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El Fabuloso
Aldemaro Y Su Onda Nueva
1972/VEN
「ボサ・ノヴァ」や「ヌーヴェル・ヴァーグ」と同義である「オンダ・ヌエヴァ」を提唱、新しい波を南米・ヴェネズエラ(ブラジルのお隣です)にて起こしてみせた天才コンポーザー、アルデマーロ・ロメロ。彼がこの時代に残した作品はどれも傑作ばかりですが、定番になりつつある本作をここでは取り上げます。何ともサイケデリックなジャケですが、その中身はボサ、ジャズ、ラテン、クラシックの影響を多分に吸収したソフト・ロック。その極上グルーヴは、アメリカのそれとはまた違った魅力満載です。
アメリカでは「RCA」のアレンジャーも務めたロメロですから、高い音楽性とキャッチーさのバランス感覚が抜群ですね。さらにモンドチックな雰囲気は、イタリアでの活躍も納得できる要素です。
いきなり男女の高速スキャットがハープシコードと絡む無国籍なトラックからスタート。続いて登場する、これまた高速なハイハットの刻みが最高に期待させる『Aranguita』の流れだけで、もうやられてしまいます。その後もアップ・テンポのスキャットものが多く、また大袈裟な展開でもとにかくお洒落過ぎですし、クラブ世代のリスナー中心に再評価が過熱したのも当然と言えば当然の話ですね。英語じゃないのも面白いですし、必携アイテムだと思います。 (Jan 2006)
I Will Not Be Sad In This World
Djivan Gasparyan
1989/ARM
ジヴァン・ガスパリアンによる、アルメニア共和国の民族音楽。
それほど馴染みのない(僕が無知なだけなんですが)アルメニアは、ソビエト連邦崩壊によって独立した国で、ノアの方舟が漂着したとされるアララト山があります。このアルメニアが誇る演奏家であるジヴァン・ガスパリアンは、同国に伝わる伝統的な民族楽器・ドゥダック奏者で、世界的な評価を受けています。数年前には来日もしています。
さて、本作『I Will Not Be Sad In This World』は89年にリリースされた代表作で、ジヴァンの演奏にどっぷりと浸るには最適な1枚です。彼が奏でるドゥダックの笛の音は本当にスピリチュアルで、同じく笛系の持続音との調和により、瞑想の様な時間が訪れます。ヨーロッパとアジアを繋ぐ地域だからでしょうか、どこかエスニックで透明な、近くて遠い感覚があります。打楽器なども一切なしのシンプル極まりない構成ですが、ゆったり流れる音の宇宙に包まれると、飽きることなく最後まで聴けてしまいます。
まるで祈りの様な、そしてとても悲しい響きを湛えたジヴァンの音楽。民族音楽ファン以外にもぜひオススメしたい逸品です。 (Jan 2006)
Me And My Papagayo
Don Paulin
1969/US
激レア・アイテムを次々復刻し、世界中のDJ/リスナーを感涙させているドイツの発掘レーベル「Sonorama」が手掛けた、アメリカのSSWであるドン・パウリン『Me And My Papagayo』のリイシューがちょっと話題になっています。69年にドイツでレコーディングされ、わずかな枚数しか出荷されなかったというハンパないレア盤であり、しかも内容がハンパなく素晴らしいということで、世界に衝撃が走ったのでした。
僕も早速CD版を購入してプレイ・ボタンを押すと、ラテン、ジャズ、ソフトロックなど多くの音楽要素がつまった、ちょっとサイケなヴォーカル・アルバムであることがわかりました。しかも、楽曲もアレンジもパウリンのキャラクターも本当に素晴らしい!個人的には、初めてマルコス・ヴァーリの『Previsao Do Tempo』を聴いたときのようなショックを受けました。あの時も、メロディや声質が見事過ぎるくらい好みにハマッたんですが、それ以来かも知れません、この寸分の狂いもないフィット感は。
冒頭のハデなトランペットはご愛嬌ですが、しゃがれたヴォーカルとピアノの絡みがクセになる『Ananas』。サバービア系は卒倒間違いなし、ボサ・グルーヴがたまらないお馴染みの名曲『Constant Rain』。琴線に触れる哀愁のメロディとオーケストレイションの相性が抜群な『Inca Uyu』。南米ペルーの風を運ぶ『Titicaca』。独特なブラスの使い方にも注目したいドノヴァンのカヴァー『Mellow Yellow』。愛らしさ溢れる本作にあって、随一の可愛らしいアレンジを誇る『Papagayo』。女声スキャットとの絡みもある洒脱なメロウ・チューン『Blue Bossa』。サウダージを感じさせる、人気ナンバー1のトラック『Suddenly』。サイケデリックな『Sugar Cane』。ここに挙げていない作品も含めて、もれなく全て名作ばかりです。
また、ちょっとびっくりだったのが、同じく「Sonorama」でリイシューされたメンフィス・ブラックのハモンド・プレイヤー、イングリッド・ホフマンがアレンジを担当していることです。アメリカ人とドイツ人が考えたラテン・フィールだからこそ、独自のユニークな触感に繋がっているのかも知れませんね。
奇跡的(?)にオリジナルをお持ちの方も、リイシュー盤にはボーナス・トラックが追加されていますから、その為にゲットする価値もありますね。 (Mar 2008)
Music of Many Colors
Fela Anikulapo-Kuti and
Roy Ayers
1980・NGA
フェラ・アニクラポ・クティと、ロイ・エアーズ。そんなゾクっとする様な合体が実現していたなんて、初めてセコハン店で知った時は何とも興奮しました。
両面にそれぞれ1曲ずつが納められ、A面の『2,000 Blacks Got to Be Free』はエアーズの楽曲で、B面の『Africa - Centre of the World』はフェラ・クティの楽曲が採用されています。どちらもコンポーザーがヴォーカルを務め、プロデュースは共同で行っています。フェラはサックスを、ロイはヴィブラフォンを両方の楽曲で披露している他、バッキングはアフリカ70バンドが担当。故にアフロ・ビートを下敷きにロイのクールなエッセンスが加わった感じで、決して企画先行の薄っぺらい音楽に陥ることなく、期待通りの化学反応を起こしてみせてくれています。さすがですね。
『Centre of the World』も文句なく素晴らしいのですが、僕が特に気に入っているのは『2,000 Blacks〜』。ハウス・ファンをも魅了する本作は、アッパーなアフロ・ジャズ・ファンク。パーカッション陣と、ディスコティックなベース・ラインが魔性の高揚感を生み出し、グルーヴにこだわるフェラ&ロイの面目躍如といったところでしょうか。スピリチュアルかつ、最高に気持ちのよい1曲になっています。 (Oct 2007)
Expensive Shit
Fela Ransome-Kuti
And Africa 70
1975・NGA
キング・オブ・アフロ・ビート、フェラ・クティ1975年の傑作。
ナイジェリア政府からの不当な弾圧を受けた彼が、牢獄生活の中で生み出したと言われるタイトル曲をA面に、屈指の名曲として知られる『Water No Get Enemy』をB面に配した強力なアルバムで、フェラの膨大なカタログ中でも有名な1枚と言えるでしょう。反復し続けるミニマルなギター・リフに、クール・ダウンしたファンクネス、ジャズ・ファンク好きならKO必至のグルーヴ、そしてフェラの強靭な魂。ブラック・プレジデントの戦いの歴史を皮肉たっぷりに刻んだレベル・ミュージックは、音楽としても素晴らしく機能しています。
近年、彼の作品が一気にリイシューされたんですが、この現行CDがスゴイのは、2in1仕様になっていることです。例に漏れず、この『Expensive Shit』にも『He Miss Road』がカップリングされています。この『He Miss Road』がまた傑作で、タイトル・トラックのオルガンはかなりヤバいですよ。また、ルーズな『Monday Morning in Lagos』も好きな作品のひとつです。
自らが生み出したコミュニティー「カラクタ共和国」の有刺鉄線ごしに拳を突き上げるジャケ写が、とても象徴的なアルバム『Expensive Shit』。未聴の方はぜひ体験することをオススメします。 (Jan 2006)
El Pavo Bailable
Frank Hernandez
2005/VEN
ヴェネズエラ出身のパーカッショニスト/ドラマーである、フランク・エルナンデス。アルデマーロ・ロメロ楽団でその腕を振るったことで、ジャズ/ラテン系のリスナーには知られる存在です。そんな彼の名演を集めた1枚が出ました。その名も『El Pavo Bailable』。
この画期的なリイシュー/コンパイルを行ったのは、イタリアのレーベル『Dejavu』。レア中のレアと言われた、76年作品『Incontro Con』をリイシュー(ヴァイナル派はぜひコチラを選んで下さい)したレーベルです。さすがですね。しかも本作では、さらにレアな『Souvenir』音源も収録しているのです。2000年の新作からも選ばれているので、時代を超越した内容と言えるでしょう。
あまりに愛らしいジャケ(この鳥、一連のデジャヴ音源ではシリーズになってますね。カワイ過ぎです)の内側は、熱いグルーヴで溢れています。大袈裟でなく、全作品がキラー・トラック!ラテン・パーカッション好きは、一発でやられます。もちろんクラブDJからも絶大な支持を得ています。中でも押したいのは、グルーヴィなジャズ・チューン『Quitapesares』や、味わい深くてカワイイ、それでいて渋いヴァイヴまで楽しめる『Baby Chickens』辺りでしょうか。でもホント、全編最高ですけどね。 (Jan 2006)
Carnival Conspiracy
Frank London's
Klezmer Brass Allstars
2005/US
クレズマーの大御所バンド、クレズマティックスでの活躍でもお馴染み、トランペッターのフランク・ロンドン率いるフランク・ロンドン&クレズマー・ブラス・オールスターズ。その3rdアルバムにあたるのが本作『Carnival Conspiracy(邦題:カーニヴァル陰謀団)』です。クレズマーというのはユダヤの民族音楽で、その歴史的背景から、多くの国々の音楽とミックスされながら今日の姿に至っているとのことです。
僕は元々クラリネットの音色が好きで、しかもこうした陽気とも哀愁ともつかないサウンドに、得体の知れない神秘すら感じていました。ずっと「クレズマーってイイな」と思いながらもアルバム1枚聴くような機会がなかったのですが、ふと購入した本作で大ファンになりました。
アップ・テンポで賑やかな“お祭り”的サウンドから、酔いどれた(?)唄モノのスロー・ナンバーまで、ブラス、アコーディオン、ドラムらが生み出す無国籍サウンドがあまりに魅力的。トラッド中心で、妙にギミックに走っていないのも僕には嬉しかったです(ダビーなディレイ飛ばしを使った曲もあったりするんですが、それはそれでハマってましたけどね、ますます摩訶不思議な感じで)。ジャケも最高すぎます。 (Apr 2007)
Palo Congo
Sabu Martinez
1957/US
ルイス “サブー” マルチネスがブルーノートに残したリーダー作です。
この『Palo Congo』は、ブルーノート1500番台屈指のレア盤として知られてきました。ジャズというフォーマットに当てはまらない生粋のラテン・ミュージックであったが為に、変り種扱いされてきたからです。
サブーは、アート・ブレイキーとの名演を残し(ブレイキーの『Orgy in Rhythm 2』。こちらも必聴です)、その後、本作のレコーディングに至っています。本作最大のポイントは、ラテン・ミュージックのゴッド的存在でもある弦楽器/打楽器奏者、アルセニオ・ロドリゲスが全面的に参加していることです。青年・サブーに比べても遥かにビッグ・ネーム。ラテン・ファンにとってこの作品が特別なのは、彼の功績も大きいワケです。実際、アルセニオの奏でるギター(トレス)は、『Rhapsodia Del Maravilloso』や『Triblin Cantore』を愛らしく豊かな作品へと導いています。
もちろん、サブーのコンガやボンゴも負けていません。数曲でコンポーズもこなし、味のある歌声も聴かせてくれる若き才能にも注目です。 (Jan 2006)
Jegog U
Suar Agung
1992/INA
ビクターの「JVC ワールド・サウンズ」シリーズにラインアップされた、バリ島の民俗音楽をご紹介します。邦題(と言っても、本作自体が日本の企画ですけど)は『ジェゴグ 大地の響きU』です。巨大な竹を打楽器とした、ガムラン風の民族楽器・ジェゴグの演奏を収めた作品で、スアル・アグンというグループが演奏しています。スリーヴの解説によれば、スアル・アグンはどうやらバリ島西部のサンカル・アグン村の人々によって構成された同好会的グループらしいのですが、その演奏技術の高さは見事としか言いようがありません。
それにしても、何というスケールの大きさでしょうか。写真で見ても、楽器自体がかなりデカイ!それを音域や役割別に構成し、大人数でコカコカ演奏するわけです。生きた竹を削って作った楽器だけに、微妙なデチューン効果が得られ、ますます壮大に響き渡ります。何より、解説でも強く押されている通り、かなりの低音が唸りをあげていて(これを大地の響き、と表現しているのでしょう)、恐らく生で体感したらサウンド・システムにも引けを取らないくらいの低音浴になりそうな気がします。この低音をものにしよう、と録音に気が配られた様が伝わってきます。
個人的な話ですが、発売された92年当時、映画版『AKIRA』のサントラで知ったガムランをしっかり聴いてみたくて、この盤を手にしたのでした。そこに収められたあまりにトランシーな空間に魅了され、すっかり民族音楽にハマってしまいました。
うっすら聴こえる虫の声まで含めて、バリに響く大地の調べにぜひ身を委ねてみて下さい。 (Jan 2006)


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