もう1つの楕円運動:2次元調和振動 

惑星の楕円軌道:ファインマンの証明が意味するもの

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 惑星の軌道が楕円であることは、ファインマンによって幾何学的に証明された。惑星に 働く力は太陽と惑星の間の距離の2乗に逆比例する。他方において、距離に比例する中心力( F = - k r )を受ける物体の運動は調和振動と呼ばれ、その軌道もまた楕円であることが周知である。 この場合についての幾何学的な証明を考えてみよう。


1. 円運動



     図1.円運動の射影
 円周上を運動する物体には、円の中心に向かう力(中心力)が働いている。中心力の 大きさが円周上の各点において等しい場合には、物体は等速円運動を行う。

2. 等速円運動の射影

 図1において、黒線の楕円は等速円運動の軌道を表している。円周上の各点において、物体には大きさの等しい 力が原点 O に向かって働いており、物体の速度は円周方向を向いている。

 この円を、原点 O を含んで円面と斜交する平面に投影すると、赤色の閉曲線のようになる。円とともに力をも 投影すると、図から明らかなように、閉曲線上の各点における力は原点 O を向いており、その大きさは 原点 O からその点までの距離に比例する。すなわち、調和振動の状況が作られる。

 円運動の速度をも投影すれば、その向きが赤色閉曲線の接線方向となることは明らかである。斯くして、 赤色閉曲線が調和振動の軌道であることが保証される。

3. 軌道の性質

a



   図2.Dandelin の球と楕円(側面)

 図1に描かれた赤色の閉曲線は、黒線の円を縁として垂直に立つ円筒面上にある。円筒は円錐の範疇に含まれる から、平面との交線は楕円である。よって、調和振動の軌道が楕円であることが証明された。

 円錐は、Dandelin の球と呼ばれる2つの球を使って指定することができる。円筒の場合、Dandelin の2球の 半径は相等しい。上記の楕円を含む平面がそれら2球に接している状況(側面図)を図2に示す。

 この平面と2球との接点 F1、F2 は楕円の焦点である。Dandelin の球の半径が楕円の 短径に当たることは明白である。三角形 A O M と三角形 O O2 F2 は合同であるから、 楕円の長径 A O は O O2 (= O O1 )に等しい。

4. 調和振動をする物体の速度

 楕円軌道の長径と短径をそれぞれ a 及び b とする。上記の如く、対応する円軌道の半径は b で ある。その円運動の周期を T とすると、物体の速さは 2πb / T となる。時間幅 T /2π の 間に進む距離で速さを表すことにすれば、円運動をする物体の速さは半径 b に他ならない。
 この速さを楕円に投影すると、長軸の先端( r = a )における速さ va は そのまま b である。短軸の先端( r = b )における速さ vb は、 図2から分かるようにその a / b 倍、すなわち a である。

 こうして、楕円運動の初期条件として

           r = a 、   va = b
或いは
           r = b 、   vb = a

と置くことができる。中心力の下、面積速度は一定であるから、中心 O から r の位置における物体の 速度の方位角成分は a b / r となる。  

5. 付記

 調和振動と惑星の運動はともに楕円軌道を取る。前者において物体に働く力は、軌道の中心に向かい、中心からの 距離に比例した大きさを持つ。後者においては、力は楕円の1焦点に向かい、そこからの距離の2乗に 逆比例している。これら2つの状況は、等角写像によって結ばれることが知られている。

 簡単な計算を行えば、x y 座穂における調和振動から

        x' = x 2 - y 2 ,  y' = 2 x y

の変換によって、x'y' 座穂における惑星運動が得られる。  更に、力学問題の解を幾何光学の問題に応用することができる。その際には、物体の速さを媒質の 屈折率に置き換えることによって、物体の軌道がそのまま光の進路に焼き直される。

                                            以上