堺屋太一さんの小説「平成三十年」
1ドル=300円、消費税20%… 暗い予測に警告込め

1ドル=300円の円安、消費税は20%に−−作家堺屋太一さんが予測する平成30年の状況だ。14日に発売された予測小説『平成三十年』(朝日新聞社)に描かれた日本は、経済の地盤沈下が進み、財政・貿易・企業赤字がふくらむ危機的な状況を迎えている。暗い未来像に込められた警告は、現在の社会への提言でもある。
『平成三十年』は97年6月から約1年間、朝日新聞に連載された。20年後の未来を予測する小説だったが、発表からすでに5年が経過した。
「この間も根本的な改革はなく、『何もしなかった日本』への道をたどっているとより確信が持てるようになった。予想を超えていたのは、IT(情報技術)分野の進歩のスピードだけでした」
『油断!』や『団塊の世代』といった堺屋作品と同様、描かれる予測は刺激的だ。例えば、物価は約3倍になっても、土地価格は値上がりせず、実質的には大幅な値下がりとなる……。
連載終了直後に、経済企画庁長官となり、改革を指揮する立場の一人となった。加筆修正には閣僚経験も生かされた。
「政治にはほとんど力がない、というのが実感です。日本を変えていくためには、官僚機構を変えなければならない」
物語の中でも、組織を守ろうとする官僚の姿が克明に描かれている。
「個々には優秀な人もいるが、組織としてはあきれるほど無能。組織の利益を守ることしか考えていない。もっと民間の力を認めるべきです」
主人公の木下和夫も「産業情報省」の官僚。「役人」の思考法を身につけていたが、改革派の織田信介大臣に刺激され、しだいに省庁の枠組みを超えたものの見方をするようになる。
「大臣の名前は、織田信長からの連想。戦後74年の大改革は、信長的な異端者でなければ実現できないし、改革も信長的な既成権威の借用からスタートする手法が最も現実的だからです」
「戦後74年」を意識するのは「明治維新から74年目が太平洋戦争に突入した年」だからだ。「74年を意識すると二つの歴史が重なって見えてくる。現在の価値観と官僚主導の体制を破れなければ、平成日本は『経済文化敗戦』を迎えます」
(06/19)
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