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「山道や野原を歩いていると、ふと足元に小さい花を見かけることがある。思わず足を止めてよく見ると、小さいながら色鮮やかに形整い、まことに見事である。大きい青空の下で、それとして精一杯に咲いている。人が見ようと見まいと、花は花弁を大きく開いて、青空に、太陽に語りかけている。」 (柳宗玄著;「かたちとの対話」1992年)
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地球上にあるものはすべて、重力や時には風などの力を受けて存在している。山や谷、生きているもの、人がつくったものすべてである。それらは、心地よいもの、親しみを感じるもの、感動や元気をくれるもの、緊張するもの、不可解なものなどさまざまである。それらをよく見ていきたいと考えています。 絵は、Pixiaで作成しました。それぞれの絵には、時間がかかっているのですが、できあがりは稚拙です。ご容赦ください。 |
![]() 時計の針 |
アナログの時計は、針の位置によってその表情が変わります。昔、時計屋さんの時計は、みな10時10分にセットされていました。長針と短針のバランスの良さが好まれたのでしょう。10時10分と上下に対称の7時20分などは、左右のバランスは好いのですが、安定しすぎて軽快さに欠けるのではないでしょうか。では、左右が逆になる1時50分と比べるとどうでしょうか。10時10分は丁度レ点のような格好で、左から右へスムーズな流れを感じますが、1時50分は、逆の右から左になります。時計屋さんは、10時10分の針の位置が軽快でバランスがよく、人に好印象を与えることを知っていたのでしょう。 |
![]() 体操競技 |
人は、日頃、歩いたり、走ったり、跳んだりしています。そのときの力の入れ具合や安定感は、小さい頃から学び、体得しています。その感覚から、体操競技を見て、その美しさや絶妙のバランスに賛辞をおくります。自分にはできなくても、身についた感覚から、十分に評価でき、競技を楽しみます。 |
![]() 蒸気機関車 |
「川の向こう側には、貨物列車がキングスブリッジ駅から、くねりながら発車するのが見えた。それは火の頭をした虫のように、暗闇の中を執拗に一心不乱にくねって進むのだった。」(ジョイス著、結城訳「ダブリン市民 痛ましい事故」) 蒸気機関車やクラシックカーなどは、われわれにたくさん語りかけてくれます。それらは、外から見て、いろいろな働きがわかりやすいことによるのだと思います。 |
![]() 現代彫刻の例 |
十数年前、箱根の彫刻の森美術館で、太い鎖がまっすぐに立っている作品を見ました。鎖は形状を変えられるという特徴をもっています。だから、これが直立することはありません。一瞬、あれと思いました。よく見ると、個々の鎖は溶接されていました。鎖は最大の特徴を殺されて、展示されていたのです。また、四角形の角を下にして並んでいるオブジェもありました。それらの制作意図はわかりませんが、私が、これから考えようとしている、「かたち、機能、材料、親近感、安心感、バランス、構造」などととは正反対のものだなと強く感じました。 |
![]() 電線架け替え工事 |
電線の架け替え工事の途中です。いつもは、すっと立った電信柱に、ぴんと張られた電線が架かっています。工事手順などはよくわかりませんが、夕方になり写真のような状態でその日の作業は終わりました。翌朝までこの状態でした。工事上は何の問題もないのでしょうが、おもしろい形なので撮影しました。上記の現代彫刻と通ずるものがあると思います。普通ではない状態、非日常的なもの、びっくりするようなものなどです。しかし、工事関係者の方には申し訳ありませんが、電信柱の両側にゆるく垂れ下がった電線はユーモアたっぷりに見えました。 |
![]() 伊勢神宮の鳥居 |
心地よい緊張を感じます。簡素で、しかも凛とした木のかたちです。鳥居の上にある横材(島木)は、柱間隔を1.0としますと、約0.4程度突出しています。他の神社の鳥居もだいたい0.4:1.0:0.4の比率です。この寸法は、力学上、横材の変形がもっとも少なくなります(固定端の曲げモーメントMと突出し部のMがちょうどバランスします)。人間の感覚と力学上の形が見事に一致しています。 |
![]() 古墳 |
写真は千葉県市原市の公園内にある古墳です。小さな前方後円墳と思われます。ゆったりとした曲線を見たとき、なぜかこころがなごみました。土で丸く盛り上げただけの単純な形が、昔の人のこころの豊かさを静かに語りかけているような気がしました。われわれは、あくせく時間に追われ、ありあまるものに囲まれ、こころをなくしているのではないでしょうか。 |