アトランタのバンド、ディアハンターのフロントマンであるブランフォード・コックスがソロ・ユニットを立ち上げました。その名もアトラス・サウンド。彼の内なるサイケデリアを、バンド形態とは異なる方法論をもって表現したと思しき、メランコリックで抽象的な作品となりました。
教科書は間違いなくマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン『Loveless』でしょうが、そこは2008年型のラップトップ・ミュージックですから、時代を反映してか、エレクトロニカやクリックからの影響も見て取れます。覚えたてのアプリケーションをもって短期間で制作されたと伝えられる通り、ラフなところもあるのですが、そこがかえって個性的とも言えますし、何れにしても「初心者」と感じる様な稚拙さはありません(ディアハンターでのキャリアも人脈もありますから当然ですね)。むしろ、ノイズやドローン、リヴァーブで充満した音空間の演出は見事とも言える出来栄えです。そして、彼の甘くて脆弱な歌声がまた切なくて、アトラス・サウンドが持つ白昼夢の様な世界に浮かんでは溶けてなくなり、その度に痛みと快楽を同時に体感するのです。
この美しいけれどアブなっかしいサウンドを手っ取り早く味わうのであれば、4つ打ちの歌モノ『Winter Vacation』や、トレモロが印象的な『Ready,
Set, Glow』辺りをオススメいたします。 (Oct 2008) |