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物理学における国際規準    記号、単位、用語




まえおき

  E = m c 2 という式を見るだけで、世界中の物理学者が 「 E はエネルギー、m は質量、c は真空中の光速」 と認識する。余りにも 有名なアインシュタインのこの式は、一般社会の人々にまでこれら記号の意味を知らしめたように感じられる。

 物理学の本や論文では、力を表す記号として F 、質量を表す記号として m 、等々が用いられ、長さの単位として メートル (記号 m)、時間の単位として 秒 (記号 s)、等々 が使われている。多くの人は本や論文を読む過程で自ずとそれらを身に付けているであろう。

 科学と工学のほぼ全分野に通用する単位や単位記号、推奨される量記号等は 国際規準 として公表されており、学術用語は各国内で統一されている。それらを知ることにより、我々はより安心して 論文や書類を書くことができる。

 筆者自身 1978 年に、後述する文書 Document U.I.P. 20 ; Symbols, Units and Nomenclature in Physics を入 手して大いに重宝した。

 勿論、これらの規準が定着するまでには様々な歴史的経緯があった。その例として、先ず単位系を見てみよう。

1. 国際単位系の成立

(i) メートル法
 メートル という言葉はギリシャ語の 「ものさし」 に由来し、計器を表す 「メーター」 も 同じ語源から来ている。 1790 年、フランス革命の一環として度量衡を国際的に統一する案が議会に提出され、1791 年に決議された。その際、 「地球の北極から赤道までの子午線弧長の 1,000万分の1」 を 1 メートルとすることが採択された。質量も このメートルを基準として、1 立方デシメートルの水の質量を 1 キログラムとすると定められた。

 因みに、革命政府は時間にも十進法を適用して、「1週 = 10 日、1日 = 10 時間、 1時間 = 100 分、1分 = 100 秒」 というフランス革命暦を 1793 年に制定・施行した。 しかしその評判が悪かった為、1802 年には 1週 = 7 日 に戻され、またナポレオンが皇帝になった直後の 1805 年には 革命暦は廃止されて、フランスはグレゴリオ暦に復帰した。古代バビロニア以来の分割様式である 「1日 = 24 時間、 1時間 = 60 分、1分 = 60 秒」 が現在も生き続けている。

(ii) cge 単位系
 1832 年にドイツの学者ガウスが提唱し、1874 年に英国科学振興協会によって採用された。 力学の基本量である長さ、質量、時間の単位を センチメートル (cm)、グラム (g)、秒 (s) とするものである。

(iii) MKS 単位系
 長さ、質量、時間、電流の単位を、メートル (m)、キログラム (kg)、秒 (s) とするこの単位系は 1889 年に国際度量衡局によって定められ、主に技術者によって使用された。

(iv) MKSA 単位系
 物理学に電磁気学を組み入れる段階で MKS 単位系の方が実用的に便利であったため、1901 年、MKS に電流の単位アンペア (A) を加えた単位系 (MKSA 単位系) が提唱され、1946 年には国際度量衡委員会で、1950年 には国際電気標準会議でそれぞれ 承認されるに至った。

(v) 国際単位系 (SI)
 その後の 1960 年、国際度量衡総会において MKSA 単位系に温度の単位 ケルビン (K) と、 光度の単位 カンデラ (cd) が基本量として追加され、更に 1971 年に物質量の単位 モル (mol) が基本単位に加えられた。これらに2つの補助単位を加えた計9個の単位を組み合わせて形成される 組立単位を併せて、現存する国際単位系が成立した。

 その間やその後において、基本単位の定義は何度か変更された。詳細は国際度量衡局編 "Le Systeme international d’unites (SI) - 8e edition - 2006" に記されている。日本語版はウエブサイト http://www.nmij.jp/library/units/si/R8/SI8J.pdf で読むことができる。

 各種の単位系はインターネットで調べることができるし、物理学辞典などにも載っている。  

2. 物理量の記号

 1922 年に設立された 国際純粋・応用物理学連合 (略称 IUPAP) の中に設けられた C2委員会 Commission for Symbols, Units and Nomenclature (略称 S.U.N. Commission) が、物理学に用いられる記号、単位、用語に 関する提言を行った。幾度かの改訂を経て 1978 年に公表されたのが前述の文書 Document U.I.P. 20 であって、 IUPAP の赤表紙本 ("Red book") と呼ばれるシリーズの1冊となっている。

 この委員会は現在では SUNAMCO 委員会 (SUNAMCO は Symbols, Units, Nomenclature, Atomic Masses and Fundamental Constants の略) に合併吸収されている。 SUNAMCO 委員会の勧告は、IUPAP の赤表紙本 Symbols, Units, Nomenclature and Fundamental Constants in Physics IUPAP 'Red book' 1987 edition ( IUPAP-25 或いは SUNAMCO 87-1) として出版されたが、これは E.R. Cohen and P. Giacomo; Physics, Vol. 146A (1987) 1-68 の複製版である。

 目次をインターネットからコピーして下に付する。物理量の記号や数式の書き方なども含め、如何に多くの事項について詳細な記述や推奨がなされているかが 察せられるであろう。


Symbols, Units, Nomenclature and Fundamental Constants in Physics
IUPAP 'Red book' 1987 edition [with additional links 2007]

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   1 GENERAL RECOMMENDATIONS

    1.1 Physical quantities
    1.2 Units
    1.3 Numbers
    1.4 Nomenclature for intensive properties
    1.5 Dimensional and dimensionless ratios

   2 SYMBOLS FOR ELEMENTS, PARTICLES, STATES AND TRANSITlONS
    2.1 Chemical elements
    2.2 Nuclear particles
    2.3 'Fundamental' particles
    2.4 Spectroscopic notation
    2.5 Nomenclature conventions in nuclear physics

   3 DEFINITION OF UNITS AND SYSTEMS OF UNITS
    3.1 Systems of units
    3.2 The International System of Units (SI) [BIPM http://web.archive.
      org/web/20070927013351/http://www.bipm.fr/en/si/]
    3.3 Non-SI units of special interest in physics

   4 RECOMMENDED SYMBOLS FOR PHYSICAL QUANTITIES
    4.1 Space and time
    4.2 Mechanics
    4.3 Statistical physics
    4.4 Thermodynamics
    4.5 Electricity and magnetism
    4.6 Radiation and light
    4.7 Acoustics
    4.8 Quantum mechanics
    4.9 Atomic and nuclear physics
    4.10 Molecular spectroscopy
    4.11 Solid state physics
    4.12 Chemical physics
     [IUPAC Green book http://web.archive.org/web/20070927013351/
      http://www.iupac.org/publications/books/gbook/green_book_2ed.pdf]
    4.13 Plasma physics
    4.14 Dimensionless parameters

   5 RECOMMENDED MATHEMATICAL SYMBOLS
    5.1 General symbols
    5.2 Letter symbols
    5.3 Complex quantities
    5.4 Vector calculus
    5.5 Matrix calculus
    5.6 Symbolic logic
    5.7 Theory of sets
    5.8 Symbols for special values of periodic quantities

   6 RECOMMENDED VALUES OF THE FUNDAMENTAL PHYSICAL
    CONSTANTS
     [NIST http://web.archive.org/web/20070927013351/http://physics.
      nist.gov/cuu/ Constants/Citations/Search.html?]

   APPENDIX. NON-SI SYSTEMS OF QUANTITIES AND UNITS
    A.1 Systems of equations with three base quantities
    A.2 Systems of equations with four base quantities
    A.3 Relations between quantities in different systems
    A.4 The CGS system of units
    A.5 Atomic units

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    IUPAP Commission C2 SUNAMCO “Symbols, Units, Nomenclature,
     Atomic Masses & Fundamental Constants", http://www.sp.se/
     metrology/IUPAP_SUNAMCO/IUPAP_SUNAMCO_Commission.htm

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3. 他の学術団体との関連

 科学技術上の規格を世界的に統一する試みは20世紀初頭に始まり、1908 年には国際電気標準会議 (IEC) が、 また 1929 年には万国規格統一協会 (ISA) が設立された。これらを前身として 1947 年に発足したのが国際標準化機構 (ISO) である。その機構が出した文書 ISO-31 は 上記の I.U.P.A.P.-25 に基づいて作られた。

 国際純粋・応用物理学連合と国際標準化機構、国際度量衡会議、国際純粋・応用化学連合、国際電気標準会議、 国際照明委員会等各団体との連絡は密であり、これらが推奨する規則は全面的に合致している。

4. 日本における学術用語

 文部科学省編集の 「学術用語集 物理学編(増訂版)平成2年版」 が培風館によって出版されている。その末尾では、 ごく簡略にではあるが、用語制定の経緯にも触れている。
 また、培風館の 「物理学辞典」 なども、用語とともにその意味や訳語を知るのに便利である。

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