新規就農された女性のお話 (その2)

20年くらい昔のお話しです。

園芸店の女性店員さんと親しくなり
「どのように作られたのですか?」と
尋ねられるようになりしました。

話題は 農業全般に及び
いろいろ聞かれました。
一つ一つ説明するのが面倒で、

「お休みの日に、私の農場に
 遊びに来られませんか?」
とお誘いしたら、
「喜んで伺います」と言われました。





数日後に来られました。
もうすぐ結婚されてお店を退職する
と言われました。

兼業農家で少しの田畑があり
「結婚後、農業をやりたい」
と言われました。

そのような理由があり 私の仕事に
興味を示されたらしいです。

私は、
「そんなこと言われますが、
 大変な重労働ですよ」
と言いましたが、
「好きなお花を作ってみたい」
と言われました。

私の農場で半年間のアルバイト研修を
してもらうことになりました。

彼女は販売員として消費者さんと
直接向き合ってこられましたから、
販売側の知識とか情報を
持っておられます。

それが魅力でした。





『途中で根を上げるだろうなぁー』

タカをくくってましたが、どうしても
休まなければならない日以外は
毎日 遅刻せずに出勤されました。

『本気なんだぁー』

一人前になってもらいたいと
願うようになりました。

あっという間に研修期間も終わり
実家の田畑に小さな温室を
建てる準備が始まりました。

どのような規模の温室を
どのように建てれば良いのか? 

 必要な農機材
 温室を建てる田畑の地形
 地下水の「水利権」
 初期投資の予算など

いろいろ相談しました。
田舎では水利権と言うのがあり
小川に流れる「水」でさえ
無断使用できません。

地域によっては、地下水まで
「水利権」の範囲に入るとされ、
勝手に井戸を掘って汲み上げる
ことができない場合もあります。





農業普及センターの知り合いの
普及員さんを通じて、彼女の地域の
担当職員さんに 声を掛けて
いただくように お願いしました。

特に立ち上げ時は、農業普及センター
との繋がりは とても大切です。
また、近所の同業者さんへの挨拶も
説明しました。





最初は、種蒔きから育苗までの
作業を私の農場の専用施設で行い、
大きくなった苗を彼女の農場で
植え込むシステムからスタートしました。

播種育苗作業は、キチンとした設備が
必要です。ですが、最初の段階から
全設備投資はリスクが大きかったので
私の育苗設備を使いました。

ぎっしり詰まったプラグ容器に
密着して播種育苗されますので、
持ち運びは乗用車で充分です。

彼女の農場ではビニール温室が
同時並行で建設されていきました。





農作業といっても重労働ばかりでなく
播種育苗のような繊細で緻密な
作業もあります。

肩が凝るような神経を使う作業です。

ですが、一度 種を蒔いたら
苗が大きくなり 花が咲いて実を結び
収穫して 出荷するまで 休む時間は
ありません。

逆に言えば、種を蒔かなければ
何もすることはありません。
休みたければ 種を蒔かなければ
良いのです。

近い将来 予定があれば、
その期間の種を蒔かなければ
三食昼寝付きの専業主婦になれます。





彼女は頑張り屋さんで、どんどん珍しい
「農産物」に挑戦され、花卉市場に出荷
されるようになりました。

彼女一人で やっていけるように
設計して栽培施設を建設しましたので
広い面積ではありませんでしたが、
いろんな種類の「農産物」を
栽培されるようになりました。

播種室の設備も完成し全作業工程は
彼女の農場で出来るようになりました。

そして私は 彼女の農場に出向く必要も
なくなりました。
チョット寂しい気持ちになりました。


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