からリリースされました。
この新作、期待通りの音が満載で、結果から言うと大満足でした。アシッド+エレクトロ・ディスコ、だけどギラギラした感じより深みのある音で・・・なんてイメージがあった中で選んだだけに、ハマった瞬間はまさに会心!ここ最近、僕のiPodはかなりの頻度でサッセをリピートしています。
とにかくシンセの音色が好きです。適度に丸くて上品に粘るとでも言いますか・・・。これは個人的なブームにかなりフィットしました。また、エレクトロ・ディスコとかNWとかちょっと食傷気味なテイストのトラックでも、テクノ魂溢れる(?)音色によって新しい魅力を引き出されていて嫌味なく味わうことが出来ました。う〜ん、ベテラン強しですね。レトロな雰囲気もカッコイイ!
シングルで人気の『Loosing Touch』はKikiをフィーチャーしたヴォーカルもの。こんなのもいいですね。 (Sep 2006)
No Boundaries
Shinedoe
2009/HOL
相変わらず良質のミニマル作品が流通するオランダのシーンにおいて、高い人気を誇る女流DJ/クリエイターのシャインドー。「Intacto」からリリースした2ndフル・アルバムです。
元ダンサーである彼女が手掛けるトラックには、思わず体を動かしたくなる様なヴァイブがあります。芯の太さでは一歩譲りますが、シンガーを除いてダンス・ミュージック・シーンの第一線で活躍する女性が少ない中、シャインドーのトラックメイクに垣間見るタフさは実に頼もしいものがあります。
人気の『Jazz It Up』などのトライバルでバウンシィな作風もたしかに良いのですが、サンプルで肉付けしていく過程が透けて見える気がして、ちょっと乗り切れないところもあります(生意気な物言いですみません)。一方で、シンプルな4つ打ちにパーカッシヴ&ダビーなシンセが絡む『Below』辺りが個人的には印象に残りました。ベースも気持ちいいですし。
多くのトップDJにスピンされている現場主義の傑作。ジャケの雰囲気も好きです。 (Nov 2010)
Run.Stop.Restore
Toktok
2000/GER
メンバー・チェンジを経てファビアン&ナークの2人組となり、親交の深い石野卓球さんのレーベルからベスト盤的なアルバムを出すなど、精力的な活動を続けているベルリンのテクノ・ユニット、トクトク。本作はお馴染み「Bpitch Control」レーベルから2000年にリリースした1stです。
80年代ディスコ・サウンドとシカゴ・サウンドをブレンドした本格派(?)のトラックに楽しい仕掛けを施し、なるほど石野一派との共通点も見て取れます。当時は音圧のなさに不満も感じたりしたんですが、後のエレクトロ・クラッシュに繋がる道を件の『Missy Queen's Gonna Die』にて提示して見せるなど、先見の明があったことは間違いないでしょう。
この『Run.Stop.Restore』は特に日本で評価が高く、テクノ・ムーヴメント復権の一翼を担い、また多くのフォロワーの雛形ともなりました。当時はこの質感一色というイメージすら残っています。中でも僕が気に入っていたのは、テンションを上げるには最高の一曲『Yippie Yeah』。ディスコな『Polar Lander』も好きです。 (Jun 2006)
Echoes From The Future:
View To The Past
Vince Watson
2005/UK
グラスゴーでDJ/プロデューサーとして活躍中のヴィンス・ワトソン。自身のレーベルである「Bio」からリリースされた4作目です。
80年代末からキャリアを重ねてきただけに、勝負どころを見極めたトラック作りが成されており、安心して楽しめます。デトロイトからの影響を彼なりに消化し、そこに熟練ならではのエレガントさやヨーロッパの味わいが加味されることで、ヴィンスならではのテクノに仕上げている点が見事ですね。また、全曲DJ Mixされています。高音質であることよりも、フロアの熱狂が優先されている辺り、現場への愛情を感じてしまいます。
ガシガシと4つ打ちを浴びたい気分の時には、絶対に期待を裏切らない作品になっています。もちろんノン・ストップ。ヨーリス・ヴォーンらも名を連ねているところも注目ですね。 (Feb 2006)
Ex:El
808 State
1991/UK
セカンド・サマー・オブ・ラヴ、マッドチェスター、アシッド・ハウス、レイヴ・・・。あの時代は、目眩く夢心地がするムーヴメントが次々とミュージック・シーンを盛り上げました。そして、その狂騒を体感した多くの人が「最高だった」と回顧するのです。当時、あらゆる先進的なシーンとコネクトしていった時代の寵児・808ステイトの最高傑作と言えるであろう『Ex:El』は、あの日々の空気をたっぷりと吸い込んだ、まさにあの瞬間にしか生まれ得なかった1枚だと思います。
アシッド・ハウス、ハードコア・テクノを軸に持ちながら、ニューウェーヴを通過した者ならではの奔放さがあり、その振り幅は今聴き返しても驚くほど広く感じます。普通、ダンス・アクトがここまでの手数を見せると粗が目立つものですが、どのアイディアや音色も“アリ”だと思わせる説得力があるのです。また、プロダクションや楽曲、アレンジの質も高いので(当時のクラブ・ミュージックはビットレートが低くても音に“押しの強さ”があるものが多く、今日のハイファイさとは違った質の高さを感じさました。本作はその好例だと思います)、大音量でかけて踊るだけでなく、ヘッドフォンで一音一音に聴き入り、完成度の高さに舌鼓を打つなんて楽しみ方も出来るわけですね。
言うまでもなく、シュガー・キューブス在籍時のビョークが客演する傑作中の傑作『Qmart』がハイライト。この作品は以後の彼女の指針を決定付けただけでなく、稀有な素材の新しい魅力を引き出すグレアム・マッセイの腕前をも同時に証明してみせた、意義深いトラックとなりました。 (Jan 2009)
Kompakt 100
V.A.
2004/GER
リリースされた2004年にはレコード屋さんでのリコメンドも目立った、「コンパクト」の記念すべき100タイトル目。注目度No.1テクノ・レーベルの、ひとつの総決算を味わえる美味しいコンピレーション・アルバムとなっています。
内容の良し悪しでリリースを決めるというレーベルのこだわりは一貫しており、それ故にクオリティの高さは折り紙つき。そうしてこだわった結果として、今敢えてオーブを起用するところなんて実にぐっとくるセンスですよね。
ミニマル路線と、あるいはちょっとポップな路線のトラックが自然に共存しているのも、いかにも「コンパクト」らしいところ。個人的には前者のストイックなノリが大好きなんですが、それでもどこか遊び心とか余裕を感じさせるのがさすがです。それに、通して聴いていくと楽しい唄ものがあってこその「コンパクト」という気がしました。
CD2枚組でお腹もしっかり膨れますよ。 (Jan 2006)
Nothing Much
-A Best Of Minus-
V.A.
2007/CAN
リッチー・ホウティンが主催するミニマルの名門レーベル「マイナス」。誕生から十数年が経過した今も、流行り廃りを越えて一定の価値を持ち続けている稀有な存在です。そんな「マイナス」が2007年にリリースしたコンピレーション・アルバムが『Nothing Much -A Best Of Minus-』。ベスト・オブ・マイナスと謳っているだけあって、2000年代中旬の人気トラックを中心にコンパイルしたベスト・アルバムになっています。
実は本作は2枚組CD仕様でして、2枚目はトロイ・ピエールによるミックスCDになっています。コチラが実にいい感じで、個人的には、考え事に浸りたい時なんかによくヘッドフォンで外気をシャットアウトしながら聴いてます。個性の強い音色なんかに耳が引っ張られてしまう時も多々ありますが・・・。
優良ブランドによる近年の傑作をまとめて楽しめる、嬉しいアイテムですね。 (Jun 2009)


HAND IN GLOVE / HOME