| 火と水のあるところに… 紙漉きの話 |
岩手県東和町成島(現在花巻市)には成島和紙工芸館があり、坂上田村麻呂がコウゾの木から和紙を作る方法を教えたと伝えられています。
現在ではただお一人となった青木テイさんの息子さんが11月半ばから漉き始めるそうです。
紙漉きの行程は幾通りにも分かれ、一年ごとにコウゾの木を育て、その皮をはぎとるところから始まり、煮る・叩く・砕くと順を追って、作業を進めるとても手の掛かる仕事なそうです。
工芸館を守っている青木テイさんは紙漉きのお家に育ち、子供の頃、その手伝いでろくに遊べなかったので紙漉きの家だけには嫁ぎたくなかったのだが…とおっしゃっていましたが、その腕と努力があったからこそ貴重な伝統和紙の生産が守られてきたのだと思います。
和紙作りに欠かせないのは綺麗な水なそうです。成島は毘沙門さまがおわす山の下にあり、昔からきれいな水に恵まれていたようです。それから採取したのりウツギ(オクラの中身のようなもの)を漉いた和紙に塗り重ねて圧縮して水分をとるそうですがのりウツギを使うと後でちゃんと剥がれるのだそうです。
|
紙漉きの仕事に感動した中村さんは遠地から成島に通い、その様子を30の句に残しました。
紙漉きの詩(うた) 中村青路
|
一巻の秘伝もなくて紙を漉く
田村麻呂より受け継ぎし紙を漉く
紙漉きを継ぐ子継がぬ子茸取る
楮引く低きは婆の夜なべの灯
楮干す毘沙門おろし婆の背に
漉舟に近き障子を貼り替えぬ
紙を漉く草の戸粗き風が打つ
紙漉きを継ぐ子も豚の子も育ち
雪を掻き楮を晒す岸辺まで
波とがる瀬にいて楮洗い折り
紙を漉く夫をいたわる目貼して
紙を漉く箕に寒林の影いつも
紙を漉く泣く嬰をあやすごとゆすり
漉舟の雪降る影も箕に掬う
荒海のごとき波たて紙を漉く |
雪結晶模様としたり紙を漉く
薄氷は蜘蛛の巣のごと漉舟に
漉舟は暗らし雪降るがもしれず
漉きたての紙より銀の滴垂れ
漉小舎の梁をきしませ凍みはじむ
漉舟の糊舐めに来る冬の蠅
夜紙漉く簷までびっしり星溜めて
うつくしき紙の命は寒の水
鉄五郎の描きし女かも紙漉女(萬鉄五郎のこと)
干せし紙乾かぬうちに人逝きし
雪来るか漉舟いつになく暗らし
紙を漉く一灯峡に残るのみ
春すでに楮を晒す岸辺より
漉きたての紙は枯野の色をして
雪虫の影が紙漉く舟に浮沈
|
 |
青木テイさんから楮(コウゾ)や
道具の説明を聞く・ |
 |
お礼にみんなで「ふるさと」の歌をうたう。
♪……水は清きふるさと♪ |