
原子力情報センターINPO駐在の西主任研究員が、米国で最も電力市場の自由化が進んでいるカリフォルニア州について調査を行った。本調査によると、現状カリフォルニア州で導入されているシステムは、本格的自由化を行うための助走期間に相当するもので、既存の電力会社は、このシステムのもとで、本格的自由化が開始される2002年3月までに、どれだけ回収不能コスト(Stranded Cost)や廃炉積立金、リストラに必要とされる費用等を回収できるかが重要となっている。以下にその内容を記す。
1. 家庭用電力価格の設定
98年1月1日に、家庭用電力については、一律10%の値下げが実施された。この後、4月1日以降からの市場が自由化に伴い、消費者は大別して、電力をPX(Power Exchange)市場から購入するか、または売電業者との直接契約の2種類の選択ができるようになった。表1は、サン・オノフレ原子力発電所を所有するサザン・カリフォルニア・エジソン社の一般家庭用の料金メニュー表から、平均PX市場価格オプションを選択した場合の電力単価(Energy Charge)の項を抜粋したものである。
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表1. 一般家庭用PX市場価格オプション料金表 (サザン・カリフォルニア・エジソン社) | ||
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夏期 |
冬期 | |
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ピーク時 ($/kWh) |
0.48453 |
0.14003 |
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オフピーク時 ($/kWh) |
0.10363 |
0.09028 |
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* ピーク時は平日(祝日を除く)の午前10時から午後6時まで * 夏期は6月の第1日曜日の午前0時から10月の第1日曜日の午前0時まで | ||
この表からわかるように、最も基本的なメニューである平均PX市場価格オプションを選択した消費者は、PX価格変動の影響を全く受けない固定料金になる。それでは、固定料金内訳はどのようになっているのであろうか。図1は、この固定料金と平均PX価格の相関関係を簡単に示したものである。ここで出てきたCTC (Competition Transition Charge)は、自由な市場に移行するに当たって、新規発電事業者と既存の電力会社が同じ条件でフェアな競争ができるようにするために、消費者から期間限定で(2002年3月まで)強制的に徴収する料金のことである。すなわちCTCとは、競争市場に移行する際に、既存の電力会社が必要とする費用を割り当てるために徴収するものである。この料金は、既存の電力会社に発生する費用、例えば、資本費等に代表される回収不能コスト(Stranded Cost)や、廃炉積立金、早期退職制度などのリストラに必要とされる費用、に割り当てられる。

この相関関係に従って算出されるCTCは、売電事業者から直接契約を結んでいる消費者にも、強制的に課せられる。つまり、売電事業者と直接契約を結んでいる消費者の電力料金は、売電業者の電力料金に平均PX価格によって決定したCTCを足したものとなる。*
この制度でメリットを受けるのは、既存の電力会社である。なぜなら、既存の電力会社は、電気の卸価格が低調であっても、CTCが高くなって設備の減価償却を加速できるからである。
逆にデメリットを受けるのは、新規参入の売電事業者である。なぜなら、新規で顧客数が少ないので、特に夏期の日負荷変動率が大きくなるために、電力コストを一定に保つのは難しくなる一方で、消費者に魅力ある料金メニューを提供するためには、常にPX価格よりも低い電気料金を提供しなければならないからである。したがって、売電事業者と直接契約を結んでいる消費者も不安定な電力料金というリスクを負うことになる訳である。 幾つかの売電業者が昨年の9,10月に財政危機を迎えたこともあり、一般家庭で売電業者と直接契約を結んでいる世帯数はここ数ヵ月減少傾向にある。その結果、99年1月末に発表された、98年末のデータによると、一般家庭で売電業者と直接契約を結んでいるのは、約8万世帯(一般家庭の約0.9%、負荷では約1.1%)に留まっている。
* ここでは触れていないが、PX市場には、平均価格を適用せず、時間毎に変動する電力料金を適用できるオプション(Hourly PX Option)がある。このオプションを選んだ消費者も、同様の方法で決定したCTCを支払うことが義務となっている。このオプションには、時間毎の電力消費量がわかる特殊な電力計が必要で、この電力計の購入、取り付けに必要な費用は消費者が負担しなければならない。
2. 新規売電事業者の顧客との直接契約による市場占有率
前節で述べたように、新規の売電事業者は家庭用電力用の直接契約分野においては大変苦戦している。これら以外の分野も含めた、新規の売電業者の直接契約による電力市場の占有率を示したのが表2である。
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表2. 1998年末現在の新規売電業者の直接契約による市場占有率 | |||
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顧客数 |
占有率(数) |
占有率(負荷) | |
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家庭用 |
78881 |
0.9% |
1.1% |
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商業用小規模 |
23631 |
2.4% |
3.3% |
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商業用中規模 |
9338 |
4.7% |
12.8% |
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工業用 |
882 |
18.1% |
27.4% |
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農業用 |
2584 |
2.2% |
6.4% |
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不 明 |
17 |
不明 |
不明 |
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全 体 |
115333 |
平均1.1% |
平均11.6% |
この表から、より安定した大きな負荷が見込まれる分野ほど、直接売電契約による市場への食い込みが成功していることがわかる。特に、工業用の大電力消費者との直接売電契約は、そのほとんどが長期契約となっている様である。直接売電契約による年間売上げ総額は、30億ドルとも40億ドルになるとも言われているが、これらの売上げは、PG&E Energy Service, New Energy Ventures, Enronの3社にほぼ3等分されており、この3社以外の売電業者は非常に苦戦を強いられている様である。
3. その他、今後の動向等
現在の市場環境は、供給側の競争を促進することに重きをおいて規制緩和をした結果、形成されたものであると言うことができる。それらは、例えば、次のような点に見ることができる。
・PXの導入により、コストの高いプラントが市場から排除された。
・ISOの導入により、カルフォルニア州で売電を希望する全てのプラントの系統へのアクセスが保証された。
・既存の電力会社は、所有する火力発電所の半分を他社に売却することが課せられた。
その一方で、回収不能コストの回収を目的としたCTCを徴収するために、電力単価を固定料金とした結果、PX価格の変化は需要電力の反動を引き起こせない仕組みとなっている。
CTCの徴収は、2002年の3月に終了する予定となっている。したがって、2002年の4月以降、PX価格の変動が電力料金に反映される、真の自由市場環境が整った状態で、どのように市場が変化するのかが非常に注目されるところである。
これに加え、時間毎の電力使用量がわかる特殊な電力メーターは各家庭が普及の鍵を握るとしている予測もある。この予測は、特殊なメーターの利用拡大により、夏期ピーク時でも単価の上昇に応じて需要が減り、結果として市場価格の上昇を押さえ込むという市場メカニズムが正しく機能するようになり、ひいては、これが供給側の競争を促して更に電力料金が下がるとの予測に基づいている。
以 上
