風と往く道 鬼恋うる道  〜いきなり女神さま!の巻〜

 

 

 

ところでちょっと話はズレルのだが。

 

 「四天王の足元にいる存在」と定義づけると、邪鬼と共に実は女神の存在があらっしゃる事をご存知の方は如何程いるだろうか?

 

 いや、四天王と云うと語弊がある。

 四天王の中、特に北方守護の多聞天のみが独立して信仰され、別名・毘沙門天と称される事があるが。

更に「兜跋毘沙門天」と云う、もう一つの異名をお持ちなのだ。

 

これはその昔、中国・兜跋国を守ったと云う伝説から、その時の出現時の特色ある服装をしていて、普通の多聞天や毘沙門天と違う事は直ぐ判る。

一番の違いは、特殊な鎧と宝冠を身に着けている事だ。

 

そしてこの兜跋毘沙門天の足元には何故か左右に二鬼を従えた地母神がいらっしゃって、しかもこの女神が毘沙門天の両足を両手で支えて・・・と云うより、持ってらっしゃるのが不思議で仕方がない。

「地母神」と云う概念は、エジプト、ギリシアなどヨーロッパの神話では良く聞くが、寡聞にして仏教では聞いた事がない。

神道には確かにいらっしゃった気もするが・・・

もしかしたら荒ぶる神・四天王の元来の産まれた神話・ヒンドゥー教に由来しているのだろうか。

 

ま取り合えず、この疑問は高い棚の上に上げさせて頂いて(笑)

 

 

 

 

 この東寺・立体曼荼羅の多聞天の足元に地母神がいらっしゃる事自体が、またへづ屋には不思議で堪らない。

しかも東寺には宝物館があって、此処には様式通りの兜跋毘沙門天像が収蔵されているにも拘らず、だ。

 

 しかも、しかも。地母神様に従っている二鬼がこれまた傑作で。文字通り寄り添う彼らは、この華々しい場に恐れ戦いているかのようで、

 

『姐さん、大丈夫ですかねェ〜〜』

『俺たち、場違いなんじゃ・・・』

 

との声が、観客である観光客の私らにまで聴こえてきそうなビビリ振りなのだ。

 女神様をつかまえて「おれたち」呼ばわりすな―!!と一喝したいところだが、当の女神様が一向に気にされるご様子もなく却って、

 

『大丈夫よ、私がついているでしょ』

 

とでも言いたげにどっしり構えていらっしゃるのだから、へづ屋如きの出る幕ではない。

 

 流石大地を支える大姐御。

居並ぶ諸仏諸尊など赤子に等しいのかもしれない。

 

 そう考えると、五智如来、五菩薩、五大明王を差し置いて、右最奥の多聞天の股下を拝んでしまいそうになるのだから、へづ屋は何ともバチ当たりな奴である(笑)

 

 

 

 

 

 余談だが。

東大寺・大仏殿回廊の中門に兜跋毘沙門天がおいでになって、その足元にもそれは麗しい地天様がいらっしゃるのをご存知だろうか?

 

 

 

 

 

ロングの甲冑に、鳳凰をつけた宝冠を被り、戟と宝塔を手にした型式通りの兜跋毘沙門天像

南大門の仁王像より小振りながらも端正なお姿だ。

ただ腰の直ぐ下位まで緑色の柵がめぐらされているので、一見判別し難いのだ。

 

かく言うへづ屋など、ハッキリ気付いたのが、五、六年前の「ライトアッププロムナード・なら」と題された奈良公園一帯をライトアップで照らし出すイベントで、である。

まだユーフクな頃だったので(笑)、幻想的に闇夜に浮かぶ東大寺や浮見堂、興福寺や朱雀門などを一人でタクシーを使い見て回っていたのだが。

 

 夜参りも良いな〜などと思いつつ、東大寺の南大門や大仏殿(の中には入れないが)をうっとりしながら拝観し。そろそろ帰ろうかと何の気なしに中門の像を覗き込んだ瞬間。

 

 

『何コレ!何っ!?』と夜中に大声を出す訳にもいかず、無言で驚愕を表すえらく挙動不審な人間になってしまった。

そして当然の如く像の足元までにはわざわざ照明も当てられておらず、柵に邪魔され近眼のへづ屋にとっては酷くもどかしい思いをさせられ申した(涙)

 

『開けて!此処を開けてちゃんと貴女を見せて!!』

みたいな?(笑)

 

だがタクシーを待たせている手前、上がり続けるメーターを思えば何時までも其処に蹲ってる訳にもいかず、明日また来るんだから仕方ないと諦めたもののその一晩がまた長かった事!(笑)

 

 

 

 

そして改めて拝謁の機会を得た女神様の麗しさと言ったら!!

切れ長の眼差し、すっきり整った鼻と眉筋。

昔は紅も鮮やかだったろう美しい唇。

実際本当に惜しいと思うのだが長い年月の間に彩色がかなり落ちてしまい、艶やか(だった筈)な黒髪もすっかり白髪になってしまっているのだ。

だが、色に左右される事のない元来の造型は今もって健在である。

柔らかな表情も、綺羅綺羅しい髪飾りも、兜跋毘沙門天をお持ちになってる両の手の平も(笑)

 

 そして美しき地母神に従う二鬼もこれまた天晴れである。

地中から精一杯そのどでかい顔をのぞかせ、胸のあたりで両手を交差させているのだ。まるで、

 

『女神様はオラたちが守る!』

 

と自分たちの心の人(笑)を胸にいだくような仕草で。

 

へづ屋のような鬼好きにとってはカワユク感じる事この上ない。

 

 

 しかし当の兜跋毘沙門天さまにとっては・・・

 魔を射抜く為寄り目になった下を見下ろす両眼が己の足元を見詰め、

『何をやってるのだ、うぬらは!?』

と、蚊帳の外に放り出された被害者意識に凝り固まってしまったように見えるのは、へづ屋がヨコシマだからだろーか?

 だがどっから見ても紛れもなく、緑の柵中は年中ラブラブ状態だ。

 毘沙門天さまのお寂しいお気持ちはよ〜〜く判ります。

などと言ったら、右手に持った戟で突き刺されそうな気もするのでこれ以上は触れるまい(笑)

 

 

 

もし東大寺参詣の折には南大門と大仏殿だけでなく、中門にも是非お立ち寄り頂きたい。

そして柵を覗いて貴方のお眼で確かめて頂きたいのだ。

 

その際あまりに柵や網にくっつき過ぎて、文化財破壊者や、ただのアヤシイ人に間違われないようにくれぐれもご注意を(笑)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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