来都南湊に着いた一同は、
一路アリスのクルーザーが停泊している突堤を目指した。
港を走るほど数分、
麻紗子達はアリスのクルーザーの元へ辿り着いた。
その最新鋭で煌びやかなクルーザーの姿に驚愕したのは、
何を隠そう、結衣であった。
「うわぁ・・・、これは想像以上だわ・・・。
これが李公司の代表のクルーザーなのね・・・。
麻紗子はこんな人と交流していたのね・・・」
そう、結衣はエリクシル化されていたので、
その記憶は、麻紗子が厳正な抽選の結果、
アリスの元にホームステイする、
という説明を受けていた。
無論、全世界を席巻する華僑という事は聞き及んでいたが、
それを目の当たりにして、それを実感していた。
「皆さん、お待ちしていました。
さぁ、乗船して下さい。
ささやかながら、パーティーを準備しています。
島に到着するまで、共に楽しみましょう」
乗降口から、ドレスアップしたアリスが登場した。
赤のチャイナドレスに、真っ白のファーを首に巻き、
大きな扇子を持っていた。
その姿に、女性陣はため息を漏らし、
丈一郎の心は高鳴った。

アリスのクルーザーに乗り込んだ一同は、
船内で一番広い船室に通された。
そこは、大きく豪勢に飾り立てたテーブルに、
様々な中華料理が並べられていた。
そのほかにも和洋折衷の料理が肩を並べていた。
「あ、麻紗子にケイだー☆いらっしゃい♪」
「おー、まーちゃんにおケイはん!!
いやぁー、二人ともめっさめかし込んできたきたもんやなぁー。
なんや、馬子にも衣装ってやつやなぁー」
会場にはシルヴィアと華壱がいた。
シルヴィアは成長した体に合った、黄色を基調としたフリル一杯のドレス姿と、
そのセンスは変わらない。
一方華壱は、アリス同様チャイナドレスで、
こちらも赤を基調としていたが、
アリスよりも丈が短い。
華壱らしからぬ色気のあるものとなっていた。
その姿に、麻紗子はいささか冷めた視線を送った。
「華壱・・・、必至だな」
「何がやの?ぼ、僕かて女性やっちゅー事や。
たまには、色気付きたいときかてあるがなー。
ちゅーか、僕かて適齢期やし、
この格好もアリス姉さんのチョイスやしー。
なっ、そういうこっちゃ」
「そっかあ・・・、まぁ頑張って!!」
「ちぇっ、十代に言われたないわー。
そのうち、僕の気持が分かりよる年になるから、
覚悟しーやー!!」
「はいはい、あれ、美智子は来てないの?」
「ふっふーん☆よくぞ聞いてくれました。
おーい、美智子ー♪
いつまで隠れてるのー♪
あんたの愛しい麻紗子お姉様が来てるのよー♪
とっとと出ておいでよー♪」
シルヴィアの節の付いた呼びかけに、
美智子は奥からいそいそと現れた。
「あ、麻紗子お姉様に、ケイお姉様・・・。
ご無沙汰しています・・・」
「おおっ・・・・、美智子、やるじゃん!!」
「やっぱり早熟っ子。その年でそれを着こなすなんて・・・」
麻紗子とケイは、美智子の姿に驚愕した。
藤色を基調とした着物に、
烏の濡れ羽色の黒髪は、うなじが見える様にアップしてある。
ほのかに香る若さと、醸し出す色気のアンビバレンスが、
二人を魅了した。
ハイウルティマッスルによって、麻紗子と対峙した時の体系となっていたが、
帰還の折、リー・アイランドにて再び年相応の整体手術を受け、
元の体形に戻っていた。
「どーよ?手術からコーディネイトまで全てシルヴィアがプロデュースしたの☆
美智子の大和撫子っぷり、楽しんでいただけたかな〜?」
「ええっ、やっぱり私はシルヴィアちゃんのおもちゃですかぁー・・・」
「そうっ、ちょっとニュアンスが違うけど、
頑張った親友の為に天才少女が遮二無二頑張っちゃったのよ☆
ちょっとは感謝しなさいよっ☆」
「うん・・・凄く感謝してるよ、シルヴィアちゃん・・・」
そのやりとりに、麻紗子とケイはほのぼのとした気分になった。
「時にアリスさん、ミシュルさんの姿が見当たらないのですが・・・」
「ええ、ミーシュは研究所でメインイベントを仕切っています。
それに、こういう場は彼女は苦手なんですよね・・・」
「あ、ああ、分かります。
ミシュルさんはそういう人ですよね」
「誘ってはみたんですよ。
ですけど、どうしても留守を任せてほしいって聞かないんですよ。
さて、ではそろそろ出航です」
アリスの言葉に、
クルーザーはゆっくりと走り出した。

波に揺られる事数時間後、
リー・アイランドが目前に迫っていた。
すると、滑走路付近に九頭龍が確認された。
もちろんその直線上にはマスドライバーが展開されたままであった。
「アリスさん、九頭龍は再び旅立つのですか?
と、言うか誰が乗り込むのですか?」
「ええ、到着すれば分かりますよ」
クルーザーは桟橋に到着すると、
一同は滑走路へと向かった。
すると、滑走路付近には研究員だ全員旗を持っていた。
「待っていたぞ、麻紗子。
ここが真のパーティー会場だ」
「え、ミシュルさん・・・」
「その格好は・・・」
ミシュルは全身気ぐるみを身につけていた。
その姿は白い猫であり、
頭部を取って一同にあいさつした。
「・・・何がおかしい?」
「いや、ミシュルさんの意外な一面を垣間見ました」
「私だって、そんな感じで着飾りたいが、
・・・私は生粋のSPだ。
これまでの生き様が体に残っている。
だから露出が出来ないんだ。
だが、その傷の全てが私の誇りだ・・・」
「なら見せても良いじゃないですかミーシュ♪」
アリスは気ぐるみのジッパーを下した。
「あ、アリス!!
なっ、何をするんだ!!」
気ぐるみの中から、銀色のロングドレス姿のミシュルが現れた。
確かに、体のあちこちには刀傷やら、弾痕があったのだが、
「いいよミシュルさん!!
その傷ごと、とっても綺麗に見えるよ!!」
「そうね、女性の生き様とかが如実に現われていて、
それに、すらっとしていてモデルみたい・・・」
「そ、そうか・・・何やら、照れるな・・・」
ミシュルは意外な反応に、頬を赤らめた。
「ミーシュ、準備は出来ているかしら?」
「ええ、もう最終シークエンスまで完了しているわ。
彼女も会いたがっている」
「彼女・・・まさか!?」
「そう、この一連の出来事の発端である彼女、
ヌルが宇宙に旅立つのが、今日なんです」
アリスの言葉に、麻紗子ははっとした。

「みなさん・・・今日は私の旅立ちに、
大勢の方がお越し下さりまして、
誠にありがとうございます」
九頭龍から、宇宙服姿のヌルが現れた。
「あ、あれが麻紗子の・・・・」
「そう、ある意味本当の母親だろう、ヌルだ」
「綺麗な人ね。少し、マサにも似ているかも」
「まぁ、でもお前が一番だな。
俺も初めて目の当たりにしたが、
ゃっぱお前が一番だな」
「また、うまい事言って・・・」
丈一郎と結衣がヌルをそういった目で見ていた。
「私は・・・、その身にDNAFAとティタロス人の意思を抱きながら、
この地球に降り立って、
よもやこの日が訪れる日が来るとは思ってもみませんでした。
これも一重に、アリスや、DNAFAに導かれた私の子供達のお陰だと思っています」
「・・・DNAFA?
一体何の事かしら?」
「・・・そこは聞き流してくれや。なっ、結衣?」
「夫婦の間で隠し事するの?」
「う・・・・むむむ、どうしたものか・・・」
「いいよ父さん。私から後で説明するよ。
・・・多分、信じないだろうけど」
麻紗子はそっと丈一郎をフォローした。
「いろいろとありましたが、
こうしてまた星の海へと漕ぎ出す事、
心より感謝します。
私は、ティタロスの意識と共に、
アークが成し得なかった事業を受け継ぎ、
私は、ここに旅立ちます。
望むならば、この地球の恒久的繁栄を望みます」
ヌルの言葉に、一同の心にはいろいろな思いが去来した。
一同は滑走路から、管制塔へと移動した。
それと同時に、九頭龍のブースターが点火した。
「(では皆さん、行ってまいります。
皆さん、お元気で)」
「ヌル・・・、あなたもお元気で・・・」
麻紗子は、自然と涙を流していた。
「九頭龍・・・発進してください」
アリスの一言で、九頭龍は勢いよく飛び出し、
見る見るうちに秋の空に吸い込まれていった。
「九頭龍、無事に重力圏を突破しました」
「そうですか、無事に旅立ちましたね・・・」
一同は、ヌルが旅立った空を見上げた。

・・・それから、
アリスはEXFemaleは事実上解体させたが、
アリスは同名の施設部隊を設立した。
ミシュル・ハンターをトップとし、
地球上の地域紛争に極秘裏に介入し、
着々と成果をあげていた。
アリス自身は正式に李公司のトップに就任。
代々行っていた軍需事業から手を引き、
その繋がりは軍事から、
食品や衣料、ありとあらゆる物品を全世界に需要させる事業を立ち上げた。
施設部隊と新事業。
この矛盾と言える相対する事業をそつなくこなしていた。
シルヴィアは某工科大学で最年少教授として迎えられた。
シルヴィアの型に囚われない講義は、学生達に人気が出た。
その裏では、セフィロトの技術を私的に研究していた。
無論、人類の進歩に合わせた発表を行うという、
アリスとの公約の元、研究に没頭した。
華壱はと言うと、
あのパーティーの後、育ててくれた神戸の中華料理店へ戻り、
その中華料理の腕を存分に振るった。
その人となりが相まって、
その店は繁盛したという。
美智子は、元の日常に戻って行った。
いままでのネガティブに感じられた学校生活は、
自らが変わることによって激変した。
充実した人生を、今は謳歌していた。

ある日の午後。
麻紗子とケイは下校の途についていた。
「ねぇ、麻紗子?
麻紗子は将来何になりたいの?」
「なっ、なんだよ藪から棒に。
なんでまたそんな事を聞くかな・・・」
「私はもう決めてるのよ。
高校を卒業したら、大学に進んで、
ファッションデザイナーを目指すの。
それと同時に、アインと愛を深めていって、
そして、ゴールインするのよ♪」
「へぇー、壮大かつ普通な将来だねー」
「普通がなにより一番よ。
もう、市長とか面倒臭いのは勘弁こうむるわ」
「そうかぁ・・・、市長ってそんなに魅力無い仕事だったの?」
ぶっちゃけ、口実だけだったんだけどね。
それに、仕事の内容は実際の仕事とは逸脱してたしね。
それで、麻紗子は何になるの?」
「そうだなぁ・・・、今はおぼろげにだけど、
人を守る様な、仕事がしたいかな。
あの一件から思っていたんだけど、
どうにも、ああいった事が私に向いてるみたい。
だからさ、警察か自衛隊、いや、またEXFemaleでもいいかな。
そういった考えが、今の私の描く将来だよ」
「・・・色気がないな。
女子に生まれてきた以上は、もっとこう、ほらぁ、人並みに・・・」
「解ってないな、それでも私の親友?」
「・・・ふふふ、そうだった。そうだよね」
「うん、それがあんたの親友、
佐伯 麻紗子だよっ!!」
                        ・・・完。