「平成三十年」の著者、堺屋太一とは・・
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堺屋太一 (1935年大阪生まれ)
東大工学部から経済学部へ進み、卒業とともに通産省に入省。
大阪万博を発案し、開催にこぎつける。1978年退官、執筆,講演
活動に入る。著書多数。「団塊の世代」、「メガ・コンペティション
(大競争)」など多くの造語や新概念を生み出し、流行語となる。
特に、1985年に発表した知価社会(knowledge based society)
の概念は近年、海外の論文に盛んに引用され世界に普及した。
1998年7月、小渕新内閣発足に伴い経済企画庁長官に就任。
2000年12月に退任し、内閣特別顧問に任命される。
公式プロフィールはこちら
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ネット上で散見される、堺屋氏に関する誤った認識 H
15 .01.17記
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近頃よく見受けられるのは次の2つについての誤解です。
「インパク」
例 : インパクは大失敗だった。I Tの普及には何ら寄与していない。予算を無駄にした
反論 :
先ず、インパクは平成12年に成立した I T基本法のタイアップイベントだったという重要な事実を認識すべきです。堺屋氏が
I T担当大臣を兼任してとりまとめた I T基本法 により、NTTの通信回線網が開放され、yahooBBのような低価格のサービスが可能となり、他社も一斉に追随しました。これによって日本のブロードバンド料金は世界で最も安い水準になり、韓国、米国に大きく水をあけられていたブロードバンド普及率は2001年後半から驚くほど急伸する。
もう一つ重要なのは、I T基本法と同時に成立させた平成12年度の補正予算で、全国の自治体が住民を対象にした
I T講習会を実施できるように、費用を全額助成したことです。これは、元々は「
I T受講カード」という構想で、民間のPCスクールでの受講券を配ろうということだったのが、「
I T商品券のバラ巻きだ」という批判を受けて法案を修正し、自治体主催という形になったものです。これは全国的に好評で、特に中高年の受講機会が飛躍的に増え、世代間の情報格差の縮小に役立ちました。
つまり三位一体の I T政策だったといえるでしょう。
@規制緩和(→ I T基本法)による通信回線開放の効果で料金を大幅に引き下げ
A I T 訓練費の全額助成(→ 平成12年度補正予算)でデジタルデバイドの解消
Bビッグイベント(→ インパク)によるコンテンツの拡充
@、A、Bの組み合わせで相乗効果が働き、インターネット利用者が急拡大する。これは当初から堺屋氏が描いていた構想であり、結果はそのとおりになった。当時の
I T政策は、それら3つの働きが一体となって機能していたという事実を無視したままでは、インパクの意義や波及効果を推し量ることはできない。たしかに総アクセス数は振るわなかったが、中高年の支持が比較的多かったことはどう評価するのだろうか。若者には不評であったとしても、インターネットに馴染みの薄い中高年層が関心を寄せるコンテンツが集まったのであれば、情報格差を縮小させるうえでも非常に有用なイベントであったのではないだろうか。そのようにして、より多くのインターネット利用者、ブロードバンド利用者が生まれることで、さらに料金が下がり、それがまた新しい利用者を呼び込むという善循環の起点を作ること。それにはたった一つではなく、同時にいくつもの政策を組み合わせて実施することで
I Tの推進効果を増幅させる。これがそもそもの戦略だったということを忘れてはなりません。
「愛知万博」
例 : 最高顧問に就任した堺屋氏が提案した万博構想は費用も莫大で、深刻な自然破壊を招く
ものであったため地元が拒否し、堺屋氏は最高顧問を辞任した=@ 。
反論 :
愛知万博公式サイトの 両案の比較 を見てください。 以下のような一覧表が記載されています。
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愛知青少年公園だけの案 |
豊田市採取場を含む案 |
| 1.全体印象 |
ローカル(公園行事の印象) |
グローバル(内外の識者の支持) |
| 2.集客インパクト |
公園造りかえ事業 |
自然回復と文化事業(特に情報劇場) |
| 3.面 積 |
全公園の地形変更が必要 |
公園の小変更と採取場整地 |
| 4.自然の回復と保護 |
公園の緑はかなり伐採 |
採取場の緑回復、公園の大半は残る |
| 5.既存施設 |
アイスアリーナ、溜め池の撤去ができなければ惨め |
アイスアリーナ、プールは残す 溜め池は集中 |
| 6.情報劇場 |
進行過程で縮小される恐れ |
理想通り実現可能 |
| 7.庭園劇場 |
地形変更のため植栽が間に合わず |
理想通り実現可能 |
| 8.工 期 |
公園地形のため工期が長い(アセス1年半では厳しい) |
工期は短い(アセスに2年かけるとかなり厳しい) |
| 9.工 費 |
地形変更と安全性に巨費を要する |
削減可能 |
| 10.取得交渉 |
県有地なので交渉の必要なし(公園全閉鎖) |
2〜3社から鉱業権の買い取り(または借用) |
| 11.ダイレクトイン |
大鷹営巣地近くを通る |
大鷹営巣地を避けて谷間の里道を通る |
| 12.入場者 |
地元を中心に1000万人以下 |
全国から集客可能(2000万人以上) |
| 13.収支予想 |
建設費は1350億円以上
運営費は 700億円以上か
運営収支は 400億円の赤字か |
建設費は1000億円内外
運営費は 700億円ぐらいか
運営収支は±0ぐらいか |
表の左側: 「愛知青少年公園だけの案」 → 地元サイドが策定した原案です。
表の右側: 「豊田市(土砂)採取場を含む案」 → 堺屋最高顧問が提示した案です。
- 総事業費 -
「13.収支予想」をご覧になると分かるように、原案では2050億円以上と見積もられていますが堺屋案では会場建設費を抑えたことで1700億円となっています。
- 自然保護 -
原案では起伏に富んだ青少年公園の地形を大幅に改変しなければならないのに対して、堺屋案では青少年公園に隣接する土砂採取場を会場用地に含めることで平地面積が確保され、青少年公園の緑地の改変と会場建設コストを最小限に抑えています。したがって、「費用が増大する」 「自然破壊を招く」という批判は全く当たりません。
- 追記 -
堺屋案 は、・愛知県、・博覧会協会、・検討会議(地元の環境保護活動家が中心メンバー)、の3組織が策定した原案を覆すものであったため、採算や自然環境の問題よりも「自分たちのメンツが損なわれること」を恐れた3組織が計画変更を拒否。それを受けて堺屋氏は最高顧問を辞任したというのが真相です。最後まで発想を転換する勇気を持たず、保身を優先した地元3組織の無責任こそ糾弾されるべきで、無報酬で最高顧問就任を引き受け、「集客」と「自然保護」の両立に全力を注いだ堺屋氏を批判するのは見当違いです。
堺屋最高顧問を補佐したプランナーが当時の内部事情を綴ったページでも、地元3組織が自分たちの体裁を繕うことしか考えず、新しいアイデアを頑として受け入れようとしなかった様子が明かされています。
振り返ってみると、愛知万博総合プロデューサー就任の要請を何度も断ってきた堺屋氏を、三顧の礼で半ば強引に最高顧問として据えたのは、「より魅力的な計画をつくるため」ではなく、ただ単に「箔をつけたいだけ」あるいは「万博失敗の際に責任転嫁するため」だったのでは?...とすら思えてしまいます。 2005年愛知万博が失敗した場合、地元3組織がどう責任を取るのか注目しなければなりません。
※ 堺屋氏が愛知万博の安全性と採算性に重大な懸念を表明しました。→日経BPの記事
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