火と水のあるところに…    かじやの話
 
  人間の赤ちゃんはこの世に出ると、まず触れることでその感覚を磨いていきます。
  触ること。それは人間の五感の中で最も原始的で、赤ちゃんが得る最初の感覚です。
  人間は主に手を使うことで生活の術を得てきました。
  特に、日本人の繊細な感覚は日常生活に使う様々のものから芸術品までを作り上げてきました。
  なかでも、生き抜くために効率よく獲物を捕らえたり、火を起こして食べ物を煮炊きすることが必要でした。
  そして、石の中から鉄を見つけ、加工して道具を作っていくのです。

  幕末の頃、岩手県紫波郡紫波町赤沢に村で人気のかじやがありました。そこには3人の男の子がいました。
  新しい時代、明治になって3人は盛岡に出てそれぞれ、主に農作業に使う鍬や鍬を作るかじや、刀類を作るかじや、馬に蹄鉄(かな靴)を付けるかじやになりました。そして、南部盛岡は明治になってからも県都として栄えていきました。

  昭和6年、赤沢に生を受けた田村由郎さんは小学校を出てすぐに、盛岡の「熊かじ」に奉公しました 
  私が馬かじやの娘であり、平成16年自分の思いを綴った童話「かじやの権三」を出版したこともあり、お会いすると、その頃のお話しを生き生きと語って下さいます。
  そして、伝説の地”あかざわ”の語り部として活躍する田村さんは昨年、その「熊かじ」の最後の弟子ということで、地元の公民館に隣接する赤沢資料館にその遺品を貰い受け、展示しているのです。

  まずはその様子をご覧下さい。
 

 
    鉄を鍛えるには足腰の力が必要です。      金床の上で実演してみせる田村さん。
      相手が持つ道具にヤスリをかける様子。    田村さんの熱心な説明にうなずく二人。
 帰ってきた村の鍛冶屋展を行っている赤沢資料館には

 地元の老人クラブの方々が長年に渡って収集、保存し

 ていた産金のための貴重な道具も展示されています。

 また、井戸の水を汲むため桶に藤蔓を編んだものを使い

 その藤蔓をしごくための木の道具もありました。
 テコの

 お話し童話

 ブログに

「藤蔓のため息」

 掲載中

 真ん中の穴から 
 
 水を注ぎ
 
 回しながら挽き

 中の石を砕きます。



 この石の中に金が
 
 含まれています。
 
 比重の重い金 
 を水の中で揺
 
 らすと下に沈   
 みます。

火と水のあるところに…   紙漉きの話
 
  岩手県東和町成島(現在花巻市)には成島和紙工芸館があり、坂上田村麻呂がコウゾの木から和紙を作る方法を教えたと伝えられています。
 
 現在ではただお一人となった青木テイさんの息子さんが11月半ばから漉き始めるそうです。
 紙漉きの行程は幾通りにも分かれ、一年ごとにコウゾの木を育て、その皮をはぎとるところから始まり、煮る・叩く・砕くと順を追って、作業を進めるとても手の掛かる仕事なそうです。
 
 工芸館を守っている青木テイさんは紙漉きのお家に育ち、子供の頃、その手伝いでろくに遊べなかったので紙漉きの家だけには嫁ぎたくなかったのだが…とおっしゃっていましたが、その腕と努力があったからこそ貴重な伝統和紙の生産が守られてきたのだと思います。

 和紙作りに欠かせないのは綺麗な水なそうです。成島は毘沙門さまがおわす山の下にあり、昔からきれいな水に恵まれていたようです。それから採取したのりウツギ(オクラの中身のようなもの)を漉いた和紙に塗り重ねて圧縮して水分をとるそうですがのりウツギを使うと後でちゃんと剥がれるのだそうです。
 
 
  紙漉きの仕事に感動した中村さんは遠地から成島に通い、その様子を30の句に残しました。

                紙漉きの詩(うた)           中村青路

   一巻の秘伝もなくて紙を漉く

   田村麻呂より受け継ぎし紙を漉く

   紙漉きを継ぐ子継がぬ子茸取る

   楮引く低きは婆の夜なべの灯

   楮干す毘沙門おろし婆の背に

   漉舟に近き障子を貼り替えぬ

   紙を漉く草の戸粗き風が打つ

   紙漉きを継ぐ子も豚の子も育ち

   雪を掻き楮を晒す岸辺まで

   波とがる瀬にいて楮洗い折り

   紙を漉く夫をいたわる目貼して

   紙を漉く箕に寒林の影いつも

   紙を漉く泣く嬰をあやすごとゆすり

   漉舟の雪降る影も箕に掬う

   荒海のごとき波たて紙を漉く

   雪結晶模様としたり紙を漉く

   薄氷は蜘蛛の巣のごと漉舟に

   漉舟は暗らし雪降るがもしれず

   漉きたての紙より銀の滴垂れ

   漉小舎の梁をきしませ凍みはじむ

   漉舟の糊舐めに来る冬の蠅

   夜紙漉く簷までびっしり星溜めて

   うつくしき紙の命は寒の水

   鉄五郎の描きし女かも紙漉女(萬鉄五郎のこと)

   干せし紙乾かぬうちに人逝きし

   雪来るか漉舟いつになく暗らし

   紙を漉く一灯峡に残るのみ

   春すでに楮を晒す岸辺より

   漉きたての紙は枯野の色をして

   雪虫の影が紙漉く舟に浮沈
   
    青木テイさんから楮(コウゾ)や
     
    道具の説明を聞く・
    お礼にみんなで「ふるさと」の歌をうたう。
   
      ♪……水は清きふるさと♪