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【経済ひと模様】

経済漂流・インタビュー編:5

バブル、デフレ、そして


堺屋太一氏
堺屋太一氏

 ■再生の好機、2度逃した 堺屋太一氏

 ――6月に出す近未来小説『平成三十年』では日本の凋落(ちょうらく)ぶりが描かれますね。いまをどう見ていますか。

 「日本は今や中国、アジア諸国の台頭で、市場としての価値を失いアジアの片隅に追いやられている。この十年余を経済指標で比較すると、名目国内総生産(GDP)の前年比伸び率は90年が7.9%増、01年がマイナス2.0%。失業率は2%台だったのが5%台に。倒産件数は2.6倍に増え、株価や地価は3分の1に下落している。貿易黒字も減った。犯罪の増加や学力低下を考えると全般的な危機とも言える」

 ――過去、日本が経済停滞から抜け出すチャンスがあったとすれば、どの局面でしたか。

 「92年に宮沢首相が金融機関への公的支援に言及した。ところが世論は政治改革に集中し、93年夏にできた細川政権でも手をつけなかった。これでワンストライク。2回目は景気が上向いた95〜96年。この段階で不良債権処理をすれば銀行は活力を取り戻したでしょう。しかし、住専処理に懲りて橋本政権はその後、財政再建に走って大失敗し、ツーストライク。小泉さんは、また財政の引き締めをやりだした。下手をすれば、今度は三振です」

 ――日本では10年も前から構造改革が叫ばれています。

 「バブル崩壊と冷戦の終焉(しゅうえん)で、時代が変わったことを知識として覚えたが、高度成長の成功体験から抜け出せない。日本は一番上に官僚組織がいて、企業、個人がぶら下がる『権限型縦社会』。規格大量生産という近代工業社会を前提にした官主導の縦社会で、有能な官僚が主導しないとダメだという『国民不信の思想』だ」

 ――小渕、森内閣の経済企画庁長官時代はどうでしたか。

 「国のIT(情報技術)戦略に携わっていたとき、身の丈もある膨大な資料を前に、郵政官僚は『NTTの接続料は絶対下げられない』と言っていた。だが、それはウソ。現実は下がった。官僚はNTTを維持するために、どんな料金体系にするか、という発想からしか考えなかった」

 ――変わった部分もあるのではないですか。

 「企業でも国でも目の前のことを変え、本質的な部分は手をつけない。だから、『人事』『仕方』『仕掛け』『仕組み』『思想』の順番で段階的に変える。企業が『人事』で世代交代を図るように、国で言えば、竹下登さんや金丸信さんに代表される自民党政権から非自民の細川政権をつくった。次に企業が店舗のつくりやPRの『仕方』を見直すように、橋本政権で財政再建や行政といった6大改革に走った。小渕政権で護送船団方式の『仕掛け』を変えようとした。それで、金融再生法や産業再生法、会社分割制度、特定目的会社法の見直しなど道具をそろえた」

 「小泉さんが言っている道路公団や郵政の民営化は、次の段階である『仕組み』の再編、機構改革の段階にきた。だが、最終的な『思想』を変えるまでには至っていない。官僚の抵抗があって停止している」

 ――日本はどういう方向を目指すべきですか。

 「官主導の縦社会を壊すこと。官僚は事後チェックを担う補助的役割になってもらう。規格大量生産ではなく、情報や知恵といった新しい価値に重きを置く『知価社会』の側に立ってみれば、知恵を出すことによって商機が見いだせる面白い社会になってきたと映るはず。まず、規制を撤廃する。混乱が起きるが、国民や市場の選択でやがて静まる。市場でおさまるところが正しいと信じることが重要です」

(聞き手・海東英雄)=インタビュー編おわり

(05/20)